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祝島全島が補償金拒否で抗議
超法規の強権はね返す
            総会中止し逃げ帰った県漁協   2013年8月5日付

 上関原発計画にかかわる祝島の漁業補償金受けとり問題をめぐって、2日に山口県漁協本店(下関市)の幹部職員たちが祝島に乗り込み、補償金の配分方法を決定する「総会の部会」を開催すると通知していたが、祝島の漁民や農民、婦人たちなど約150人が抗議行動を繰り広げ、迫力に押された幹部職員らが総会を中止して引き返していった。2008年から2度にわたって「補償金は受けとらない」と決議していたのをその度に蒸し返し、今年2月には水面下で十数人を切り崩した上で無記名投票によって「受けとる」ことを過半数で決め、手続きをゴリ押ししようとしていた。これに対して島全体の怒りが噴き上がり、「30年来貫いてきた反対運動を水の泡にするな!」「福島の二の舞いにするな!」と決起し、全島の結束によって一歩も譲らぬ気概を示した。安倍政府になってから再稼働、原発輸出などを性懲りもなく推進する勢力が“再チャレンジ”を開始し、首相の地元の山口県では新規立地の動きに再び火がついている。この攻勢をはね返して叩きつぶす斗争が全県、全国から注目を浴びている。
 
 全国激励する上関現地の斗い

 2日、祝島では渡船が到着する夕刻の時間帯になると、事情を聞きつけた島の人人が波止場や公民館前に集まりはじめ、4時45分着の定期船「いわい」が来るのを待ち構えた。プラカードや横断幕、幟を持った島民たちは、県漁協の仁保宣誠専務(旧萩市越ヶ浜の漁協参事)ら職員五人が渡船から降りてくるとどっととり囲み、「祝島は補償金を絶対に受けとらない!」「海は絶対に売らない!」「福島の二の舞いにさせるな!」と訴えた。
 また、7月3日付で県漁協宛に5項目にわたる質問状を提出していたが、まともな返答を得ていないと指摘。@「漁業補償金配分基準(案)について」の具体的な内容を明らかにすること、A配分案はどのような方法によって決められたのか、B祝島では配分委員会が組織されていないことについてどのような見解を持っているのか、C107共同漁業権管理委員会を構成している旧八漁協のうち、祝島のように影響補償の対象になった五漁協は、配分についての組合決定をいつ、どのような決議方法(可決割合)でおこなったのか、D予定されている総会の部会ではどのような決議方法(定足数、可決割合)でおこなおうと考えているのか、の五点について改めて返答を求めた。
 これに対して、仁保専務は「公民館に行って総会の場で説明する」と何度も繰り返し、島民側は「原発は漁師だけの問題ではない」「ここで皆の前で説明するべきだ」と強調して問答となった。「さっさと帰れ!」「祝島は何度も拒否を示しているのに何をしに来たのか!」の声が飛び交い、「帰れ!」「帰れ!」のコールが沸き上がるなかで、県漁協職員らは表情をひきつらせながら、五時五分発の下り便に飛び乗って引き返していった。
 総会の部会を開くにあたって、県漁協本店は事前に「不当、不法な方法で委任状を求められたり、本人出席が妨げられるようなことがあった場合」「弁護士や警察に相談するなど適切な対応をとる」と記した「警告」を組合員らに送りつけ、漁師たちが委任状を集める行為を犯罪扱いするなど、恫喝を加えていた。しかし、散散強面で補償金の受けとりを迫ってきた連中が、いざ祝島全島の決起に見舞われるや、囲まれただけで「暴力は振るわないでください」と大騒ぎし、気が動転したような表情で目を白黒させ、恐れおののいて退散していくこととなった。船に乗り込んだ仁保専務は茫然自失で、初めて「祝島の洗礼」を受けて腰が抜けたようになっていたのが印象的だった。
 島内ではこの間、「補償金問題を漁師だけに任せていてはいけない」と大話題になっていた。島のなかで利害関係者となる漁師は53人。それに対して一般住民は400人以上が暮らしている。53人のうちの「過半数」、すなわち30人程度が補償金を受けとりたいがために、血の滲むような献身的な努力によって支えてきた運動を水の泡にできないと、住民のだれもが思いを強めていた。反対を貫いている漁師たちを応援しよう! 抗議行動をしよう! と婦人たちを中心に呼応するように誘い合い、この日の行動となった。県漁協の脅しに対して、漁師だけでなくとりわけ婦人たちが強い憤りを示し、職員が船に乗り込むまで「二度と来るな!」と叫んでいた。

