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行き詰まる原発の尻拭いで自滅
WHを傘下においた東芝
対米従属の根深さを暴露 
                    2017年1月11日付
 
  日本有数の原子炉メーカーである東芝が、原子力発電事業で数千億円もの損失を抱えこみ、企業としての存亡の淵に立たされている。その発端は、元をたどればアメリカの巨大原子炉メーカーであるウェスチングハウス(WH)を2006年に傘下に置いたところから始まっている。2011年の福島原発事故を契機に、世界的には原発からの撤退がすう勢となっている。ところが福島原発事故の当事者である日本が、原発再稼働を強行し、なお世界各国への原発売り込みに奔走し、原発推進の露払い役を買って出るという異常な姿をさらしている。原子炉メーカーである東芝も福島事故の後、安倍政府と一蓮托生で原発輸出ビジネスに走り回り、「原発事業にまだまだ展望はある」と事業展開をはかってきた。行き詰った原発事業の現実を覆い隠すために「粉飾決算」にも手を染めてきたが、そうした手練手管では切り抜けることはできず、昨年末の大規模損失の発表に至った。ここで注目すべきことは、大規模損失がWHがらみの原発事業にかかわって発生していることであり、世界的に行き詰る原発事業の損失の尻拭いを東芝が押し付けられ、企業生命にもかかわる危機に立っていることである。対米従属の原子力政策の末路ともいえる実態が浮き彫りになっている。

 企業生命奪われても物言えず

 東芝は2006年にWHを買収して傘下に置いた。傘下に置いたとはいっても、実質的には東芝がWHに吸収されたも同然で、東芝の生産ラインを使って原子炉を製造し、それを世界各国に輸出させることで、WHに特許収入が入る仕組みになっている。
 日本の原発技術はすべてアメリカが握っている。WHやGE(ゼネラルエレクトリック)などが原発の中核技術を持ち、日本の東芝や日立はメンテナンスなど原子力周辺技術を持つだけである。また、日米原子力協定によって、原子力政策の要をアメリカが抑えており、アメリカから輸入したウラン燃料を燃やして発生した使用済み核燃料の処分についてもアメリカの支配下に置かれている。
 2006年、東芝は相場の3倍以上の約6400億円でWHを買収した。実体価値は2000億円ほどで、その他はのれん代などが4000億円とされている。のれん代とは、ノウハウや顧客との関係など、無形の固定資産のことで、買収企業の「見えない価値」への投資であり、他者からは「高すぎる買い物」と評されていた。アメリカでは1979年のスリーマイル島原発事故(炉心溶融)により新規の原発建設は凍結状態であり、WHの経営も悪化し、イギリス企業に身売りしていた。東芝はこのWHを相場の3倍もの値段をつけて買収した。どこから見ても過大評価の値段であり、原子力部門で不振に陥ったWHに貢いだものであった。
 その後もWHは東芝に持ち株増を迫り、当初77%だった持ち株が87%にまで膨らんでいる。東芝は2006年以来、一貫してWH株の売却先を探しているが、引き受け手が見つからないのが現状である。市場から有望な事業と見なされれば、買い手がつくのはさほど困難なことではないが、原子力事業の衰退のなかで、東芝は紙切れ同然となったWH株をつかまされたことになる。
 さらに今回発覚した大規模損失は、WHが一昨年買収した原発サービス会社にともなうもので、東芝の減損は数千億規模にのぼる可能性がある。しかも巨額ののれん代を払ってWHを買収したのちものれん代の計上は急膨張している。2006年度の計上額は7467億円で前年の6・5倍に急増し、2014年には1兆1538億円ののれん代が計上された。仮に全額を一括償却すれば東芝の株主資本(1兆4246億円)が吹き飛ぶ規模であり、WH買収が東芝の屋台骨を揺るがす事態にいたっている。WHにしてみれば、原発事業衰退のなかで東芝の資産を食い潰して生き残っている仕掛けである。

