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国政の先行く下関の安倍型市政
際立つ産業衰退や人口減少
             外来資本に郷土売り飛ばし   2014年7月28日付

 【本紙記者座談会

 下関では、年明けすぐに市議選が迫っている。現役首相のお膝元で、江島潔にかわって中尾友昭が市長ポストに就いているものの、その実態は「中尾市政」というより「安倍市政」といった方が正しいくらい、税金の過酷な徴収や教育行政への政治介入、大手企業だけが儲けていく箱物三昧、観光立国路線、民主主義否定の行政・議会運営等等、中央政府の先を行く政治がやられてきた。国政は県政や市政を通じて具体的に実行される。TPPや集団的自衛権行使など国の在り方を丸ごとひっくり返すような動きに拍車がかかっているなかで、その先端を行く下関でどのような市民運動をつくっていくことが求められているのか、記者座談会を持って論議した。
 
 住民不在で為政者は有頂天

  初めに市内の実情から出しあってみたい。
 B 誰もが産業の衰退を危惧している。観光ばかりに傾斜して表面的には華やかな印象もあるが、観光地も週末営業依存で、一歩市街地に足を踏み込むとひどい状況がある。消費税が8%になった段階で景気の落ち込みも深刻な状況だ。個人営業の飲食店が次次に廃業したり、夜逃げ同然で企業が倒産している。信用情報に載るような対象ではないから見えにくいが、明らかに変化が起きている。19日に安倍晋三が下関に帰ってきたが、安倍派のなかでも金融市場や経済界の機嫌取りばかりしていることや、集団的自衛権の問題などに反発がうっ積している。安倍事務所に抗議やクレームの電話をかける人人も多く、反発が強いから慌てて帰ってきたのだと話題にされている。
 C 市民の会がスーパー前などで洋上風力反対の署名をしていると、高齢者から安倍批判がものすごく出る。直接には集団的自衛権の解釈改憲を強行してから雰囲気がガラッと変わっている。あと、若者に働く場所がないことも深刻な問題として語られている。産業政策がゼロで人口流出も深刻だ。唐戸商店街を見てもシャッターが増えて少少のイベントをやっても続かない。最近また一軒店を閉めたが、店主は福岡に働きに行くといっていた。「安倍晋三も帰ってくるなら華やかな場所だけでなくて、この衰退ぶりを直視するべきだ」と話していた。東京生まれの東京育ちで、下関はそもそも故郷ですらない。代議士になるために親から引き継いだ地盤というだけで、郷土愛と呼べるものを持ち合わせていない。しかし下関の政治を牛耳っている。
  集団的自衛権まできて雰囲気が変わった。年寄りで長年安倍を支持してきた人たちも「そこまでやるなら話は別だ」と怒っている。
  安岡の洋上風力が懸案事項として注目されているが、みんな単純に「風力で健康被害が出るから」という理由だけで反対していない。大企業が東京から乗り込んできて、住民生活がどうなろうが知ったことかという横暴さに怒っているし、世の中全般がそうなっていることへの怒りが重なっている。行政も大企業の応援団で動くし、まるで聞く耳がない。それに対して「いい加減にしろよ!」となっている。
  風力だけでなく、みんなでひっくり返したいという思いがつながっている。十数年前のゴミ袋値下げを求める10万人署名もそうだった。ゴミ袋の価格が少し上がろうが下がろうが困らない人も、江島をやっつけたいという思いで連帯して大きな運動になった。風力もそんな感じになってきている。
 直接には住民生活の破壊に対するたたかいだが、世の中を見渡したら全分野で国民生活の破壊政策が貫かれている。為政者は国民がどうなろうが知ったことではなく、もっぱら米国や経済界の機嫌取りばかりして有頂天になっている。一方で被災地は3年たっても放置され、福島はあれほど避難民を出しているのに原発再稼働や輸出に踏みだし、法人税を下げるために消費税を増税し、しまいには集団的自衛権までごり押しした。自衛隊なり国民に「死んでこい」という政治がやられている。米国を守る戦争に出向いて報復攻撃を受ければ、国民が犠牲にならなければならない。原発が狙われれば原爆を投下されたのと同じだ。米国の盾になって日本列島が戦場になるようなことが平然とやられる。
