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コントロール不能の福島原発
行き詰まる凍土壁工事
               把握もできない核燃料     2014年7月11日付

 安倍首相が世界に向かって「完全にコントロールされている」といっていた福島第1原発で、約400億円かけて進めてきた凍土壁の工事が行き詰まっている。地下水対策だけでなく、汚染水処理は東芝製を謳っているアルプスが故障続きで役に立たず、突貫工事で作った貯蔵タンクは汚染水漏れが頻発し、現場には被曝量が限界をこえてベテラン作業員が足りない。崩壊寸前の原子炉建屋に溜め込んでいた核燃料棒を取り出し、冷やし続ける作業も途方もない道のりである。東日本大震災での爆発事故で、福島第一原発は核燃料が原子炉を突き抜けるメルトダウンを起こし、きわめて危険な状態に置かれてきた。福島県だけでも一四万人が難民のような避難生活を余儀なくされ、原発によって故郷を追われるという未曾有の大惨事であった。ところがその後、東電経営者や原発を推進してきた歴代の自民党政治家にいたるまで誰一人として刑事罰が加えられず、責任を負う者がおらず、むしろ開き直って再稼働や輸出を唱え始めた。後は野となれで郷土を廃虚にしていく政治の象徴となっている。
 
 大惨事の責任誰一人問われず

 福島第1原発では、1日に約400dの地下水が建屋に流れ込み、汚染水になっていることが問題にされてきた。このため、1〜4号機の原子炉建屋に地下水が流入しないよう、建屋を囲むように深さ約30b、総延長1500bの氷の壁をつくるというのが凍土壁である。国が320億円の建設費用を投入し、ゼネコン大手の鹿島建設が造成工事をおこなっている。だが、凍結を始めてからおよそ1カ月半がたっても十分に凍っていない状態で、見通しはたっていない。初めから「やってみなければわからない」状態で出発し、行き詰まっている。
 凍っていないことが確認されたのは、2号機の海側にある「トレンチ」と呼ばれる部分に建設されている凍土壁。トレンチは配管やケーブルを敷設するための溝・トンネル。2号機ではタービン建屋とトレンチが地下でつながっているため、タービン建屋から高濃度の汚染水がトレンチに流れ込み、そこから汚染が広がる状態になっていた。
 凍土壁は土に管を通して冷却材を流しこみ、土中の水分を凍らせる技術とされている。福島第1原発のように配管などの支障物が多い場所での凍結はうまくいくかどうかも最初から疑問視されていた。
 東電は特に2、3号機とつながるトレンチ内の高濃度汚染水計約1万1000dを危惧し、凍結管と冷却材を入れたナイロン製の袋を接続部に並べ、付近の汚染水を凍らせて建屋と遮断した後、トレンチ内の汚染水を抜き取る計画を進めている。
 4月末には2号機で先行して凍結を開始し、当初は1カ月で完成する予定だったが、2カ月以上たっても十分に凍ったのは下の部分だけだった。2号機タービン建屋とトレンチのあいだにある汚染水を遮断するための凍土壁が凍っていないことについて、原子力規制委員会は東電に対して、冷却能力を3倍に引き上げるよう要請すると同時に、現在進めている1〜4号機のまわりの凍土壁工事を中止するよう求めた。凍らない理由については「トレンチから温かい水が建屋に向かって流れている」ことがあげられている。あとにひけず「もっと冷やせ」と迫る規制委員会に対して、東電は現在以上に地中に配管を増やしたり掘削すれば地盤が崩壊する恐れがあるとして「冷却能力の3倍アップ」にはおよび腰の姿勢を見せている。
 事故を起こした1号機から3号機までの原子炉の底には、溶けたままの核燃料が「デブリ」と呼ばれる塊になって残っており、これを安全な状態にすることが廃炉の目的だが、今はその前の汚染水の処理で作業が手一杯になっている。溶け落ちた核燃料を冷やし続けなければ再び大惨事をひき起こす。かといって原子炉内部がどのような状態なのかも把握できず、冷却するために流し込んだ水の水位すら満足に計測できない。そして汚染水は日日量産され、その処理に追われて貯蔵タンクが山ほどつくられ、そこからも汚染水漏れが起きる事態となった。今年中に、汚染水貯蔵タンクの貯水容量は80万dに達すると見られている。
 東電は福島第1原発の廃炉費用として今まで9600億円を計上しているが、今後10年でさらに1兆円を追加する予定。合計約2兆円はみな国費でまかなわれる。支援機構が4月から「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」という名称に変わり、廃炉費用も交付国債で調達できることになった。最終的には東電が国に返済するが、電気代に転嫁されるだけで国民負担でまかなう構造になっている。
 福島第1原発では、今も溶けた核燃料を冷やすため原子炉に注水し続けているが、この冷却水が汚染されて建屋地下に溜まり、一部が海側のトレンチに流入。破損箇所から地中に漏れて海へ流出することが懸念されている。ただ、「地下水を遮断しなければ海洋汚染が深刻なものになる」といってきたが、既に海洋は十分汚染されており、仙台湾にいたるまで影響は広がっている。原子炉建屋よりも山側で井戸を12本採掘して地下水を汲み上げ、汚染する前に海洋に吐き出す作業もおこなわれてきたが、400d流入するうちの100d程度しか対応できていないとされている。
 さらに汚染水処理で導入されたアルプスは放射性物質による機械系統の劣化等に見舞われて3カ月間使用不能の状態に追い込まれ、まともに稼働しない。崩壊寸前の核燃料プールから使用済みや未使用の燃料棒数千本を専用のキャスクにいれて運び出し、ふたたび冷やし続ける別のプールに移動させる作業も難航している。約6000人もの労働者を動員して一連の事故対応や工事にあたっているものの、凍土壁工事現場など原子炉建屋に近い場所になると、放射線量が高いことから1日3時間しか働けず、しかもベテラン作業員が被曝によって手薄になるなど、どうしようもない事態に追い込まれている。
 1〜3号機の原子炉の格納容器にはそれぞれメルトダウンして固まった100dの燃料棒の塊が残っている。これを取り出すには格納容器を水で満たす必要がある。しかし格納容器下部に漏れがあり、水で満たすことができない。計画では遠隔操作ロボットを使い、まず格納容器の水漏れ部分を探して修理する。溶け落ちた燃料の場所や状態を把握し、水中で切断して取り出すという手順になっている。しかし願望通りに遠隔操作ロボットが動くかどうかもわからない。世界で誰も経験したことがない作業で、すべてが実験段階というのも特徴だ。炉心冷却用に注入している真水は注入しただけ流れ出ており、この漏れを止めるための有効な方法は見出されていない。東電と国が策定した「廃炉に向けたロードマップ」では、6年後の2020年からメルトダウンした核燃料の取り出しを開始することになっているが、その見通しも立っていない。
 さらに廃炉の工程へ進まなければならないが、これも非常に大きな困難がつきまとっている。廃炉までには30〜40年かかると想定し、@即時解体=建屋や原子炉を全て撤去し更地に戻す、Aサバンナリバー方式=燃料と原子炉を撤去し、その他の機器は解体して原子力建屋の地下に詰め込みグラウトで密閉し、数千年そのまま保管、B安全貯蔵方式=約70年間密閉し放射性物質の減少と技術開発の進展を待ってから解体する、C石棺方式=原子炉などを完全にコンクリートで密閉することで完了する(チェルノブイリで採用された)という、いくつかの方法があげられている。
 だが、福島原発ほどの事故を起こした原発を廃炉にした例は世界的になく、誰も経験したことがない領域を手探りで対処しているに過ぎない。事故を引き起こした場合に対応すらできないものを無責任につくってきたことを暴露している。チェルノブイリは石棺方式をとったが、福島原発の場合はメルトダウンした核燃料の場所さえ特定できず、地下水の流入もあり、どこまでを覆えば安全かという問題すら答えが出ていない。数十年と石棺し続けているチェルノブイリ以上に困難が予想されている。また、廃炉のほかにも、プールで一定期間冷却した使用済み燃料の処理も問題になるが、有効な処理方法はない。
 3年を経過しても福島原発事故の収拾のめどはまったくたっておらず、コントロール不能であることがますます浮き彫りになっている。

