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意図的な尖閣諸島巡る騒ぎ
再び日中戦争に導く愚かさ
                 アジアとの友好が国益       2012年8月22日付

 尖閣諸島の領有権をめぐって日中間の緊張が強まっている。竹島をめぐる日韓関係、北方領土をめぐる日ロ関係の緊張も同時的にあらわれ、日本周辺にはにわかに緊張が走っている。領土問題をめぐる衝突は国家間の戦争に導く常套手段であり、戦争体験者の警戒は鋭い。とりわけ中国との軍事衝突、戦争は第2次大戦の最大の反省点であり、これを繰り返そうという為政者の愚かさははなはだしいものである。あらわれた諸現象を諸関係と切り離して見るのは大変な間違いを犯すことになる。なぜこのような緊張した事態が起きているのか、諸関係を冷静に見て判断し対応しなければならない。
 
 わざと火種残したアメリカ

 尖閣諸島問題をめぐっては、一昨年中国漁船と保安庁船の衝突問題があり、今年にはアメリカの右翼集団の集まりの場で石原東京都知事が「尖閣諸島を買い上げる」と発言して、挑発に走っていた。それをうけて野田首相は尖閣諸島は国が買い上げると発言し追随していた。
 8月15日、香港の「保釣行動委員会」を名乗る活動家が尖閣諸島の魚釣島に上陸し、14人が沖縄県警に逮捕された。これをメディアが大大的に騒ぎ、一斉に「強硬な措置」を求めるなかで、自民、民主など超党派の国会議員でつくる「日本の領土を守るため行動する議員連盟」(会長・山谷えり子自民党参院議員)が、田母神元航空幕僚長など150人を21隻の船に乗せて尖閣沖へ出航。10人が魚釣島に上陸して日の丸を揚げてみせた。
 香港の「保釣行動委員会」は1970年に米プリンストン大の台湾人留学生らが結成した、アメリカ仕込みの組織である。
 これに対抗する形をとって石原慎太郎や小泉純一郎・安倍晋三などに連なる日本の親米勢力が対立をエスカレートさせており、テレビや大手メディアも中国国内での反日デモや不買運動の映像を連日流して対立を煽っている。
 尖閣諸島周辺の八重山漁協は「これ以上加熱すると尖閣周辺に漁に行きにくくなる。争いの海ではなく両国とも冷静になって安全操業できる状態を保ってほしい」と表明している。米軍に撃沈された疎開船の洋上慰霊祭をした遺族会も「犠牲者が眠る島の平穏を祈る。外交努力で冷静に解決してほしい」とのべている。

 軍事緊張煽る野田政府 大使更迭し挑発人事

 野田政府は「中国とのあいだに領土問題は存在しないから、話し合う必要はない」と公言。また「尖閣防衛」で自衛隊活用を公言し、あえて対立をエスカレートさせている。
 さらに野田政府は丹羽宇一郎中国大使(元伊藤忠商事会長)を更迭した。同大使が石原知事の「尖閣諸島購入」計画について「実行されれば日中関係がきわめて重大な危機に陥る」と批判したからである。そして後任には小泉首相の靖国神社参拝時に中国公使を務め、「一ついわれたら一〇いい返すタイプ」と評される西宮外務審議官をあてた。そして駐米大使、駐韓国大使も総入れ替えするという中国への挑発人事をやっている。
 尖閣諸島をめぐる中国との関係では、72年の日中国交正常化にさいして田中角栄首相と会談した周恩来首相が「小異を残して大同につく」と表明。78年の日中平和友好条約締結をめぐって小平副首相が「われわれの世代に解決の知恵がない問題は次世代で」と表明してきた。尖閣諸島問題は懸案事項として残し、両国の友好関係を優先するのが歴代両政府の対応であった。今回はこのような関係を破るというのである。
 野田政府は「尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理を継続する観点から、総合的に国有化を検討判断していく」(藤村官房長官)と叫び、緊張・対立を激化させていく方向だ。野田首相は「尖閣諸島を含め、領土、領海で周辺国による不法行為が発生した場合は、必要に応じて自衛隊を用いることも含め毅然として対応する」と公言し、前原民主党政調会長はテレビ番組で「実力行使しかない」と息巻いている。

