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国民世論の歴史的な転換示す
参院選結果が示すもの
             全国のたたかう力に確信    2007年8月1日付

 参議院選挙は、小泉、安倍政府と続いた構造改革路線および日米同盟にもとづく戦争と貧困と専制政治にたいして国民の側が鉄槌を加え、自民党政府を歴史的な大惨敗に追いこんだ。民意を無視して暴走してきた安倍政府は死に体となった。人人は日本中が同じことを考えていたこと、どこでも反撃の世論が圧倒したことを確信した。安倍首相は主権者によって不信任の審判を受けたが、「辞めない!」と開き直り、なおさら怒りを買っている。この選挙があらわした特徴点、全国的な大衆世論の中身、さらに今後の展望などについて考えてみた。

 機能不全になるほどの打撃 安倍内閣
 選挙期間中、「私を選ぶか、小沢代表を選ぶかの選挙だ」といっていた安倍首相は、選挙で敗北すると「政権選択の選挙ではない」「内閣は改造するが辞めない」といい、「改革を進めていくことが使命なのだ」といって続投宣言。自民党内では青木幹雄参院議員会長や中川秀直幹事長らが役職を辞任しながら、党としては安倍続投でまとまる動きとなった。主権者である日本の国民が選挙でどんな審判を下しても関係ない、民主主義のイロハもない姿であるが、それこそ選挙で敗北した内容であった。
 自民党大惨敗の結果、消費税や改憲問題など、財界やアメリカ政府が要求してきた案件について、「やりたいことは参院選後に本格的に進めていくのだ」といっていたものは、とても強権で突っ走るわけにはいかない状況となった。当たり前に議席の数だけ見ても参議院で片っ端から否決されてもおかしくない状況となり、内閣が機能不全になるほどの打撃となった。
 ところが財界は自民党安倍政府を擁護。「引き続き改革路線を進めるべきだ。改革のスピードを頓挫させず、目標を完遂することが重要」(御手洗・経団連会長)、「小泉政権の継承と安倍政権の政策が批判されたのではない」(桜井・経済同友会代表幹事)といって援護射撃。「税制改正(法人税減税に対応した消費税増税)が遅れるではないか」と財界の都合を心配する意見も上がった。

 地方も都市も惨敗 自民党は27議席も減
 人人のなかでは、全国的に自民党政治を大惨敗させた国民の力について、相互に響きあい確信が深まるところとなった。自民党安倍政府の暴走政治に鉄槌を加えた実感は強く、喜びに沸いている。農漁村を中心にした1人区での変化がクローズアップされたが、2人区、3人区の都市部でも自民は惨敗した。
 改選121議席のうち、自民党は改選議席64だったのから37議席になり、反自民世論を吸収した民主党は改選議席32だったのが60議席に膨れあがった。選挙区での得票数を合計すると自民党が1860万票で、得票率は3年前の参議院選よりも4ポイント近く下落して31・35%。一方、民主党は2400万票を集め、得票率では前回を上回る40・45%とした。自公連立与党を形成してきた公明党は12議席から9議席と惨敗。「日共」修正主義集団は改選となった5議席から3議席になり、社民党は改選3議席から2議席に凋落した。自公連立与党の得票率はわずか37・31%で、6割以上の有権者が批判的な投票行動をしたことがわかる。選挙の結果、参議院の非改選組もふくめた議会構成は、野党が過半数を占めた。
 各選挙区を見てみると、構造改革によって切り捨てられてきた地方選挙区で自民支配が覆ったのが特徴となった。東北・北陸地方をはじめ、中国・四国地方、九州地方など農漁村を多く抱える地方での自民党離れはすさまじいことをあらわした。
 中国地方では、岡山県で片山虎之助・自民参議院幹事長が落選。青木幹雄・自民参議院会長のお膝元である島根県では、自民現職が落選して国民新党新人が当選した。鳥取県でも参議院副会長の自民現職が落選。リーダー格が撃沈となった。中国地方の1人区では山口県を除くすべてで自民が議席を失い、改選2議席が争われた広島県でも、民主党候補者と自民現職は20万票の大差となった。
 四国地方では4県すべてで自民現職が落選して、民主党・無所属新人に入れ替わったほか、九州地方では、乱立によって自民党が辛勝した大分、鹿児島でも大激戦になるなど、かつてない状況。北海道、東北、北陸地方でも自民候補が大差で撃沈した。
 改選数2の2人区では北海道、宮城、福島、茨城、長野、兵庫、広島、福岡など8選挙区で自民、民主両党が議席を分け合った。北海道では26万票差、宮城では19万票差、福島では13万票と差が開いたのも特徴となった。改選数3の埼玉、千葉、神奈川、愛知でも民主党が各2議席を獲得。改選数5の東京では民主党が2議席を奪い、自民の本命候補は落選となった。
 都市部での惨敗を物語るのが各政党の選挙区での得票率だ。東京都では自民が22・7%、民主が31%、小泉前首相のお膝元である神奈川県では自民22・5%にたいして民主が45・1%となった。埼玉県では自民21・6%で民主44・5%。千葉県は、自民35・2%で民主43・3%。愛知県は自民22%で民主48%。大阪府では自民19%、民主33・2%。京都府は自民31・4%、民主43・6%。福岡県は自民36・9%、民主46・8%となっている。投票率はどこも上昇した。
 自民支持層の2割5分〜3割の票が民主に流れ、自公協力の選挙区もほぼ完敗となった。

