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岩国で進む「米軍強靭化」計画
基地の中だけアベノミクス
               施設建設ラッシュで大渋滞    2013年9月30日付

 山口県岩国市の米軍岩国基地では、2017年までに予定されている神奈川県の米軍厚木基地からの空母艦載機59機と約4000人の兵士・軍属・家族の移転、および同年に予定されているステルス戦斗機F35の配備を受け入れるための改良工事が現在急ピッチで進行している。しかも工事がいつから始まりいつ終わるのか、どんな内容なのかは、市民にまったく知らされないままである。同時に、基地につながる大型道路網の整備が進められ、大規模な都市改造も進んでいる。広範な市民には働く場がなく、下水道普及率30%と県下最低の生活インフラで我慢させられている一方で、基地の中だけアベノミクスが進行し、「国土強靭化」ならぬ「米軍強靭化」が進行するという、アメリカの植民地状態にある日本の縮図があらわれている。
 
 市民は下水道普及3割の生活

 岩国基地周辺の住民は、5月末あたりから、広島など県外ナンバーのトラックやダンプカー、トレーラーやミキサー車、クレーンを積んだ車などが轟音と震動とホコリをまき散らせながら押し寄せてきたことに驚いた。最近では、建物の基礎をつくるときに必要な1本15bもの杭を1台に8本乗せた超大型トレーラーが何台も出入りした。
 基地周辺ではホコリで呼吸器の病気になる年寄りが出たり、夜中まで続く震動で精神安定剤を飲まなければ眠れないなどの苦情も出て、自治会が抗議の申し入れもしたが米軍側は聞き入れない。工事車両は1日300台以上にも及び、一時は渋滞した車が業者通用門から新連帆橋をへて岩国駅裏まで続いていたという。
 これほどの渋滞の直接の原因は、業者通用門での入車検査が厳しいことだった。通用門では、警備員が3〜4人がかりで、まず運転席のドアを開けて怪しい物はないか確認し、荷台に上がって確認し、次には一人一人が棒付き鏡を持って車体の下を映して四方から入念に確認する。1台に5分前後もかけてやるおかげで大渋滞を引き起こすこととなった。運転手は外に出て「そこまで心配しなくても」とあきれながら見ている。日本国民を支配の対象とみなす米軍基地が、日本人から襲われると思っていることを物語っている。
 なにより、こうした工事車両の渋滞の背景には、今年に入ってから米軍基地内の工事が絶えることなく進行し、岩国基地が極東最大の基地に変貌しようとしていることがある。
 岩国基地には、2017年までに、米軍厚木基地からFA18など空母艦載機五九機と、兵員(1900人)に軍属、家族を含めて約4000人を移駐させる計画が進行している。また、昨年末には同じく2017年までに最新鋭のステルス戦斗機F35の配備も発表された。基地内の大規模工事は、こうした新たな戦斗機の受け入れのための格納庫、戦斗機などの駐機場、独身宿舎、洗機場などの建設のためであり、来年度からは指令部庁舎、兵隊の訓練施設、そして学校や病院などのコミュニティー施設や家族住宅の建設計画がある。
 「以前兵舎として使われ、最近は倉庫に利用されていたかまぼこ型兵舎3棟も、2カ月ぐらい前からとり壊しが始まった。古い建物はすべて新しいものに建て替える勢いで進んでいる」といわれるほどで、政府は基地外の愛宕山の米軍住宅を含め約2673億円(2006〜2013年)の予算をくみ、そのうち今年度は約100件・約1100億円の工事が進行している。岩国市の今年の一般会計予算は605億円であり、倍近い額である。
 ある市民は、「1年前くらいに中津町にゼネコンの五洋建設が“岩国駐機場工事事務所”を開設した。五洋建設は艦載機五九機の受け入れのための駐機場を建設しているが、何庫の格納庫が建設されるのかは市には報告されていないようだ。ドーム型格納庫の一つ一つはかなり大きい。基地に入ってくるトラックやダンプは圧倒的に県外ナンバーで、とくに広島ナンバーをよく見る。大手のゼネコンが牛耳って、岩国の業者は下請にも孫請にもほとんど入っていない。基地の中の工事は今も大盛況だが、来年からはさらに追い込みをかけて進めていくといわれている」と語った。
 市内の事業所に勤める男性は、「今は杭打ちが工事の中心だが、杭は広島の大野地区でつくられたものが大型トレーラーで運ばれてくる。排水や用水、下水などに使用される暗渠(きょ)は四国の企業がつくって夜中に大型トレーラーで運び込んでいる」とのべた。
 また、基地内の工事で働いたことのある男性は、「沖合建設のさいも、滑走路ということもあるがかなり頑丈に造られている。基地外ではこれほど手の込んだ工事はないというほどだ。基礎の段階で、穴に砂やコンクリなどを流すときはただ流し込むだけでなく、高圧圧縮して地盤強化にかなり力を入れている」とのべた。
 続けて、「住宅建設にしても、民家の場合はコストを抑えるためにある程度コンクリの濃度を薄めたりするが、例えば国の役人の住居を建設するときはレベルを上げて、一般の民家よりも立派につくる。ところが基地内になるとさらにレベルの高い建設が求められ、建設費はほぼ無制限に近いため、安全上ではかなりの物がつくられている。基地内と基地外では、同規模の住宅を建てるときの基礎工事からして違う。米軍は金銭感覚などまるでなく、日本人に金を拠出させればよいという考えで、厳しい生活をしている市民からすると腹立たしい思いだ」と強調した。
 基地の中だけ異常な「アベノミクス」が進行し、それに群がる市外のゼネコンが潤っている。基地内の住宅だけは有事の備えも施され、電気やガスも使いたい放題だが、すぐそばの川下の街は、便所もいまだに汲み取り式(岩国市の下水道整備率は31%と県内最低水準。県平均は60・8%)。日本を植民地的に支配するアメリカと日本との関係を、市民に見せつけるものとなっている。
 基地のために岩国の産業がなくなり、雇用がなくなり、地域経済が崩壊する。まちづくりも米軍優先で市財政はいつも火の車におかれ、わざとでも市民を住みにくくさせて米軍に売り飛ばすという政治が進行していることを示している。

