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上関原発強行に動く政府
県知事選の重要争点に
               アメリカと財界が乱造へ     2008年6月20日付

 中国電力は17日、山口県にたいして、上関原発建設計画の用地造成(14万平方b)のための公有水面埋め立て免許の申請手続きをおこなった。許認可を握っている二井県政の対応が問われている。今春には、中電が住民から奪った共有地の裁判で、最高裁が反対住民らの上告を棄却(5人のうち2人の裁判官は反対)して敗訴が確定。それを受けて行き詰まっていた詳細調査が進展するなど、にわかに「国策」として動きを見せはじめた。島根原発で活断層騒動や耐震補強であがいている中電の意図というより、国の側から新規立地で強行突破する力が働いているようである。隣接の岩国で極東最大の米軍基地増強をやり、目と鼻の先の地震地帯に国内最大クラスの原子力発電2基をつくるという、国土を廃虚にしかねない無謀な計画に、広島湾岸も含め、全県民的な怒りの世論が高まっている。

 全県的な怒りの世論強まる
 上関町内では、「二井県知事が埋立申請を許可すれば、その1〜2カ月後には125億円の漁業補償のうち残り半額が配分される」とか「原子炉設置許可申請も近い将来出されて2010年に着工」と1部の推進勢力が浮き足だっている。8月の県知事選挙をまえにした中電の動きにもなっている。
 この何年来か、のらりくらりの詳細調査がおこなわれ、着工は7回の延期を繰り返してきた。陸と海の条件整備が進まず、共有地、神社地、漁業補償などの裁判を抱えていたほか、地元同意についても選挙のたびに六対四の比率は崩れず、手をつけられる部分から無理をして進めてきたというのがありのままの姿だ。「国内最後の新規立地点」といわれ、根強い反対世論との攻防戦はいまも続いている。四代正八幡宮の所有していた土地の所有権移転登記抹消を求めた訴訟、漁業補償の訴訟も判決は確定していない状況だ。
 電力自由化による外資の乗っ取り懸念や耐震基準の強化などで、近年、電力会社は明らかに原発建設に及び腰になっている。国内最大の東京電力は柏崎刈羽原発を襲った地震によって赤字決算に陥り、1基につき100億円の補強を強いられたり、さんざんな目にもあっている。
 上関原発を進めてきた中電としては、80年代の時期は、広島本社から広報のエリートなどがやってきて、まさに電力会社主導で推進をやっていた。ところが87年の選挙で拮抗状態に押し戻されると頓挫。90年代は、平井知事主導で祝島の山戸氏とタッグを組んだ推進運動が、立ち腐れていた計画を引き継いだ。
 2000年を前後するあたりから、用地買収や漁業補償などの動きが活発化し、国はハードルを下げて公開ヒアリングを開催。二井県政が知事同意に応じるなどの動きがあらわれた。ところが2区では原発推進だった佐藤信二元代議士が落選するなど、県民の怒りも強烈なものとして表面化。原発を強行するわけにいかない力関係を示していた。
 ズルズルと引っ張ったまま、市町村合併になると国や県は上関町を特別扱いせず、合併、解散の方向に誘導する対応となった。中電の煮え切らない対応に腹を立て「協力金を出せ」と主張した片山元町長は首を切られ、加納町長が誕生すると選挙違反が摘発されて辞職に追い込まれるなど、町内推進派は後ろ盾を失ったような迷走状態に直面。柏原町政になってからも、他町との例外はなく予算もカットしてきた。推進派としては、選挙では圧勝で町民全部が原発を引き止める格好にしなければ逃げてしまうという関係にもなっていた。
 ところが昨年夏くらいから、中電は渋って出さなかった協力金3億円を上関町に寄付する動きを見せ、直後の町長選挙では、「賛成、反対で争うのはやめて、みんな推進で一致して町作りを」「圧勝だ」「原発はもうできるのだ」と柏原陣営が叫んで回るなど、これまでと違う様相があらわれた。今年3月にはさらに5億円の寄付をするなどした。柏崎地震があり、さらに米軍岩国基地の大増強計画があり、爆破攻撃、ミサイル攻撃対策も当然検討しなければならない。東電ですら、電力自由化のなかでの地震で、経営がどうなるか心配されるほどで、中電にとって、上関で建設する無謀さは明らかだが、田ノ浦につながる町道を拡幅したり、もろもろの動きが進行していった。

