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「駆け込み寺」と化す児童クラブ
働く母親たち悩ます夏休み
               高い利用料払えぬ家庭も     2014年7月30日付

 子どもたちは夏休みの真っ盛り。一方、親たちにとっては長い夏休みは心痛が増える期間でもある。「少子化」問題が叫ばれるなかで、共働きで子どもを育てる家庭が増加し、子どもたちが過ごす児童クラブの存在はなくてはならないものになっている。下関市でも児童クラブの登録者数は割合が増えており、子どもを安心して産み育てることができる環境の充実が切実に求められている。働く母親たちの実情を聞いた。
 
 公的な体制の充実必須 行き場ない子こそ対応せよ

 2歳の娘と小学1年、5年の息子と高校生と社会人の5人の子を持つ母親は、夏休みに入る前、小学生の息子たちをどう過ごさせようかと考えた末、1年の子だけは児童クラブに入れることにした。
 夏休みが始まって10日余り、毎日が戦争のようだ。母親は朝5時には起きて児童クラブに行く1年生の息子の弁当と、5年の息子の昼食をつくりおきし、朝ご飯もそこそこに2歳の娘を7時40分には保育園に連れて行く。自営業で一日中接客をしながら、家や児童クラブで過ごす息子たちのことが気にかかって仕方がない。夕方4時に5年のお兄ちゃんが弟を児童クラブに迎えに行き、家に帰ったら必ず親に電話をかけさせるようにしている。このご時世、安全も心配だし、仮に猛暑で子どもが体調を崩したとしても仕事を抜けて対応できる状態ではなく「外で遊びなさい」と強くいうこともできない。ただ家にいればテレビやゲーム漬けになる。「それを考えると悪循環で、ストレスになっている」と話す。
 夕方になると、娘を保育園に迎えに行き、店をしめて家に帰るのはだいたい午後8時。夕食の支度をして食べさせればもう寝る時間で、ほとんど子どもとかかわる時間はない。
 「本当は夏休みの宿題の丸つけをしたあげたり、勉強も見てあげたりしたいけど平日は無理。日曜日しか休みはないので土曜日の夜や日曜日に宿題を見たりするよう心がけている。夏休みの過ごし方もお金しだいになっている。18歳の長男が小学校のときは学校がある時期は月1000円だったので気軽に預けられたが、今は月4300円になってびっくりした。少子化が問題視されて働く親は増える一方なのだから、働きながらでも預けやすく育てやすい環境にして、食費は別にして無料にするのが本当ではないか。毎日、日替わりで習い事に通わせる家庭もあれば、料金が高いからと児童クラブには入らず兄弟で家で留守番させたり、近くのおばあちゃんに頼ったりするところもある。みんな親は苦労している。うちも店を数日休んで遊びにでも連れて行ってあげたいと思うが、休めば収入が減るためその余裕がない。どこの家もこんな生活をさせているのだろうか。お盆ぐらいはどこかに遊びに連れて行ってあげたいと思うのだが」と話していた。
 母子家庭で3人の子どもを育てる母親は、深夜〇時から6時までコンビニのバイトをこなし、続けて配達の仕事をして昼前に家に帰っている。祖父母と同居しているので夜中は子どもの面倒を見てもらっている。夏休みも祖母が見てくれているという。他にも、昼間は事務職の仕事を抜けて子どもの昼ご飯を作ってまた職場に戻っているという母親もいる。また夏休みだけ塾や学研などの習い事、スポーツクラブや、スポーツ少年団などで時間を過ごさせたり、働く親たちの気苦労はたえない。料金が高いからと児童クラブに入らない子も少なくない。何かとお金がかかってやれないというのが親たちの実感となっている。
 そういうなかで家に親がおらず児童クラブにも行けない居場所のない子どもの存在も語られている。低学年の子どもを持つ母親は、子どもの友だちが家に来て「トイレ貸してください」といったままずっといるので、気になって「帰らなくていいの?」と聞いたところ「家に帰ってもお母さんいないもん…」という子どもの言葉を聞いてハッとしたという。「児童クラブの料金も払えないような子どももいる。こういう子どもを地域のなかでどう育てていくのか考えないといけないと思う」と語られている。また少し高学年になると友だち同士でかたまってショッピングセンターや公民館のロビーなど涼しい場所を探してゲームをしている姿もめずらしくない。
 子どもたちにとって「楽しい夏休み」のはずが、家庭の経済力によって社会経験の差や過ごし方も格差が大きくなっている実態を物語っている。

