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医療を受けさせぬ後進国化
                 病院追い出しや医師不足も     2007年11月16日付

 小泉改革による高齢者医療の切り捨てが来年4月から全面施行する。アメリカの構造改革要求に従う市場原理による医療政策で、国民皆保険制度を崩壊させ、産科、小児科はじめ内科、外科の医師不足を招き、病院から行き場のない高齢患者を追い出すなど、国民がまともに医療を受けられなくしていることへ、批判世論が高まっている。一方、アメリカが営利医療の市場を広げるために迫っている「保険のきかない高度集中医療と保険医療の混合診療全面解禁」では、東京地裁が「混合診療禁止」を違法とする判決を下し、アメリカの「改革」要求の後押しとの猛反発が起こっている。

 高齢者医療も全面切り捨て 来年4月
 下関市立中央病院の待合ロビーで、母親の受診に同伴してきた50代後半の男性は、堺市の総合病院が糖尿病で全盲の長期入院患者の引きとり手がなく、公園に置き去りにした問題をとりあげ、「病院職員だけを責められない。高齢の長期入院患者を路頭に放り出しているのは政府だ」と開口1番。
 ついで、「私は自分の両親と妻の両親の4人の高齢者を抱えている。今、政府は2011年に向けて療養病床をどんどん廃止し、高齢患者を追い出し、受け入れる条件のない家族も多く、いたるところで途方にくれている。戦中、戦後と社会をつくってきた人人の老後保障は国策ではないか。アメリカのいうままに血税を使い、日本の先達たちを姥捨てするなど許されることではない」と語気強く語った。
 小泉―安倍と強行してきた医療制度改革関連法の施行は、「枯木に水をやる必要はない」とばかりに高齢者医療の徹底した切り捨てをおこなっている。その1つが、38万床あった長期療養のための療養型病床を、6割、23万床廃止する方針である。
 政府・厚生労働省は2011年までの実施に向けて、療養型病床を持つ全国の病院に対し、平均空ベッド数や看護師、介護職員の人員を調べ、空ベッドの廃止、看護師・介護職員数の規定に見合わないベッド数の廃止を指示している。
 政府の「医療費・介護費削減ありき」の政策によって、現在、医師だけでなく看護師、介護職員不足も深刻で、配置定数を確保できない病院は、2011年を待たずに病床廃止に追いこまれ、患者追い出しを迫られている。

 産科に続いて内科や外科も 医師は年年減少
 市場原理による医療政策は、出生率の低下、少子化のもとで、産科・小児科を成り立たないものにし、効率化の名で担当医師は当直勤務の翌日も通常勤務が連続する過酷な労働を強いられている。一方、「司法改革」の名によるアメリカ型訴訟社会の押しつけで、医師と患者の信頼関係は崩され、成功しなければすぐ訴訟という事態が広がっている。
 産科医・小児科医の不足は決定的となり、周産期救急医療は機能不全、妊婦や新生児の悲劇的な死亡があいついでいる。昨年4月以降、産科医不足から出産の取りあつかいを休止した病院が、全国で127カ所にのぼり、この1年半で出産を取りあつかう病院が1割も減っている。
 産科の休止は、地域医療の中核を担う総合病院にも広がり、「お産の空白地域」が増大している。山口県防府地域では、お産を取りあつかう医療機関がなくなり、周産期救急の専門病院である県立総合医療センターに妊婦が集中して、勤務医の激務にさらに拍車がかかっている。このような事態は全国に広がっている。
 日本の母親たちは、子どもを産もうにもお産できる医療機関が住む市や町になく、安心して産むこともできず、救急対応が必要な出産では危険に直面せざるをえない事態となっている。
 アメリカ型市場原理社会の押しつけ、これに従属する日本の財界と政府の売国政治は、日本社会の全分野を破壊しているが、医療もその重要な1分野である。産科、小児科だけでなく、内科、脳神経外科、心臓外科など人の命にかかわる診療科の医師は年年減少している。このため各地の総合病院で、内科、外科の専門診療科の休止もあいついでいる。日本国民は、まともな医療を受ける医療機関さえ失いつつある。
 福田政府は、「医療費削減ありき」の政策の枠内で、開業医の初診料・再診料を引き下げ、夜間・休日診療に配分するといっている。これは地域で夜間・休日に当番医制を組んでいるベテランの内科・小児科医の廃院をもたらす。これは現在、それぞれの地域で保たれている救急体制も崩す。
 それぞれの地域で、夜間・休日の急病で、国民はかけこむ医療機関もなくなる危機が、早晩おとずれようとしている。
 政府はマスメディアを動員して、「急病でもないのに夜間診療を受ける」と、国民の側が悪いかのようにキャンペーンをはっている。だが、これは市場原理による労働改革で、パート、アルバイト、派遣・請負などの非正規雇用を、空前に増大させ、働く人人の3人に1人は非正規雇用という現実の反映である。
 パート、アルバイト、派遣などを2つ、3つ掛け持ちで生活のために働いている人人にとって、病気になっても昼間休んで医者にかかることができなくなっている。病院の勤務医A氏は「市場原理による社会のゆがみは、すべて連動している。この事態を直視して、アメリカいいなりを一掃すべきだ」と強調する。