 裏切り乗り越え下から決起 全島の団結に確信

 島民のなかでは「何度来ても追い返すだけ」「結束してたたかってよかった」と興奮冷めやらぬ表情で語られている。これまでさまざまな阻止行動に参加してきたという80代の婦人(農業)は、「2日の行動には途中から参加したが、上陸を阻止して本当によかった」と喜んでいた。「祝島がこれまで何度も補償金受けとりを拒否してきたのに、県漁協は何度も総会を開催してきた。全島民の思いをぶつけることができたし、思い知らせることができたと思う。私は農業をやっているので補償金などは関係がない。ふるさとを守るために30年島の婦人たちと一緒になってがんばってきた。ここで、補償金受けとりを黙って見ているわけにはいかない」と思いをぶつけた。
 別の婦人は、「上関原発は全国も注目していると思う。祝島が受けとり拒否をして原発断念に追い込めば、全国的にも広がっていくと思う。なにより福島があのような状態になっているなかで、原発政策は早く辞めさせなければいけない。ここで補償金を受けとれば必ず国は立地準備を進めてくる。だから今日は阻止して本当によかった。年をとってみんな高齢になったが、なにがあっても私たちは原発を阻止していく」と力強く語っていた。
 漁業者の男性は、県漁協のデタラメなやり方に怒っていた。「やることなすこと無茶苦茶で、追い返されるのは当然だ。祝島の漁業権問題が最大焦点で、漁師が補償金をもらわなければ最終的にこの原発計画は破綻する。最後の決着目指して、全島民で今日のように団結していきたい」と今後を見据えて話していた。
 「体調が悪くて行きたくても行けなかった」という高齢婦人は、「総会がどうなるか気が気でなかったのですぐに親戚に電話したが、皆で追い返したと教えてくれて“よかった”と安堵した」と嬉しそうに語っていた。「祝島がこれまで頑張ってきたことを水の泡にしてはいけない。県漁協や中電、安倍政府などいまだに原発をやろうとする者たちを早く引きずりおろさなくてはいけない」と話していた。
 島民の圧倒的多数は何の見返りを求めるわけでもなく、反対運動を支えるために物心両面で協力してきた。30年の苦労は並大抵のものではない。補償金受けとり、すなわち祝島の漁業権剥奪という最大焦点をめぐって、天王山ともいうべき攻防が繰り広げられているなかで、まさにのるか反るかの土壇場で大衆的な決起によって敵の攻撃を跳ね返し、推進勢力の代理人である県漁協みずから逃げ帰っていくこととなった。今回のような重要な局面で、反対派指導部は右往左往して対応が定まらなかったが、みなが下から突き上げていった。「委任状を集めたらダメだ」「総会をボイコットしても意味がない」などといって、旧指導部が県漁協応援をする姿をみなが見た上での行動となった。反対運動をねじ曲げて敗北に導いていく欺瞞が通用しなくなったことをあらわした。
 この間、金欲しさにかられた者を外側から一人ずつ引っこ抜いて、無記名投票というずるい形で裏切りを迫り、島の暮らしの売り飛ばしをさせるのが県漁協の手口であった。気持ちの悪い疑心暗鬼、人を騙す裏切りになす術がないというのではなく、団結できるすべての島民、全県、全国の世論や運動とつながって力を束ねることこそ力があること、再稼働路線を粉砕する最先端の斗争現場において、反対運動に巣くう有象無象の裏切りやインチキを乗り越え、下からの決起がはじまったことをあらわした。「福島の二の舞いにするな!」「瀬戸内海漁業を守れ!」が祝島では共通認識として語られてきたが、原発が建設された場合に祝島の経済的利害がどうなるかだけでなく、郷土を廃虚にする原発に対して、全県、全国の期待に応えるためにも譲れないという、思いのこもった運動が力強く発展している。
 
