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基盤乏しい「改憲3分の2超」
参議院選挙結果
             正面からの論争避けた自民    2016年7月11日付

 10日に投開票を迎えた参院選は、昨年の安保関連法の強行可決に続く改憲策動を軸にして米軍再編、原発再稼働、TPPなど貧困化と戦争国家づくりという重大な争点をはらんでおこなわれた。全国的に深刻な政治不信が覆い、与野党ともに鮮明な対立点を掲げないうえに信頼が乏しく、有権者にとっては票の持って行き場がない白けた状況に終始した。与党側は低投票率依存で改憲勢力の3分の2を確保するという姑息な選挙戦を展開したが、政党議席だけでは足りないため無所属をとり込んでかつがつ「改憲勢力3分の2超」を確保した。選挙では正面から改憲に触れることはなく、争点をぼかして「勝利」を演出したが、その基盤はきわめて脆弱であり、沖縄や東北など基地問題、TPPなどを巡って争点が鮮明だったいくつかの選挙区では現職閣僚2人が落選するなど、自民党暴走政治への痛烈な反撃機運を突きつける結果となった。
 
 強さではなく弱さのあらわれ  欺瞞する力失った政党政治

 全国の投票率は54・70%で、前回の52・61%をわずかに上回ったが、戦後4番目の低さとなった。選挙戦に入ると同時に、NHKをはじめとするテレビ各局、毎日、朝日、読売、日経、産経など商業新聞はこぞって「自民党は単独過半数うかがう」「改憲勢力で3分の2獲得の見込み」などの世論調査結果を1面トップでくり返し報じ、「与党支持が大勢」という印象を与えて有権者を白けさせた。約5割の投票棄権者から投票所に向かう意欲を奪って投票率が下がれば、組織票を固める与党が勝ち抜けるという姑息な選挙戦術で、財界の意を汲むメディアの統一した思惑を感じさせた。
 選挙期間中に毎日のようにお茶の間に垂れ流された舛添東京都知事の辞任騒動も、有権者の政治への不信感を増幅させ、電波ジャックによって興味関心を参院選からそらす意図を伺わせた。およそ半数の約5000万人が投票行動を棄権した。それは、組織票をもつ与党を有利にしたが、反面では全政党が圧倒的な有権者から相手にされず、弱体化して浮き上がっている姿を露呈した。政治的に魅了して引きつける力が乏しく、与党も「寝た子が起きない選挙」頼みで低投票率に依存し、大衆を動員する力がまるでないことを暴露した。
 選挙戦過程では、首相みずから「改憲は争点にあらず」といい、原発、TPPなどの焦眉の重要争点は一切表には出さず、与野党ともに「アベノミクス」や「消費税増税の延期」など経済政策の評価をめぐる批判の応酬合戦に終始した。改憲の具体的な内容について一切触れない改憲勢力について、メディアもそれ以上の追求はせず、対立点を鮮明にしない野党側の弱腰ともあいまって有権者にとっては争点が見えづらく、切実感からかけ離れた空中選挙の様相を呈した。
 そのなかで自民党は、非改選議席とあわせて単独過半数となる57議席を目標に掲げ、メディアは改憲を唱える自民、公明、維新、「こころ」の4党で改憲発議に必要な3分の2となる78議席を獲得することを最大の注目点とした。宗主国アメリカのために日本の国益を差し出し、果ては戦争の弾よけにするという売国政治への全国的な批判は高まるものの、野党も含めて既成政党はみな親米派であり、目の前の選挙構図からして期待できるものが何もないという条件性のもとで、いかに安倍自民党に鉄槌を下し、アメリカや財界の代理人に終わりを知らしめるかが重要な焦点となった。
 開票結果は、自民党が55議席(改選50)で単独過半数の57には届かず、公明党14(同9)、民進党が32(43)、「日共」6(同3)、維新7(同2)、社民1(同2)、「生活」1(同2)、無所属5(同4)で、「こころ」「元気」(同1)、「改革」(同1)を含むその他の政党は獲得議席ゼロとなった。78議席を目標にした自民、公明、維新、「こころ」の改憲四党の合計は76議席にとどまり、政党議席だけでは「3分の2」に届かなかったが、自民党が無所属の当選者1人を追加公認し、非改選の無所属議員4人を加えて「到達」とした。
 改憲をめぐっては民進党も最初から立場はあやふやで、いくら「野党共斗」といったところで国民の利益を守って憲法を守り抜くといえる政党勢力は見当たらないのが実態だった。選挙結果にかかわらず、国政を下から揺さぶる大衆主導の世論と直接行動をつくり出す以外にそれを保障する力はないことを突きつけた。

