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長周新聞創刊50周年事業
『戦後60年と日本経済の現状』発行
               鎌倉孝夫氏の経済講演パンフレット   2005年11月15日付

 長周新聞社は、創刊50周年記念事業として9月に開催した、東日本国際大学学長で経済学者の鎌倉孝夫氏の経済講演会「戦後60年と日本経済の現状」の内容を、筆者の加筆のもとにパンフレットとして発行した。
   各界の問題意識にこたえる
 60年まえ日本人民は戦争の荒廃のなかから立ち上がり、平和で豊かな社会をめざして奮斗してきたが、戦後60年たった現在、その努力はことごとく踏みにじられ、日本社会は無惨で荒れはてた社会になっている。戦後60年たった日本社会や経済がどうしてこんなデタラメな状態になったのか、真に平和で豊かな日本をつくっていくために、このような現状をどう打開したらいいのか、といった人人の重大な関心事にこたえて、鎌倉氏が@戦後60年の日本社会、経済、政治・文化の危機、A悲惨な現実をもたらしている原因、要因はなにか、Bこの危機をどう克服し、新しい社会を創造していくのか、の三つの大きな柱で講演した内容を収録している。
 まず最初に「社会」、「経済」、「政治・文化」の大きく三つの領域でいま日本社会の現状がどうなっているかを分析している。
 「社会」の現状は、「人間・人間関係の解体化の危機」であるとしている。自殺者が七年連続して三万人をこえ、悲惨な殺人事件がひん発している。親が実の子を殺し、子どもが実の親を殺す。小学生が同級生を殺す。この社会が腐っており、とくに貧しいものにたいへん悲惨な状況が集中していると、現状を描いている。ホリエモンこと堀江貴文らに代表される自己中心的・社会性喪失の個個人が激増しており、そのなかで、基本的に連帯しなければならない市民・働く人人、労働者が連帯関係を解体されつつあることに警鐘を鳴らしている。
 「経済」の現状では、財政破たん、弱肉強食の競争のなかで、ものすごい格差拡大が生じているとのべている。いま日本は「1000兆円の国の借金」をかかえており、これは日本が太平洋戦争に突っこんでいった1940年代初頭の財政状況と同じであり、戦時財政なみになり「ほとんど国家の破たんといってもいい状況」であるという。
 ところがこの国家の破たんの反面で、巨大金融資本はぼう大な利益をあげている。アメリカ方式の導入のもとで、金融の証券化、ギャンブル化が進行している。そういうなかで格差が拡大し、所得の上位二〇%の層が全所得の約八割を得ている。賃金は下がり、零細企業の売上は伸びないなかで、大資本の利益は急激にふえているが、それは徹底したコスト切り下げ、リストラによるものである。
 「政治」面では、米軍事戦略下の軍事国家であると指摘している。マスメディアの腐敗、地域文化の破壊についてふれている。
 こうした現状をもたらしている原因について、まず第一に「現代の“帝国主義”、とくにアメリカ“帝国主義”こそすべての元凶だ」と明確にしている。
 その根幹は圧倒的な核兵器を中心とした軍事力であり、アメリカ一国の軍事力で全世界の軍事力の半分以上を占めている。とくに9・11事件以後、「テロ撲滅」「自由と民主主義」の口実で、「帝国主義」支配を全世界に展開している。
 アメリカのいう「自由」「民主主義」について、「民衆の、人民の民主主義ではない。市場の民主主義、お金が自由に動き回れる、売買の自由を保障するのが“民主主義”なのだ」とのべ、アメリカの「自由」は、資本の自由、搾取・略奪の自由であり、資本の権利が最優先であることを示している。これを「新自由主義」の名で全世界規模で拡大しつつある。しかも新自由主義には暴力が不可欠であることを強調している。
 つぎに、このアメリカ「帝国主義」に追随する日本「帝国主義」の野望についてのべている。戦後アメリカに保護育成された日本の金融独占資本は、いよいよアメリカを模範とする状況が拡大している。世界的規模でアメリカのドルの価値が下がり、ドル体制崩壊の危機に直面しているなかで、ブッシュ大統領の頼りは日本の小泉・竹中ラインだけになっている。日本の金融・財政政策はアメリカのドル体制を維持するための政策になっている。
 このもとで外交も、ひとにぎりの巨大独占の利益を追求する、アメリカと一体となった侵略国家になる危険性が高まってきている。
 悲惨な現実を生む二番目の原因・要因として「市場経済と資本」をあげている。これは小泉構造改革の基本であり、いままで資本ではできなかった分野、利潤追求では維持できない、しかし人間の生活維持にとって必要不可欠な分野である教育・医療・保健・福祉の分野の市場経済化・私企業化をはかるというものであることを指摘している。
 「労働」の分野においても、労働者を人間としてみるのではなく、「労働」という商品を売る、企業はその「労働」を買うという、売買契約で見て、切り捨て自由、解雇自由、人間の解体といってもいい状況がどんどんすすんでいることを直視しなければならないと、のべている。
 三つ目の要因として、現在の主役が株式・擬制資本になっていることをあげている。株式は、資本の最高形態であり、最高ということはあとがない資本主義であること、資本主義を発展させる新たな基盤がないことを提起している。金融改革は、あとがない資本主義の最後のあがきであることを指摘し、自分が価値を生み出す資本ではなくて、寄生虫のように、相手の資本をつぶし、その存立基盤である実体経済をもつぶす。寄生虫は寄生する相手が死んでしまえば自分が生きていく存立基盤もなくなる。そうしたら別の所に寄生しようとする。それ自身は寄生性、腐朽性のきわみで、「まさに資本の最後なのだ、いや、もう資本主義を最後にしなければならないということだ」と強調して訴えている。
 三つ目の大きな柱は、危機の克服――新しい社会の創造である。最初に「この現実を変えるということ、変革、革命の時期が来ている」ということを提起し、「ほんとうに人間が人間らしく生きていける社会を、わたしたちみんなの力で創造していかなければならない。いまそういう時期に来ている」としている。その担い手は労働者、勤労者であること、利己的利潤追求の活動をおこなう資本家たちは、社会的にはまったくむだな存在でしかないことを明確にのべている。
 世界的に見ると、帝国主義の支配と新自由主義に抵抗する労働者、勤労者の運動が台頭し、強まっている例として、ベネズエラのチャベス政権によるボリーバル革命をあげ、チャベス政権が「ほんとうに人間が人間らしい社会を築くには社会主義しかない」と明確にいっていることを紹介している。最後に「この動きと連帯しながら、この人間性破壊の現実に抵抗し、歯止めをかけ、人間が人間として生き、発展する新しい社会、社会主義を目標にかかげて連帯していけば、絶対に展望は開かれてくると確信する」としめくくっている。
 このパンフレットが、行きづまる日本社会の現状打開を求める労働者をはじめとする各界各層の問題意識に明確にこたえ、運動の飛躍を促すことは疑いない。
 (B6判64頁、300円)

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