トップページへ戻る

海外移転直撃し職ない下関
「働く場作れ」の声が充満
                 全市的な経済疲弊を加速      2012年10月26日付

 下関市ではリーマン・ショック以後の4年間で急速に経済の疲弊が進行している。全国的に進む製造業の国内工場閉鎖と海外移転。市内でも三井金属や三菱、神戸製鋼など製造業大手の縮小が、下請をはじめ各分野へ飛び火している。県内でもシルトロニック光工場、ルネサス宇部工場、美祢市でも三菱樹脂が美祢製造所の閉鎖を決めるなど、工場閉鎖があいついでおり、こうした周辺の動きともかかわって、市内の消費購買力の落ち込みはこれまでにないものとなり、商業関係にも深刻な影響を与えている。どの業界でもこうした大企業の海外移転に対する怒りが渦巻いており、「雇用をつくれ」の声は高まっている。
 
 三菱インド進出、MCSは閉鎖

 旧郡部の海岸に1人でポツンとたたずんでいた60代の男性は、1カ月前に地場大手の造船所を首になったと話す。次の仕事が見つからないまま郡部の漁村に戻ってきたが、「仕事を探そうにも、この年になってこの地域で仕事がないし、そもそも探す職安がない。明日からどうやって食べていこうかと考えている」といった。「どんどん60歳以上の人から切り始めている。今から失業者が増えてくる」と話した。
 造船関係では三菱が国内工場の縮小とともにインドへの進出を決め、50代の正社員を早期退職に追い込むなどしているが、今後他の造船所や下請などにも影響が出てくること、これまで現場を支えてきた60代以上の熟練工が首になって、再就職先がないことが問題になっている。また彦島地区だけでなく、長府の扇町や港町の工業団地、清末など東部地区でも、製造業の縮小で仕事がなくなっていると語られている。
 彦島地区で商店を営む婦人は、「最近店に来るお客さんが話していたが、三菱も仕事がなくて下請の人が首になって、次の仕事がないそうだ。林兼産業にしても正社員はほとんどいなくて、みなと(派遣会社)やアルギンの従業員がほとんどになっている。昔は60歳を過ぎても、よく働く人は残していたが、最近は一律に首になってしまう。お客さんも仕事がなくなり、“この年になって雇ってくれるところなんかない。どうしようか”と悩んでいた。今下関はどこも大変な状態だ」と話した。
 下関職安の統計数字では、9月末現在の有効求人倍率は1・0倍。県内他地区に比べると改善したかのように見えるが、6〜8月の3カ月間を見ても建設、製造、情報通信、金融・保険の分野では軒並み求人が減少した。「下関はもともと製造業が一割程度で、その半数が食品加工。工場閉鎖で失業した人は製造業の希望が多いが、それだけの製造業の求人がない」という。製造業の縮小で真っ先に解雇の対象になった60歳以上の熟練工など、年配の失業者も多くなっている。一方で求人が増えたのは医療・福祉や学習支援。とくに最近は訪問介護などの小規模な介護施設が乱立したことで、介護職の求人が増えたが、介護職は資格が必要であり、だれでもできる仕事ではない。
 多くの失業者が正社員として働ける仕事を探しているが、9月末現在で有効求人数約5000件のうち正社員の求人は約1000件と2割程度。正社員の求人がないため、仕方なくパート、アルバイトで再就職していく人も少なくないのだという。毎年2000人もの人口が減少していく根本に、働く場がないことがあると指摘されている。