 基地、原発、TPP 争点鋭い所で与党落選

 選挙区では、米軍基地、原発、TPPなど具体的に鋭い争点を抱えた地域であいついで与党候補が落選した。
 とくに、米軍基地問題を最大の焦点として現職閣僚と無所属新人の一騎打ちとなった沖縄選挙区では、沖縄・北方担当大臣、内閣府特命担当大臣で自民党沖縄県連会長の島尻安伊子に対して、元宜野湾市長の伊波洋一(無所属)が10万6400票差を付けて圧勝。2010年選挙で唱えた普天間基地の「県外移設」の公約を撤回し、辺野古新基地建設を推進してきた島尻は、当時の25万8946票から1万2000票以上減らして落選した。これによって沖縄県選出の衆・参6議席すべてから自民党議員が姿を消すこととなった。
 一方、普天間基地の閉鎖・撤去と辺野古新基地建設反対を訴えた伊波は、前回当選の糸数慶子(社大党)の得票に約6万2000票上乗せした35万6355票を集めた。米軍属による残虐な女性暴行殺害事件が起こるなかで、戦後71年にわたって米軍支配のもとに置かれてきた沖縄を新たな核攻撃基地としてアメリカに売り飛ばす安倍政府への県民の怒りを突きつけるとともに、あらゆる権力・金力を動員した分裂策動のなかでも揺らぐことのない基地撤去、「安保」破棄の強烈な意志を示した。
 東北地方でも、安倍政府の震災復興政策、原発政策、一次産業潰しのTPP参入などへの怒りを反映して6県中5県で自民候補が落選した。「TPP断固反対」を掲げながら公然と参入へと舵を切った自民党に対して、東北五県の農政連は推薦を取り下げるなど、従来の支持基盤が足下から急速に崩壊しはじめたことを浮き彫りにした。
 原発事故の影響でいまだ9万人もの県民が避難生活を強いられている福島県(1人区)では、自民現職の岩城光英法務相が、民進候補に3万票差を付けられて落選。沖縄に続いて現職閣僚の落選となった。選挙過程で安倍首相みずから現地入りし、野党共斗批判に終始しながら、「原発は終わった。争点はアベノミクスの貫徹だ!」などと演説してまわり、東北地方で唯一農政連の推薦をとり付けるなど組織的な締め付けをおこなった。対する野党の現職候補も、原発廃炉やTPP反対など明確な対立点を打ち出さず、有権者を混乱させたが、福島県を原発廃棄物の処分場にし、事故の収束や郷土復興にも責任を持たぬまま再稼働へ舵を切る与党の棄民政策への怒りは強く、与党候補が叩き落とされた。
 宮城県でも、安倍首相、岸田外相、稲田政調会長、石破地方創生担当相など政府閣僚が直接乗り込み大大的な応援を展開したが、自民党現職の熊谷大(党青年局次長)は、野党統一候補の桜井充(民進現職)に約4万票差を付けられ完敗。震災から5年経つなかで26兆円もの復興費を投じながら生活や産業基盤の復旧は放置し、東京のゼネコンが食い物にしていく構図が暴露されており、「東北復興」「地方創生」の言葉だけを弄び、地方をことごとく食い潰していくことへの被災地の底深い怒りを突きつけるものとなった。
 岩手県でも、自民党県支部長の新人(公明推薦)が落選し、野党統一候補の新人(元県議)が当選した。山形県では自民党の新人(JA県本部副本部長)が県内約7割の25市町村首長の「支援」をとり付けながらも落選。明確に「TPP反対」「改憲阻止」を掲げた野党統一候補の女性候補(元農水省職員)が約12万票もの大差を付けて当選した。
