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高齢者の財産剥ぎ取る社会
国や銀行真似て詐欺師跋扈
             犯罪防止に動かぬ警察   2015年2月6日付

 高齢者を狙った振り込め詐欺事件がこの間急増している。金融商品を扱ったものや親族に成り済ましたオレオレ詐欺、行政や金融機関を騙った還付金詐欺など手口は巧妙に発達し、一人暮らしの高齢者などから容赦なく財産を剥ぎとっていく。詐欺をにおわせる不審電話がかかった経験は、高齢者のなかでは珍しいものではなくなっており、件数も年年増加している。しかし悪質な犯行は野放し状態である。年寄りの年金は近年めっきり減らされ、介護保険、後期高齢者医療保険など各種の税金や負担が有無をいわさず天引きされるようになった。国や行政が「年寄りは金をもっている」といって狙い撃ちする最中に、詐欺集団までが真似をしてのさばっているのである。
 
 過去最高の振り込め詐欺被害

 下関市内でも高齢者を狙った詐欺があいついで起きている。
 1月27日の早朝、下関市内に住む90代のAさん宅に1本の電話がかかってきた。相手の男Bはいきなり「あなたの個人情報が漏れている。3件中2件はとり消すことができたが、残りの1件ができない。名義を変更するために代わりの人が引き受けてくれるということだからお礼の電話をしてもらいたい」といい、電話番号と「個人情報番号」なるものをAさんに教えた。Aさんには約1年前ごろにも「個人情報が漏れている」という電話があり、不安もあったのですぐにいわれた番号に電話した。
 出てきた電話相手の男Cは、自分が福島でボランティアをしているなどとのべ、代理人となることを引き受け、AさんはCに、Bにいわれた「個人情報番号」を伝えた。その後Aさんは、再びBに電話を入れ、Cにお礼をいったことと「個人情報番号」を知らせたと伝えた。すると突然Bが「なぜ番号を知らせたのか!」とすごい剣幕で怒鳴りだした。「それはあなたの個人情報だから、他人に知らせたら懲役15年、罰金1000万円だ」とAさんに迫った。Aさんは動転し、あわててCに電話をかけ直し「個人情報番号」は間違いだったと伝えた。その後、Bを介して「弁護士」や「消費者生活センターの職員」とも電話で話した。
 事態収拾については「弁護士」が引き受けることになり、一連の朝からの騒ぎでパニック状態になっているAさんに、Bは預金残高と銀行名、口座番号、通帳の最後の取引日時、キャッシュカードの暗証番号を確認してきた。「弁護」ともかかわった形で聞き出されたものだ。何が起きているのか分からないAさんはいわれるままに情報を伝えた。最後にBは、「これからキャッシュカードを別の者が受けとりに行くので渡してほしい」といい「このことは絶対に他言しないように。他言したらまた大変なことになる」と念押しした。
 その後、Aさんは家に来た若い男にキャッシュカードを渡した。翌28日の夕方、家に来た知人の婦人に一連の出来事を話したことで婦人が気づき、警察と銀行に通報。しかし、前日の27日と28日の2日間で限度額の50万円ずつ、計100万円が引き出されたあとだった。
 5人の人間を入れかわり立ちかわり登場させて混乱させ、Aさんには「カードは1週間後に返す」といい、最高限度額50万円を1週間、毎日下ろし続ける策略だった。「年寄りと思ってバカにしている。騙(だま)される方も悪いけど騙す方がもっと悪い。お金は返ってこないかもしれないが、私は被害届けを出して何とかしたい」とAさんは語っている。
 似たような手口として、北九州市若松区の1人暮らしの71歳の女性が、電話による詐欺の被害額としては最高の1億1000万円を騙しとられていたことが報道され、驚かれた。昨年9月下旬、男の声で「インターネット上で名前が登録されて悪用されるのでとり消しますか」と女性の自宅に電話があった。とり消しを頼んだが、「一件のみ消せなかった」といわれ、それ以降、会社員や弁護士、金融庁の職員を名乗る複数の男からの電話で「あなたのお金が不正でないと証明するため、預金や生命保険をまっさらにしてください。下ろしたお金は金融庁が預かる」といわれ、それを信じて支払っている。これほどの被害は稀だが、ありとあらゆる状況を演出し、被害者を混乱させ信じ込ませる手の込んだやり方となっている。
 下関市内のある男性には、息子に扮した男性からの電話がかかった。電話では、「交通事故を起こした。車が高級車なので保険が効かない。至急180万円を送金してほしい」という内容だった。しかし男性は少し前に息子にあったばかりで、そのさい息子からはなにも聞いていなかった。変に思って、そのことをいうと突然電話は切られた。
 オレオレ詐欺は、親族を装った電話口での声については「風邪を引いている」とごまかすことが多く、その内容についても「投資に失敗したが会社のお金を使っていた。ばれたら大問題になるから早急に送ってほしい」など、他人には相談できないような内容を切り口にしたものが多い。

