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「勝ち組」の正体は詐欺師
ライブドア事件
             小泉構造改革の産物    2006年1月24日付
 
 ライブドアが証券取引法違反として東京地検から摘発され、人だましの詐欺師商法が暴露された。何十万人という個人投資家が買っていた数千億円ものライブドア株は一瞬にして紙切れに変わってしまった。ホリエモンこと堀江貴文社長は、プロ野球球団の買収、フジテレビの買収、衆議院選挙で刺客として小泉首相に持ち上げられるなど、「小泉構造改革の旗手」「勝ち組の象徴」「時代の寵児(ちょうじ)」として商業マスコミがあおってきた。そのほんとうの姿は、投機屋であり、詐欺師であったわけである。これは、単にホリエモン個人だけの問題ではなく、小泉構造改革の正体をあらわしている。市場原理主義といい、構造改革といって、労働者も農漁業も、中小業者も働くものが食っていけないような状態におかれる一方で、大企業には何十兆円もの余剰資金がたまり、経済は投機をこととするバクチが支配するようになっている。それを支配しているのがアメリカの金融投機資本である。

 零細商店や家庭まで影響
 下関市内の青果店主Aさん(50代)は昨年、知り合いにすすめられて株をはじめ、ライブドアにしぼり1000株、約70万円で購入したばかりだった。Aさんの青果店は親の代からひきついで、脱サラして30年以上になるが、郊外型大型店の乱立などで売上は落ちた。なにか副収入はないかと、なけなしの金をはたいて買ったライブドア株だった。「かたいところだから絶対もうかる。小泉首相も持ち上げているし、まちがいない」との説明に、株の知識がないAさんは、テレビや新聞報道にも押されて踏みきった。
 ライブドアへ東京地検の強制捜査ニュースで、あわてて売ろうとしたが遅かった。17日から連日ストップ安で、週末までに2億7600万株の買い手がつかない状態。「この七〇万円はわたしの小遣いだったが、いまは紙切れ同然になってしまった。損益計算であげようにも、売却しないとできない。監理ポストに入って上場廃止になるかもしれず、少しでもお金にかえたいのに…」と、がっくりした表情で語る。
 「学生がバイトでためた金をライブドア株につぎこんで、すってんてんになってしまった」(大学教員)、「ライブドア株をすすめてくれた友だちは、七六万円もかぶった。めいにも買わせており、たいへんなことになった」(50代主婦)、「100万円近く損した。ライブドアはウソをついて株主がだまされた」(中小企業の経営者)と、零細商店や家庭まで大きな影響をあたえている。
 発行済み株が約10億5000万株で、株主数は22万人(昨年9月末)にのぼる。堀江社長とフジテレビや一部金融機関をのぞいてほとんどは個人株主で、主婦や学生などこれまで株とは縁のなかった一般層が多かった。昨年12月末に都内でおこなわれた株主総会には、子ども連れからお年寄りまで7500人がつめかけるなど、大衆の資金を動員してきた。
 1月16日の時点で、時価総額は7300億円にのぼりグループ6社をふくめると1兆円をこえていた。ところがわずか4日間で、約5200億円も下落して半分以下となった。これは政令指定都市である北九州市(人口約100万人)の年間予算が、消し飛んだことに匹敵する。青果店のAさんは、「ホリエモンをあおってきた小泉首相は、責任なしではすまない」と、やり場のない怒りをぶつける。
 ある流通業の経営者はのべる。「ライブドア本体の年間売上は93億円しかない。ライブドアグループでも780億円。このへんの流通業や金融業でも、年間売上が数百億円ならゴロゴロしているが、株価がけた外れだ。ライブドアは時価総額が1兆円こえたバブル状態で、1日にストップ安とストップ高を3回くり返したりと、株価操作は明白だった。証券関係者は危なくてあつかえないものを、だれがあおって株を買わせてきたのか」と指摘する。
 
 時価総額は1兆円 売り上げの実態は90億円程度
 企業としてのライブドアの実態は90億円程度の売上、グループでも金融関係をのぞけば200億〜300億円ほどでしかない。その株価が1兆円になるというのが、インチキである。
 JR西日本の年間売上は約9000億円で、従業員数は4万4000人とライブドアグループの18倍もいる。ところが、時価総額は9400億円でライブドアより低い。時価総額が同規模のものでは、フジテレビで約9000億円、スズキが1兆1600億円、神戸製鋼所が1兆1500億円となっており、上場企業の多くよりライブドアが上回っているのである。
 ライブドアは1996年にホームページ制作等の会社として、資本金600万円で発足。これが10年のあいだに1兆円の株にふくらんだのである。2001年7月から3年間で株式分割を計4回もおこない、上場時に比べて株数を3万倍にした。株式分割は100分割すれば、計算上の1株は100分の1の価格に下落する。しかし新しい株券が印刷されて出回るのに50日間かかるため、株が品薄状態になり急騰することになる。とくに少しのプラス材料の情報でも入ると、株価が極端にはね上がる。
 そしてふくらました時価総額を背景に、株式交換により現金を使わないで企業買収をやりまくった。昨年3月に日本グローバル証券(現ライブドア証券)を買収して、同9月には中古車販売大手のジャック・ホールディングス(現ライブドアオート)、同11月にはカタログ通販大手のセシールなど、十数社をつぎつぎに子会社化した。
 これに呼応して株価が上昇。昨年1月はじめに時価総額は約2550億円(本体のみ)だったが、今年1月16日までに約7300億円とふくれあがっていった。企業買収というのが、技術革新や新製品など生産性向上はまったくないし、それらの企業を経営するためではなく、株価を上げ、あぶく銭を増やす手段なのである。
 ライブドアは、株については素人の個人に的を定めて株を購入させていった。堀江氏が世間の注目を浴びる行動はそのためであった。1昨年にはプロ野球の球団買収に名乗りを上げて、注目を浴びた。そしてフジテレビの買収騒動である。こうして商業マスコミが「時代の寵児」「変革者」と持ち上げ、なかには革新系も進歩者であるかのように持ち上げた。
 そして、昨年8月には郵政解散後の衆院選に出馬を名乗り、小泉首相は「時代が変わってきた。時代の変革期だと痛感した」「政治に関心がない層も堀江氏が出馬すれば関心を持ってくれる。エールを送りたい」と持ち上げ、小泉刺客の切り札のような扱いをした。武部幹事長、竹中大臣などが特別のてこ入れをしたことは周知の事実である。これらの騒動を起こすたびに、マスコミなどに持ち上げられて、株価をつり上げ時価総額をふくらましていった。
 
