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雇用対策置き去りに箱物散財
2012年度下関市予算
             市民窮乏化で市税収入激減    2012年2月24日付
 
 下関市の中尾市長が任期4年目の最後の市予算を発表した。一般会計の当初予算としては過去最高額を記録した今年度に続いて史上3番目の規模にあたる1192億円を計上。総額で200億円を投じる新庁舎建設関連事業や、150億円を投じる下関駅にぎわいプロジェクトといった目玉事業に巨費を注ぎ込むもので、大不況で市民生活が窮乏化し、市税収入がかつてなく枯渇しているおりに、一部の政治家や銀行だけが大喜びしそうな散財を特徴としている。3000人もの労働者を雇っていた彦島のMCSが撤退を表明し神戸製鋼も下請を大量解雇。三菱、小月の日清食品など、この1〜2年で下関市内の製造業大手が問答無用の雇い止めや解雇を繰り返し、市民生活は緊急事態に置かれている。この中で出てきた予算案は、今の下関にとって最も必要な雇用確保、産業振興に関わる施策がきわめて貧弱なもので、中尾デタラメ市政への市民の怒りは爆発点に向かうすう勢となっている。
 歳入のうち自主財源である市税(市民税、固定資産税など)は、前年度から約3億7000万円減の約332億円を見込んでいる。リーマンショックが起きた平成20年度予算の見込額が約360億4000万円だったのが、僅か4年でおよそ1割減に近い約28億円も減少している。この間強引な税金滞納差し押さえが、中尾市政の大手がらとされてきたにもかかわらず、市民の経済的な疲弊が急ピッチで進行していることを物語っている。
 市税収入のなかでも2本柱になるのが市民税、固定資産税であるが、来年度の見込み額としては市民税が約154億円、固定資産税が約140億円。前年度予算では固定資産税の方が金額として上回るという異常事態が起きていたが、固定資産税については評価替えに伴って10億円減少するとし、かわりになんの根拠でか市民税が前年よりも6億5000万円アップすると見込んでいる。
 この何年かでもっとも落ち込んできたのが市民税で、税金を払える市民がめっきり減っていることや、各家庭の収入が格段に落ちていることを反映している。大企業が撤退や首切りをおこない、中小企業も倒産の一歩手前で踏ん張っているところが少なくない。リーマンショックが起きた20年度予算の市民税見込額は約167億8000万円だったのが、来年度予算では154億円まで減っている。「地元中小企業の4分の3は赤字経営」と税理士たちが指摘するように、あるいは閑古鳥が鳴いているショッピングモールや、職安前の長蛇の列があらわしているように、下関の雇用・経済情勢が急速に悪化していることから、市の収入も年を追う毎に大幅に目減りしている。
 中尾市政が実行しようとしている史上3番目の大盤振舞は、市民から巻き上げる税金だけでは到底足りない。地方交付税291億円、国庫支出金165億円をプラスしてもまだ足りない。基金を32億円とり崩すほか、133億円を借金である市債発行でまかなうことになっている。そしてこれまでの借金返済にあてる公債費は138億円にのぼる。市債残高は一般会計だけで過去最高額の1240億円に達する見込みで、特別会計にかわしているものまで含めると2000億円は楽に超す。一方で市財政の蓄えである基金は前年度に続いて差し引き20億円近くとり崩すことから、残り170億円になると見込んでいる。
 財政の弾力性を示す経常収支比率は来年度末には99・9%に達する想定で、こちらも過去最悪の状況を示している。従来から都市で80%、市町村では75%を超えると財政の自由度を失って経費を抑制するよう注意するべき数値といわれてきたが、余裕が0・1%しかないという、異様な状況に直面している。

 人工島中心に都市改造 軍港化へ巨額予算

 市税の異様なる激減状況にたいして市民や地元企業が税金を払えるように産業振興、雇用確保に全力を尽くすのが、行政の最大任務になっている。ところが出てきた予算案は相変わらず箱物三昧と観光への傾斜を特徴としている。
 本庁舎整備事業(総事業費79億円)には8億1100万円(前年度4億1600万円)をつけ、市民サービス棟の建設に本格的に乗り出す姿勢を見せている。菊川、豊浦、豊北、豊田の各総合支所の建設・整備にも3億円。下関駅にぎわいプロジェクトには24億円(前年度15億円)を計上している。勝山公民館・支所整備(総事業費13億円)に今年度分として3億5000万円。海峡沿いの埋立地につくる消防庁舎整備事業には5億円(前年度8億7700万円)をつけた。
 川中地区の土地区画整理事業には11億3000万円(前年度12億円)。乃木浜総合公園の整備に6億2700万円(同5億7000万円)と箱物はつきない。250億円をかけて過剰整備する必要性があるのか疑問視されている長府浄水場整備関連には10億2500万円がついた。人工島を中心とした都市改造も巨額の予算を投じて続行。ゆめシティから人工島に抜ける四車線道路や、北バイパス、さらに安岡から吉見方面へ向けた四車線道路計画などが動き、「すべての道は人工島に通ずる(市街地をかわして)」式で国、県と共同歩調で軍港化にむけた響灘側の開発に熱を上げている。
 上水道については市内各地で水道管の破裂が相次いできたなかで、老朽配水管整備に6億円、漏水防止対策に3億4000万円がついた。下水道整備でも古くなっている筋ヶ浜や彦島、山陰、山陽、川棚小串の下水管布設事業に20億4000万円がついた。教育分野では幡生ヤードにつくる予定の教育センター建設を先送りし、かわりに小学校10棟、中学校5棟の耐震補強事業に8億6200万円を計上。市民生活に直結した部分で、世論に押されて予算化した部分もある。

