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国会飾りに官邸暴走の体制
安倍内閣
             米国直結の戦時国家体制   2006年9月29日付

 安倍内閣が26日に発足した。新内閣は閣僚を「論功行賞」人事で固める一方、首相補佐官を2人から5人に増やし、官房長官、官房副長官などにも側近を配置し、国会は付属物のような位置となって、「官邸主導」政治体制を強めることを前面にうち出した。首相官邸を米ホワイトハウス型に変え、アメリカ側との相互連携を強化すると表明した。選挙の洗礼をまったく受けず、自民党が決めただけの安倍総理が、憲法を改定する前に、憲法に反する大変更をやりはじめた。官邸主導政治というのは、戦争などの急変事態に対応する体制であり、米ホワイトハウスの指示が迅速に実行できる体制である。

 集団的自衛権行使容認が目玉
 安倍首相は26日の就任記者会見で「小泉首相が5年間すすめてきた構造改革を引き継ぎ、加速させて、補強させていきたい」と強調。「日米の同盟関係は日本の外交安全保障の基盤。日米同盟を互いの信頼関係を高めていくことで強化したい。そのためにもお互いが信頼感をます、双務性を高めていく必要もある。お互いいつでも話ができる体制を構築したい」とのべた。
 27日にはブッシュ米大統領に電話し「小泉首相と同様に改革を進めて日米の同盟関係を強化したい」と、忠誠を誓った。米大統領は、「より強いパートナーになれる自信がある」「キャンプデービッド、ホワイトハウス、別荘のあるクロフォードでも、来たいところをいってくれれば歓迎する」といい、11月に日米首脳会談を開くことを決定した。
 閣僚人事の重要ポストにはアメリカ直結の議員が配置された。内閣の要である官房長官にはアメリカハーバード大学ケネディスクール(行政大学院)同窓会長で、親米議員をとりまとめる塩崎恭久議員を配置。拉致問題担当相を兼任した。このケネディスクールはアメリカが世界各国に送り込むリーダーを養成する公共政策大学院。前学長が「日米同盟強化」を主張してきたジョセフ・ナイで、CIA(アメリカ中央情報局)東アジア担当だったエズラ・ボーゲルなどが教壇に立った。同学院出身者は日本に400人おりCIAなどから直接指示を受ける関係にある。竹中平蔵氏もケネディスクールの出身者だった。
 この配下に@国家安全保障、A経済財政、B教育再生、C拉致問題、D広報、の重視する5分野で首相補佐官を置いた。このうち安保、経済、教育の3分野では日本版米国家安全保障会議(NSC)、教育再生会議を新設し、経済諮問会議は強化する。この諮問会議に決定的な権限を持たせ、ブッシュ政府の年次改革要望書などの要求を、自分たちの会議で決めたようなふりをして実現させていく体制である。26日には、首相補佐官を補佐して首相直属で政策の企画立案にあたる官邸特命室も発足させた。
 26日の閣僚名簿発表で、真先に紹介されたのは、官房副長官3人と5人の首相補佐官で、閣僚の方は後回しとなった。官邸が主役で、各省大臣と官僚組織はその格下となり、論議は諮問会議などでやって、国会はますます飾り物という関係となった。憲法で規定された三権分立などは、憲法改定前に変えてしまうというものである。

 首相補佐官は側近配置
 官房副長官には歴史教科書問題で「自虐史観」反対派の下村博文氏、小泉内閣の拉致問題特命チーム議長だった鈴木政二氏を配置した。
 首相補佐官は国家安全保障問題担当がテレビキャスター出身で英語がペラペラという小池百合子氏。経済財政担当は安倍氏直結の政策集団NAISグループの根本匠氏。拉致問題担当は安倍首相が「私以上に被害者家族より」とみなす中山恭子氏。教育再生担当は自虐史観反対を掲げて教育基本法改正を叫ぶ山谷えり子氏。広報担当は、NTT出身でメディアやインターネットを操作する専門家の世耕弘成氏である。規制改革・構造改革推進の中心となる経済財政相にもケネディスクール出身の政策研究大学院教授の大田弘子氏を配置した。いずれも安倍氏の側近で固めている。
 安倍首相は「官邸機能強化」の具体策を盛り込んだ内閣法などの関連法改正案を、来年の通常国会に提出する方針。5人の首相補佐官に官邸スタッフへの指示・命令を出せる権限を与え、内閣参事官(課長級)以上の内閣官房幹部は首相主導で人事を決める政治任用ポストにし政策立案機能を強化しようとしている。