 最近増える還付金詐欺

 さらに最近被害が急増しているのが還付金詐欺だ。電話で税務署や市役所、社会保険事務所などの職員を装い、「税金を還付する」「年金の未払い分を還付する」「医療費を還付する」といってATMに誘導し、口座に入金されていないことを被害者に確認させ、「不具合が起きている」といい、還付金を受けとるためだと騙してその場でATMを操作させ、犯人の指定する口座に振り込ませるものだ。この場合も「今すぐ手続きをしないと期限が切れてしまう」「本当は切れているが、今すぐに手続きすれば受けとれる」などと焦らせるものや、「連絡を差し上げたがお返事がなかったので、お電話させていただいた」などと、被害者に罪悪感を持たせるものもある。
 ATMでお金を受けとるさい、受けとる側は口座に入るのを待つことしかできない。ATMを操作して振り込みをさせることはありえないが、それを知らない高齢者をカモにしていく。下関でも還付金絡みの不審電話があいついで起きており、先月20日には70代女性が「還付金を受けとる」と銀行に行き、不審に思った行員が未然に防いだほか、27日には市内で医療費還付金を装った電話が最低五件、高齢者宅にかかり、そのうち三件については実際に高齢者が金融機関まで出向くところまでいって知人や郵便局員によって防がれている。
 それらも含めて山口県内では、今年1月だけで約5000万円もの振り込め詐欺被害が起きている。全国でも振り込め詐欺は急増しており、平成26年の被害件数は1万1257件、被害額約375億7000万円となり、過去最高を記録した。とくにこの2年間で急増している。特殊詐欺被害(26年の被害額は559億円)のうち振り込め詐欺がその大部分を占めており、振り込め詐欺被害者の9割が65歳以上の高齢者だ。
 振り込め詐欺だけでなく、1人暮らしの高齢者を狙った悪徳商法もあとを絶たない。数十万円もする布団セットを買わされたり、「健康」「長寿」を売りにした食品などを無理矢理売りつけていったり、勝手に着払いで送ってきたりとさまざまある。あるいはガスや家屋の点検などを語って訪問してくる営業マンのなかでも、1人暮らしで押しに弱いと見なすや、ノルマ達成のためにいっきに畳みかけてくるような者など、世知辛い世の中にあって、人を食い物にする商売が蔓延している。
 このなかで、都市部の独居老人があいついで被害にあっている一方で、都市部よりはるかに独居老人も多い農漁村部では、そういった振り込め詐欺被害がほとんど聞かれないのも特徴になっている。下関市内の漁村、農村で聞いてみると、何年か前には食品や布団・枕などの「健康」を売りにしたものを高齢者が買わされる案件が数件起きたという。しかし、独居でありながら地域のつながりが強く、なにか起きたときにはすぐに情報が行き渡る。万が一引っかかっても郵便局などの金融機関に行けば窓口の職員もみな顔見知りで、不審なものについては常に誰かがストップをかけるという体制ができあがっており、こうしたつながりが地域住民を守っている。

 警察対応に被害者愕然

 急増する犯罪に対して、警察が犯罪防止にまったく熱心ではないのが特徴で、「仕方がないですね…」とはいわないまでも、顔にそう書いてあるような雰囲気で、まるで捜査などやる気がないことが被害者たちを愕然とさせている。パトカーで町中を回って注意を呼びかけることはしても、いざ詐欺が起きたときの対応はきわめて冷淡で、「犯人を捕える意志が感じられない」と語られている。
 前述したAさんの場合、詐欺にあったことがわかるとすぐに通報し、3人の刑事に約1時間半かけて話した。刑事は根掘り葉掘り聞いたあと、Aさんに対し「100万円はもう返ってこないと思う。事実関係にもあいまいなところもあるし、受けとった男の顔もよくわからない。犯人の電話番号『03』は東京だし、犯人の割り出しも難しい。被害状況は聞きましたが、被害届を出すとなるとまた警察署まできてもらい調書をとらなくてはならない。どうしますか」とAさんに判断を委ねる形で問うている。
 さんざんな目にあい憔悴しきったAさんはそれを聞いて、「お金も返ってこないし、被害届けは出さなくていいです…」と答えていた。銀行の手配で口座はすぐに止められた。この段階で、気付いていない犯人側は翌日も引き出しにあらわれるに違いなかった。また100万円が引き出されたATMの番号や防犯カメラの映像を特定したり、BやCの電話番号から回線や契約者を割り出すなど、できる対応はいくらでもあるはずなのに、なぜ警察は動かないのだろうか? と関係する人人は疑問を募らせた。周囲の励ましもあって後日Aさんは被害届けを出したが、「今さら探しても遅い」という姿勢が感じられるものだった。
 警察といえば、日頃からパトカーで市内を徘徊し、大人数で熱心にネズミ捕りをやったり、少年たちを捕まえて自転車盗難の嫌疑をかけている姿がよく目撃されるようになった。下関では駐禁取締重点地域やタバコ取締重点地域などがもうけられる度に警察天下りの受け入れ機関がつくられ、市民から金を巻き上げることによって食い扶持を確保していくのが警察だとみなが話題にしている。犯罪が起きても「騙された者の自己責任」で放置するなら、いったい警察は何を仕事にしているのか? 日頃から巻き上げる側だから怒りがないのだろうか? の疑問となっている。今時、テレビをつければドラマは刑事物で溢れ、人気俳優たちを配して格好良く犯人逮捕までを描きあげる。しかし現実の姿は、難事件でもないのに「被害届けは出さないでね…。面倒だから…」の本音を顔にも態度にも出すから笑えない。そして、詐欺被害は野放しになっていく。
 もっとも「年寄りから巻き上げろ!」を実践してきたのが政府で、金融資産はあるのに年寄りが握って離さないから経済指標が落ち込むと嘆いたりしどうにかして吐き出させようとしてきた。社会保障を削減して自己負担を増やすさいも、「年寄りはお金を持っている」が口癖であった。さらに、眠っている金融資産を株式や証券に投入せよと煽って、証券会社や銀行が年寄りをカモにしたり、オレオレ詐欺とたいして変わらないような財産剥ぎとりが公然とやられてきた。紳士面して高齢者を食い物にする連中の真似をして、詐欺師たちまでが張り切っているのである。そして、警察たるや「捜査は面倒臭い」というのだから世も末である。
 社会全体が高齢者を金づるにする構造を反映した犯罪が跋扈(ばっこ)している。手っ取り早く騙して、奪いにくるどう猛さが特徴となっている。

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