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祝島、意気込み高く工事阻止
上関原発・中電が着工の形作り
               埋立て許可無効で焦る中電    2010年10月18日付

 中国電力の上関原発建設の埋め立て工事がストップしている上関町で、中電が15日から再び「工事再開」の動きを見せ、それにたいして祝島の島民らが連日の阻止行動を繰り広げている。9月に夜間「工事再開」を試みて引き返して以後、周防大島町の小松開作に停泊させていた大型台船を含め、3隻の台船が予定地周辺海域をめざして集結するのにたいして、海上では祝島の漁船が抗議に繰り出して台船はストップ。陸側の田ノ浦現地では島の婦人たちや支援者らが砂浜で座り込みをして中電職員と渡り合った。祝島が断固とした意気込みを示しているのと同時に、中電は3日間とも「工事再開」に手をつけることはなく、夕方4時30分頃になると引き返している。
 中電は15日早朝、作業台船3隻を周防大島町の小松開作港や周南方面から出港させ、田ノ浦へ向かわせた。小松開作から移動をはじめた大型台船は柳井市阿月の沖で足止めをくらい周南方面からやってきた1隻の台船は天田島付近から工事海域であるブイの中に進入し、排水口の予定地付近でアンカーをおろした。ただ、本来の作業区域とは違うことと、この台船単独では何の作業もできないと見られている。もう一隻は四代沖で立ち往生することとなった。
 田ノ浦現地では祝島住民など50人が抗議行動をおこなった。海上保安庁の巡視船やゴムボートが警戒にあたり、上空を新聞社のヘリコプターが旋回するなど物物しい雰囲気のなか、中電職員が海上と陸側から「速やかにいかだ、土のう、ブルーシートなどを撤去してください!」「あなたたちがやっていることは、妨害行為のみならず違法行為です!」「工事を妨害するということは、当然損害賠償を請求することになります!」などと恫喝してみせた。
 祝島の婦人たちが冷静に対応していたのが特徴で、「この30年間のことをもっと勉強してきなさい!」「祝島は補償金を受け取ってない! 私たちは海を売ったわけじゃないから埋め立てはできない!」「中電は帰れ!」と主張し、整然と座り込みをおこなっていた。この日は数回にわたり、中電側が恫喝込みの「理解を求める活動」をおこなったが、何もできず午後4時30分頃には作業中止を決め、周囲で警戒にあたっていた海保ともども帰っていった。
 2日目となった16日には、中電本社に栄転し執行役員(上関原子力立地プロジェクト部長)に出世した和森康修・元上関立地事務所長が部下を引き連れて責任者として現れた。山下・上関調査事務所副所長などとともに、「もう一度原点に戻って話をしましょう」「また島へ行かせていただきたい」「みなさんの不安なお気持ちをお聞かせください」と前日とはうって変わって丁寧な口調で話しかけた。
 しかし祝島の婦人たちから「これまでどれほどウソをついてきたのか」「金さえあれば何でもできると思ったのか」「埋め立てはさせない!」と猛抗議を受けると、なす術がないといった感じでたじろいでいた。和森氏は感情を抑えきれない様子で、苦笑していたかと思ったら、大声を出して詰め寄っていくなどの場面も見られた。それを中電職員が後ろから立ってながめていたり、裁判資料用なのか動画におさめていた。1時間ごとに「お願い」を繰り返して、夕方の定刻になると帰っていった。
 田ノ浦現地では2日目になると「また中電のパフォーマンスなのか?」「工事再開の腹ははじめからないのではないか。何かのアピール用か?」とあちこちで語られ、祝島の婦人たちも「中電は相当に焦っている。何かしなければ態勢がもたないんだろう」と口口に語り合っていた。
 3日目に入った17日も中電職員は前日と変わらない発言を繰り返していた。ただ、「対話したい」と呼びかけるのとは裏腹に、婦人たちをつかまえては揚げ足をとってまわる責任者の和森氏の姿が目立ち、「嫌がらせをしなさんな!」「腹を立てさせたいのだろうか?」の声も上がっていた。
 2日目以降は中電側の「工事再開」パフォーマンスも形式的な印象が拭いきれず、台船は立ち往生したまま、陸側からの「説得」だけになった。陸側では一時間たつと「説得」にあらわれ、引き返していくのを繰り返している。
 一連の動きを経済産業省が見学している。