 超法規手法が特徴 前代未聞の漁業権強奪 売国政治と対決

 祝島の漁業補償については、これまで表向きは2000年に107共同漁業権管理委員会が妥結した漁業補償交渉を有効扱いし、推進勢力は「祝島がいくら反対しても漁業権問題は決着済み」としてきた。しかし実際には、祝島は漁業権消滅にかかる3分の2同意どころか、中電との補償交渉のテーブルにすらついていない状態で、金を一方的に振り込んで母屋を盗っていくのと変わらないような、デタラメな事態となっている。「補償金を受けとったのだから漁業権消滅に合意した」という前代未聞のこじつけ「同意」で漁業権を剥奪しようとする手法である。
 今年2月に開かれた漁協支店の総会で、無記名で漁業補償金の受け取りを議題にした採決がとられ、反対21、賛成31という結果になっていた。その後、組合員53人のうちの31人が「受け取りません」と改めて拒否する連判状を提出していたが、本店側は無視。本店が補償金の配分額を決め、その案を提示するといって6月末に「総会の部会」を予定していたが、反対派が30人近い委任状をとって回ったのを受けて流会となり、今回は「委任状をとったら警察に相談するぞ」の脅しを一発加えてから上陸しようとしていた。
 補償金の受けとりを執拗に迫るのは、それが完了しなければ漁業権消滅が成立しないからにほかならない。本来なら漁業権放棄はまず総会(正組合員の半分以上の参加で成立)で3分の2の特別議決をあげることが不可欠である。その後に総会でみんなが認めた配分委員たちが意見を聞きながら配分方法を決め、配分額についても全体の承認を得て、最後に各人に書面同意を書かせ、カネを振り込んで完了というのが水協法で定められた通常の手続きだ。
 ところが祝島を巡っては、法律もなにもかも無視してカネを握らせ、文句をいわせないようにして最後に漁業権放棄の総会なり書面同意を書かせようという、聞いたこともないような順序になっている。漁業補償交渉の実体もなければ、同意もない。無記名の過半数採決一つで「補償金受けとり」が決まったといい、配分委員会は県漁協本店が勝手に代行して、当事者を蚊帳の外に置きながら権利を剥奪していく。全国的に見ても前例がない漁業権強奪事件といっておかしくない。漁業権の研究者が聞いたらたまげるようなことを、県政なり電力会社が真顔でやっているのだ。
 その端くれで代理人として動いているのが、金に目がない県漁協で、祝島が「いらない」といって法務局に供託していた補償金を国庫没収期限を迎えた際に勝手に引き出し、延長戦に持ち込んだ経緯がある。国庫に没収されれば漁業補償交渉は振り出しに戻っていたが、祝島漁民が「引き出さない」「いらない」とわざわざ決めたものを勝手に引き出した。訴えられれば即アウトであるが、いずれにしても総会議決など屁とも思っておらず、都合が悪い結果は何度も蒸し返してやり直しをさせ、都合がよい結果になれば「手続きが進んだ」といって商業マスメディアを動員して既定事実にでっち上げていく。民主主義のルールとか法律などどこ吹く風の超法規が、原発推進策動の重大な特徴となっている。商業メディアもこうした実態についてなんら報道しない。
 知事は漁業権問題が解決していないまま公有水面埋立許可を出し、本来なら工事が手つかずで失効するはずの許可を、安倍代議士の子分である山本繁太郎知事が引き延ばしている。漁業権剥奪の手法にせよ、すべてが前代未聞の超法規で、憲法改定をする前からルールもへったくれもないフライングで、ナチス独裁国家のような行為に及んでいる。
 安倍政府になって、原発推進の総本山である経済産業省が再稼働で色めきたっている。その背後で原子力ビジネスを操っているのが米国にほかならない。福島第一原発事故が起き、その反省もなく第2、第3の福島をつくってかまわない、戦争の火の海に投げ込んでもかまわないという売国、亡国の政治との対決が迫られている。

 

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