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国民守る軍か米国守る軍か
イージス艦が漁船に衝突
                  回避義務守らぬ自衛艦       2008年2月20日付

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」(全長165b、7700d)が、新勝浦市漁業協同組合(千葉県勝浦市)所属のマグロはえ縄漁船「清徳丸」(同12b、7d)に衝突・沈没させる事件が発生した。千葉県南房総市の野島崎の南約40`の太平洋上で時間は19日午前4時頃。清徳丸は船体が中央付近でまっ二つに引き裂かれて大破。乗船していた漁師の父子2人が行方不明となり、漁協関係者や家族などを中心に懸命の捜索が続いている。自衛艦は1988年7月にも潜水艦「なだしお」 が釣り船に衝突し乗客30人を水死させている。自衛隊は「国民を守る」 軍隊か、アメリカを守る下請軍隊かを鋭く問う事件である。
 
 漁船大破し漁師父子行方不明
 船が所属する新勝浦市漁業協同組合川津支所の見解によると、清徳丸は19日午前2時頃、仲間の船7隻とともにマグロはえ縄漁のために出港。伊豆大島でマグロのエサとなるサバを釣ってから三宅島経由で漁場の八丈島へ向かい、同日午後9〜10時頃に帰港する計画だった。漁協が海上保安庁から一報を受けたのは午前4時45分ごろで、無線を打っても反応はなかったという。仲間の安否を気遣い50隻近くの漁船が捜索のためすぐ現場へ向かった。
 現在、行方不明の父親(58歳)は地元では「アワビ取りの名人」 といわれ、約15年前に脳梗塞で倒れて以後も、船に乗っていた。同乗していた息子(23歳)は父親を気遣って高校を2年で中退して漁師の仕事を手伝うようになっていたという。
 一方、イージス艦のあたご(乗員・300人)は昨年11月から今月上旬まで、ハワイ沖で弾道ミサイルを撃ち落とす海上配備型迎撃ミサイル(SM2)の装備認定試験をやった帰り道で、19日に横須賀基地に入る予定にしていた。イージス艦は、高性能レーダーで探知した、敵の航空機やミサイルなどの情報を大型コンピューターで瞬時に処理する最高度の探知能力を持つ。米空母の護衛、弾道ミサイル防衛(MD)などが主任務で、上空と海上の10個以上の目標に同時対処でき、レーダー波の探知能力は対空なら100`をこす。事故当時、艦橋に約10人その左右に洋上監視の乗組員がいる通常の当直態勢で、レーダーも正常に作動していたといわれる。高いステルス機能を備えたイージス艦を漁船側が認識できないことはあっても、イージス艦側が漁船を認識できないことはあり得ない関係のなかで事件は起きている。漁船は大破し、あたごはひっかき傷ができた程度でほぼ無傷だった。
 さらに指摘されているのは清徳丸の左側面が真っ二つになっていることから、イージス艦側が「回避義務」 を無視し清徳丸の左側面にほぼ直角に激突した事実である。
 海上を航行する関係者のなかでは、2隻の船がすれ違う場合、右側通行が原則。航路を横切るときは、相手船を右側方向に見る船に回避義務がある。しかも漁をおこなっている最中の漁船には常に優先権があり、本来ならイージス艦側が針路を譲らなければならないのは当然だった。
 しかしイージス艦は直進する漁船にほぼ直角でぶつかり大破させている。清徳丸とともに出港した別の漁船の船長は「四時過ぎに衝突した場所の近くを大きな船が正面から向かってきて通り過ぎた。レーダーと目視で確認してよけた。イージス艦だと思う」 と漁船側がよけて、危うく難を逃れたことを証言している。イージス艦はたるみ状況か漁船をよける気などなかったとみられる。「漁船などそこのけ」 の国民生活無視、米軍防衛をはじめとする軍事行動優先の意識が支配していると疑わざるをえない。

 普段から船が多い海域 事故現場
 事故のあった現場付近は黒潮が流れ、マグロ、カジキ、カツオの好漁場となっている。同時に大型タンカーや貨物船、東京港から北海道に向かうフェリーの通り道であるため、漁業・海運関係者はとくに注意が必要な地域だと指摘している。現場付近を監視する海上保安庁・東京湾海上交通センターによれば湾を出入りする船は1日約700隻。とくに明け方は、漁船も多く、荷役をおこなうために湾内に向かう貨物船も頻繁に通るもっとも渋滞する時間帯。
 海自艦や米艦船による衝突事故は、30人の犠牲者を出した八八年の潜水艦「なだしお」 による釣り船撃沈事故以後も頻発している。海自艦が起こした民間船舶に衝突した事故は92年から今年までのあいだに、青森、京都、山口、沖縄、広島、宮崎沖などで6件。01年2月には米海軍の原潜グリーンビルが県立宇和島水産高校の実習船えひめ丸を撃沈し、実習生など9人を死亡させた。
 このたびイージス艦がおこなった海上配備型ミサイルの実験は日米政府が米本土防衛の盾にするためにすすめるMD(ミサイル防衛)網整備の重要な柱となっている。

 強まる米軍下請の性格 米軍再編下の自衛隊
 MDをめぐっては2003年12月に日米政府がMDシステム導入を決定し、@迎撃ミサイル、Aレーダー、B指揮統制・通信の3分野で整備を進めてきた。防衛省のミサイル整備計画によるとSM2より攻撃能力の高いSM3を2010年度までに「こんごう」 を含む4隻のイージス艦に搭載。イージス艦「あたご」 のミサイル発射実験もその一環だった。
 PAC3はすでに配備した入間基地、習志野(千葉)、武山(神奈川)につづいて、3月に霞ケ浦(茨城)に配備する。さらに今年度中に浜松基地高射教導隊(静岡県)、2009年度に饗庭野(滋賀県)、岐阜、白山(三重県)、2010年度に福岡県の芦屋、築城、高良台の各基地にも配備し、全国にミサイル配備網を張りめぐらす計画。自衛隊基地は米本土防衛基地と化している。
 同時進行で、アメリカはすでに青森県に配備している早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」 を九州にも配備することを要求している。レーダーは米軍再編によって空自車力分屯地(青森県)に配備されたが、1昨年7月に日本近辺にミサイルが飛来したとき一発も補足しなかった。理由は「米本土に到達する可能性がない」 からで、米側もレーダーの役割について「米本土へ向かうミサイルの監視と米軍基地に向けられたミサイルの監視・追尾」 と明言している。アメリカ主導で進めている「ミサイル防衛」 の目的には、「日本国民の防衛」 など最初から含まれていないのである。
 そして米政府が今、日本に要求しているのは飛んできたミサイルを撃ち落とすシステムではなく、ミサイルを発射直後に破壊するシステムへの技術開発である。上昇段階にある弾道ミサイルを戦斗機からレーザー光線をあてて破壊するもので米国側が実用化に向けてハッパをかけている。「朝鮮のミサイルが飛んでくる」「国防」 と騒いで進行している現実は「日本を守る」 どころか、「日本を狙わせる」 ものであり、日本本土からミサイル攻撃をさせ、アメリカの身代わりとしてその報復攻撃も受ける体制である。イージス艦はそうしたアメリカ本土防衛のための、最新鋭の軍艦として強化されてきている。
 以上のような米軍下請という自衛隊の性格が強まるなかでの事故であり、日本の国民の生命、財産を守るものかどうかが問われざるをえない。

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