 六ヶ所村中間貯蔵施設を抱える青森県でも、原発政策やTPPをめぐる自民党の裏切りへの批判が渦巻き、自民現職の元総務副大臣が落選した。今回から3人区となった北海道では、民進2議席に対して自民は1議席にとどまり、これまで農協組織を「集票マシーン」としながら公然とTPPを推進する自民党への強い逆風と急速な支持者離れを示す結果となった。自民支持に転向した鈴木宗男率いる大地も正体が暴露され、全力支援した自民党候補は落選した。北海道、東北地方では全9議席中自民党は2議席しか取れなかった。
 また、柏崎刈羽原発を抱える新潟県では、しのぎを削る接戦の末、自民党現職を抑えて「反原発」を掲げる野党統一候補の森裕子(生活新人)が2000票あまりの差で当選した。
 原発問題をめぐっては、同日おこなわれた鹿児島県知事選でも「川内原発の停止」を公約とする新人の三反園氏(元テレビ朝日コメンテーター)が、自民、公明両党の支援を得て組織戦を展開した伊藤祐一郎現知事を破り、県民の生命を犠牲にして再稼働に踏み切る政府与党への強烈な県民世論の怒りを突きつけた。
 その他、接戦となった1人区では、長野県で自民現職の若林健太(参院農林水産委員長)を民進新人の杉尾秀哉(元TBSキャスター)が下し、山梨県でも、元民主党副幹事長が票割り候補として配置されるなど攪乱工作のなかで、民進新人の女性候補(社会福祉法人理事長)が自民新人(元県議会議長)に約2万票差を付けて勝利した。岡田・民進党代表の地元三重では僅差ながら「改憲阻止」「TPP反対」を訴えた民進党の現職候補が自民新人を破り、大分県でも自民リードの下馬評を覆して民進現職が当選した。接戦となった選挙区の投票率は、長野で62・86%、山梨58・83%、新潟59・77%など、いずれも60%前後に迫っており、与党敗北の可能性がある選挙では投票率が上がった。投票率上昇が与党にとって致命傷となることを物語った。「与党優勢」の内実は低投票率頼みの低レベル当選であり、全国的に渦巻く切実な国民要求を汲み上げて誠実に実行する勢力があらわれるなら、局面は劇的に覆るという要素を感じさせる動きとなった。
 非改選を含む参議院の勢力全体では、自民党が公示前の115議席から121(当選後に追加公認した無所属1を含む)に、民進党が60から49、公明党は20から25、「日共」が11から14、維新が7から12、社民は3から2に、「生活」は3から2、「こころ」は現状維持の3、「元気」は3から2、無所属は14から11となった。
 選挙結果は、有権者の半分が棄権し、既存の政党政治への期待も幻想もないシビアな評価を示すものとなった。同時に、アメリカのための戦時体制づくりに奔走する安倍暴走政治への強烈な批判が強まるなかで、その受け皿が乏しいという限界性を示した。「野党共斗」についても自民党以上に支持基盤が乏しく、とくにアメリカ民主主義崇拝を根底にして「護憲」や「民主主義」を唱え、大衆から浮き上がった勢力が「共斗」したところで、現在の政治状況を根本から打開しうる対抗勢力とは見なされなかったことを示した。
 改憲勢力「3分の2超」の実態としては、全有権者における得票率20~30%程度であり、その基盤はきわめて脆弱である。議会政治は欺瞞する力を失い、国民世論と直接対峙することを迫られることになる。米軍再編、原発推進、TPP参入による国益売り飛ばし政策など具体的な戦時体制作りへの反撃機運は各地で熱気を増しており、この全国的な趨勢は抜け殻となった政党政治の枠を超えてさらに高まっていくことは疑いない。

 

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