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武田恵世医師の講演 @
風力発電の不都合な真実
                          (2014年6月23 日付

 三重県の医師で歯学博士の武田恵世氏は22日、下関市の川中公民館で開かれた安岡沖洋上風力発電建設に反対する住民集会で、「風力発電の不都合な真実―風力発電は本当に環境に優しいのか?」と題した講演をおこなった。その要旨を何回かに分けて紹介する。
 
 私の住んでいる三重県伊賀市と津市の間には、青山高原というところがある。ここに風力発電がたくさん建っているが、その理由は「年中風が強く吹いて、雷が少ない」ということで、中部電力子会社のシーテックがつくった。ところが私が小学校のころから習ってきた郷土史の教科書には、ここは霧と雨と雷が多いところとあり、おかしいと思っていた。
 現在、青山高原には51基の風力発電があり、加えて40基が建設中で、日本でも最大規模の91基が集中する風力発電所となる予定だ。「世界的に完璧な成功例」(清水幸丸三重大学名誉教授)ともいわれている。
 1999年に最初の4基ができた当時、みんなが喜んだし、私も「これで火力発電所や原発が減ればいい」と思っていた。しかし一昨年、その4基を津市がシーテックに譲渡してしまった。全国初の自治体経営の風力発電だったが、修理費と維持費がかさみ過ぎたのだ。23年に2基が故障し、その修理費の6000万〜8000万円が出せないということでやめた。建設費の半分が補助金だったが、実はこの年、その返還義務期間が過ぎてもう要らないということで譲渡した。ところがなぜか増設は続けている。
 1999年当時、私も大賛成で、真剣に出資を検討した。出資条件として、@CO2排出は削減できるのか、A自然環境に優しいのかどうか、B人間生活に悪影響はないか、C利益は得られるのかどうか、D将来性はあるのか、E成功例はあるのか――こういった観点から詳しく検討を始めた。その結果ダメだったが、なぜそうなったのかを話したい。

 停電すると発電できず 電気で動く巨大風車

 まず風力発電の特徴だが、ブレード(羽)をモーターの力で強制的に風上に向けることで発電している。だから停電すると発電できなくなる。また停電すると自動停止もできなくなるので、壊れてしまう。だから災害に強いというのはまちがいだ。
 高さは80〜135bと巨大なものだ。これは20〜40階建ての建物に相当する。下関にはそれほど大きな建物はない。そしてブレードの直径が100b近くある。それから夜間は航空機がぶつからないように、航空灯の閃光がかなりまぶしい。また山に設置する場合は直径200bもの平坦地が必要だ。陸上の風力発電は2010年現在で393箇所、1683基ある。これは統計によってはもっと多い。かなりの山肌を痛めている。
 風力発電の一般的なイメージとして、石油などの化石燃料を使わない、排気ガスを出さないクリーンなエネルギー、エコだと宣伝されている。そしてCO2排出削減が本来の目的だが、そのためには風力発電が増えた分、火力発電所の出力を削減しないと意味がない。
 次に風力発電所の説明書の読み方を説明したい。安岡沖洋上風力発電事業(前田建設工業の事業)は、発電所の発電規模が6万`h(60Uh)で、4000`h(4Uh)の風力発電機15基を設置する。そして想定発電量は年間1億6000万`h。これは6万`h×365日ではなく、設備利用率20%強を見込んでおり、一般家庭約3万世帯の年間使用量に相当する。だいたいこれを見ると、すごいなあと思う。
 ところが、火力発電所や水力発電所の場合はこれでいいが、風力発電機が定格出力(最大出力のこと)で発電できるのは、風速12〜25bのかなり強い風のときだ。そして25b以上の風だと自動停止する。
 風速12bの風がどんな風かというと、大枝が動く、電線が鳴る、傘が差しにくい、つまり歩きにくいほどの強風だ。それではじめて定格出力ということになる。専門家も「そんな風は滅多に吹かない」といっている。
 風力発電機の出力は風速の三乗に比例する。普段私たちが風が強いと感じる風速は、だいたい6bだ。砂埃が立ち、紙片が舞い上がるというほどのものだ。これだと出力は8分の1になる。つまりこの場合だと7500`hだ。つまり県庁か市役所で普段使っている程度の電力なのだ。
 「一般家庭約3万世帯の年間使用量に相当する」というが、実際は風の強い時間しか発電できない。だから一年間を通じて一般家庭の電気を風力発電でまかなうのは無理だ。真冬の深夜に強風で発電したとしても、これは使いようがない。逆に真夏の暑い昼下がり(サマーピーク)には電力需要も逼迫するが、まず強い風は吹いていない。もし強い風が吹けばエアコンが要らなくなり、電力は要らなくなる。ただの数字の遊びにしかすぎない。

 減額される地方交付税 誘致の「メリット」

 風力発電所ができることによる地域のメリットとデメリットがある。メリットとしては、建設場所と取付け場所の地主には借地料が入る。洋上の場合には漁業補償が入ると思う。それから道路ができる。風力発電機が好きな人が見に来る。青山高原は全国初だったので結構人が来た。今は全国どこにでもあるので誰も見に来ない。
 デメリットとしては、自然と景観が大規模に破壊される。土砂崩れなどの災害の危険性が発生する。騒音、低周波音による被害も発生する。自然や自然景観が好きな人は来なくなってしまう。
 実は、メリットといわれていて実際はそうではないことがある。「固定資産税と法人税が入る」ということだ。これはその通りだが、その分の地方交付税交付金は減額されるので、プラス・マイナスゼロだ。地方交付税交付団体でなければプラスになる。下関市は地方交付税をもらっていると思う。だからプラス・マイナスゼロ。三重県では川越町と朝日町ぐらいが地方交付税交付金をもらっていない。なぜかというと、一つは火力発電所がある小さな町、もう一つは日産の工場がある小さな町だからだ。
 地元が一番期待したのは雇用・仕事が増えることだったが、特殊な技術が必要ということで、伊賀市・津市の業者にはほとんど仕事がこなかった。今も風車の補修に来ているが、ほとんどが岐阜ナンバーか愛知ナンバーだ。林道をつくるぐらいは特殊な技術は要らないと思うが、必要な大量のコンクリートを運ぶタンクローリーは、なぜかみな大阪ナンバーだった。三重県にもコンクリート会社はたくさんあるのだが。(つづく)


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