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医者にもかかれぬ政治に憤激
                療養病床廃止で社会崩す    2008年12月17日付

 療養病床の6割削減が大きな社会問題となっている。山口県・二井関成知事は、小泉改革で政府がうち出した計画どおりに、医療用・介護用あわせて1万700床あった療養病床を、2011年度末までに介護用を全廃し、医療用も4153床を残すのみとする計画を立て国に報告している。実に6547床・61%もの廃止である。身寄りのない90代の患者が退院を迫られ、失業した息子が親を引きとらされるなど、財界と政府・行政の「小さな政府」を掲げた際限ない医療切り捨てに怒りの声が噴き上がっている。
 下関市内の急性期総合病院の医師A氏は、「がんセンターで、手術を受けた患者がすぐ追い出される。がん診断で治る見込みのない患者は即追い出しである。回復期治療を受ける療養型病床はない。治る見込みのないがん患者も、都合よくすぐ死ねるわけではない。まさに地獄だ」と憤りを込めて語る。
 続けて、「日本を担って立つ政治家は1人もいない。レーガン、サッチャー、中曽根が“小さな政府”を掲げ小泉・竹中の“聖域なき改革”で拍車をかけた。利潤効率一点張りの市場原理で、国民のために使うべき金をしぼり上げばく大な資金をカジノ経済に回して、全世界で破産した。財界と政府は反省もなく同じ道を突っ走り、国民に犠牲を押しつけ、医療切り捨てを強行している。人間社会の敵である。明治維新のように、この社会は変えるほかない」と強調した。
 下関市内の療養病床に入院する90代の婦人は身寄りはなく、かつての同僚が世話をしてきた。ところが病院からの退院を迫られる通告が、せっぱつまったものとなっている。だが、特別養護老人ホームも、老人保健施設も、入所待機者であふれており、1、2年で入所できる見込みはない。元同僚は途方にくれている。
 下関では、三井金属の子会社エム・シー・エスの大量首切りをはじめ、神鋼、ブリヂストン、三菱など大企業の首切りがまかり通っている。失業した息子が療養病床に入院していた親を引きとらされている。生活上も医療上も、大きな困難に直面、たたかって生きるほかない状況となっている。
 下関市内の療養病床を持つB病院では、「療養病床廃止は阻止しなければ地域社会は崩れる。患者の追い出しは、6割もの大量廃止と、医療機関を療養病床廃止に追い込むための診療報酬引き下げの両面からきている。とくに山口県は政府のいいなりで、これほど大幅な削減は他県にはない。急性期病院で手術後の回復期医療の受皿である療養病床は絶対にいる。医療界あげての反対運動が必要だ」と語る。

