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武田恵世医師の講演 A
風力発電の不都合な真実
                          (2014年6月27 日付

 青山高原の風力発電だが、山頂付近は国定公園の第一種特別地域になっており、そこを外して山の中腹に、風車がぎっしり建っている。

 元はとれない風力発電 建設費の半分補助金

 実は風力発電の配置の原則というものがある。主な風向に対して風下には、それぞれの風車をローターの直径の8〜12倍離さなくてはいけない。左右には、2〜4倍離さなくてはいけない。安岡にできるものは直径130bだから、後ろには1・3`離さないといけないはずだが、そうすると陸に建ってしまう。変な配置なのだ。
 実はそれで訴訟になっているところがある。江差ウィンドパークという北海道の風力発電所だが、主な風向に対して約100bでたくさん並んでいる。こういう建て方をすると、風力発電機をつくった会社は利益を得たが、発電から利益を得る約束になっていた地主と自治体は赤字になってしまった。それで訴訟になっている。これだけ並べてもまともに発電するのは先頭のせいぜい三基で、他は乱気流の影響でまともに発電できない。
 和歌山県の例だが、国民宿舎の正面に建っている所もある。風はまともに当たらない。しかし当時は補助金がもらえたので、こういう風力発電がたくさんできた。回らなくてよかったのだ。ここでは建設費の半分〜3分の1の補助金が出ているが、経産省にその補助金が妥当かどうか調べているのかと聞くと、「調べたことはございません。今後も調べません」というから、「それではいいなりではないか」というと、「いやそういう制度ですから」という答えだった。幸いその制度はなくなった。
 青山高原でちゃんと利益が得られているのか。当初の予測では建設費をまかなうのに11年という計算だった。ただし、11年間一度も止まらずに回ったらだ。実際の発電実績値で計算してみたら21年かかる。実は風力発電機の寿命は三重大の教授にいわせると15年、つくったシーテックにいわせると13年。だから元はとれない。実際に故障などが頻発し、元がとれない状態で譲渡してしまった。
 それでは全国的な発電実績はどうかと聞いてみると、民間の風力発電所で実績を公開しているところはゼロだった。自治体経営のところは公開しているが、NHKの調べでは80%が赤字だった。残りの20%は修理費を会計に入れていないだけだった。
 全国の主な工学部の教授に「風力発電所の成功例を一つでもいいから挙げてくれ。ただし実績を公開してくれないと検証できないから困る」と五年前に頼んだが、挙げてくれない。仕方がないので独自に調べると、北海道の寿都と苫前、静岡県の東伊豆の町営の風力発電所の三つがあった。いずれも小さな発電所で「あと一回故障したら修理費はとり崩してしまう」といっていた。あれから故障しているので、恐らく赤字になっている。

 CO2削減に貢献せず 原発も火力も減らず

 では、風力発電はCO2削減に貢献しているのか。各電力会社に聞いてみたところ、「風力発電所ができたからといって、原子力発電や火力発電の出力を下げたことはない」といっている。理由は、「電力系統全体の1〜2%以下なのでその必要はない。誤差の範囲なのだ。でも今後相当に増えたら調整が必要になる。その場合は揚水発電で吸収すればいいと考えている」ということだった。
 つまり原子力と火力は減らせない。実際、風力発電所が相当に増えた北海道電力や東北電力は、風の強い日には火力発電所の出力を下げずに、風力発電所からの送電を停止している。なぜかと聞いてみると、技術者は「(風力発電は)風によってしょっちゅう変化する。それに合わせて火力発電所の出力を調整するなんてとてもじゃないができない。それより風力発電所の電気を切った方がはるかに安くつく」とはっきりいった。火力の出力を減らしていないので、CO2削減には貢献していない。
 ヨーロッパではどうか。ヨーロッパでは大成功だといわれてきた。ところが2007年のフランスの「持続可能な環境連盟」がEU統計機関ユーロスタットのデータから明らかにした。ドイツは電力全体の4・4%が風力発電だが、CO2排出量は減少せずに1・2%増加した。他のフランス、スペイン、ポルトガルなどみなそうで、デンマークだけが唯一、CO2削減に成功したという統計を出している。
 ただし、デンマークの輸入電力量は倍増している。つまりデンマークは風力発電所でつくった電気を国内では使えておらず、必要な電気は送電線が繋がっている周辺国から輸入している。だから、風力発電の補完のために他の諸国でのCO2排出量を増やしただけだといわれている。ドイツにいわせると「おたく、うちの火力発電の出力を上げただけやろ」、フランスにいわせると「うちの原発があるからあんたはやっていけるんやろ」と、さんざんないわれ方をしている。
 では、風力発電は原発の代わりになるか。そのためには莫大な面積が必要だ。原発1基100万`hだとすると、風力発電は2000`hが500基必要になる。これを一直線に並べると、必要な距離を離したとして200`、また平面に並べると225平方`が必要だ。原発1基分でこれぐらいだ。しかも、傘が差しにくいほどの風が吹いた時間帯だけ発電できるのだ。
 電気というのは同時同量で、使用する量とほぼ同じ量を発電しないと大停電を起こす。それを火力発電所が数分単位で調整している。朝、みなさんが起きて出勤してくる頃から少しずつ出力を上げて、昼休みは少し減らしてまた少し上げて、夕方、仕事が終わるころから減らしていく。風力の場合、朝、風が強く吹き出して、昼は少しやんで、夕方にかけてまた吹いて、夜はやむ、なんてことはしてくれないので、ほぼ無理だ。(つづく)


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