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諦め頼りの見切り発車
上関原発計画
              未買収地など障害の山   2008年10月27日付

 山口県の二井関成知事が今月22日、中国電力がすすめる上関原発計画の用地を造成するための公有水面埋め立て免許を交付し、建設手続きを一歩前に進めた。中電は年度内に原子炉設置許可申請を国に提出する意向を見せている。この間、世界的な原発バブル回帰の流れに乗って、ごり押し気味に事態を動かしてきたが、地元では祝島をはじめ全町で根強い反対世論が渦巻いており、岩国における米軍再編問題など一連の郷土を廃虚に導く政治にたいして、瀬戸内海沿岸・広島湾岸の反発はかつてなく高まっている。さらに金融恐慌が深まりを見せるなかで、最大のバックボーンであるアメリカ金融資本そのものが“環境・原発利権どころではない状況にも直面しはじめた。上関原発計画をとりまく情勢はどうなっているのか見てみた。
 今月20日、山口地裁にたいして祝島の漁業者74人が、埋め立て免許を出さないよう山口県を相手取って裁判を起こした。すると2日後に二井知事は慌てて公有水面埋め立て免許を交付した。中電から願書を受け取っていた二井県政は、「祝島から提出された意見書が1457通を数えたことに留意すること」「天然記念物であるカンムリウミスズメの調査を継続すること」「地震に備えて活断層の調査を行うこと」などを要求し、「決して喜んで交付したわけではない」といって許可した。漁業者らは許可取り消しを求める訴訟に切り替えた。
 県は予定地内の森林についても、中電が求めている「保安林の指定解除」と「林地開発行為の許可」を認める方向で関係機関を動かしている。審議会では問題なしと結論を出しており、既定路線のようになっている。
 2001年に電調審上程で知事同意を求められたさいにも、いかに原発が危険であるかをあげつらって同意したのと似ていて、紳士面して許認可を大盤振舞するのが二井県政の芸風になっている。そして知事同意と引き替えに中電取締役に知事の親戚である林孝介氏が就任。中電の筆頭株主でもある山口県(13・34%保有)が、同社の原子力事業にかかる許可を毎度乱発するのである。
 今後、事業者から国にたいして原子炉設置許可申請が出されると、原子力安全・保安院が「安全審査」を行い原子炉の設置許可を行うことになる。その過程で第2次公開ヒアリングが開催される。着工までの手続きには通常で約2年かかるとされ、立地条件や設計について「審査」に入る。ここでは原発を国家プロジェクトと位置付けて推進している国・監督官庁が、ゴー・サインを出すかどうか「検討する」仕組みだ。
 手続きとしては、いざ着工となると原子炉格納容器などの建設工事計画の認可、周辺建屋工事の許可など一連の「許認可」があって、その都度経済産業省や県の許可が求められることになる。
 地震であわやの大惨事にもなりかけた柏崎刈羽原発、最近になって地震専門家らが重大な活断層の存在を指摘しはじめた島根原発、六ヶ所村、伊方原発の前例が物語るように、一度つくってしまえば取り返しがつかず、いいかげんな調査でつくらせてきた国の責任が問われることになる。

 用地取得難航で撤回に 新潟・巻原発の例でも
 1982年の計画浮上から26年を迎えた。現状では、予定地の田ノ浦で穴を掘ったり近辺で断層調査をするところまで進行してきた。中電は当初約145万平方bとしていた計画用地を、反対派の土地(約8万平方b)を除外して137万平方bに縮小し、2001年に国の電源開発調整審議会(電調審)に上程。これは電力会社の尻を叩いていた国がハードルを下げて「最後の新規立地点」として基本計画に組み入れたものだった。その後は、「環境調査」に時間を費やしつつ、共有地裁判、神社地取得が最大の注目点として動いていた。海と山の権利をすべて確実なものにし、なおかつ地元の反対世論を封じ込めなければ原発などできないのである。
 世界的に見ても前例がないのが虫食い用地の多さで、炉心予定地を見下ろす正面の小高い位置に反対派のログハウスや祝島住民などが分割登記して所有している用地がある。祝島・山戸貞夫前漁協組合長が単独で所有している土地もある。炉心位置として巻き上げた神社地の隣も反対派地権者が所有しているほか、湾を囲む突き出た部分のほとんども未買収地だ。つまり、民有地が取り囲むように点在している。
 中電は2004年に四代正八幡宮所有の神社地を買収したことで、発電所敷地造成区域内の土地売買契約を終了扱いにしている。とはいえ、残り5%以上もの敷地内に残る虫食い用地を放置したまま建設計画が動くわけがない。隣接地に原発のようなものを建てられたら、その私有地はまるで無価値になるのは当然であるが、さらに有事の際には自衛隊による防衛対象になるような施設で、目と鼻の先に民有地が複数あるような原発は全国にも世界にも例がない。北朝鮮やイラクが原発をつくっていると騒いでいたが、第1級の軍事施設として厳重な監視下に置かれているのが常識である。地権者のあきらめを期待して手続きや工事を前倒しする作戦と見られている。
 未買収地の問題については、残り3%の用地取得が難航し、83年以降は安全審査が中断したまま計画撤回になった巻原発(新潟県)の例がある。現在では、Jパワー(外資が36・87%の株式保有)が青森県ですすめている大間原発のケースが先行しており、上関とも重なっている。
 大間原発は新規立地の先陣を切る形で国が強行しているもので、今年4月に原子炉設置許可がおりて5月に着工した。長年埋め立て造成工事に乗り出せず、過去18回の計画変更を繰り返してきた。その最大の要因は、132fの計画地のうちの2%弱の用地交渉が難航。とりわけ炉心建設予定地付近の土地(1%)を所有する1人の老婦人が、最後まで買収に応じなかったことにあった。
 原子炉設置許可申請が出されたのは99年で、国もハードルを下げて受け取った。見切り発車ではあるが手続きを前倒しする手法は上関と共通する。その間に用地買収をすませておくことが求められたわけだ。しかし地権者が手放さず、行き詰まった電源開発が経産省に「安全審査一時保留願い」(2001年)を提出することにもなった。そして2003年には買収をあきらめて炉心位置を200b移動させ、原子炉設置許可申請を再び出し直した。
 「着工」とはいうものの、今でも炉心から300b離れたその土地では、家族が畑を耕したりログハウスが建っている。原子炉設置許可がおりても、電気事業法に基づいた原子炉格納容器などの「建設工事計画」は認可されていない状態で、港湾工事など周囲の準備工事から手をつけている。それぞれの設備建設に工事計画の認可が求められ、国が許可しながらあきらめを誘って進めている状態だ。上関では用地だけを見てみるならば、頑強な地権者は1人や2人ではない。用地問題ではそのほかに、送電線用地も必要だが、論議にも浮上していない。上関大橋も原発の大型トラックが行きかうのには耐えられず、つくりかえなければ話にならない。

