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「復興の為」掲げ全国民収奪
東電は公金投入で救済
                巨額の米国債は売らず      2011年5月30日付

 「東日本大震災の復興財源を確保するため」と称した消費税増税や国家公務員給与削減、年金支給年齢引き下げなどの国民収奪が立て続けに具体化され始めた。早急な復興財源調達が目的なら、政府がアメリカ国債などを買ってためこんでいる国の金融資産600兆円や、200兆円を超す大企業の内部留保金を使えばすぐできる。だが菅政府は国民から搾り上げる方向だ。しかも福島原発事故で国民に大損害を与えた東電支援で五兆円規模の公的資金を投入することを決定。東電は損害賠償金すら企業責任で支払わず、国民への電気料金値上げにかぶせようとしている。大震災に乗じて度はずれた国民大収奪の動きがあらわれている。
 
 医療・介護など福祉切り捨ても

 被災地は2カ月を経過した今でも10万人を超す避難民が生活再建のメドもなく、義援金も届かぬまま放置されている。
 しかし震災1カ月後に発足した政府の復興会議も、早急な復元を目指す被災地住民の切実な要求はそっちのけで、もっぱら復興ビジネスに群がる金融資本や外資の意にそって東北地方を道州制導入や規制緩和のモデル地域にする計画を具体化する方向だ。
 そして4月末に開かれた復興会議の第3回会合では日本商工会議所、経済同友会、経団連などの財界が軒並み復興税の早期導入を要求。日本商工会議所は「時限的に消費税を“復興税”として増税すべき」とする要望書を出し「広くあまねく公平に資金を確保するには消費税が最適」(岡村正会頭)と主張した。
 21日開催の第六回会合では「いかなる手法も排除しない」と財源の検討を下部組織に指示。「復興費捻出」と称して消費税、所得税、法人税などあらゆる増税に着手した。
 こうしたなか菅政府は6月下旬にまとめる「社会保障と税の一体改革案」に、2015年までに消費税率を5%引き上げ10%にすることを盛り込む方向で突っ走り始めた。消費税については震災前から経団連などが「2015年ぐらいに5%上げ、2020年半ばには17、18%まで上げる必要がある」と提言したが、反発が強く行き詰まりを見せていた。それを一気に動かし始めている。
 増税とセットで福祉切り捨ても「一体改革」として露骨にすすめている。医療関係では、現在65歳である年金支給開始年齢の引き延ばし(イギリスの68歳がモデル)、1割負担だった高齢者医療(70〜74歳)の負担を来年度から2割負担にする、外来患者が外来受付をするたびに100円徴収する(難病治療費に当てるという口実)ことなどが進行中だ。
 介護でも要支援1、2の高齢者を介護保険給付の対象から外し、ボランティア団体が実施する総合サービスに丸投げして国の予算支出を削ったり、医者・看護師不足が深刻化するなかで増員できるように予算をあてるのではなく、ヘルパーが医療行為をできるように規制緩和しますます介護現場から人を減らす方向を打ち出している。しかも介護保険料は現在40歳以上が負担するが、この徴収年齢を引き下げ、将来的には20歳から徴収する方向が検討されている。
 そのほか、「幼保一元化」で公立保育園と幼稚園補助金をカットして親の保育料負担を増やしたり、「最低賃金より生活保護の方が高い」などの理由で生活保護基準額を引き下げることも具体化されている。
 「復興費に回す」「消費税は福祉目的税だ」「高齢者医療・介護などの財源不足の穴埋めに回す」などさまざまな理由付けがされているが、ようするに政府が国民に対して負うべき福祉・医療を削り、個人負担や増税にかぶせていくのが中身となっている。