 日本盾にする意図露骨 竹島や北方領土でも

 尖閣諸島は五島のうち、大正島、久場島の2島は今も米軍が射爆場として管理している。石原知事が「買いとる」といい、野田首相が「国有化」方針を決めたのは、米軍管理の2島をのぞく3島だけである。
 尖閣諸島は戦後、沖縄とともにアメリカの占領下におかれ、1972年の「沖縄返還」で尖閣諸島も「日本返還」となった。しかし米ニクソン政府(当時)は「沖縄と一緒に尖閣諸島の施政権は返還するが、主権問題にかんしては立場を表明しない」とした。アメリカ自体が尖閣諸島の日本領有権を認めていないのである。それは日本が中国との関係で領土問題の争いに火種をつくって置いた方がよいという判断であった。
 領土問題をめぐるアメリカの意図は「竹島」問題でも共通している。サンフランシスコ講和条約作成段階では1947年3月草案から1949年11月草案にいたるまで、竹島は日本が放棄する対象とされていた。だがシーボルト駐日政治顧問が日本に「深刻な精神的不利益」を与えるという意見書を国務省に送って、竹島の日本帰属を要求し変更させた。こうして竹島は、最後の段階で講和条約における日本の権利放棄対象から除外された。「韓国」と日本の竹島をめぐる領有権の争いの火種を残そうというアメリカの意図が働いている。
 「北方領土」問題も、サンフランシスコ講和条約で日本が「放棄」に同意した「南千島」に国後と択捉がふくまれるという認識にもとづき、1956年の日ソ交渉では重光外相が「歯舞、色丹の2島返還」で平和条約を締結しようとしていた。だがダレス米国務長官が恫喝して「4島返還」に要求を変えさせ交渉をぶち壊した。これも日本とソ連が領土問題で紛争状態にあることがアメリカに好都合だという判断に基づいている。
 尖閣、竹島、北方領土などの領土問題は戦後、日本がアジア周辺諸国と対立の種を残して、アジア人同士があらそい、アメリカの支配を有利にするという意図が働いてきた結果としてあらわれている。
 今回の尖閣問題騒ぎについてアメリカは「“日米安保条約第五条”の適用対象」(米国務省・ヌランド報道官)、「衝突が避けられないのであれば、米政府は日米安全保障条約に従って、日本を守る」(シュライバー元米国務省次官補)といって日本をたきつけている。だがアメリカは「尖閣諸島」領有権について「中立」の立場を公言しており、実際に武力衝突が起きれば日本が矢面に立ってやることだとして、高見の見物をする構えである。
 またアメリカは「米国とともに地域の偶発的事態に対処する責任範囲を日本は拡大すべきだ」「日本は一流国であり続けるか、二流国に滑り落ちるか決断の時だ」(アーミテージ元国務副長官)と自主対応を露骨に迫っている。アメリカの代理戦争の道である。

 アジア重視戦略と連動 TPP参加も画策

 尖閣諸島を巡る騒ぎは、尖閣諸島における中国漁船衝突と船長逮捕事件、石原知事や野田政府の「購入」「国有化」表明、8・15を前後した上陸騒ぎなどエスカレートする一方となっている。それは南北朝鮮間の緊張とも連動して、アメリカが今年一月に打ち出したアジア重視の「新軍事戦略」としてあらわれている。
 この「新軍事戦略」はアメリカがアフガン・イラク戦争で敗北し、未曾有の経済恐慌で米国家財政が窮地に陥り、米陸上部隊の維持すらできないほど衰弱するなか、対中国戦争をにらみ日本や韓国、フィリピンなどの兵員を前面に立たせ、米軍はハワイやグアム、オーストラリアなど安全な後方に下げるものだ。中国の核ミサイル攻撃が届く九州、沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線のなかから米軍を外に移動させ、アメリカは通信ネットワークや精密誘導弾などを駆使した「遠隔誘導戦争」をやる作戦である。
 対中国戦争態勢は米軍再編、岩国基地増強やオスプレイの配備強行、辺野古への新基地建設としても連動してあらわれている。米軍基地や米海軍が自由使用をもくろむ港湾を結ぶ巨大道路建設もそれに連動している。
 これはまた世界的な大恐慌が深刻化するなかでの、成長するアジア市場を奪いとろうという経済政策に連動している。アメリカが持ち出しているTPPは、アジア・太平洋で日本を中心とするアメリカの経済ブロック化をすすめ、中国と対抗して圧力をかけ、支配下に置こうというものである。中国との経済関係が強まっている日本経済であり、中国・アジア諸国との友好関係が日本の発展の道であることは明らかである。しかしその関係を破壊してアメリカの意図に従って日本の富を根こそぎアメリカに差し出せというものである。最近発表された米有識者提言は、日本のTPP参加を「アメリカの戦略目標」と位置づけ、アメリカの国益であることを隠そうともせずに日本の早急な参加表明を迫っている。
 中国市場を奪い植民地化することは百数十年にわたるアメリカ支配層の野望である。かつての第2次大戦で、中国全面侵略をやって中国人民の抗日戦争にうち負かされ、そのなかで革命を恐れる日本の売国反動派を助けて目下の同盟者に仕立てて日本の単独占領をやり、植民地支配してきたアメリカが、またも日本をアメリカの中国市場略奪の「代理戦争」の矢面に立たせようとしている。これは戦前以上の破滅の道であり、愚かな道であることはだれもがわかることである。
 石原や野田らが「なめられてはならぬ」といかにも民族派のような顔をして意気込んでいるが、かれらこそアメリカになめられ切っている民族裏切り者の姿であることを見逃すわけにはいかない。強いと見なすアメリカにとり入るために、弱いと見なす中国に吠えて点数を稼ぐ、日本民族の風上にも置けないやからといえる。
 日本の平和にとっても繁栄にとっても独立が最大の課題である。民族的な屈辱は戦後六七年にわたってアメリカに侵略支配されているという現実である。そしてこのアメリカからの独立をなしとげる国に対しては、他のどの国も侵略支配などできないのは、世界の厳然たる事実である。
 かつて朝鮮、中国、アジア侵略をひろげて大破たんした経験を持つ日本民族が、今度はアメリカの尻馬に乗ってふたたび中国・アジア諸国との戦争に乗り出すほどみじめで愚かなことはない。


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