 人口減少や流出も深刻

 大学四年の男子学生は、高校卒業時に就職先がなかったため、福岡の大学に進学した。大学を卒業したら下関に帰って来ようと思い、昨年の12月から今年の夏まで就職活動を続けてきたが、なかなか決まらないため、途中でうち切って公務員専門学校に宅建の資格をとりに行ったという。一度は下関での就職をあきらめて福岡の宅建業界に就職しようかと考えたが、「たとえ福岡で就職できても、人をだまして商売するようなもの。やることは目に見えている。地元から離れてそんなことをするのには抵抗がある」と、やはり下関に帰ろうと決心しているが、職がない。
 職安に仕事を探しに来ていた40歳の男性は4年前から再就職先を探し続けていると話した。以前の職場で、定年間際になった人を自主退職に追い込むために孤立させるなど、ひどい状況を見てきたので、正社員で最後まで安心して働ける仕事を探している。「食品の卸会社や水産加工会社などでアルバイトをしながらつないできたが、自営業の実家も楽ではないから、早く職を見つけて自立しないといけないと考えている。しかしこの年になるとなかなか職が見つからない」と話した。求人票には「正社員」と記載されていても、実際はアルバイトであったり、「性別不問」と書かれていても行ってみると「女性しかいらない」といわれることもある。「情報関係の会社に応募すると、6人の採用枠に30人近くが押しかけていた。職業訓練学校で一緒だったMCSの人も、いまだにアルバイトみたいだ。下関には本当に仕事がない」と語った。
 また就職できても非正規雇用。ある28歳の青年は、高校を卒業して就職したが、他県に飛ばされるのを断って会社をやめてその後、市内のほとんどの大手、そして中小も軒並み数十社あたったが、「正社員で雇うところがない」と話す。今は大手運送会社でアルバイトをしているが、毎月の収入は7、8万円。雇用保険をかけないように勤務時間に縛りがあり、バイトをしばらくすると次には契約社員になれるが、契約社員も雇用保険はつくが日給制なので給料は少ない。契約社員を何年かしてようやく正社員になる道が開かれるが、それもコネであったり、試験を受けさせないことが横行しているのだと話した。
 「働いても結婚もできないような低賃金で、非正規雇用を解禁した小泉内閣時期の失敗は明らかだ。今の下関では、働く場をつくることが最大の問題だと思う。市長や議員はそれをやらず、自分たちだけ高い報酬をもらって、視察といって韓国旅行に行ったりする。公共事業も地元発注をやらないで市外業者にやらせているのが問題だ。そういう内容をもっと市民に知らせてほしい」と話した。
 ある20代の青年は、関東の大手衣料メーカーで正社員として働いていたが、両親が失業したため下関に帰ってきた。しかし下関にある店はどこも業績が悪化しており、とうとうそこをやめて、小倉の店に契約社員で雇われることになったという。朝六時半に家を出て、夜帰るのが10時半になったり、休みのない週もある。非正規なので雇用保険はない。同メーカーはアジアにもたくさん店をつくっている。
 「従業員が働いて会社は成り立っているのに、こんなに従業員を大切にしない会社に先はない」と家族で話し合っていると語っていた。
 大企業は社会的責任などかなぐり捨てて、国や地域がどうなろうがもうけ第一で海外に移転していき、政府はそれを支える海外インフラ整備のため、つまり国内工場閉鎖促進のために何千億円もの税金を注ぎ込む。きわめつけがアメリカで、米軍再編のための費用をまきあげられるばかりでなく、米国債を購入してアメリカにまきあげられたカネは500兆円をくだらない。下関でも人工島やそれに連なる軍用道路などに巨額の予算をつぎ込む一方で、市民生活は緊急事態となり、たたかわなければ生きていけない現実をつきつけている。
 中尾市長の公約破りの市庁舎建設、海沿いへの消防庁舎建設、駅前にぎわいプロジェクトなどの大型箱物事業に市民の税金をつぎこむことはただちに中止させ、その資金を雇用の創出にあてること、市内の中小企業が請け負えるような業務を発注したり、農林漁業への労働力投入をおこなったり、失業対策事業を復活させるなどをただちに実行させなければならない。市長選を前に、すべての市民の共通利益に立った「働く場をつくれ」の大運動を巻き起こすことが待ったなしになっている。

 

トップページへ戻る