 道路建設も異常な勢い

 建物だけでなく、岩国市内では基地につながる道路建設のみが異常な勢いで進められているのも特徴だ。米軍が使うところのみ2車線の新しい道路になり、市民生活に必要な道路は数十年前と変わらぬ、小中学生が通学するにも危険な一車線の狭い道路のままである。
 6月29日、基地北門周辺の住民を集めて、国道188号から基地北門に通じる「防衛道路」を南に11b拡幅し、2車線道路にするための説明会が開かれた。参加した住民によると、「事前になんの相談もなく、説明会に行ってみると県の役人が住民よりたくさん来ていて、“道路をここまで広げます”といって次次に映し出した写真には、うちの畑や本家がすっぽり入っていた」という。この地域は戦前からの農家が多く、「後期高齢者になって、今から家を別に建てろというのか」「年寄りいじめとしか思えない」と口口に語られている。
 参加した住民から「なぜ広げるのか」と聞かれた県側は、「錦帯橋空港(基地の北側にある)の渋滞緩和のため」という。しかし、錦帯橋空港は渋滞していないし、「シャトルバスは毎回カラッポで、一人も乗っていない」。明らかに基地のためであり、県が米軍の下請になって「土地は俺たちのもの」とばかりに横柄な対応をとっていることに、住民のなかではやり場のない怒りが語られている。
 そのほか、米軍住宅となる愛宕山から基地まで一直線につながる片側2車線の巨大道路が2本つくられようとしている。また、岩国基地正門から中津町1丁目を突っ切って岩国南バイパスに繋がり、山陽自動車道の大竹ICまで続く道路は「都市高規格道路」に指定され、立ち退きの交渉が始まっており、来年から着工に入ると話されている。平田バイパスや国道2号線を延長し、新幹線が停まる新岩国駅や岩国ICにつなげる計画もある。
 また、三井化学のある装束埠頭から、米軍が弾薬輸送に使っている新港埠頭をへて日の出町までつながる臨港道路の工事が10月1日から再開されるが、それは突きあたる今津川にトンネルを掘るか橋を渡せば基地につながる。
 これらはみな米軍基地を起点にしており、いざ朝鮮半島有事となれば、岩国の基地から高速道路や新幹線を使って兵隊を下関に運び、強襲揚陸艦に乗せて出撃、ということすら考えられる。朝鮮半島に近い下関港は、米軍から物資補給や出撃拠点としての重要港に指定されており、下関の人工島も商港としては使い道がなく、岩国とセットになった軍港化の狙いがある。岩国基地増強は山口県全域の米軍基地化にほかならない。