  全国は安倍政治に唖然としているが、下関は早くからこうした政治が実行されてきた。教育の政治介入だけ見ても全国最先端だ。教育長を選ぶのは市長どころか安倍晋三で、文科省からお気に入りのキャリア官僚を連れてきたこともあった。法人税の減税をいい始めたら、税務署が自治会を摘発して法人税を追徴課税していった。法人税減税の目減り分をどう補うかというときに、下関が真っ先にやられて、宇部や小野田でも税務署が行政に対して「やらせてくれ」と依頼してきている。下関は突破口だった。安岡洋上風力も全国のモデル事業として経済産業省が持ち込んだが、税金巻き上げでもモデル都市になっている。
  中小企業は増税で、赤字でも税金をとるといっている。法人税を下げるから消費税を上げたが、それでも足りないからそのほかの税金をいろいろ上げている。「消費税は福祉に使う」といっても、カネが国庫に入れば一緒だ。これまで一般財源から出していたのを出さないという話だ。消費税は法人税引き下げとセットで上げられてきた。一部の大企業が好き放題して、中小企業以下はさんざんな目にあわせる。大収奪をやり始めた。市民生活を見ると年金の目減りや減額、福祉の切り捨てなどその影響が出てきている。
  年金が5万円くらいで年寄りはどうやって生きていくのかという感じだ。だから年寄りの万引きが多い。刺身や総菜など食料をとっていく。唐戸のスーパーにも頻繁にパトカーが横付けしている。山の田のスーパーでもパトカーが止まっている時は、万引き常習者を連れて行く時だ。下関署は婦女暴行癖の安倍派市議を見逃すくせに、暴れる中学生と年寄りの万引き犯ばかりつかまえている。生活苦は全般的に拡大しているし、年寄りは年金減額や介護保険料のアップでやれないといっている。現役世代も婦人が二つ三つパートを掛け持ちしていたりはザラで、片親家庭の子どもも増えている。産業衰退を原因にして貧困や少子高齢化がますます加速している。人口減少の進捗率が全国の同規模自治体のなかでトップ五に入っているが、いかに地域崩壊が深刻かをあらわしている。
  少子化に照応して学校統廃合計画もすごい案を出してきている。文科省キャリアが教育長に天下っていた時に、手柄を立てようとして大規模計画をぶち上げたが、今回の案も負けず劣らずの大胆さだ。豊北町と豊田町は小学校も中学校も全町を小中一貫でひとまとめにするといっている。郡部の疲弊をますます促進している。農林漁業が切り捨てられた結果、中山間地や漁村の衰退は進行したが、銀行、農協、スーパーにしてもみな店舗統合したり撤退して住みにくくなり、JRは路線を減便した。さらに行政が保育園や中学校をなくし、自治体合併で行政機能も奪うなど、わざわざ疲弊させる政策をとっている。だから無人地帯になってしまう。豊北町みたいにだだっ広いところに学校が一校ではどうにもならない。
 E この間調べてわかったのは、豊北町では角島だけが八年前の子どもの人数を維持していたことだった。漁業で働いて食べていくことができるからだ。産業振興こそが少子化対策の課題であることははっきりしている。豊北町民のなかで「こうなるのは40年前からわかっていたじゃないか」といわれていたが、本当に産業振興策が皆無だったし、むしろ沿岸では信漁連問題など他人の尻拭いを漁師に転嫁して漁村を破壊してきた。そして決定打になったのが自治体合併だった。農漁村を切り捨てて、都会が万能だといっても社会は成り立たない。食料が自給できなくなったらどうなるかだ。中国から腐った肉を輸入してきて食べさせられたり、アメリカの遺伝子組み換えを食べさせられたり、ろくなことはない。なければ輸入すればよいといって海外に胃袋を支配され、食料も自給できないのに戦争をするという。無謀だ。

