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上意下達政治のなれの果て
下関市長選・安倍VS林の勘違い
            主人公はき違えた代理戦争   2017年2月15日付
 
 3月12日に投開票を迎える下関市長選まで残り1カ月を切った。今回の市長選挙はこれまでになく自民党安倍派と林派の抗争が熱を帯び、目下、どちらの代理人が市長ポストをもぎとっていくか互いにしのぎを削って組織票固めに奔走している。しかし、下関の政治を牛耳ってきた2トップがこれほど激しく火花を散らしているにもかからわず、前哨戦は冷め切った空気が覆っている。各陣営の呼びかけに応えて踊っている者の姿がほとんどいないのも特徴になっている。記者座談会をもって情勢を論議した。
 
 御輿の上から号令かけるばかり 4割の組織票内で仲間割れ

 司会 まず前哨戦の様子から出しあってみたい。
  とにかく一般の有権者が冷め切っている。一部の上層部が胸を熱くしているのと比べても落差がひどい。なぜこれほど冷めているのかだ。
  「この男を市長にしたい!」と思えないのが最大の理由ではないか。「僕は安倍さんの代理人です!」「私は林さんの代理人です!」の印象が強くて、「それ以外に何もないじゃないか」とみなを興ざめさせている。各陣営は地域での集会や演説会を精力的にとりくんでいるが、有権者から浮き上がっている印象が否めない。演説がへたくそとか訴える内容がつまらないという問題もあるかもしれないが引きつける力が乏しい。それが「看板頼り」といわれる由縁だろう。
  演説会を覗いてみると、県議が延延と相手陣営を罵倒していたり、後援会幹部が自己顕示欲を抑えきれずに自分自慢を始めてみたり、「これって、何の選挙ですか?」と思わせるような光景にも出くわす。それでホールに500席の椅子を用意して150人しか来なかったとか、ビックリするような低空飛行をしている。人間の動きを読めていないし、動員力が乏しい印象だ。もっとも肝心な政策が浸透しておらず、前田なり中尾、松村が何を訴えているのか有権者にはほとんど伝わっていない。従って「あの人はこれをやるそうだ」という会話が成立しない。政策チラシを配ったか否かではない。心に響いていないからだ。選挙というのは、人を動かす力がどれだけあるのか政治家として試される。鍛えられた政治家であるか否かすべてを見られる。3人の候補者すべてが、下関のリーダーとしてふさわしいのかどうかを見られている。
  知り合いのタクシーの運転手や理美容院に聞いてみても「驚くほど市長選の話題にならないんだ…」という。客の興味関心に敏感な人たちだから多少なりとも趨勢が反映するかなとも思うが、こんな調子だ。熱気を感じないと共通して語っていた。このままいけば投票率は40%台疑いなしと見られ、六割近い有権者を蚊帳の外に置いて組織票だけで事が決まる。対象になっている組織以外には広がりを持たないものになっている。選挙の雰囲気が盛り上がっているか否かは投票率にも比例する。60~70%台の選挙ならもっと有権者の話題になっておかしくないが、現状ではそうはなっていない。
  各陣営も組織票固めばかりに目を奪われて、その外側に訴えかけたり、働きかける動きがない。友人や知人を通じて支援の動きが広がっていくというよりも、会社で「前田をやります」「中尾をやります」が通達されて、聞き置いている有権者も多い。下から有権者の願いがわき上がって御輿が担がれている選挙ではなく、御輿の上から号令ばかり飛んでくる選挙だ。それでどこそこの企業が誰についたとかばかりが話題になる。果たしてどれだけ得票につながるのか疑問だ。今時は従業員が社長の指示通りに投票するとは限らないし、○○社を抑えたから○○票はこっちのものだといった読みが当たるのかだ。
  同じように、自治会長クラスがどの陣営を支持しているかで「○○地域は○○陣営がとった」とか話しているのにも違和感を覚える。有権者1人1人がみずからの判断で投票するのに、住民1人1人に頭を下げたわけでもない者が何を思い上がっているのだろうかと。確かに地域単位で推薦を決めて動くところもある。しかし、頭を抑えたから下下まで思い通りになると思ったら大間違いだ。自惚れてはならない。あと、支持してくれない者や企業は「けしからん!」といって腹を立てる陣営もある。これも支持してもらう側が何を思い上がっているのかと思わせる。上意下達体質が染みついて、方方で民主主義がひっくり返っている。それで屁みたいな演説を聴かされる有権者の気持ちにもなってみろと思う。