 極東最大基地化が進行

 米軍基地に関しては、この数十年にわたってだまされ続けてきた経験を、岩国市民は忘れることはできない。
 「騒音や事故を軽減する」といって進められた「基地の沖合移設」は、基地沖合1`までを埋め立て、面積を2倍にして、滑走路は2本にするという基地を2倍化する拡張だった。知らない間に海底も掘り下げて、4万d級の強襲揚陸艦や空母が接岸できる巨大な軍港までつくった。
 さらに愛宕山に1500戸の住宅や学校が建ち並ぶ「多機能型都市」をつくるといいくるめて住民に土地を手放させ、その後「250億円の赤字が出た」と騒いで事業を中止。昨年3月には山口県の二井前知事と岩国市の福田市長が防衛省に出向き、愛宕山を米軍住宅用地としてたたき売った。終わってみればすべて米軍のためで、市民には赤字だけが残された。
 岩国基地をめぐっては、すでに米軍普天間基地から空中給油機KC130 12機が移転しており、昨年から垂直離着陸輸送機オスプレイ24機が先行配備されて、本土の訓練拠点となっている。27日には、艦載機の代わりに厚木に移転する予定であった海自岩国基地のEP3電子情報収集機など17機と隊員・家族など1600人が、岩国に残留することも発表された。こうして岩国基地が、駐留する戦斗機百数十機、兵士や軍属、家族など1万数千人にのぼる、極東最大の航空基地となろうとしていることこそ最大の問題である。
 今回の工事ラッシュが意味するところは、たんに騒音や渋滞の被害にとどまらず、岩国と日本が原水爆戦争の火の海にさらされる危険性を持つということである。アメリカは対中国戦争を想定したアジア重視戦略をとっているが、それは米軍をグアムやハワイ、フィリピン、オーストラリアなどに分散させて中国などから発射される短距離ミサイルの射程外に退き、沖縄や岩国をはじめとする日本を最前線に立たせ、日本をアメリカに対するミサイル攻撃を受けとめる盾の役割を果たさせようとしている。
 市民のなかでは、昭和20年8月9日、基地そばの農家に米軍が数十発の小型爆弾を落とし「父親が腕と足をもがれて死んだ」経験や、終戦前日の14日、上下線が到着して人があふれた岩国駅が米軍空襲の標的となり、1000人以上の市民が殺された経験、そして広島・長崎で原爆を投げつけられて焼き殺された経験がよみがえっている。
 岩国の米軍支配による植民地的な状態は、日本全国の縮図となっている。岩国市民のなかで米軍基地の撤去を求め、安倍政府がアメリカのいいなりになって再び戦争を始めることを、なんとしてもおしとどめたいという思いは充満しきっている。日本の独立と平和、繁栄を実現する沖縄や全国の人人のたたかいと結びついて、下から真に力強い基地斗争を組織していくことが待ったなしになっている。


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