 利権に群がる財界 原発メーカーが受注競争・世界的規模で
 上関原発計画の動きの背景には、世界的な原発情勢の変化がある。スリーマイル島事故やチェルノブイリ事故で、原発は世界的に撤退の流れとなっていた。しかし、再び“原発”回帰の流れとなっている。国が原発推進にこだわるのは、アメリカの要求にほかならない。現在の動きの特徴は、日本の原発メーカーが世界的規模での受注競争に色めき立っている状況がある。
 「地球温暖化」を前面に押し出して、「原発は運転中に二酸化炭素を出さないので、火力発電所に比べて温暖化対策として有効」という理屈もくっついた。さらに原油価格の高騰で、それが長期化するという予測である。原油価格の高騰は、投機資本のつり上げであり、ドルの下落などが原因だが、ブッシュ政府はこの条件で、低燃費自動車開発とかの新市場の創出、原子力開発推進などに利用する姿勢である。
 世界的には今後20年間で150基以上もの原発立地が見込まれており、そのうちアメリカ国内で30基の新規立地計画がある。日立・GEは米国で新規の原発6基を受注しており、先行している東芝・WHも複数基受注。建設工事までひっくるめると、1基につきざっと4000億円規模のカネが動くとされ、諸諸の費用を含めるとさらに莫大なカネが動く。150建設するとなると、だいたい約100兆円の新規市場創出と指摘されている。
 国内で原発特需を謳歌してきた原発メーカーは、2006年には東芝が米ウエスチングハウス(WH)を5400億円(株式の77%を取得)で買収し、日立が米ゼネラル・エレクトリック(GE)と事業統合、三菱重工業は世界最大の原発企業であるアレバ(仏)との関係を強化するなどしている。この3陣営が、日本を足場にして世界中で火花を散らしている状況だ。
 東芝は古河電気工業と住友電気工業が出資している原子力発電用燃料会社である原子燃料工業を買収し、ウランから機器にいたるまでの一貫体制の構築も模索。「傘下の米ウエスチングハウスが全株式を取得する」ことになっており、外資が握る格好。また、昨年は世界2位のウラン埋蔵国・カザフスタンで、ウラン鉱山の権益を取得するなど、鼻息が荒い。
 各社は原発関連設備を大幅に増産する方針も打ち出している。三菱重工業は兵庫県内にある高砂製作所(原子力タービン)と二見工場(原子炉容器)の2工場を増設するなど、3年間で約500億円を投じて生産能力を2倍にする方針。東芝も10年度までに約500億円を投資する意向で、横浜にある京浜事業所(原子力タービンの生産拠点)を増設し、あらたに新規工場の立地も検討している。日立製作所は、日立市の工場増設に約200億円を投じることになっている。
 経済産業省・資源エネルギー庁は米国の原発立地に参画する日本企業への金融支援まで検討している。

 振り回される電力会社 乗っ取り狙う外資
 国内では新規立地の必要性も乏しいばかりか、いまや電力会社も莫大な投資とバックエンド事業をともなう原発建設を「国策」として強いられながら、電力自由化競争に放り込まれ、株式を外資に握られて振り回される電力会社すらある。
 燃料のすべてをMOX燃料にする、フルMOXが計画されている大間原発を建設しているのはもともと国策会社で政府が過半数の株式を持っていたJパワー(電源開発)であるが、数年前に上場民営化されたのち、昨春以後は、筆頭株主で9・9%を握る英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド(TCI)に揺さぶりをかけられてきた。大幅増配の要求はもちろんのこと、TCIから役員2人を派遣することや、経済産業省からの天下り役員の廃止などが要求で、今年春には、株を20%まで買い増しするために、経済産業省に承認を求める動きに発展した。経産省は認めない判断を下したが、欧米金融資本などからは「閉鎖的だ!」と非難を浴びる始末となった。
 アメリカが日本政府に要求する「年次改革要望書」のなかでは、今後外資が電力事業にもさらに自由に参入できるよう求めており、規制がより緩和されるなら、中電のような田舎電力はたちまち買収されておかしくない。仮に上関原発が建設されても、原発ができる前に外資に乗っ取られる可能性すらある。

 巨大地震の危険も 地震地帯の日本・自殺行為の新設
 さらに日本列島は有名な地震地帯で、近年は柏崎刈羽のように原発が襲われる事態が頻発している。活断層が直下を走っている原発が、つぎつぎと明らかになっている。電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原発の周辺にも、未知の活断層の存在が指摘され、近い将来に操業を開始する青森県六ヶ所村の核燃料施設下にもマグニチュード(M)8クラスの大地震を引き起こす地下活断層があると、東洋大・渡辺満久教授や広島工業大・中田高教授らの研究グループが指摘している。再検証が急務だとして問題になっている。
 運転停止になっている高速増殖炉「もんじゅ」の直下にも長さ約14`の活断層があることが発覚。島根原発の真下にも22`におよぶ宍戸断層の存在が明るみに出た。浜岡原発は東海地震に襲われることが確定している。日本はもともと地震列島なのをわかっていて、無謀なプルトニウムの墓場をつくってきたのである。
 「山口県地震防災対策推進検討委員会」(会長・三浦房紀山口大学工学部教授)は、今月に入って、東南海・南海地震や県内の主要な活断層による地震被害想定調査の報告書をまとめた。今後30年以内に発生する確率が50〜70%と見られている東南海・南海地震、40%の安芸灘・伊予灘地震のほか、伊予灘に横たわっている中央構造線断層帯、「いつどこで起きるかわからない」とされている県内の主要な活断層が引き起こすと予想される地震被害の規模が想定された。とりわけ県東部は甚大な被害が想定される地域でもある。
 上関周辺も地震地帯で、瀬戸内海の西部から豊後水道付近にかけては、プレートの内部で起こる深い地震が多いことから、地震予知連絡会はこの地域を特定観測地域に指定している。しかも愛媛県と山口県の間に位置する伊予灘には、巨大な中央構造線断層帯が横たわっており、伊方原発は施設が老朽化していることもあって耐震性危険度は国内ダントツ、立地点としての危険度は浜岡原発に継ぐ地点とされている。その、目と鼻の先の対岸に建設するといっている。
 西日本では近い将来起きることが必至の南海地震が近づくことで、地震活動が活発になると指摘されている。専門家の研究では、日本の西半分を震源としたM9クラスの空前の破壊力をともなった巨大地震すら起こりうるとの指摘もある。
 このような地域に、いまになって原発を建設することが、いかにあとは野となれで無責任極まりないかを示しており、全国につくってきた55基の原発とあわせて自殺行為であるかを物語っている。岩国は米軍基地の前線基地をおいて核攻撃の盾にする、上関は原発で郷土が吹き飛んでも構わぬというものであり、全県民的な世論を結集して計画を白紙に追い込むことが求められている。きたる知事選の重要争点になっている。

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