 国潰しに怒り爆発 構造改革で生活激変
 「政治と金」「年金問題」だけが争点であるかのように商業マスメディアが煽ったが、それは1つの契機に過ぎず、その根底には小泉、安倍政府と続いた構造改革、日米同盟による戦争策動による、社会構造の大きな変化があり、人人の世論の根本的な変化が表面に形となってあらわれた。
 地方1人区である東北、北陸、九州、四国、中国地方での大惨敗は、構造改革による地方切り捨てに対する怒りが爆発したことを示している。強権的な市町村合併で役場はなくなり、農協や漁協も銀行も郵便局もATMだけのこして去っていく。しまいには高校、中学校だけでなく保育園まで統合が進行し、病院もなくなる。年寄りばかり残されて、“限界集落”といわれる廃村間近な状況が各地で出現するまでになった。国民の生存権を保障するという憲法で定めた信頼・欺瞞は崩壊したのである。
 これは単に農民の生活問題だけではなく、農水産物の自給ができないようにするというのは国を滅ぼすことであり、食糧自給もできないのに戦争をするなどという自民党安倍政府は国賊であり、農業を守ることは真の国益だといった世論の高揚と結びついていた。農村部における自民党支配の基盤が崩壊するすう勢を変えることはできない。
 都市部でも自民党は大惨敗した。徹底した非正規雇用の拡大によって年収200万円以下の世帯が大量に出現するなど、労働規制の緩和にたいする怒りが噴出したことを示した。大型店からもメーカーからも金融面からも絞め殺しにあってきた中小業者、年金切り捨て、医療、教育などの破壊、その上の重税といった市場原理・構造改革路線による生活の激変を背景に世論が噴いた。「戦後レジームからの脱却」「美しい国」などの寝言を相手にする者がいない状況は地方と共通となった。
 自民党の支持団体が機能しなかったことも特徴だった。日本医師会が担いだ自民党候補は、04年の25万票から18万6000票にまで比例区の得票を落とし落選した。全国建設業協会が押す候補も25万3000票から22万7000票へ、全国土地改良事業団体連合会が担いだ候補は16万7000票から12万8000票と4万票ちかく落とした。都市部でも、構造改革路線によって自民党政府そのものが、これらの業種・団体を切り捨ててきたことから当然のこととなった。
 日本医師会などは近年、医療改革にたいする署名運動では数100万もの署名を短期日に集める能力も見せてきた。自民党選挙では踊るわけにはいかなかったのである。また、企業動員の崩れも従来の自民党の選挙運動基盤であった土建業界など、地方・中小企業の衰退は著しく、その中身としては公共事業予算が減った以上にゼネコンが国の隅隅の仕事を根こそぎ食い荒らしてダンピング受注で苦しむ目にあわされてきた。弱肉強食の市場原理をおし進めてきた政治との矛盾となってきた。

