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生誕100年記念 金子みすゞ祭
              子どもたちに伝わる詩の心  2003年3月13日付

 この日の金子みすゞ祭は、午前10時から展示室で子どもたちの作品の展示が開始されたのをはじめ、午後からは大ホールで下関少年少女合唱隊、下関市民ミュージカルと園児たち、田村洋とみすゞバンドによる出しものがおこなわれ、レストランの一角では「ワークショップ」がおこなわれた。このみすゞ祭に多く人人からカンパが寄せられ、当日も多数の市民、子どもたちがつめかけたことは、その詩作のほとんどをおこなった下関でみすゞがいかに多くの市民に愛されているかを示すものであった。

 子どもの絵を前に語りあう
 このみすゞ祭で、参加者の目をひいたのは子どもたちの作品の数数である。とくに小中高生平和の会(代表・今田一恵、高校生代表・本田多恵、南香世)が「金子みすゞさんに親しもう」としてとりくんだ「平和教室」の約100点の作品には、多くの参加者が足をとめ、1つ1つの作品にじっくりと見入っていた。
 会場では絵を見る人が、絵とともに書かれてあるみすゞの詩を読みながら、また母親が手をひく子どもに読んであげながらすすみ、「ジーンときました」「感動して涙が出ました」と感想を語りあった。平和の会の小・中・高校生たちとあちこちで語りあう輪ができ、会場には温かい雰囲気が流れた。
 2人連れの年配婦人は、「みすゞさんの詩に書いてあるのは、昔はみんなが経験したこと」と語り出し、絵に描かれている「おかし」の詩を読みあげながら「弟のおかしで、悪いと思いながら、とってみて、おいてみて、それでも食べてしまって、お母さんに怒られたものだった。にがいおかしだった。わたしたちの世代はみんないわれてきたことだ。みすゞさんはそれを文章にしてつぎの世代に伝えているのがすばらしい」と話した。そして最近の子どもは豊かな時代に育ってこういうことがわからないのではと思っていたが、このように絵にしてもらってうれしいと話しあいながら、「いまの子に相手のことを思う気持ちをぜひもってもらいたい」と期待を語った。
 別の年配婦人2人連れも、絵のなかの「おかし」や「犬」を読んで「よく怒られていた怖いおばさんが、大好きな犬が死んで悲しんでいる。それを思って自分もちょっとさみしくなった。あるある、こういうこと」と爆笑しながら、「こんなところを詩に読めるってすてきだ。みんながもっている気持ちだから。みすゞは材料を生活のなかに求めているし、やわらかい心をもっている」と話した。そして「この詩が好きといって絵に描いた子どもにも、気持ちの面で共通項があるということがわかる。それがまたすてき」と喜んでいた。
 ある被爆婦人も「みすゞのやさしい詩に絵がついたらもっとひきたっている。『お魚』の詩は魚が泣いているじゃないの。詩を読んで絵を描いたその子どもの、やさしい気持ちがよく出ていて心に響く」とのべた。
 子どもたちの絵が展示されているということで、親子連れで、また祖父母をふくめた3世代で会場を訪れる人も多かった。絵が展示されるのがうれしくて、家族を大勢ひっぱってきた子もいた。北九州市から来た母親は「小学生のうちの子は『すずめの母さん』を描きました。学校で先生がみすゞの詩を指導してくださり、参観日には暗記して朗読しているのに驚きました。絵もみんな上手だと思います。詩をもとにして、自分たちの想像で描いた絵なのに、どれ1つとっても同じ絵がないし、色づかいもとても明るくきれいなのがすばらしい」と語った。
 会場に自分自身の作品も出品しているという女子学生2人組は、「子どもたちがみすゞの詩の内容をストレートに、すなおに表現しているのを、とても新鮮に感じた。自分たちが絵を描く場合、第三者にどううまく見られるかと狙って描くようなところがあるし、自分でひねって、自分のフィルターをとおして、自分たちの好きな世界にとじこめてしまうようなところがあると思った。子どもたちの絵に学ぶことが多かった。子どもたちの絵は、普通の美術館で見る絵よりよっぽど迫力があった」と感動を語った。
 50代の婦人は、「以前金子みすゞをテレビで見て、若くして死んだその人生があまりにかわいそうで、きょうもここに来ることを躊躇(ちゅうちょ)しました。でも、きょう子どもたちの絵を見て、心が洗われるようでした。子どもたちが詩の感動をストレートに表現しているのがいい。知らない詩がいっぱいあったので、タイトルだけでもひかえておこうとメモをしていたところです」と、みすゞの詩と人生を正しく顕彰する重要性を語った。
 平和の会の高校生たちによると、訪れた人たちから「1年生でもしっかり描いているね」と話しかけられるとともに、「いろんな学年の子の絵があるけど、どういうふうに描いていったのか」「ここにある絵は、各学校の絵のうまい子のものだけをまとめて展示しているのか」と質問されることが多かったという。高校生たちが「平和教室として小・中・高生約100人が一堂に集まって、みすゞさんの詩を何回も何回も読んで、感想を交流したりして描いた。大きい子は小さい子を援助して描いていったし、絵が嫌いだった子ものびのびととりくみ、“はじめて満足した絵が描けた”といっている」と説明すると、「だからこんな絵が描けるのか」「詩を何回も読んで味わうのがいいんですね」「絵と詩がいっしょにあったのがよかった」「みすゞの詩は子どもの心にすごく響く。その子はどう受けとめたのか、1つ1つの絵から感じられて、すごくよい」と反応が返ってきた。そして「あなたたちがみすゞの詩をもっともっと広げてね」と励まされたという。
 みすゞの詩を味わい、その心を自分たちのなかでしっかりと受けとめて表現した子どもたちの作品に、会場では「きょう1日だけで終わらせるのはもったいない」「みすゞゆかりの唐戸などで、ひきつづき展示を計画しては」という声があちこちで上がっていた。

 下関詠んだ詩まとめて朗読
 午後2時からは市民会館内のレストラン特設会場で「ワークッショップ・金子みすゞの下関」がおこなわれた。これは市内で活動しているあおやま文庫、あかね会、おはなしの森文庫などの母親たちのグループが共同して準備したもの。下関を詠んだみすゞの詩41編を小冊子にしたものをもとに、音楽をバックに、まず母親たちが朗読し、会場からも子どもたちや中年の男性が飛び入りで朗読するという、心温まるとりくみであった。

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