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医者にかかれぬ自己責任社会
下関・安倍社会保障改革 
              病院代払えず重篤化    2013年10月30日付

 下関市内で、現役の労働者も高齢者も子どもも、医者にかかれない人が増えている。戦後「豊かになった」といわれた日本はいまや貧困大国になり、貧乏なために満足な医療も受けられず死んでいく状態が広がっている。そして安倍内閣は、「社会保障のため」と国民をだまして消費税を引き上げ、その税収は大企業やアメリカに垂れ流したあげく、今の国会に社会保障そのものを切り捨てるプログラム法案を提出しており、事態の悪化に一層拍車をかけようとしている。国民の健康と生命を守ることを使命とする医療を、金もうけを目的とするものに変え、貧乏人を締め出す医療切り捨て政治を実行しているのである。これを根本的に改めさせ、空前の利益を上げる大企業の内部留保など吐き出させて、医療を社会的に保障させることが待ったなしの課題となっている。
 
 国民の医療を公的に保障せよ

 下関市で15日、ゴトウ第一交通に勤務している67歳のタクシー運転手が、停車しているタクシーの車内で運転席にもたれかかったまま亡くなっているのが発見され、同僚や他社の運転手仲間が衝撃を受けている。死因は心筋梗塞だったが、以前から心臓が悪く、同僚が強く勧めてやっと医者に行ったことが語られる。
 タクシーの職場は、最低賃金もないオール歩合制で、売上を伸ばそうと思えば長時間働くしかなく、加えて近年は下関の経済が衰退してお客も激減しており、無理がたたって身体を壊していく労働者が増えている。しかし、社会保険があるとはいえ、月月10万円に満たない手取りでは医療費の本人負担分の3割が払えないため、病院に行かない労働者が多いのも共通している。
 ある運転手は、「熱が出ても自然に下がるのを待っている。以前、バイクで転んで傷を負ったが、医者に行けばカネがかかるので放っておいた。すると化膿して腫れあがったので、あわてて病院に駆け込んだ。医療費よりも食べていくことで精一杯」という。
 別の運転手は、60代の同僚がこの秋、糖尿病で亡くなったという。「それまで病院嫌いで、具合が悪くても仕事に出てきていた。仲間が“病院に行かないとお前は死ぬぞ”と何度も何度もいって、ようやく病院にいったところ、糖尿病が悪化しているのがわかり、本人は驚いて、会社を辞めて運動を始めた。道を歩いているのをよく見かけていた。ところが、まだ秋の暑い時期、アパートで一人で死んでいた。本人は本当に生きたかったのだと思う」とのべた。
 タクシーの運転手は、離婚して1人暮らしの人も多く、体調管理もままならず、病院にいかないまま重症化して、孤独のまま亡くなるケースが多いという。それにみなが「明日はわが身」と悔しい思いを抱えている。
 小泉改革の規制緩和で台数が激増したもとで、タクシー会社がいかに労働者を搾りあげているかであり、同時に政府がいかに国民の医療を切り捨ててきたかである。60代の運転手は「保険に入りながらも医療費が払えない者がこんなにいる」と訴えるとともに、「これからはタクシー運転手のような人が増えていくのではないか」と国の行く末を心配していた。