 戦争政治に鉄槌加える 広島、長崎、沖縄等
 米軍基地・戦争問題が鋭い争点である広島、長崎、沖縄なども自民が惨敗に追いこまれた。広島では57万票と37万票の20万票差。伊藤市長が銃殺され、久間前防衛大臣が「原爆はしょうがなかった」と発言した長崎では2万票差で自民党に鉄槌を加えた。山口県岩国で票差は接近した。沖縄では数カ月前の知事選では基地抜きをやって惨敗した野党側が、同じ候補で沖縄戦評価を争点として今度は勝利した。自民党候補は04年と変わらぬ24万票の得票だったが、それ以上に野党候補に票が流れる現象となった。
 都心部でも全国でも投票率は上がり、関心の高さを物語った。従来の亥年の選挙では10%近く下がっていたが、今回は全国平均で2%上昇した。

 惨敗の責任も放棄 安倍首相・民意無視の姿露呈
 選挙過程で直接人前に出て演説をしたことで露呈したのは、安倍首相の民意というものを理解する意志も能力もない姿である。安倍首相が走り回れば回るほど「票が減る!」と、各地の自民党県連から悲鳴が上がった。構造改革によって痛めつけられてきたことに国民が怒っているのに、「私の実績」を自慢する。「小沢か私か」といいながら、敗北したら自分がいったことを平気で反古にする。「私の内閣」とあれほどいってきた人間が、不信任を突きつけられると、「内閣」が悪くて「私」はいいという。公約とか信義とかどうでもいいのだ。
 安倍首相は、北朝鮮への制裁で世界に名をはせ、いまやアメリカからも取り残されてしまったが、非常にみんなが怒ったのは、国民を制裁する専制君主のようだということである。これまで「クリーン」とか「選挙の顔」とかメディアから持ち上げられてきたが、いまやそんなデマを信用するものはいなくなった。
 選挙で惨敗しても敗戦責任をとらない。これは、第2次大戦を引き起こした天皇や政治家、官僚、財界、メディアなどが、さんざん戦争に駆り立てて300万人を超える犠牲を出させながら、敗戦後は国民には何の償いもせず、軍部に責任をみな押しつけて自分たちは何の責任もとらず、まるではじめから平和主義者だったような顔をしてアメリカにごまをすっていったのと似ている。岸信介も日米開戦に署名した大臣の1人であったが、孫の安倍氏もそのような、日本民族の伝統に反する「いさぎ悪さ」を受け継いでいることを示した。
 選挙で国民に否定されても「改革は私に与えられた使命」といっているが、国民以外から与えられた使命というわけであり、ブッシュ政府のネオコン族が取り立てた政府であることを暴露している。アメリカに認められさえすれば、日本国民にいくら反対されようが関係ないという姿である。選挙まできて、日本国民の民意がわからない安倍自民党政府というものはアメリカに国籍を置いているのだろうと思うほかはないところとなった。
 安倍首相が辞任するかしないかは自民党のなかでかわる玉がいないから続投とされている。自民党全体が、民意とか国益というものはどうでもよく、かれらの党内事情がすべてというのである。辞任をせずに突っ走ろうというのであれば、自民党がさらに国民から浮き上がったものとなり、政治の劣化を進行させ、瓦解に向かうことは疑いない。

