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長生きするのは国賊か
後期高齢者医療制度
              廃止求める行動全国で    2008年4月23日付

 後期高齢者医療制度に反対し、廃止・見直しを要求する運動が全国的に高まっている。戦争中は「国のため」に死ねといわれ、長生きすれば国賊扱いで、“姥捨て”政治を強行する自民党政府への怒りは噴き上がっている。「年齢によって医療を差別する制度を絶対に許してはならない」と、すでに10府県の医師会が撤回・廃止を求め、医療費削減のために高齢者を差別する新設「後期高齢者診療料」に反対・自粛・慎重な対応を指示した府県医師会は20府県におよんだ。全国各地で高齢者とその家族が集会・デモを展開し、強い住民世論を反映して全都道府県・市区町村の三割以上にあたる約600の地方議会が後期高齢者医療制度反対・撤回を求める意見書、決議を上げている。

 高齢者と家族が集会・デモも
 下関市医師会・木下毅会長は、「後期高齢者医療制度は医療費削減のために強引に新設したものだ。最初は、高齢者に対する医療差別・制限が部分的であっても、これを全面的なものにすることは歴然としている。“年齢によって医療を差別するようなことは、医療の世界にあってはならない”、これが根本的な考え方だ。今、いうべきことを声を大にしていわなければ、日本の医療はとり返しがつかないことになる」と強調する。
 後期高齢者医療制度は安倍政府が医療関係者を排除して設置した「後期高齢者医療の在り方に関する特別部会」が2007年4月に「基本的な考え方」をまとめた。それは「いずれ死ぬ」というもので、75歳以上の国民の医療を「国民皆保険」から切り離し、別建ての差別・制限する診療報酬体系を設置した。
 同制度創設の法案審議も十分ではなく、自民党の審議うち切り宣言で衆参厚生労働委員会で強行可決、本会議で自民・公明の賛成多数で強行した。このときの代表的な論点は、「後期高齢者医療制度は医療費の適正化のためにつくられた制度。75歳以上の医療は“みとり”の医療だ」(自民党・西島英利議員)というもの。
 75歳以上の国民は、“これからは死ぬだけなので、適正化の名で医療費を使わないようにする”という、あからさまな“姥捨て”論理でつくられた制度である。
 具体的な1つの例は、75歳以上の国民は「主治医」を選び、高血圧や糖尿病などの慢性病の治療で月6000円の定額医療しか受けられない。他の病院や診療所は、病状急変などの場合以外、検査や面像診断、湿布をはるなどの処置についても医療行為はできない。(診療報酬は支払われない)。
 医療界では、「これでは高血圧や糖尿病、腰痛など複数の病気をかかえる高齢者に適正な治療も必要な検査もできない」「複数の専門診療科の医師が老人を支えることができなくなる」と、差別・制限医療反対に立ち上がった。
 茨城県医師会は3月22日、「後期高齢者医療は高齢者に大きな負担をもたらし、医療を制限する萎縮医療そのものだ」との会長声明を発表。制度撤回に向けて、「みなさん、こんな高齢者いじめの制度が許せますか」と大書したポスター3000枚を作製。県下の病院・診療所にはり出すとともに、20万人を目標に制度撤回を求める署名活動にとりくんでいる。
 広島県医師会は「制度廃止」を呼びかける声明を発表。岡山県医師会は16日の理事会で反対を決議。宮崎県医師会は、「医療費削減のみを目的とした弱者切り捨ての制度」と痛烈に批判、反対をうち出した。
 現在、後期高齢者医療制度に反対、撤回などを求めているのは、茨城県、千葉県、京都府、大阪府、奈良県、岡山県、広島県、佐賀県、長崎県、宮崎県の10府県医師会に達している。このほか、山口県医師会など、後期高齢者医療の差別・制限医療に「反対」「自粛」「慎重」な対応を呼びかけた医師会は、20府県におよんでいる。
 山口県医師会は24日の理事会で、制度そのものに対する態度を決めることにしているが、反対・撤回を表明する県医師会の動きは、さらに広がるすう勢にある。