 新制度導入で急変 日本企業の買収促進
 ライブドアのわずか10年での急膨張は日本市場を米国型にかえていく構造改革の産物である。企業買収を現金ではなく株式交換でよしとする制度も、1997年の持株会社制度の解禁、国内での株式交換制度、会社分割制度、社外取締役制度など、あたらしい仕組みの導入によってはじまった。このような制度改革は外資による日本企業の買収促進のためのアメリカの要求であり、「対日投資会議」や「日米投資イニシアチブ」にしたがっておこなわれた。
 ライブドアは、楽天の三木谷氏や村上ファンドと同じく六本木ヒルズ(東京都港区)を拠点にする「IT長者」の1人としてもてはやされた。同ビルにはハゲタカファンドのゴールドマンサックスが最上階にかまえているほか、リーマン・ブラザーズなどがいる。これらから巨額の資金調達をして、ニッポン放送の経営権をめぐり東京証券取引所の時間外に株大量取得をおこない、対立したフジテレビから千数百億円をふんだくった。
 今回、強制捜査の対象となったのは、2004年11月に旧バリュークリックジャパン(現ライブドアマーケティング)が自社株を100分割したさい、すでに現金買収していた会社を、株式交換であらたに買収するとウソの情報をながして期待感をあおり、短期間でバリュー社株を数十倍に値上がりさせた、「風説の流布」が疑われたものだった。
 そして粉飾決算で赤字経営を黒字に装って、株購入者をだましたといわれている。90億円しか経営実態のない企業が、7000億円もの株の時価総額というのが、たいへんな粉飾である。
 金融関係者の話では、「ウソ情報や粉飾決算などは、いまはあたりまえのことで、めずらしいことではない。それより金がすべてで、働くことがないがしろにされる社会が問題ではないか」と警鐘をならす。ある大学の教員も「汗水たらして最低賃金で働いている人がいる一方で、株売買だけで暴利をむさぼっている人がいる。株価至上主義でもうけがそちらに流れていく。日本全体でみると外資のハゲタカファンドなどが、ごっそりともうけをとっていく。生産がまったくないがしろにされている」とのべる。

 大企業の金余りが背景
 ライブドアの急膨張の背景には、金融機関をはじめ大企業が膨大な金余りをしていることがある。上場企業では80兆円から90兆円の余剰資金が遊んでいるといわれている。それは、労働者、農漁民、中小業者などがさんざんな貧困にあえいでいることによるものである。賃金や家計は九七年をピークに下がりつづけている。リストラが金余りの原因である。いわゆる「勝ち組」なるものは、「負け組」といわれる勤労者に寄生したものである。かれらの暴利は、勤労者が働くことによって作り出した富を唯一の源泉としている。
 さらに全国5カ所の証券取引所が発表した株式保有状況調査によると、2004年度末までに上場株式の4分の1が外国人の手に握られている。金融部門が異常発達した米国企業が、巨額な時価総額をかさに上陸して、日本の大企業が買収攻勢にさらされるのは時間の問題といわれている。
 2005年6月に通常国会で可決された「新会社法」は、ライブドアのニッポン放送株をめぐる騒動をへて、「外国株を対価とする合併」いわゆる三角合併解禁を1年凍結した。同年7月の「日米投資イニシアティブ」では、「米国政府はこのような延期は、不必要であり、好ましくないと考える」とすぐさま圧力をかけていた。アメリカ流儀を先取りしたライブドアは、先走ったことでアメリカのハゲタカ貸本の機嫌を悪くしていたのである。
 ライブドア事件は、小泉政府がすすめる構造改革が、アメリカが日本経済を丸ごと支配し搾り取るための要求をすすめるものであり、日本を詐欺師経済で支配し、生産を破壊するデタラメなものであることを暴露している。
 株と株の売買では富はなにもつくり出さない。生産労働でつくり出した富を奪いあっているだけであり、社会の進歩には有害なだけである。ライブドアに象徴されるあぶく銭商法に対立する、生産労働を担うものの論理を強めることが、社会をまともにする唯一の方向である。

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