 病院行かず手遅れの患者増 負担増が影響
 医療改悪による患者負担増は、国民が医療を受ける権利を経済的に奪っている。3割負担はすでに限度をこえており、風邪や単なる腹痛と思って医療機関に行かず、重症化するケースは激増している。
 とくに、がんなどの重病では、窓口で払わなければならない3割負担は10数万円となり、3カ月後となる高額療養費制度の払い戻しまで待てず、日常の生活のために抗がん剤治療を断念するケースも増えている。
 国民は、がん手術後、必要な抗がん剤治療もままならず、がんの再発の危険性を覚悟で、抗がん剤治療の継続を断念している。
 下関市内の急性期総合病院で、がんとの診断を受けたが入院手術する経済的めどがなく、手術を断った中小企業の従業員が、次に来院したときはすでに末期で死を選ぶことになった悲劇もある。
 アメリカ型市場原理に従属する社会では、これも「自己責任」で片付けられている。
 小泉―安倍の医療制度改革関連法の強行で、七五歳以上の全国民を対象とする後期高齢者医療制度が来年4月スタートする。75歳以上の全員から保険料を徴収するが、その額は現行の国民健康保険料よりも大幅に高い。これを年金から、有無をいわさず天引きする。その国をつくってきた高齢者から、このように保険料をむしりとる国はどこにもない。
 さらに、後期高齢者への医療供給は、「定額制にする」としている。制度発足の当初は、ある程度の医療を供給するように見せかける。だが、制度がスタートしてしまうと、「定額制」で医療費をしめあげ、徹底して低医療しか提供しないものにすることは目に見えている。
 後期高齢者医療制度を現行の国民皆保険から切り離し、「独立した制度にする」という狙いはここにある。

 日本医療食い物にする米国 新市場として狙う
 一方アメリカは日本の医療市場を新たな投資市場として狙っている。アメリカ型市場原理による医療改革はこの地盤づくりである。金融大改革の一環として押しつけた保険市場の自由化で国民皆保険でなじみのなかった民間医療保険の分野で先行、いまやアメリカン・ファミリー、アリコなどが、日本の民間医療保険分野を席けんしている。
 アメリカが要求する株式会社の病院経営全面自由化、保険医療と保険のきかない高度集中医療との「混合診療全面解禁」は、金のある階層、民間医療保険加入者を対象にボロもうけする市場を手にしようとするものである。
 さらにアメリカは新鋭医薬、新鋭医療機器の自由化を要求。保険外で高額の先進医療を売ってボロもうけを狙っている。「混合診療全面解禁」は基本的な入院費などを皆保険でまかない、これら高額の先進医療を売りこみやすくしようというものである。
 これが、医療分野での貧富格差を空前に広げ、金のないものは「無保険状態」と同じような低医療しか受けられなくするものである。
 医療を全国民に平等に保障し、社会的に保障する「医療の社会化」は、いまや日本社会の重要な課題となっている。日本の総医療費は、OECD(経済協力開発機構)加盟の30カ国中で、国内総生産(GDP)比21位ときわめて少ない。この低医療政策のもとで、人口比に占める医師数も同27位と最下位寸前。医師不足が深刻化している実情を示している。
 医師、看護師をはじめとする医療界と、労働者、勤労人民を中心とする国民が結束し、国民のための医療をとり戻す全国民的な大衆運動を起こし、福田政府に実行させることが求められている。国民世論が高まっているように、「アメリカいいなりに金を出すことをやめ、国民の健康と生命を守るために金を使わせるべき」である。
 患者負担を軽減し医師、看護師を十分に増やし国民皆保険がまともに機能するようにして、「医療の社会化」に向けて改革をたたかいとることが課題となっている。

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