 戦争を急ぐ新内閣j 「改憲」も公約・外交も暴走の危険
 安倍内閣はなにをやろうとしているのか。その最大の柱は日米同盟重視である。この手始めに11月に期限切れを迎えるテロ対策特別措置法延長を臨時国会で成立を急いでいる。安倍氏は「米国が展開する“テロとの戦い”をともに進めるというメッセージを送るためにも重要視する」と主張している。
 アメリカの要求にこたえる目玉が、集団自衛権の容認。すなわちアメリカへの攻撃を自国への攻撃とみなしアメリカのために武力参戦するというものである。集団的自衛権行使については「いままでも政府で研究したわけだがさらにしっかり進め結論を出していきたい」と強い意欲を示している。
 改憲について「しっかり政治スケジュールに乗せていく」とのべ、5年以内の改定にむけ改憲手続きを定めた国民投票法案を審議中。自民党「新憲法草案」は第1章の「天皇の地位、国民主権」の項では国民主権を削除し、第2章の「戦争放棄」は章題を「安全保障」に変更。「戦力不保持」「交戦権の否認」を規定した9条2項を削除し「内閣総理大臣を最高指揮者とする自衛軍を保持する」と変える。
 防衛庁の省昇格法案は自衛隊の海外派兵を本来任務へ格上げするとともに、防衛庁の権限を格段に強める。法案は内閣府の外局と位置づけられてきた防衛庁を独立した「防衛省」に変更。海上警備行動などを発令するとき、内閣府を通さずに閣議開催を要求できるなど、軍事作戦の事務手続きを簡素化する。
 外交できわだった特徴は、北朝鮮拉致問題への異常な力の入れ方である。拉致問題担当相を設置し塩崎官房長官が兼務、拉致問題担当の首相補佐官をおき中山氏をあてた。閣僚にも拉致問題、北朝鮮排外主義派が多数を占めた。北朝鮮ミサイル問題で「敵基地を攻撃せよ」「先制攻撃せよ」と叫んだ連中が主要メンバーとなり、朝鮮排外主義をあおり実際的に武力行使にも進む危険性が大きい。

 「愛国」装い売国心強制
 もう1つ重視しているのは教育である。安倍首相は首相就任の会見で「まずは教育基本法の改正案を成立させ、内閣に教育再生会議を発足させたい」と強調した。「戦後生まれ初の首相として、連合国軍総司令部(GHQ)の主導で作られ、戦後民主主義的な思考様式を規定してきた憲法や教育基本法を見直す」と主張してきた。GHQの主導をブッシュの主導で変えるという意味である。
 今国会で成立を狙う教育基本法改悪は「教育の目的」の項に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛する」という文面で「愛国心」を導入。この「愛国心」は、アメリカが日本を植民地的に支配している現実は容認する売国であり、アジア・世界各国を蔑視する排外主義を意味する。「敵の攻撃から国を守る」というインチキで、アメリカのための戦争で肉弾になることを意味する「愛国心」である。
 閣僚などには「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書採択を働きかけてきた議員の会会員から、元事務局長の安倍首相、会長の中川昭一氏をはじめ、高市早苗沖縄・北方相、下村博文官房副長官、教育担当の山谷えり子首相補佐官が入った。下村副長官は「自虐史観の歴史教科書はやめさせる」といい、山谷氏は「いまだにレーニンの言葉を守っているんでしょうか、自虐的な内容の教科書をつくっている」と主張している。この自虐史観批判は、中国アジアへの侵略を正当化する一方で、アメリカへの自虐主義というインチキである。
 教育を競わせるために学校間競争をあおる「教育バウチャー(利用券)制」導入や、いいなりにならない教師を辞めさせる「教員免許の更新制」導入なども公約に掲げた。大競争、差別・選別の地獄に子どもたちを押し込めて、ホリエモンや村上ファンドのような点数を稼ぐエリートの養成と、大多数のバカをつくろうというものである。これらは、アメリカと財界の要求にこたえて、安上がりで命知らずの侵略兵をつくろうというところに最大の眼目がある。

 米国の為に市場も開放
 経済政策では「人材育成」「イノベーション(革新)」「オープン」を強調。「国を開いていき海外からの投資を促していく」とのべ、アメリカの市場開放要求にこたえ、日本市場を外資にまるごと差し出す意図を示した。具体策は、「よいヒト、モノ、カネを世界から集積するためのインフラ整備」とし、大手外資のもうける基盤整備はするが、国内の失業者や中小業者はたたき落とす機会しか与えず、あげくは自殺に追い込むものである。これもアメリカと財界の要求である。
 さらに都道府県までつぶす道州制に3年間で道筋をつけると強弁。地方交付税改革の骨格では地方交付税に成績主義を導入し、自治体による政策の成果に応じて交付税を増やす方向。税制改革では増税の前に徹底した「歳出抑制」で自己負担を拡大し、来年秋から消費税をふくむ抜本的な税制改革論議に入るとしている。「社会保障制度の改革、医療制度の改革、まだやるべきことはある」とのべ、医療、福祉など公的に保障すべきものを徹底的に切り捨てる方向である。
 12月15日までの81日間の日程で臨時国会が始まったが、自民党は教育基本法改悪に加え、テロ特別措置法延長を最重要課題としている。防衛庁の「省」昇格法案、「共謀罪」を新設する組織的犯罪処罰法改定、改憲にむけた国民投票法案なども早期成立をはかっている。
 共謀罪新設(組織的犯罪処罰法改悪)を急いでいる。これは戦争に反対する行動はおろか、そのような「話をした」だけで「非国民」扱いし連行・処罰する、デタラメな弾圧立法である。殺人でも強盗でも犯罪が起きるか、凶器を買うなどの準備行為があって犯罪とされてきたが、なにも行為のない段階で「疑わしい考えをもっていた」といって処罰する。法務省は「めくばせ、うなずきなど身体的なサインでも共謀は成り立つ」としている。
 安倍内閣は、小泉体制を継承して、米ホワイトハウスの支店のような首相官邸主導政治体制をつくり、民主主義の破壊と、戦争政治を実行するものということができる。
 安倍内閣は、メディアの「高支持率」という宣伝とは裏腹に、実際は極端な不人気、要警戒政府とみなされている。予想される安倍内閣の暴走は、人民世論の一層の転換を促し、独立と平和、繁栄を求める人民世論と運動をひき起こすことは疑いない。

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