 占有海域も難航は必至 中電は隠すが
 また中電が隠している問題は、埋め立て地沖合2〜3`にわたって、占有海域をつくること、つまり現在の漁業権消滅海区だけでなく、その外側の漁業権消滅手続きが不可欠であるという問題である。現在の計画では、埋め立て海域だけを漁業権消滅しているだけで、専用港湾を建設する計画すらない。
 北海道の泊原発の例を見れば、専用港をつくり、埋め立ての岸壁から沖合1422bにわたって漁業権消滅区域をつくっている。さらに沖合1710bまでは漁業制限区域をつくっている。消滅区域は119f、制限区域は98fにおよんでいる。伊方でも他でもそうなっている。燃料や核廃棄物など、数千d規模の貨物船が優先的に使用できなければならず、漁船が操業しているから沖合で待機しておくというわけにはいかない。防衛という意味合いも含まれている。
 現状では、上関は消滅海区すなわち埋め立て護岸までの准消滅海区については漁民が操業することも可能である。よその事例と比較したとき、四代田ノ浦の場合は、祝島とのあいだの海域は航行禁止となってもおかしくないが、そうすると占有水域は地先300bから沖の共同漁業権区域にかかることになる。したがって、祝島をふくむ漁協八支所すべてで総会における3分の2以上の同意による特別決議が必要となる。祝島が同意の議決をしなかったならば、漁業権の消滅はできない関係だ。

 GEも金融恐慌で危機 最大の原発メーカー
 景気が冷え込み、人口減少も著しい。新規の電力需要は増えないのに「原子力立国にするのだ」と資源エネルギー庁などが鼻息を荒くしてきたのは、要するに親分のアメリカで住宅バブルがはじけ、次なる市場として環境・原発バブルを煽っているからにほかならない。世界の原子力産業を牛耳っているゼネラル・エレクトリック(GE)に投資していたゴア前米副大統領のような男が「地球温暖化」「不都合な真実」などと叫んで回る由縁である。
 上関原発の炉心をつくることになっている日立製作所の親分にもあたるのがGEで、07年7月には日立と原子力部門を統合。同社は、金融やエネルギーなどを事業展開する複合企業体で、世界最大の原発メーカーだ。ただし金融危機が深まるなかで、今月に入って約1兆5900億円の増資を実施すると発表した。経営基盤がぐらついているのである。アメリカ国内では、30基ほど建設する計画をブチ挙げていたが、ウォール街が融資を渋りはじめる現象も起きている。
 「温暖化ガス」から発生した排出権がサブプライムローンと同じように、金融商品としてヨーロッパなどの市場では取引がされはじめ、二の舞いだと経済の専門家などからバカ扱いされはじめてもいる。次は環境バブルというのが洞爺湖サミットであったが、そのような金融工学は大破綻をきたしている。
 原発市場では2020年までに世界で約150基の新設が見込まれ、日立―GE連合のほか、東芝―米ウェスチングハウス(WH)連合、三菱重工業―仏アレバ連合の三陣営が受注競争を繰り広げてきた。しかし世界のバブル経済が破局を迎えている中で今後の展開は決して無関係とはいえない。
 バカみたいに設備投資してきた日本国内の企業にも影響は大きい。
 電力自由化で四苦八苦している中電は、島根原発の建設費用として毎年1000億円近い社債を発行してやりくりしている状態。同社が8000億円ともいわれる上関原発1号機、2号機の建設費用を積み上げて、無駄な電力をつくり続ける意味はあまりない。
 国、さらには世界的規模で原発を強行する流れがあるなかで、中国電力の上関原発問題も重要な局面を迎えている。26年、町民のなかにあった人情とか共同精神はズタズタにされ、町は中電に乗っ取られ、そして若者も年寄りも暮らせない町になってきた。あとは野となれの国策は、近隣で見れば岩国を極東最大の米軍の出撃基地にしようと米軍再編を進めているのが対米従属の売国政府である。瀬戸内海沿岸、さらには広島湾岸一帯のたたかいとつながって、下から運動を盛り上げていくことが求められている。

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