 積年の怒りが噴出 新制度見切発車で 「姥捨て」やめよ
 医療界と高齢者、住民の後期高齢者医療制度反対のとりくみも、この間、全国各地で無数にとりくまれてきた。医療界が主催するシンポジウム、住民公開講座、住民集会で、同制度の“姥捨て”医療の正体が明らかにされ、反対世論は大きく盛り上がった。
 宮城県仙台市では4月、高齢者、家族、医師従事者など数百人が参加する集会とデモ行進がおこなわれ、全国的な注目を集めた。
 この強い世論を反映して、都道府県・市区町村の地方議会の反対意見書や決議があいつぎ、衆参両院議長あてにのべ約600の「凍結」「見直し」「中止・撤回」を求める意見書が提出されている。
 これは、全都道府県・市区町村の三割をこえている。
 下関市内の内科開業医N氏は、「茨城県医師会の勇気ある行動が、全国の医師会の下からの行動を呼び起こした。山口県医師会も近く態度をうち出すとのことで期待している。山口県議会も、下関市議会も、後期高齢者医療制度反対の意見書も決議も上げていない。市民や県民から浮き上がっている。中央も、地方も自分のことしか考えないような議員はいらない」と語る。
 地方自治体の担当窓口では、「75歳以上の人人は、戦中、戦後と苦労して日本をつくってきたという自負がある。生活は苦しくても国民健康保険料の納付率98%ともっとも高い世代。それだけに、後期高齢者医療制度の、保険料年金天引き、国保より高い保険料、ぺらぺらの保険証、医療の制限に対する怒りは強い。自分のことしか考えない政治家や、官僚とはわけが違う、という生き方を裏付けにした憤りだ。世論調査でも70%以上が後期高齢者医療制度に反対している。福田首相や自民党代議士が口先で“よい制度だ”といっても、ごまかされるものではない」と語られている。
 75歳で線引きすることは、社会的にも医学的にもなに1つ道理はないというのは、圧倒的な世論である。
 実際に農業・漁業の担い手として、自営業の責任者として、あるいは集落や商店街の世話役として、ばりばり働いている。この間、アメリカいいなりで金を貢ぎ、トヨタやキヤノンなどの独占・大企業がボロもうけするために、高齢者に対してとってきた“姥捨て”政策への怒りが、後期高齢者医療制度見切り発車で噴き上がっている。

 介護施設等でも問題に
 下関市内の介護施設では、「財界と自民党政府は、この間、高齢者を社会のお荷物のように切り捨ててきた。所得税の老年控除廃止、公的年金控除の縮小、年金給付額の大幅な引き下げ、生活保護の老年加算廃止などのうえに、介護保険制度の大改悪をやった」と説明する。
 同施設では、「要介護1の約7割が要支援とされ、在宅高齢者は週1回しかヘルパー派遣を利用することができない。介護職員は少ない時給のうえに仕事ががた減りとなって、介護現場を離れている。人手不足で閉鎖・縮小する施設があいついでいる。自民党政府は、トヨタなどがボロもうけするために、インドネシアと自由協定を結び、インドネシア人介護士の受け入れを進めている。日本の劣悪な介護保険制度をそのままにして、外国人労働力で安上がりにまかなうなど、もってのほかだ。後期高齢者医療制度と同じだが、高齢者が外国人の世話で喜ぶわけがない。姥捨て政治だ」と語る。
 下関市内の総合病院勤務医は、「後期高齢者医療は、医療費削減ありきでつくった。日本の医療費は国際的に見ても少なく、先進国の中には入っていない。OECD(経済協力開発機構)の調査で、30カ国中の21番目。人口比に占める医師数は27番目で、OECD加盟国平均に比べ14万人も少ない。75歳以上の人人だけの問題ではなく、医療費削減の強行は、医師不足に拍車をかける。日本の医療全体の崩壊に直結する問題だ。医療費削減政策を転換させるうえからも、後期高齢者医療は撤回させなければならない」と語る。
 続けて、「日本経団連と政府で、中曽根行革以来、四半世紀にわたる医療費削減の結果が、今日の医療危機を招いた。国民の健康と生命を犠牲にして、アメリカや日本の大企業がボロもうけした結果、日本は再生の力もなくなるような政治、アメリカと一緒に戦争をやり国民を犠牲にする政治に、終止符をうつときである」と強調した。

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