 下関市議会 オール与党の安倍支配

  集団的自衛権を巡って「わたしが最高責任者だ」といって憲法解釈を変えているが、民主主義否定も下関は全国最先端だ。下関市議会などは早くからオール与党の安倍派体制が敷かれてきた。公務員も地方自治精神など吹っ飛んで、市民のためとか公益のため、公共のためという公僕精神が後退してしまい、利権の世話係みたいな連中ばかりが取り立てられる。安倍事務所と直通の幹部職員が権限を与えられていたり、市立大学が安倍派企業にせっせと利権を斡旋していたり、「安倍事務所秘書です」といって疋田善丸のような政治ブローカーが箱物を取り仕切ったり、特定の利権集団とくっついた汚れ集団が大きな顔をするようになった。
 行政や議会も地方自治の常識がひっくり返っているから、代表監査委員の河原みたく答弁拒否して議員を議場で小馬鹿にするような者まで出てくる。あの連中のなかでは違和感がないわけだ。自民党一強体制というが、野党が翼賛化してオール与党化しているだけで、国会が下関の真似をしている印象だ。「安倍先生! 安倍先生!」といっておべんちゃらをやった者が気に入られて登用される姿も下関とそっくりだ。
  国土強靱化とかODAに目がないのと似ていて、利権には熱心だが産業振興に関心が乏しいのも特徴だ。もっと農山村の産品などを地産地消する体制づくりを援助するとか、農漁業振興でもやるべきことはいくらでもあるが、その意志はなにもない。MCS(三井金属系)が撤退したときもなんの対応もせずに、下関から相当数が流出した。労働者が子どもを連れて行ったから、西山小はリーマンショック後からわずか五〜六年のあいだに児童数が半減した。
  郡部だけではなくて市街地も相当荒廃した。田舎も街中も共通の現象だ。産業衰退と歩調を合わせている。岬之町のガントリークレーンが壊れて、港湾都市としては命運がかかった問題になっているのに放置してきたが、港湾という産業をどうするかよりも、岬之町を観光地にしたいという行政側の願望が勝る。そして使い物にならない人工島へ移転せよとやっている。人工島に追いやるためにわざと修理せず誘導している。産業がつぶれるようなことを平気でやる。
  産業振興には熱がないが、駅前に舟券売り場をつくったり、JC(青年会議所)がカジノ誘致を叫び始めたり、投機的な流れもあらわれている。堅実に働いて食べていくというのとは逆方向だ。観光にしても観光客の財布依存型だが、市民生活に根がないから浮き上がったものになる。海岸沿いの観光地も結局、飲食チェーンなど市外大手の草刈り場にされただけだった。
  商業不動産は拡大するばかりだが、市民生活は貧困化がすごいから買い物する者がいない。駅西口が再開発を経て最近使えるようになったが、工事している二年くらいのあいだにタクシーに乗る人が変わってしまって、彦島、新地方面のお客さんが全然いないと運転手が話題にしていた。少しでも車が動けば悪条件も我慢するが、動かないから西口にはタクシーがほとんどいなくなっている。