 貧弱な農林漁業振興費 教育や福祉は切捨て

 大規模な箱物散財に対して、産業振興、雇用確保対策の貧弱さが際立っている。肝心な雇用対策としては「緊急雇用対応事業」として4億円を計上。前年度の7億6200万円からほぼ半額に減額している。54事業にのべ212人を雇うというもので、市議選に落選した元議員を「緊急雇用」した学校図書館などの校務補助をはじめ、特別支援教育の支援員、保育所の環境管理、市道の草刈りなどが事業内容となっている。
 本来なら雇用対策のために投資的経費として計上する、「失業対策事業費」という項目がある。多数の失業者の発生に対処して就職の機会を与え、道路整備や工場、住宅団地の造成といった事業を自治体が実施することが法律で定められ、その経費を計上する項目だが、こちらは前年度に引き続いて空欄となっている。職員が通常の人件費のなかからやるべき仕事をいくつか拾い上げて、国の補助金によってまかなう格好になっている。就業支援対策にはわずか167万円。一方で警察OBの食い扶持確保事業である路上喫煙禁止業務には934万円が例年通りに計上された。
 県下最大の耕作地を抱え、水産業の街でもあるが、農漁業分野も生産振興に注がれる予算は乏しい。農道整備、漁港整備など箱物的要素のものには億単位の予算をつけている一方で生産者の育成や、市民の食卓に地元の魚や野菜、果物などが届くような大型店にできない流通システムを構築するために力と金を注いだり、失業者を雇って耕作放棄地を復活させたり、荒れた山林を整備するなど、いき目のある政策が見あたらない。担い手育成については集落農業法人化促進事業に400万円(前年度1000万円)、就農助成に300万円、ニューフィッシャー育成に232万円と微微たるものになっている。一方で外国人漁業研修生受け入れ事業には1000万円がついた。
 農林漁業関係では、小規模治山事業に1600万円。森林の活用では民有林振興業務に2400万円、市有林造林事業に9000万円。農用地の保全や老朽化した水路を農業者や地域住民が整備する活動に対して6300万円の支援をおこなう費用を計上。ほぼ例年と同額である。産地振興作物生産拡大事業としてイチゴやアスパラ栽培のための費用助成を1000万円つけたのが新規事業。予算規模として大きいのはむしろ有害鳥獣対策で、捕獲業務に8200万円、豊田農業公園内に捕獲したイノシシやシカの肉を活用するための施設を建設するとして6000万円を計上している。
 事業見直しも多岐にわたっている。その対象になっているのが教育・福祉分野。民生費のなかでは敬老祝いのための費用が前年度の4438万円から2004万円へと半減。障害者が福祉タクシーを利用する際のチケット助成も見直し、1740万円の削減効果があるとしている。就学援助も3200万円減額。小中学校の給食費は「栄養価確保のため、給食費を改正する」と明記しており、値上げする可能性が出てきている。国民健康保険料も値上げとなる。介護保険料も基準額(月額)を4200円から5300円に値上げするとしている。そして税徴収の強化とかかわって、市税など債権管理システムを構築するとして5400万円を計上している。
 事業廃止・休止となる事業はその他に、情報誌「083」(年間1200万円)を発行休止するほか、豊浦総合支所では豊浦ふるさとまつりの実施方式を見直すとして84万円の経費削減。森林まつりも廃止。地場産業対策振興事業も廃止となる。

 安倍・林代理政治に根 潤うのは山銀とJR

 大型箱物や開発バブルをあくまで強行することから、下関市政始まって以来の巨額な予算規模の市政運営が続いている。失業者が街にあふれ、市財政そのものも窮乏の一途をたどっているなかで、市民生活にとって最も切実な雇用対策、産業振興策が置き去りにされた予算である。市民の生活など心配する意志も能力もない者が、追いはぎのように市民から税金を巻き上げ、差押え件数を急増させながら、安倍・林事務所の代理人、山口銀行の番頭になって使うことばかり考えていることへ、市民の怒りが強烈に充満している。
 駅前開発といって潤うのはJR西日本及び広成建設、山口銀行、周辺の政治家ぐらいで、駅周辺は空きビルと崩れ落ちるビル、周辺住宅の廃屋、シャッター商店街だらけである。良質なコンクリートで「50年は持つ」とわかった市役所本庁舎も、それならなぜ建設するのか理由が見あたらず、話は振り出しに戻っているのに強行しようとしている。
 今や地方交付税依存といっても国税収入そのものが減り、国からの地方自治体への割り当ても減っている。その分を「合併特例債」の体裁で地方自治体の借金に貼り替えながら、さらに散財させ道州制へと導いているのが国である。
 合併特例債の償還期間の間、国家財政がもつかどうかすらわからないなかで、中尾市政が破滅的な箱物バブルにのめり込んでいる姿が露呈している。
 若者に職がなく年間2000人規模の人口減・流出に歯止めがかからず、倒産や失業の波が容赦なく襲いかかる。市民経済が危険な状況に直面しているなかで、なおも箱物偏重・民託化の市外発注路線で中尾市長が暴走している。この調子でいけばますます下関がつぶれることは明らかで、安倍・林代理の略奪政治による食い潰しをやめさせ、予算案も抜本的に考え直すことが求められている。

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