  某陣営の演説会で後援会幹部の自慢話を聞かされた住民は怒っていた。本人たちは自分たちのことを相当に偉い人間だと思っているわけだ。通常なら選対参謀が「やめさせろ!」と指示して引き締めるものだが、野放しになっている。企業関係で後援会名簿に記入させられた人に、後日「入会ありがとうございました」の電話もなしに後援会費の振り込み用紙が送られてきたり、常識的には考えられないようなことも起こっている。自爆行為に等しいが、応援されて当たり前と思っているからそのような振る舞いになるのだろう。もうこうなったら、相手陣営の罵倒にせよ、自慢話にせよ、双方にもっと力を入れてやってみたらいい。それを有権者がどう見なすのかだ。
 この選挙が異様なのは、上意下達方式で浮き上がっているのに、その自覚が当人たちには何もないことだろう。「○○先生(国会議員)の面子をつぶしてもいいんですか?」というような圧力が企業関係には加わっているが、いったい誰の選挙なのかだ。27万人の市民の暮らしを背負っていくはずのリーダーが、誰かさんの面子のために選挙をやっている。このような男たちが郷土のリーダーとしてふさわしいのか考えないといけない。
  現状では誰も票読みができていない。県警とか外事課の読みをメディアが追いかけて「6対4で○○陣営が優勢」とか「4万5000、4万、1万5000」とかの読みが一人歩きしている。それって、本当に当たってますか? と思わせている。何の根拠もない。そして不安なものだから「どっちが優勢か」と陣営関係者が方方に実感を聞いて回っている。選挙など蓋を開けてみないと分からない。
  4割の有権者のなかで、組織票だけが割り振りされる選挙なら、公明党の1万8000票が勝敗を決するほど存在感を持っている。この宗教票が終盤にかけて一気に動くというのも定番だ。
 C 上意下達方式の選挙という表現がピッタリだ。票固めにこれほど秘書軍団が奔走している選挙も珍しい。その選挙で担がれている者の資質とか人間性について多くの有権者は知りようもないのが現実だ。うち出している政策は基本的に総合計画の範囲内で代わり映えがしないものだ。そのなかで庁舎を耐震補強するか、ミニ庁舎にするか程度の違いしかない。
  足の引っ張り合いにつき合う気はないのだが、もっとも近くで市長なり市議を見てきた市職員たちに質問してみたら、今度の選挙は「居眠り晋ちゃんインチキ学位」なのだという人もいる。辛辣ではあるが、なるほどと思わせるものがある。前田晋太郎については、とにかく議会で居眠りばかりしているというのが有名な話で、役所では「居眠り晋ちゃん」の異名を持っている。寝不足かと思うほどよく寝る。「寝る子は育つともいうけれど、あれは考え物だ」と市職員は話題にしている。これはネット配信の議会動画を検索して過去1年分の一般質問を覗いたら誰でも閲覧できる。質問者の背後に必ず映る。中尾陣営のなかには「あんなに居眠りをしている男が市長にふさわしいのか!」とムキになって主張しているのまでいる。一方の中尾についても市立大学の修士論文に落とされて大暴れしたのが印象深く、「インチキ学位」と評判だ。市職員に対してとにかく威張りたがるし、税理士資格を持っている自分はすごい人間なのだという自己評価が根底にあるようだ。
  選挙で互いにけなしあっても仕方ないし、正正堂堂と政策論争すればよいのに、こうした足の引っ張りあいだけが盛り上がるのも残念なものだ。ただ、どんな人間なのかを知るうえでは一定の判断材料にもなる。前田も「市長になったら寝ません!」と宣言しないと相手陣営の悪口を払いのけることはできない。中尾についてもいっそのこと「インチキ学位ではない!」といって500ページ論文の公表に踏み切ったらどうかと思う。後援会のホームページでもいい。苦労人・中尾友昭がいかに市長になっていったか、その人生を描ききったという自慢の大論文をアップして、市民に直接検証してもらうのが早い。市立大学の教授たちは学位を与えなかったが、感銘を受ける有権者もいるかもしれないし、逆に「こりゃダメだ…」と思うかもしれない。判断は有権者に委ねたらよいではないか。「居眠り晋ちゃんインチキ学位」などという不名誉な表現について、本人たち自身が選挙の過程で払拭するべきだろう。立派な政策や演説をするのは、それからでもいい。生身の人間としての資質は選挙と無関係ではない。