 大企業の為国民犠牲に 原発輸出、再稼働も

 安倍首相はオリンピック招致を決めるIOC総会で「今までも、現在も、そして将来も! まったく問題はない! ということをお約束します」「福島についてご案じの向きには、私から保証します」と世界に向かって発言した。そして「私自身がリーダーシップを発揮し、わが国の(原発)技術を世界に提供していく」「原子力発電については、中東諸国から日本の最高水準の技術、そして過酷な事故を経験したなかでの安全性への強い期待が寄せられました」「原発事故を経験した国として、事故の知見と教訓を世界と共有し、原子力の安全向上に貢献していくことは責務だ」(原発輸出にさいして)といい、原発輸出や再稼働についても推進姿勢をうち出している。
 しかし「まったく問題はない!」と願望すれば解決するような事態ではなく、現実はコントロール不能で大問題ばかりが山積し、最高水準の技術が原子炉の暴走に太刀打ちできず翻弄され続けている。
 1979年のアメリカのスリーマイル島原発事故、1086年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故、そして2011年の福島原発事故と続き、世界的にも原発技術が未完の技術であり、現在の科学技術の水準では制御不能であることが立証されてきた。これを輸出し、他国に持ち込んだ原発が事故を起こした場合も日本政府が保証する約束を交わし、東電救済と同様に国民負担に転嫁するとしている。東芝や日立、三菱といった原発製造メーカーや、そうした国内大企業と組んだGE(ゼネラルエレクトリック)やWH(ウエスチングハウス)といった米国原発製造大手に利益を提供し、事故を起こせば国民負担というデタラメである。
 さらに集団的自衛権の行使を叫び、アメリカの下請軍隊として自衛隊を世界中に派遣しようとしている最中に、報復攻撃を受ける危険性の高い原発を再稼働するという気狂い沙汰を実行している。「北朝鮮やイランが核開発をしている」といってやり玉にあげるのはいつも小規模な原発であるが、各国が核開発してミサイルに搭載しなくても、日本列島には54基が点在しており停電しただけでいつでも原爆になり得ることが福島事故で明らかになった。原発は発電所であるとともに、ウランやプルトニウムなど核兵器製造の材料を大量にかかえた軍事工場であり、もともとが核兵器製造のために生み出された技術にほかならない。これが1基でも標的として攻撃されれば、全国的に破滅的な打撃を受けることは必至である。
 福島事故の反省もなく、収束すらできない無能さを晒しているのに、「日本の原発技術は世界最高水準」「事故を経たからなおさらだ」といって、目前の経済的な利潤のために第2、第3の福島を量産する方向に向かっている。これほどの大惨事を引き起こしておきながら、何らの規制も受けず、東電にしても誰一人として刑事罰を問われず、好き勝手していく異常さたるやない。
 原子力戦争の危険が迫っているなかで、原発を押しとどめる意義はかつてなく大きなものになっている。後は野となれで人人を犠牲にしても平然としている政治との矛盾が激化している。


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