 世界は原発撤退が趨勢 推進に奔走する異常

 WH買収を実行したのは東芝の佐々木則夫元社長で、09年には「原子力事業で売上高1兆円」を目標に掲げた。06年には経産省が「原子力計画」を発表し、「既存原発の60年間運転、2030年以降も原発依存度30~40%維持、核燃料サイクルの推進、原発輸出を官民一体でおこなう」と発表しており、東芝もWH買収の06年の原発ビジネス約2000億円から2015年には約7000億円、2020年には約9000億円に拡大すると計画した。
 だが2011年の福島原発事故で世界のすう勢は原発撤退に転換した。そのなかでも佐々木氏は「原発市場は縮小というより増えるのではないか」として、原発の海外輸出を推進することを表明した。12年に安倍政府が誕生すると同氏は産業競争力会議の民間議員や経済再生諮問会議の民間委員などに就任し、翌13年、安倍首相がUAE、トルコなどを訪問し原子力協定を締結したさいには同行し、東芝の原発を売り込んだ。
 福島原発事故の反省などまったくなく、直後から安倍政府も東芝も原発輸出に奔走するという異常さである。そこにはアメリカの意向が強力に働いていた。当時の民主党野田政府は「2030年までに原発ゼロ」の方針を閣議決定しようとしていたが、アメリカからストップがかかって方針転換した。安倍政府はその後2015年に、2030年度の電源構成として「老朽原発の稼働延長を前提に原子力の比率を20~22%」とするなど、福島事故以前と変わらない原子力政策をうち出し、老朽原発を含めた原発再稼働を強行し、核燃料サイクルを維持し、原発輸出に乗り出している。そこに東芝も乗って、福島事故後も原発事業の積極的な推進を掲げてきた。
 だが、世界のすう勢は東京電力が起こしたGE製造の福島原発事故を教訓にして明確に原発からの撤退に進んでいる。
 1980年代には世界の原発プラントを製造するおもなメーカーは欧州に4社、アメリカに4社、日本に3社があったが、福島原発事故の影響などから現在では撤退や再編が進み、WH・東芝、GE・日立、アレバ・三菱、ロスアトム(ロシア)の4グループ体制になっている。アメリカの単独メーカーは消滅し、日本がその肩代わりをして利益だけをアメリカが吸い上げる体制にかわっている。
 欧州のメーカーも次次に姿を消している。ドイツのシーメンス社は2009年に本格的に原発事業に乗り出すために、ロシアのロスアトムと合併会社設立の覚書まで交わしたが、2011年に計画を撤廃した。福島原発事故を機にドイツ政府が2022年までに脱原発を実行することを宣言したことが引き金となっている。シーメンス社は「原発事業は収益が望めないと判断した。将来的にも原発の主要な技術にはかかわらない」としている。原発大国フランスでも、世界最大級の原子力大手アレバが2014年12月期に48億(約6170億円)の最終赤字を計上して事実上破たんした。現在では1兆円をこえる累積赤字を抱え、その尻拭いに三菱重工は巨額出資を求められている。
 また、昨年ベトナム政府は日本とロシアの企業が受注予定であった2基の原発計画を白紙撤回し、台湾政府も昨年、2025年までに原発ゼロを実現することを閣議決定している。
 今年に入ってからは、アメリカのニューヨーク州で原発2基を2021年までに運転を停止し廃炉にすることを決定した。廃炉になるのはニューヨーク市近郊にあるインディアンポイント原発2号機、3号機。1970年代なかばに営業運転を始め、全米でもっとも人口が密集するニューヨーク市から約40㌔にあり、これまでに火災や放射性物質を含んだ水漏れ事故などがあいついで、安全性の問題が指摘されてきた。原発を所有する電力会社は「原発を維持するコストは上がり、採算性が悪化している」ために廃炉に合意したと説明している。
 また、東芝の大規模損失の引き金を引いたのは、アメリカ・テキサス州で手がけていた原発建設の頓挫であった。正式名称は「サウス・テキサス・プロジェクト」で、米電力大手NRGエナジーがテキサス州ヒューストン市近郊に3号機と4号機を増設する計画であり、2008年3月に東芝が受注した。建設費は100億㌦(約8000億円、当時)で2015~16年の運転開始をめざしていたが、この計画も2011年の福島原発事故を契機に頓挫した。
 また、三菱が受注したアメリカ・カリフォルニア州のサンオノフレ原発も、2012年1月に配管破損事故で原子炉が緊急停止したことで、米原子力規制委員会は2基を稼働禁止とした。同時に原子炉を納入した三菱に75億7000万㌦(約9300億円)の賠償金を要求する訴訟が起こされている。

 米核戦略への従属が根 国益投げ捨てる政府

 福島原発事故は、アメリカのスリーマイル島原発事故や旧ソ連のチェルノブイリ原発事故を上回る原発史上最悪といえる事故であり、それだけに世界中で原発撤退が大勢になっている。ところが事故を起こした当の日本で、事故の反省もなく、誰も責任を問われることなく、アメリカの意向を第一にして原発再稼働を強行し、原発輸出ビジネスに拍車をかけている。
 この異常さは、日本の原子力政策が、原爆投下によって日本を単独占領したアメリカの必要から持ち込まれたものであるところからきている。原発はアメリカの原爆製造過程から生まれた技術であり、核兵器製造と直結している。そのためアメリカは日米原子力協定によって日本を縛り、日本をアメリカの核戦略のもとにがっちりとくみ込み、アメリカの意向に反する政策はとれない仕掛けを講じた。それは使いものにならない高速増殖炉もんじゅを年間200億円もかけて20年以上も維持し、もんじゅを廃炉にしたのちもめどのない新たな高速炉計画を立てて核燃料サイクル計画をしゃにむに継続する異常さにも貫かれている。
 世界の大勢に逆らう原発推進政策のために日本の原子炉メーカーがアメリカの原子炉メーカーの負債をみな肩代わりさせられ、企業生命を奪われかねないところに追い込まれてなお決別すらできない。日本の独占企業がいかに対米従属の鎖に縛られているかを暴露している。
 本来ならもっとも原発災害で痛い目にあっている当事国として撤退することが妥当であるにもかかわらず、後は野となれで再稼働を強行し、企業としても自滅するという信じがたい事態が進行している。原子炉メーカーだけでなく、東電といっても事故の補償はみな国民負担に貼り替え企業経営としては既に破たんしているに等しい。しかし、それでもなお再稼働を強行する異様さである。国民の生命や安全、あるいは電気の心配から原発を推進しているのではなく、アメリカの核戦略の一翼を担わされていることがすべての根源であることを暴露している。

 

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