 全く進まぬ「埋立工事」 埋立許可後の2年

 二井知事が公有水面埋立免許を許可して2年が経過したなかで、「埋立工事」は事実上ストップしている。「工事再開」というより、もとから海には手つかずで何もはじまっておらず、工事に入れない状況がある。そして、秋口になると毎年のように「着工」騒ぎに熱を上げ、「祝島が妨害するから工事ができない」といって引き返していく。
 08年10月に二井県知事が公有水面埋立免許を交付して以後の経過を見てみると、1年間何の動きもないままだった昨年9月、唐突にブイ搬出騒動が起きた。それは埋立免許交付から1年以上手つかずだった場合、認可が取り消されることから中電が慌てたものだった。夜闇に紛れ、予定地海域に複数のブイを浮かべて「工事着手」といい、免許取消しはクリアした。
 ブイ設置から今日に至る1年間は、もっぱら水面下で祝島に漁業補償金を受け取らせようと攻勢を強める一方で、工事そのものは相変わらずストップしたままだった。上関町内だけでなく柳井地域には、既に県外からも原発工事をあてにした業者が集結するなど異様な空気が漂っていた。「原発はもうできる」と吹聴して、それは主に祝島をあきらめさせるためであった。真に受けたのが業者で、土地を確保したりの先行投資をして待ちかまえていた。しかし、祝島は補償金を受け取らず、祝島の漁業権は生きたままでにっちもさっちもいかなくなった。だまされた業者からも中電そのものが責任を問われるハメになっている。
 公有水面埋立免許は1年で切れるというので昨年秋ブイ設置をやった。それは格好だけでその後1年たっても工事はできない。1年で無効になるところが2年もできないので、二井知事の埋立許可が無効なのは明らか。焦っている中電としては「努力してますよ」のパフォーマンスをすることと、埋立許可を継続させるための実績づくりと見られる。そして「妨害活動だ」といって祝島に損害賠償を求めて脅す意図であると見られる。
 いずれにしても、中電が海面工事に手をつけられないのは、祝島が補償金を受け取らず、祝島の漁業権問題が未解決であることが決定的要因となっている。

 生きている祝島漁業権 目算狂った県、中電

 この2年間、最大の問題になってきたのは、祝島が漁業補償金を受け取っておらず、漁業権放棄ができる唯一の機関である漁協総会で3分の2の議決を取っておらず、祝島の旧107共同漁業権の権利が生きていることである。中電が漁業権を買収した四代、上関の地先単独漁業権海区に隣接しており、この海域を埋め立てするには、影響を受ける祝島の同意が不可欠である。
 本来なら漁業補償も含めた権利者すべての同意があってはじめて「公有水面埋立許可」が出るものを、一昨年末に最高裁が「管理委員会の契約に祝島も拘束される」と意味不明の判決を出すと、二井県政が「祝島の漁業権はなくなった」と騒ぎ、埋立免許の条件を満たしていないのに先走って許可を出し、中電は補償金の残り半金を七漁協に支払い、各漁協は配分を済ませた。
 ところがプログラムは狂い、「反対しても原発はできる」というあきらめムードをあおって昨年2月に開いた祝島の漁協総会で、二票差で補償金を受け取らないことを決議。その後も今年に入ってからは供託金が没収期限を迎える5月まで、二井県政・水産部を通じて何度も総会を開催させたが、逆に反対が強まり、工事も完全にストップすることとなった。
 祝島が補償金を受け取らず、漁業権放棄の議決をしなければ、最高裁であろうと県であろうと、祝島の漁業権を放棄させることはできない。二井県政は「最高裁の判決に準ずる」と祝島の漁業権がなくなったかのようにいいながら、実際には漁業権が生きていることを知っているから補償金を受け取らせることに一生懸命となったのだ。
 したがって祝島が断固として反対している状況では埋め立て工事の合法性が確保できず、工事を強行する方が違法であり、反対する方が合法という現象になった。中電、二井県政は「祝島の漁業権は消滅した」と言えないことをわかっていて、最高裁判決を盾に勝手に漁業権放棄している事にして、後から辻つまを合わせようとして、「補償金を受け取れ」と恫喝し、パンクしてきたのがこの間の経緯にほかならない。「公有水面埋立許可」そのものが無効なのだ。
 中電は今年に入って、初めて祝島に上陸するパフォーマンスを試みた。「原子力部門のエース」といわれる岩畔・上関調査事務所長が足を運び、山下社長まで「私も祝島に行って直接お願いしたい」と発言するなど「お願い」モードに入りつつ、阻止行動にたいして「4800万円払え」「1日500万円の損害賠償を払え」と裁判に訴えるなど、金力、権力を振り回して祝島に攻勢を仕掛けてきた。
 しかし業界で「岩畔が五月までに祝島を落として、工事が動き始める」「上陸しなくても電話攻勢など手はある。中電のやり手が本腰を入れて祝島崩しに動く」と言われていたのも、五月になっても未解決で、祝島は今回の行動でも強い意気込みで原発反対を貫いている。
 上関原発をすすめる中電側は、国、県、裁判所、国税などの権力機関を使ったウソと脅し、さらに金しか武器はない。
 このようななかで、祝島のたたかいは瀬戸内海漁業を守り、日本の国土を廃虚から守る、日本民族全体の利益という真の国益をかけたものとなっている。上関原発28年のとどめを刺す局面で、祝島のたたかいに連帯して、全県漁民のたたかい、岩国基地撤去のたたかい、被爆地広島のたたかい、全県、全国の共同のたたかいを結びつけることが求められている。

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