 年金少く衣食住に困る

 下関市内の高齢者のなかでは、年金が引き下げられる一方で、有無をいわさず天引きされる後期高齢者医療保険料や介護保険料は上がり、食料品などの物価も高騰し、そのうえ来年4月からは消費税率が8%に引き上げられることに、「安倍さんたち政治家は、自分たちだけいい暮らしをして“景気回復”といっているが、どこにそんなことがあるのか」と憤りを語っている。そのなかで医療費の負担は大きく、医者に行かない人が増えている。
 70代後半のある婦人は、先日インフルエンザの予防接種(1260円)をし、持病の薬代とあわせて1割負担で約4000円を支払った。その前の肺炎球菌の予防接種でも数千円とられた。高齢者は一つの病院だけではなく、いろいろかけ持ちしているが、「これではとうてい病院にかかることはできない」という。
 その婦人は、「5万円程度の年金では、生活を維持するための衣食住にも困るほどだ。私などもう新しい服は買えない。市営住宅の家賃が払えない人もいる」といい、「昔、池田勇人が“貧乏人は麦を食え”とひどいことをいったが、まだ国民を生かそうとしていた。最近、麻生副総理は“(終末医療で)さっさと死ねるようにせよ”といった。それを実生活で実感している」と語った。
 71歳になる今も2つの仕事をかけもちで働いている婦人は、20年前、同じ建設会社で働いていた夫を亡くしたとき、自身は健康保険をかけておらず、そのためその後は月3万円程度の年金が出るだけ。夫の会社が倒産しても退職金もなにもなく、現在は早朝3時間、弁当屋で働いて2000円を手にし、午後には時給600円程度で建設の下働きに出ている。
 その婦人は、「今は医者に通うために働いているようなもの」という。長年の労働で痛めた足腰は、整形外科に通ってヒヤルロンサンを注射するのと、痛み止めの座薬をもらい、痛みを忘れるようにして仕事をする。咳が止まらず甲状腺が悪いということで、内科にも通っている。歯や目、耳も悪くなっており、窓口負担が1割のうちに歯だけは治したいと思っていた。
 ところが安倍政府は来年度から、70〜74歳の負担を1割から2割に引き上げようとしており、「こういうのも2割になったらもう行けない。働くのもおしまいになるから病院もおしまいだ。子どもにも頼れる状況ではない。今はなんともいえない世の中だね」といっている。

 通院我慢し入院費20万

 子どもと子どもを持つ親にとっても、医療費は頭が痛い。
 小学生と中学生の子どもを持つある母親は、身体が丈夫な方ではない。あるときカゼをひいたが、パートを休むわけにはいかず、それに医者にかかれば支払いは5000円を下らないと思って我慢して、市販の風邪薬でごまかして仕事を続けていた。
 ところがカゼをこじらせて肺炎になり、入院。そのうえ小学校の子どもにもカゼをうつしてしまった。
 入院中は夫が仕事から早めに帰って、子どもたちにご飯を食べさせていたという。結局、入院費が20万円もかかってしまい、現在分割払いができるように病院側と話しあっている。

 治る前に病院追い出し

 入院した経験のある人のなかでは、入院が長引くと病院から追い出されたという話も多い。
 2カ所のガンの手術で70代の夫を入院させた婦人は、夫が1度目の手術後に肺炎になったため、2度目の手術が延期され、家に連れて帰っても世話ができないので別の病院を紹介してもらった。そして2度目の手術が終わって2週間たつと看護婦の態度がガラリと変わったという。
 「“病院を早く出てくれ”という雰囲気になった。まだ歩けもしないし、下の世話もしないといけないが、家に連れて帰っても介護できない。紹介してもらった別の病院にもう一度入院させてもらえないかと頼んだが、それもできないという。困ってあちこち探し回って、ようやく次の病院を見つけた。病気が治るまで見てくれるのが病院だと思っていたが、ベッドは空いているのに、入院が長引くともうからないから追い出される」。
 医療関係者は、こうした状況が生まれる要因に、2003年に導入されたDPC(診断群分類包括評価)制度があると指摘する。従来の出来高払い方式では、一つ一つの医療行為ごとに料金を設定し、その合計額が診療報酬として国から支払われていた。この下では、医者が1人1人の患者の状態にあわせて試行錯誤しながら、積極的な医療をおこなうこともできた。
 ところが小泉内閣が「治療費が高くなる病院はムダな治療をしている」と宣伝して導入したDPC制度は、治療の内容にかかわらず、病名などで1日当たりの診療報酬が決められており、それ以上の治療をすれば病院の持ち出しとなり、経営が困難になる。それで病院側は在院日数を短縮化し、ベッドの稼働率を高めて収益をあげることにきゅうきゅうとするようになった。
 病気を治して患者や家族に喜ばれることが医療関係者の喜びだが、もうけ第一でそれに相反する在り方になっていることに、疑問が語られている。


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