 最大会派志誠会が分裂 関谷つぶし顕在化

 B 安倍林を軸にして、市長選では前田中尾が当事者としてぶつかっている。その背後で奔走している代議士事務所の秘書たちで見ると配川藤野の構図なのだともっぱらの評判だ。県議の世界では友田塩満、市議会では戸澤関谷、学校統廃合でも桜山小学校(前田)関西小学校(塩満)等等、さまざまなバトルが勃発して互いに面子をかけて争っている。
  騒がしいのが市議会だ。関谷議長率いる志誠会は最大会派として鳴らしてきたが、今回の市長選で議長が中尾応援で動いたために安倍事務所に睨(にら)まれた。そして目下、所属議員が蜘蛛の子散らして離散している。関谷については中尾が3期やった後に禅譲することで話がついた―― といわれてきた。安倍派の議長がなぜ林派を応援するのか? と疑問に思う人もいたが、そういうことだったようだ。その話が代議士に伝わって逆鱗に触れたのだと議員たちは話題にしていた。
 すると案の定、安倍派の裏切り者として関谷をつぶす動きが顕在化した。志誠会のなかから、豊浦町出身の戸澤と林透、菊川町の松田、旧市内では香川と江村の5人が「みらい下関」という新会派を立ち上げて分離独立した。みんな安倍派だ。志誠会に残って安倍事務所から叩きつぶされるよりも、別会派に身を寄せて避難しておきたいし、むしろ会派再編の過程で関谷をつぶして自分が議長になろうという魂胆のようだ。志誠会は八人に縮小したが、戸澤、林、松田などと通じている木本(豊田町)だってどうなるかわかったものではない。残りのメンバーを見てももともと寄らば大樹の陰で集まっただけなので、最大会派の旨味がなくなれば渡り鳥になる可能性が大だ。
  子分たちに梯子(はしご)を外される議長というのも相当に格好悪いものがある。散散面倒を見てきたはずなのに、いとも簡単に崩壊しようとしている。議長をも超越する力が加わっていることを物語っている。この最大会派の分裂を主導したのは、副議長の戸澤だといわれている。これが前田を応援している創世下関のメンバーと組んで議長を目指しているのだそうだ。最近まで、「議長を支えているはずの副議長がポストを奪うのは品位が欠ける」とかの理由で、ひとまず繋ぎ役で誰かを議長にした後、戸澤議長体制に持っていく構想が話題になっていた。やる気になっていたのが80歳の亀田博(元市長)で、本人は相当に意欲を持っていたようだ。しかし、この数日で再び風向きは変わって、やっぱり戸澤が安倍派議長の本命候補になったようだ。
 同じ会派の親分の梯子を外して自分が議長にのし上がるのだから、これはすごい「志誠」の持ち主といえる。さすがは志誠会だ。
 こうした抗争が議会内の力関係を飛びこえて、全国市議会議長会の会長をしていた男すらひねりつぶして、外側の司令部の意図をくみとって動いていく。まさに安倍・林代理市政だ。関谷としても一世一代の踏ん張りどころだろう。議長として出張に出かける度に梯子外しがやられるものだから、今月の出張はすべてキャンセルしたという話も聞く。子ども議会に参加する子どもたちには見せられないような、ドロドロとした世界が動いている。
  議長選は市長選より10日前の3月2日。そこに向けて議会内は会派再編も睨んだバトルが勃発している。新年度予算そっちのけで議員たちがゴソゴソやっている。関谷戸澤という志誠会出身者同士の争いで、関谷が「日共」市議団にまで応援を依頼していると話題になっている。市民連合では神戸製鋼の菅原とJR西日本の山下がどっちにつくのか見物だ。亀田応援から戸澤応援に切り替わるのかどうか。濱岡と酒本はいまのところ態度保留組といわれ、会派決定に身を委ねるのだそうだ。
  議長選までに何らかの別の動きもあるかもしれない。関谷の周辺で起きた出来事といえば、最近、懇意にしていたブローカーのAKGが佐世保の件で逮捕されたという。借りた金、返した金等等の問題に急展開があれば議長選どころではなくなる。どのような力が働いているのか見ておくべきだ。

