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岩国市民をだましてきた経過
米軍住宅反対の署名広がる
              借金押しつけ全市の基地化    2009年2月11日付

 米軍再編の重要拠点と位置づけられた岩国市で、厚木から米空母艦載機を移転するため、基地拡張の埋め立て土砂をとった跡地である愛宕山に米軍住宅を造る計画をめぐって、市民の猛烈な反対の世論と運動が起きている。この問題をめぐって経過をふりかえって整理してみたい。
 この問題は、米軍基地の沖合拡張のための埋め立て土砂を取り出してハゲ山となった愛宕山に、厚木から移転してくる米艦載機部隊の米兵とその家族約4000人分の住宅を建設するというもの。それは岩国全市を米軍の街に提供して、市民をますます片隅に追いやるというものである。
 先月26日、二井知事と福田市長が愛宕山開発跡地の買い取りを求めて上京。愛宕山を「米軍住宅地の最有力候補地」とする自民党政府は、「用途の決まっていない土地は買えない」とハッパをかけた。二井知事も福田市長も県民、市民の総反発をまえに「容認」とはいえず、立ち往生している。
 厚木基地からの艦載機移転計画が浮上した05年、市民の猛烈な反対世論におされて井原前市長が「移転反対」を表明。それに対して、自民党政府、とりわけ安倍晋三官房長官(当時)が、「地元は任せろ」とばかりにおどり出て「国の専管事項であり地元は黙れ」と脅しをかけた。首相になったとたんに35億円の基地交付金(新市庁舎の建設費)をカットする経済制裁を実行した。普天間基地の空中給油機受け入れの際に約束されたはずの交付金は、国の米軍再編予算にすり替えた。
 安倍政府の下で商工会議所の一部や市議会議員が暴走をはじめ、「現実的対応をせよ」と強権を振るった。だが住民投票も市長選も「移転反対」が圧勝する結果となった。「わしのいうことを聞け」と制裁政治を進めた安倍政府だが、1年で破産し、内閣を放り出した。全国、全県の世論と結んだ岩国市民のたたかいは米軍再編全体をマヒさせる力を示した。
 市議会が5度にわたって市予算を否決するなどして仕掛けた昨年2月の市長選では、小泉チルドレンの福田代議士が「市民党」を偽装して出馬し、自民党本部が権力、金力を総動員するという謀略作戦でかろうじて当選。市民の「米軍反対」の強固な意志は弱まるどころが逆に強まり、つづく衆院山口2区補欠選挙では自民党候補が2万票を超える大差で叩き落とされた。その力は今も福田市政をしばりつけている。

 沖合移設と欺き大増強 国・県・市総がかりで
 市民のなかでは、国、県、市が一体となって市民を騙し、もてあそんできたことへの激しい怒りがある。
 この岩国基地大増強は、はじめは「滑走路の沖合移設」といってはじまった。70年代の九州大学への米戦斗機ファントムの墜落をきっかけにしたもので、安全と騒音削減のためというものであった。できて見れば、滑走路の2本体制であり米軍機も米兵も倍増という大増強であった。
 1997年、「騒音削減のための沖合移設」といってはじまった岩国基地の沖合埋め立て工事は、愛宕山にニュータウンを造成するという都市計画事業とセットといって動きはじめた。愛宕山を削った土砂を基地埋め立てのために使えば、「沖合移設によって騒音が解決するうえに、新しい都市が生まれて活性化する一石二鳥」というものだった。
 二井県政は、愛宕山開発に「東部地域の拠点都市」「21世紀型の多機能都市」といって、新住宅市街地開発法(全面買収方式の宅地開発)にもとづいて都市計画を決定。いち早く愛宕山から海岸まで市内をぶち抜く3・2`bもの土砂運搬用ベルトコンベアーを設置した。ルートにかかる民家は移転させ「土砂が流入して蓮田に被害が出る」と反対の声が根強かった農家や、「米軍基地拡張には協力できない」と売却を渋る愛宕山地権者には「あなたの土地は小学校や幼稚園になる」「市民の悲願である沖合移設や、まちづくりによる活性化に反対するのか」などとだまして土地を手放させた。
 開発地周辺ではダイナマイトによる発破作業で家に亀裂が走ったり、山林が消えたことによる水害、粉塵や暴風でガラスが割れるなどの大迷惑を押しつけながら、愛宕山は米軍用の土砂へと姿を変えた。
 総事業費850億円のうち、基地埋め立て用の土砂を470億円で国(防衛施設局)が買い取るが、残りの380億円は1500戸分の宅地を坪33万円で完売するというものだった。それははじめから「赤字は間違いない」という市民世論を無視してごり押ししたものだった。基地に占拠される岩国の経済が発展し人口が増えることはなく、宅地で売れるわけがなかった。
 2002年ごろから「住宅需要はみこめず最大で約540億の赤字」「国に売るしかない」とマスコミなどが騒ぎはじめ、県、市は基地沖合の埋め立てが完了する今年になって250億円(2対1で県、市が負担)の赤字を理由に都市計画を廃止。「赤字解消」を理由に米軍住宅化をもくろむ国(防衛省)に買い取りを求めている。
 基地の沖合拡張・米軍基地の増強は、はじめからの計画で、埋め立て土砂を安値で手に入れ、県と市にわざと借金を背負わせて、米軍住宅にしようというものであった。
 すべての計画が終わってみれば、米軍基地面積は1・5倍(780f)となり、そこへ艦載機部隊が移駐して、米兵の数は2倍以上の1万人規模になり、駐留機は2倍の120機に膨れあがる。「沖合1`先へ移設」だったはずの滑走路は新、旧どちらも使用する2本体制で、空母も接岸できる岸壁までつくった。埋め立て面積に応じて市に返還されるはずだった陸側の土地も返すメドはなく、借金のカタに愛宕山まで米軍住宅として接収する算段である。
 市民に説明されていた「騒音軽減」も「住宅地開発」もまったくの空手形であった。「最初から市民をだますものだった」「米軍のためにつくられたシナリオだった」「岩国市民は米軍の奴隷ではない」と市民の怒りは尋常ではない。
 さらに「日米共同委員会で合意した」といって、軍民共用空港の再開計画も動いている。米軍が増えるほど寂れるばかりとなる岩国で飛行機に乗るものが採算に合うほどいるわけがなく、「これもさらに米軍に協力させるための借金作りでしかない」と市民は語っている。