 低学年の30%が登録 共働き増える中

 働く親たちが圧倒的に増えているなかで、安心して子どもを預けられる公的な施設の充実が切実に求められている。
 下関市内には小学校42校の空き教室や敷地内に別棟が設置されて児童クラブが開設されている。夏休み期間中はとくに利用者が増え、小学1年生から3年生までを対象としており加入児童が70人をこえた学校はクラス分けされている。
 下関の児童クラブ設置の変遷を見ても、働く親がいかに増えているかがわかる。2000年まで、夏休み期間中は午前中しか開いていない児童クラブが多かったが、働く親が増え続け、終日の開設を望む声が強まるなかで2010年までの10年間ですべての児童クラブで朝8時から夕方6時までの終日開設となった。過去5年の7月1日時点の登録者数を見ると、2010年1791人、11年1712人、12年1664人、13年1678人、14年1733人。
 少子化で子どもの人数は減っているが、児童クラブに入る子どもの数は横ばいで、その比率は増えていることがわかる。市内の小学1年生から3年生の全児童数の30%が児童クラブに登録していることになる。
 ある学校では10年前に新1年生の児童クラブの登録が10人前後だったのが、今年は新1年生が50人になったことも語られていた。
 児童クラブは、正職員と嘱託職員が混在して働く役所と違い、保育士免許を持つ指導員(嘱託職員)が子どもたちに責任を持って担っている。なかには20年以上も児童クラブで働いている職員もいる。夏休み期間は臨時職員を雇って対応している。
 夏休み期間中の児童クラブの活動も、各指導員が工夫をこらし、午前八時から午後六時まで大まかなスケジュールが決められている。午前中の朝八時から九時までは学習時間で宿題や書写をする時間にあてられ、遊びの自由時間があり、お弁当を食べて午後からは一時間のお昼寝、その後はおやつを食べて自由に遊ぶ時間となっている。夕方には掃除の時間もある。生活のなかでリーダーを決めておやつを配って全員そろってから食べることや、食事のときのあいさつなどは厳しく教えるなど、集団活動で教育する場にもなっている。また定期的に工作や読み聞かせ、紙芝居、スイカ割り、消防体験など子どもたちがさまざまな体験ができるようにそれぞれのクラブで創意工夫して活動内容を決めている。
 「長い夏休みの時間の大部分を児童クラブで過ごす子どもたちなので、できるだけいろんな体験をさせたり、思いきり遊ばせたい。子ども会のない地域も増えるなかで異年齢で過ごすことも少なくなっているからなおさらだ」と語られ、愛情を持って育てている。また児童クラブの指導員が、母親たちの子育ての悩みの相談相手になったりと子どもを一緒に育てていくという温かい存在にもなっているようだ。
 親たちにとって児童クラブがありがたい存在であると同時に、高い利用料金についても共通して意見が出されている。夏休み期間中の利用料は7、8月のふた月で半日(13時まで)が7300円、終日では9300円となる(1日50円のおやつ代は別途)。10年前は学校がある時期は月1000円だったが、現在は月3000円(おやつ代込みで4300円)と大きく値上げされた。下関では今後、利用料金を3000円から6000円に値上げするという話も取り沙汰されている。他都市では学校ごとに児童クラブが別棟で整備され、無償でおこなっている自治体もある。
 来年度から全国的に児童クラブの対象児童を6年生まで拡大することが決まっており、下関では、施設面や職員の増員配置など大規模な予算も必要となる。児童クラブに通う子はもちろんだが、児童クラブに行けないような子どもたちに温かい目を向ける教育行政でなければならない。
 下関市では少子化は他都市と比べても急速に進んでいることが、市の将来にかかわる深刻な問題となっている。安心して子どもを産み育てる環境を公的に保障することが切実な要求となっている。

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