 賃下げを拡大するテコ 国家公務員給与削減

 「復興財源捻出」を掲げた国家公務員給与の削減も進行している。政府と連合系の公務員労働組合連絡会(連絡会)は23日、国家公務員給与の削減について協議し、月給を役職に応じて10〜5%、ボーナスなどを一律10%カットすることを現場公務員の頭越しで勝手に決めた。政府は給与削減の関連法案を6月3日に閣議決定し国会に提出する方針である。
 合意では月給の削減幅を課長級以上10%、課長補佐・係長級8%、係員級は5%とし管理職手当やボーナスなどは一律10%とした。だが今回対象となったのは国家公務員でも人事院勧告の対象となる一般職約27万人だけ。菅首相(年俸=3928万円、2010年現在)や閣僚、自衛官などが含まれる特別職約31万人は「今後交渉する」としている。
 そのため2013年度末(平成25年度末)までの時限措置で「復興費にあてる」というが、捻出額は年間二千数百億円に過ぎない。むしろ国家公務員給与の削減を突破口に全労働者の賃金を引き下げるテコにする意味合いの方が大きいと指摘されている。
 現に国家公務員の給与は地方公務員や民間職場の給与水準を定める基準になっており、「右にならえ」で賃下げに動き出すのは必至。そうなると国家公務員のみならず、地方公務員(286万人)や独立行政法人、私立学校、民間病院、社会福祉施設など、人事院勧告で影響を受ける官民20業種の626万人に影響を及ぼす。菅首相は「各自治体の判断だが、国の扱いを一つの参考にしてもらえると理解している」とのべ地方公務員の給与削減を促すことにも言及している。この公務員給与削減は地方公務員、民間労働者の給与引き下げをにらんだ動きであり、全国の労働者にとって無関係ではない問題となっている。

 全国民に転嫁する構図 東電払うべき賠償も

 そして国民を激怒させているのは「絶対安全」とだまして福島原発爆発で全国に大被害をもたらした東電の損害賠償を全国民から徴収する電力料金値上げや税金投入で転嫁する動きである。
 東電対応をめぐって政府は13日、東電存続のため公的資金を投入して東電の賠償を支援する「原発賠償機構(仮称)」を設置する枠組みを決めた。東電を含む電力10社(日本原子力発電を含む)が賠償機構を新設し、この賠償機構が東電の損害賠償も支援するし、不動産や有価証券売却にも応じる。ここに国が「交付国債」を機構に交付する形で五兆円規模の公的資金を投入する。それを全国の電力会社が十数年かけて支払っていくというものだ。
 機構の負担金は電力会社が分担して毎年計3000億円程度(東電が1000億円、残る2000億円を他の電力会社)とされている。だがこの負担金は、全国民への電力料金値上げによって回収する方向だ。
 東電はすでに原発事故の賠償、原発停止による燃料費のコスト上昇をすべて料金に転嫁すれば値上げ率は約20%となり、一般家庭なら月約1300円の負担増となると試算。7月の電力料金は前月比110円値上げすることを表明している。
 全国でも北海道、東北、北陸、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄などの電力会社が軒並み六月の電気料金値上げを表明した。福島原発事故を引き起こした張本人である東電は国から莫大な公的資金注入で支援をうけ、電気料金値上げで賠償資金を調達し、結局すべて国民に負担させる構図となっている。

 内部留保は手をつけず 総額200兆円超す

 東日本大震災をめぐる復興費用は世界銀行が2350億j(約19兆円)に達すると明らかにし、内閣府が試算した被害総額は25兆円にのぼる。しかし日本政府はアメリカ国債を含む600兆円の金融資産があり、その何分の一かを使えば十分、災害復興財源を調達できることが指摘されている。
 日本は20年連続で世界一の債権国であり、2010年末までに日本が保有する海外資産は251兆4950億円(財務省発表)に上っている。為替介入の資金である外貨準備高は1兆1355億j(約92兆円、2011年4月)に達し、日本の米国債保有額は9079億j(約74兆円、2011年3月)となっている。
 さらにトヨタ自動車(13兆円)、パナソニック(4兆円)など大手企業の内部留保も莫大な額となっている。大企業(10億円以上)の内部留保金を合計すると09年度段階で244兆円に到達しており、このうち使い道がない手元資金(現金・預金と短期投資の有価証券)だけで52兆円もある。こうした資金を使えばいくらでも国民生活復興の財源ができるのは明らかである。
 このなかで菅政府はアメリカの顔色ばかりうかがい、貸した金を返せとも米国債を売るともいえず、大企業の内部留保にもいっさい手をつけさせず、電気料金や増税で国民から巻き上げることばかりに腐心している。大震災のような国難のときこそ国民の生命、安全を第一に考えて政治をおこなうのでなければ、政府の役割とはいったい何なのか。米国や大企業の利益を最優先する菅政府に対して、全国民の憤激は高まらざるをえない。

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