 山口県は61%削減画策 療 養 病 床
 山口県内の療養病床を持つ109医療機関の意向は、全療養病床の3分の2にあたる6336床を残すとしている。
 A病院では、「国も県も6割もの療養病床を廃止し転換型老人保健施設をつくるとしているが、県内では転換型老人保健施設整備はまったく進んでいない。受け皿もないままに、療養病床廃止をやらせている。“医療難民”“介護難民”といわれるが、元気なものが難を避けるのとはわけがちがう。全国で心中、自殺、親殺しの悲劇が起こっているではないか。かつて、“人が死ぬまで国も行政もなにもしない”といわれたが、いまや人が死んでもなにもしない。国民の生活や生命を司る責任も、能力もなにもないのか」と、だんだん語気が強まってきた。
 山口県・二井知事は、療養病床61%もの削減計画を出すにあたり、委員会を設置して隠れみのにしたが、療養医療現場の意見は聞いたことがない。小泉・竹中による“聖域なき改革”を忠実に実行している。このために、山口県内の産科医、小児科医、麻酔科医などは、中国地方五県で一番少ない。「療養病床の廃止」は、東京都で産科救急のたらい回しで妊婦が死亡した悲劇と同じように、手術など急性期医療を終えた患者のたらい回しとなり、受皿がなければ命を縮める悲劇を生むことは必至である。
 国・県は、転換型老人保健施設を整備して、療養病床の患者を移すといっている。だが、転換型老人保健施設は準看護師の配置でよいとしている。正看護師でなければ患者への注射もできない。このため、医療事故が続発することが危惧(ぐ)されている。
 A医師も、B病院も、「国民皆保険のもとで医療は聖域であったが、新自由主義を叫ぶ市場原理による“聖域なき構造改革”で、医療を崩壊させて、働く人人は食っていけず、医療も受けられなくしている。アメリカ発金融危機が全世界に広がって、実体経済が危機に陥って破産しているのに、この道を突っ走ろうとしている。この世の中、もうひっくり返すしかない」と強調する。
 療養病床廃止の計画に対し、日本医師会・唐沢会長は「(国の計画では)2012年には11万人の“医療難民”が生まれる」と警告、深刻化する医師不足の本質的要因は「医療費抑制策」であり、「社会保障費の削減は生命の安全保障を崩壊させている」(9月16日、一橋大での基調講演)と訴えた。
 国民皆保険の理念を踏みにじり、構造改革で働いても食えないようにした悪政を棚に上げ、高い国保料が払えない世帯から、保険証とりあげを義務化した。このため、全国で保険証のない世帯が35万世帯を突破。無保険状態の中学生以下の子どもが3万3000人もいることが判明した。これらの子どもが、学校集団検診で治療を指示されても医者にかかれず、病気になっても医療を受けられなかったことはもとよりである。
 保険証をとりあげられ、病院窓口で医療費全額を支払わなければならない「資格証明書」や短期保険証を交付され、手遅れで死に追い込まれるケースは後を断たない。この3年間で16府県で29人が死亡した。これは、直接手を下さない殺人にほかならない。

 妊婦や新生児の死亡も 医師不足で多発
 医師不足、集中治療室の不足から、産科救急、小児科・新生児科救急でのたらい回しで、妊婦や新生児が死亡するケースも続発している。一般救急搬送では2007年1年間で3回以上受け入れを断られたケースが2万4000件をこえた。
 「不採算」による自治体病院の統合・縮小、売却で、総合病院のない空白地域が全国各地に生まれている。2000年から05年までの5年間だけで300病院がなくなっている。その後さらに市町村合併で減少に拍車がかかっている。山口県でも、山陽小野田市の山陽市民病院がなくなった。
 B病院では、「テレビの国会中継を見ていると茶番をやっている与・野党議員にむかついてくる。トヨタをはじめとする自動車大手、キヤノンや電機大手、下関の三井金属子会社エム・シー・エスと、まるで物のように大量首切りをやっている。家族持ちの労働者が社宅アパートを追い出されている。療養病床から出された親を引きとるどころの話ではない。自分が住居を失っているのだ。沖縄や北海道から働きに来た労働者は、郷里に帰る旅費もあやうい。正月もホームレスか、という話を聞く。国民は食えなくさせられ、医療もまともに受けられず、健康も命も危うくさせられている。のうのうと生きている政治家を見ていると、与・野党を問わず、飛びかかって行きたい衝動にかられる。だが、幕末に水戸藩がやったテロでは世の中は変わらなかった。悪い政治家を何人殺してもだめだ。高杉晋作と長州諸隊が実力で幕府を倒し、欧米列強の植民地支配を排して近代日本をつくったような革命が必要だ。いまや真剣に考えるときにきている」と強調した。
 A医師は、「国民は、大量に首を切られ、生活も困難で医療もまともに受けられない。なにが1人1万2000円の給付金か。何兆円も溜めこんでいる大企業に好き勝手に首を切らすな。麻生は三年後に消費税を増税するといっている。なぜ大企業から税金をとり、アメリカに金を出すことをやめないのか。アメリカ発金融危機で、日本国民にこれほど塗炭の苦しみを押しつけ、アメリカいいなりを続ける輩はアメリカに帰れ。新自由主義は日本にはいらない。農漁業を守って自給率を高めるべきだ」と語気強く語る。
 A医師は最後に「『動けば雷電の如く』を見たが、主人公はまさに働く国民だ。働く者がいなければ、トヨタも自動車は1台もつくれない。市場原理による利潤効率一点張りで医療はもとより、社会が崩壊している。明治維新のような革命が近づいていると思う」と重厚な面持ちで語った。

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