 社会後退さす大企業優遇政治の典型

  若者が子育てできる雇用条件なり環境をつくらなければ、衰退に歯止めがかからないことは歴然としている。下関だけでなく全国共通の課題だ。外国人労働者と低賃金を競わせて社会発展の原動力をつぶしている。最近、国内企業が働かせている外国人研修生は中国人からベトナム人に切り替わってきているが、より低賃金の労働力を求めて、移民労働によって社会を維持しようとしている。ブラジルではW杯開催に反対する大規模デモがくり返された。テント暮らしの人たちが、W杯に出す金を福祉に回せと要求した。
  福島や被災地を放置してなにが東京オリンピックかだが、下関を見てもそっくりだ。駅前や観光地のスポットだけが巨額の税金を使って開発される一方で、街全体はゴーストタウン化が急激に進行している。生活保護の受給率は全国の2倍。児童扶養手当を受給している世帯の人口比率もほぼ2倍。津波に襲われたわけでもないのに、被災地のような惨憺たる状況が広がっている。
  産業の衰退や貧困の問題は下関の特殊性だけでは捉えられない。世界的に見ると70年代以降、金ドル交換停止で変動相場制になり、ドル支配が崩壊した。しかしただでは引き下がらないのが米国で、通信技術(IT)と金融技術によって、金融で世界を支配する戦略に切り換えた。それで金融自由化を各国に認めさせて牛耳っていった。中身はサブプライムローンみたいないかさまな金融詐欺であったが、それで世界中の富を略奪していった。
 この過程で米国の国家機構なども投資銀行の幹部などが牛耳って、個別金融資本の利害ばかり代表するようになった。働く側は搾り上げられ、わずか1%の人間が米国の富をほとんど握ってしまっている。その後を追いかけているのが日本で、この間やってきた規制緩和や金融自由化などみな米国に要求されて実行してきた関係だ。TPPで最終的に日本市場や金融資産を丸ごと売り飛ばすところまできた。米国のヘッジファンドや多国籍金融資本と、それに連なる日本の大企業が好き放題に略奪しまくり、国民は切って捨てるというのが露骨になっている。
  米国自体も衰退が著しく、世界中で火花が散っているのに中東やウクライナにしても収拾をつけることができない。金融資本天下で彼らを救済してきたおかげで国家予算も火の車だ。だから日本に集団的自衛権の行使を認めさせて、アメリカの代わりに出て行けと迫っている。イスラエルやパレスチナ、イラク、シリア、ウクライナなど、駆り出されるであろう戦地は具体的に迫られてくる。安倍晋三が中国や韓国との関係で「失望」されたとしても、集団的自衛権だけは断固やれというのが米国の要求だ。それで張り切りまくっている。
  大企業が国内を破壊しつくして、生産拠点を海外に移している。海外権益を守るには武力がいる。これまでは核の傘の下で振る舞っていたが、「自分たちで守れ」というのが米国だ。生産拠点の海外移転、それに伴う労働者の失業や地位の下落、国内における国民弾圧は表裏一体のものだ。しかも今度は米国の国益のための戦争で死ななければならない。下関では人工島を中心に軍港化が進んでいる。国政の具体化として下関を理解しないと見えない。
  これを打ち破る斗争の展望がなければ馬力も出ない。市政や県政を考えるとき、個別のどぶ板方式でやっても無力感が漂う。下関略奪政治との対決が迫られている。安倍市政は基本的に略奪型だ。中電の土地を遺跡だといって、破格の値で行政が電力会社から買い取ったり、長府浄水場の横にあった中電の土地も買い取った。駅前開発といってもJR西日本は移転補償などで駅ビル建設費くらいは楽に出ているし、次世代育成施設を入居させたおかげで毎年1億円近い固定収入を行政が提供するようにもなった。長府駅も30億円かけて市が建設してやった。JRは1銭も出していない。
 山口銀行が持て余していた土地を買い取って新博物館を建設したり、環境利権になると代議士出身企業の神鋼が牛耳っている。流通関係では広島からイズミが出てきて一等地を確保していく。「イズミの社長が安晋会メンバーだからだ」と経済界でも話題にされている。細江町の社会教育複合施設(図書館併設)は森喜朗の地元石川県の建設業者に仕事をあてがった。下関が売り飛ばされて、外来勢力が食い物にしている。あと警察も安倍政治の傘下で機能する。罰金地帯が設置されるたびに警察天下り企業ができて、行政から委託料を得ていく。きれいに養われている。アルカポネが支配していたシカゴかと思う。
  海外移転や労働力の切り捨てをやった結果、今度は深刻な技術者不足に陥っている。各産業共通で技術継承も滞っている。社会的資産を失っているということだ。夏休みに学校の耐震工事が一気に出ると、下関でもたちまち型枠の技術者が足りない、左官が足りないと大騒ぎになった。コンサルや測量設計も足りず、豪雨災害では対応できなかった。あまりにも強欲に略奪した結果、社会が成り立たないところまできた。逆にいうと強欲も成り立たなくなっている。搾取する相手がいないのだから資本の側ももうからない。
  市政でも税金の差し押さえをがんがんやるが、市民はみんな貧乏になっていくから税収は増えない。しかし遊ぶ金が足りない、利権をやるカネが足りないといって強欲に巻き上げる。少しでも支払が遅れると財産を差し押さえて剥ぎ取っていく。その悪循環で税金奴隷は流出していなくなっている。毎年2000人ペースで人口減少は進んでいる。
  この状況をどうすれば打開できるかだ。安岡の風力反対運動が教訓的だが、あれだけ大衆的な運動になると世の中が動く。下関市議会ですら全会一致で反対を表明した。市民自身が政治を突き動かす原動力であることを証明している。
 議会のなかで意見をぶつけたとしても、どこまでいってもおしゃべりにしかならない。それを市民の運動にしたら変えられる。密室政治で市民の非常識を議会は真顔でやっている。東京都議のセクハラ発言とか、号泣県議とか話題になっているが、下関市議会はもっとひどい状態だ。市民の会が送り込んだ本池妙子市議の四年間の経験から見てもはっきりしている。戦争情勢のなかで軍港化に反対し、民主主義を要求し、平和で豊かな郷土をつくる斗争を全国と連帯して強めることが求められている。


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