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武田恵世医師の講演 E
風力発電の不都合な真実
                          (2014年7月7日付

 欧州で反対運動が盛ん 先進国のデンマークも

 世界の例を話したい。中国は世界一、風力発電所がある国だ。私の近所に住む中国に工場を持つ社長さんがいうには、中国では午後1時〜3時がよく停電するので、その間は休んでいる、と。午後1時〜3時というとピーク時だ。つまりまともな送電線がないので、風力発電所は多いが、電気はほとんど送れていない。ただ、政府が補助金を出すからどんどんつくっている。
 ヨーロッパでは、風力発電所を増やしたことでCO2を削減できていない。デンマークは成功しているといわれたが、実は人口3000万人で、風力発電所に反対する団体が40ある。長年クリーンエネルギーのモデルだったが、今、風力発電に反対する最初の国になろうとしている。風力発電所に高い賦課金をかけているが、電気を輸入した方がはるかに安い。だから「うちの国は何をしているんだ」ということになっている。
 ドイツでも、原発をやめて再生可能エネルギーを増やしている。結局、電気料金が上がって、メルセデスベンツをはじめ大きな工場がチェコなどの周辺国に工場を移転した。それでチェコではCO2排出量が増えたので、石炭火力発電所を減らして、今度は日本から原発を導入しようとしている。つまりドイツではCO2は減ったけれども、隣のチェコのCO2排出量を増やしている。これはグリーン・パラドックスという現象だ。
 ヨーロッパでは風力発電反対の運動が非常に盛んになってきた。ヨーロッパ市議会の公開書簡を「風力発電に反対するヨーロッパプラットフォーム」が出している。それには「数百もの連合団体・先進団体その他が風力発電に反対している。不安定でコントロール不能な風力発電からの電気は環境問題を解決できない。風力発電は地域住民、経済、国家財政、環境に対する大害悪となるだけである」とある。
 アメリカでは昨年、重要なことがあった。風力発電のコストは天然ガスの3倍。今までは周辺整備費用や送電費を除外していたから、安く見積もっていた。そして、発電の不安定さを補うために火力発電所が低出力で稼働し続けることが必要で、そのための費用が必要になってくる。今年は風力発電に8075億円を余計につぎ込んだ。補助金や送電コストを入れるともっとかかってくる。これに対して風力発電業界は、「補助金は続けてください。ただ六年かけて徐徐に減らしていきます」といった。米国議会が怒って「今後六年間、さらに500億j(5兆円)の補助金を使うというのは、白昼堂堂目抜き通りで銀行強盗をするぐらい厚顔無恥な提案だ」と大反発した。そして「10年かけても独り立ちすることのできない風力発電に血税を投じることを正当化することは難しい」とのべた。これが議会の結論だ。
 オバマ大統領の裁定で、風力発電への補助金をあと1年だけ延長することになった。その先はまた議論されると思う。ということで、今、風力発電と太陽光発電は欧米では下火になっている。補助金は削減され、固定買取価格は下げられている。ブームは去ったということが明らかになった。
 そして風力発電機や太陽光発電の資材が余っている。有名な企業が倒産したり経営難に陥ったりしている。風力発電ではヴェスタスなどがそうだ。このなかで余った資材を買い叩いて日本で売ろうと、商社の動きが活発になっている。今、風力発電と太陽光発電をやっているのは日本と中国ぐらいのものだから。

 手前勝手な環境アセス 事業者側の主張通す

 青山高原ウインドファームの主たる構成員であるシーテックは、中部電力の連結子会社だが、環境影響評価(アセスメント)でいくら立派なことをいっても実行しない。環境影響評価は方法書→準備書→本申請と進むが、この会社は方法書の前に必要な調査を全部終えている。そしてどんな指摘を受けても断じて変えない。健康被害が出ても風車を止めずに、まず自治会長や地主の買収にかかる。土砂崩れや補償にもすぐには対処しない。とにかく風車の数だけ増やそうとする。
 青山高原に増設中の工事だが、シーテックは「希少な生物は速やかに周辺に移動する」「希少な植物は可能な限り移植」「自然景観は風力発電機で調和がとれてよくなる」「したがって自然環境への影響はほとんどない」といっている。三重県知事は30項目ほど指摘したが、シーテックはこれを無視した。ところが県もこれを不問に付した。環境アセスメント制度というのは、あくまで事業者が自主的におこなうものだから県は助言しかできないという。自分で問題をつくって自分で答えるテストみたいなものだ。
 影響がないというから、私は影響を徹底的に調べた。すると非常にたくさんの野鳥が減っていた。「速やかに周辺に移動する」というので周辺も調べたが、増えていなかった。移動はしたんだろうが絶滅したということだ。つまり「影響はほとんどない」ではなく「影響は大である」。
 植物についても、黙っていたら「影響はなかった」というから調べた。確かに移植はしたが、ほとんど枯れてしまっている。大木も切っているし、湿原も破壊しており、影響はきわめて大きいことが明らかになった。
 環境アセスメントというのは、方法書をつくって調査や評価の方法を決めて、事務所をつくって調査をして評価書をつくり、そして事後調査で確認するのだが、実はこれ全部お手盛りなのだ。事業者が自主的におこなうものに過ぎず、強制力も罰則もない環境アセスメント制度は、事業者が無視すれば機能しない。これが現実だ。
 もう一つ、最近大きな問題になっているのは風車の撤去費用だ。中型機(750`h)でだいたい8000万円が要る。輸送と跡地整地を入れるとだいたい1億円くらいになる。4000`hだと単純にその4倍にはならないだろうが、莫大な額がかかる。事業者に資力がない場合は県の負担になる。事業者がとんずらした場合はもっと大変だ。    (つづく)

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