 国民の力が縛りに 「日共」・社民は消滅へ
 選挙では民主党が勝った。小沢党首をはじめ格差拡大の是正、国民の生活を守るといって、1人区重視で農村を回り、自民党離れの層を取り込んだ。民主党も、憲法改定にせよ改革路線にせよ基本的な政策方向は自民党と変わらない。選挙で示された国民の力は、民主党にたいする強烈な縛りにもなった。
 自民党と連立を組み、強権政治を保障する自民党選挙の実働部隊となってきた公明党は惨敗した。「貧乏人の党といいながら、貧乏人を苦しめる自民党をやるとは何だ」との声は噴き上がった。創価学会員が集票で走り回ってきたが、方方で断ったといわれている。公明党が選挙で動かなければ自民党はつぶれるような関係にある。宗教政党が自民党のファシズム政治を保障するものとしてその危険性が広く糾弾されるところとなった。
 また、重要な特徴になったのは、これほど反自民世論が圧倒するなかで、「日共」修正主義集団、社民党が消滅に向かっていることである。全国の人民が自民党政府とたたかおうとしているなかで、大衆を代表して真正面からたたかう勢力とは見なされていないことが証明された。大衆が高揚し斗争意欲を高めているなかで、大衆斗争を組織する意志も能力もない。社会党は安保も自衛隊も天皇も認めて自民党と連立を組み、村山内閣をつくってもらってつぶれた。「日共」集団も自民党に批判的なことはいうが、いうばかりで実際的な斗争はつぶすばかりである。かれらがいうこととやることはまったく別で、議会にしがみついて、個人的、党派的な特権にしがみついた腐敗物かは、多くの人人が知り尽くしたこととなっている。
 志位委員長などは選挙で惨敗していながら、「それでも前進した」とか「あたらしい時代がはじまった」と人ごとみたいな解説をした。敗北しながら自分の反省はせず、「それでも勝利があった」といいはるところは、惨敗した安倍首相が反省しないのと共通している。大衆に対する責任感などなく、自分は反省することはなく、人の文句ばかりをいう、これは戦後のアメリカ型自己中心主義イデオロギーの典型であり、民族の利益をかけてアメリカの支配とたたかうことなどできないのである。

 反自民の強さ示す 山口県でも・組織票乏しい中で
 山口県では自民党・林芳正氏が41万票の前回並の得票となり、民主党戸倉多香子氏が27万票となった。一見して林氏の圧勝の形である。これは何を物語っているか。全国の結果とそれほど違うのか。山口県民の反自民世論は疑いなくすごいものがあった。自民党の工作員が脅威を感じていたし、自民党林陣営は相当の危機感であったことは疑いなかった。「参議院選でこれまでなかった電話が何回もあった」など語られている。
 山口県では、民主党とそれを支える連合が、全国とはやや異なった様相を持っている。下関市議会では民主党議員はいない。連合・企業代表議員は、自民党の安倍派か林派できた。県議会では49議席のうち4議席。民主党の実態としての組織は連合を当てにするほかはないが連合の組織的な選挙態勢は体をなしていなかった。連合傘下の組織を見ると、自治労も統一して動いた形跡はなく、宇部興産は林一色だし、中電労や日立などは原発賛成であるし、神戸製鋼も三菱も労組は安倍派の下請機関といった調子である。
 はっきりしていることは、民主党幹部のなかでは、安倍首相と二井知事を擁する林派に逆らうのは気が引けるという関係だった。下関でも「比例区は民主党にお願い」といって回り、「安倍、林を恐れて腰が引けている」という評判だった。
 民主党は全国で、農村部に食い込んだ。山口県の民主党には、そのような姿勢は見られなかった。瀬戸内海側の都市部でも「空中戦はやっても、地上戦をやる人間がいない」といわれていた。慌てて必死になっていた自民の組織選挙にたいして候補選定の段階からして、民主・連合の側が投げの姿勢だった。
 このなかでの、27万票という数字をどう見るか。組織票が乏しいなかで、自民党に大打撃を加えようという県民の自主的な行動がいかに強いものであったかを証明するものである。
 敵の側が企業を使って締め上げるなら、連合のボス連中がそれに逆らう力がないのは明らかであり、山口県のような仕掛けは、全国でも今後考えられることである。民主党が伸張したことは、別の面から見ると、アメリカでブッシュ政府が行き詰まり、その批判勢力を登場させなければ支配勢力としてやっていけなくなっているということの反映でもある。
 参議院選挙は民主党への雪崩現象となったが、民主党に頼るだけで世の中がまともになるとは誰も思っていない。民主党の基本的な路線は日米同盟であれ、構造改革であれ、自民党と基本的に変わりはない。これを縛り付けて、公約を実行させるのは大衆の力である。
 自民党安倍政府のファッショと戦争政治に鉄槌を加える力は、全国的な大衆の直接の斗争の力である。大衆を結びつけ、自民党の売国、反動、貧困、戦争の政治とたたかう力を結集する、新鮮な政治勢力を結集することがきわめて重要な課題である。今度の選挙はその力が全国で充満していることを確信させたことが最大の成果である。

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