 米軍支配で経済は疲弊 工場の移転・縮小も
 また、米軍の軍事支配によって政治的にも経済的にも無権利の状態におかれてきた岩国市は、交付金によって栄えたのではなく、さんざんに疲弊してきた。
 岩国市には、三井化学、日本製紙、帝人、東洋紡などの工場群が海岸沿いに林立しているが、米軍機の騒音がすさまじい上に、米軍機の墜落事故、部品の落下などが頻発し、新規立地どころか既存の工場も縮小を強いられてきた。米軍飛行ルートには建物の高さが制限され、帝人などは米軍から煙突の切断を要求されて拠点を松山に移転し、「以前は6000人いたがいまは1000人になった」といわれている。
 県営岩国港も含む基地周辺の約21平方`bの海域は船舶の航行と漁船操業禁止区域にされて漁もできず、基地からの廃液と埋め立てによって漁場はつぶされた。また、すさまじい轟音で養鶏がショック死を起こすなどの被害で畜産業も廃れた。
 駅前商店街や米軍基地ゲート前の川下地区商店街は、軒並みシャッターを下ろして昼間でも人通りが少ない。「米兵どころか日本人も通らない」といわれる。「儲かったのは1j360円だった時期だけで、いまは基地の中にスーパー、映画館、ゲームセンターからボーリング場まであるので外では買い物もしない。以前は、米兵がたむろしていた100円均一でも、1jが90円を切ってからはまったく見なくなった」「米兵に遊ぶ金がないだけにまた暴行や凶悪犯罪が起きないか心配。岩国南駅は高校生の下校時になると親の迎えの車で大渋滞になっている」と語られている。
 道路建設も米軍優先で基地と米軍住宅化がもくろまれる愛宕山とを結ぶ牛野谷・門前線や、米軍の軍港と化している新港から岩国駅をへて、基地正門まで延長された昭和町―藤生線など、誰が見ても「米軍道路」といえる巨大道路だけがつぎつぎに整備されている。
 2001年9月のニューヨークテロ事件の際には、米軍は市民に銃口を向けて厳戒態勢をとり、日本の警察、自衛隊も基地防衛にかり出され、犬の散歩や畑仕事をしている市民に向かって尋問したり、ヘリからサーチライトで追いかけるという異常な警戒心をむき出しにした。最近でもテロ攻撃を想定して米軍と家族を輸送機で本国につれて帰る訓練や、陸上自衛隊を動員した基地警護訓練が毎年おこなわれている。市民からは「日本を守る気など露ほどもない」「逆に日本が米軍を守る関係だ」といわれる。
 このような米軍支配の構図は、岩国だけでなく日本全国の縮図となっている。

 日本全土基地化する要 岩国は全国の縮図
 米軍再編は、アメリカ本土にあった米陸軍第1軍団司令部を座間(神奈川県)に移転し、そこに陸上自衛隊中央即応集団司令部を統合させるなど、アジア戦略の拠点を日本に置き、自衛隊を米軍の下請け部隊として実戦に駆り立てる方向を強めており、アメリカの国益のための戦争に日本全土を駆り立てるためのものである。
 なかでも岩国基地は、空母艦載機部隊の移転によって極東最大となり、硫黄島でおこなわれてきた夜間離発着訓練(NLP)も岩国周辺での実施を求めるなど、広島湾一帯を含んだ核攻撃の前線基地として、米軍再編の中心に位置づけられている。
 基地周辺の住民のなかでは、「最近の米兵は日本人を恐れている。イラクやアフガンでも無茶苦茶な無差別殺りくをやっているが、親を失った子どもや夫を殺された女性からも自爆テロを受けて、米兵の中ではノイローゼや、自殺者が増えている。空襲や原爆で日本人ほどアメリカに殺された民族はない。あれだけの気概が必要だ」「岩国は日本の縮図。日本自体が独立していないから、米兵は好き勝手をしている。全国的な問題としてやらないといけない」と語られ、全国民的な平和と独立にかかわる問題として論議されている。
 米軍住宅化に対する市民の怒りが高まる中で、愛宕山周辺の牛野谷地区連合自治会が反対運動を展開し、住民による「愛宕山を守る会」(岡村寛代表世話人)や市民団体も含めた「愛宕山を守る市民連絡協議会」(同)を結成。現在、5万人を目指している米軍住宅化反対署名は、全市的な共感を集めながら広がっている。
 このなかで、騒音や居住環境の悪化など、局部の地域的な利害の問題だけに運動を切り縮めるのでは勝利の展望は開けない。艦載機部隊を岩国基地へ厚木基地から移転させ、愛宕山にも米軍住宅をつくり、街全体を米軍が乗っ取るという策動に対する岩国市民のたたかいは、日本全土をアメリカのための戦争に差し出し、日本の民族的利益を投げ出す売国政治に反対して、独立と平和、繁栄の日本を実現する課題として全国的に重要な位置にある。したがって全日本人民の共通要求として隣接する広島をはじめ全県、全国との連帯が不可欠の課題となっている。

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