 郷土衰退の元凶浮彫り 行政私物化の性根

  「一将功成りて万骨枯る」を地でいった20~30年来の安倍・林代理市政を経て、郷土下関はすっかり衰退してしまった。この期に及んで、なおも似た者同士が「オレの下関」争いをくり広げている様は、彼らのなかにある一党一派による行政私物化の性根を暴露している。同時に、それこそが郷土衰退の元凶であることを浮き彫りにしている。話によると、水面下では大手パチンコ屋による投資によって、あるかぽーと一帯を観光リゾートにする話も持ち上がっているという。パチンコマネーによる街づくりのようだ。古い人のなかには「○○○○って、秘書だったKが天下ったところじゃないか」という人もいる。それが下関の未来かと思うと愕然とするものがある。
  これが下関のリーダーを選ぶ選挙なのか?リーダーになる人材なのか? と各所で市民は危惧している。盛り上がっているのは一部の人間だけで、みながしらけきっている。
  松村正剛も市長選に立候補して洋上風力反対を叫んではいるが、これは相当に風が吹かないと厳しいと誰もが見なしている。市長選挙で一番心配なのは、安岡地域においてこの3陣営が反対住民を引き裂いて運動をつぶしかねないことだ。前田なり中尾、松村のために住民たちは運動してきたのではない。どうして選挙如きで運動が破壊されないといけないのかだ。前田建設なり経済産業省が敵であって、目前の選挙模様だけに振り回されるわけにはいかない。漁師たちは体を張ってたたかっているし、長周新聞とて同じだ。気に入る気に入らないという個人的な思いだけでは国策とは対峙できない。それこそ政党政派や思想信条をこえて、みんなが団結しなければはね除けることなどできない。選挙が終わればノーサイドで、時間がかかってもいいから志を貫く方向に向かっていくことを願っている。
  洋上風力発電については低周波被害を心配する住民が多く、下関のリーダーたる市長がどのような決断をして対応するのかは重要なものだ。選挙でももっともわかりやすい争点で、反対を表明すればプラスになるのは間違いないのに、中尾、前田の両陣営は表明しない。そこまで彼らを抑えている力は何なのか、それすら表明できない男が、市長にふさわしいのかどうかだ。しかし、かといって松村に雪崩が起きないのも事実で、それはなぜなのかも考えないと話にならない。いずれにせよ、誰が当選しても反対させないといけない。市長になろうかという男たちが、その上の判断を気にして言葉を濁している。それは市長すら超越する権力が推進していることを暴露している。この本丸を叩きつぶさなければ勝負にならない。
  安倍林という選挙構図のもとで、企業は二股外交で大変な思いをしているところも多い。こんなことをいつまで続けるんですか? と大概の人間が思っている。今さら中央とのパイプといわれても、そのパイプがあった20~30年でこのザマではないかと。安倍にしても林にしても彼らはパイプではなかったのか? というのが率直なところだろう。上意下達政治の結果は既に出ている。郷土をよくするために、それこそ民主主義なら下から有権者が揺さぶるようなものにしないといけない。安倍・林支配の枠内だけで考えていたのでは展望にならないし、そんなものは永遠不変のものではないということを示さないといけない。

 

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