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首を切られるべきは小泉政府
イラク人質事件
             無力なくせに挑発だけ    2004年11月2日付

 イラクで拘束されていた日本の民間人青年・香田証生氏(24歳)が、31日、バグダッド中心部で無惨な姿となって発見された。拘束したイラクの武装グループは「イラクからの自衛隊即時撤兵」を要求し「拒否すれば48時間以内に殺害する」と表明。小泉首相は「自衛隊は撤退しない」「テロには屈しない」と強硬姿勢を示し、町村外相はご丁寧にアラブのテレビに出演して同じことを言明した。そして最悪の結果となった。イラクにおける日本人の犠牲者は、外交官やフリージャーナリストなどにつづき5人目となった。小泉首相は各国部隊が撤退するなかで、世界でも突出して“日米同盟がすべて”“イラク占領推進”の姿勢を示したが、そのことは5人の犠牲にとどまらず、自衛隊を危険な戦斗にさらし、本土をも攻撃対象とすることを辞さないという宣言をしたに等しい。日本民族全体が落ちぶれるアメリカと心中するわけにはいかない。不正義の米軍占領に加担する自衛隊は即時に撤退させなければならず、いまや首を切られるべきは小泉首相である。

  「人質救出」の用意もなし
 拘束された日本青年は、その家族はもちろん、自衛隊員の家族、若者を子として持つ親たち、多くの人人、心配してくれたイラクやアンマンの多くの人人の願いを裏切って、バグダッド中心部近くのメインストリート・ハイファ通り付近のヤシ林で、頭部と胴体が切断された無惨な姿となって発見された。
 この青年はネットで公開された映像で「かれら(拘束したグループ)は日本政府がなぜ法を破ってイラクに軍を送ったのか聞いている」「日本政府に自衛隊の撤退を求めている。さもなくばぼくの首をはねるといっている」と訴えていた。
 これを聞いた小泉首相は即座に「日米同盟を考えれば、米軍が撤退する場合以外に自衛隊の撤退はありえない」「自衛隊の撤退はしない。テロを許すことはできない。テロに屈することはできない」と言明した。小泉首相の態度は、フィリピン政府が軍隊撤退を表明し無事解放され、その他の国も「検討する」など少しでも延命させる慎重な態度をとってきたのと比較しても、世界でも突出したアメリカ追随の強硬姿勢を示すものとなった。
 米国政府はこうした日本政府の姿勢を「断固とした姿勢を歓迎する(米国務省バウチャー報道官)」と絶賛した。
 小泉政府は「人質救出に全力をあげる」といったが、なにもできなかったし、なにもやる用意もなかった。現地の大使館は、青年がアンマンを出発したときから連絡を受けているのに、バスの停車場やホテルに行って保護することもできなかった。米占領軍司令部があるバグダッドで、反占領斗争が強まって恐ろしくて外には出られず、数人が大使館にこもっているだけの状態であった。
 小泉政府は、威勢のいい挑戦的な格好をするだけで、イラク現地では情報ひとつ得ることができず、まったく無力な存在で、イラクでの敗北で弱りきっているアメリカに従っていくだけで居丈高になっているというお粗末な姿を暴露した。救出については手も足も出なかったが、自衛隊の撤退だけは言下に拒否したことから、青年は殺される道しか残されなかった。

  米軍情報丸飲みで騒ぐお粗末さ暴露
 別人物の遺体発見で、メディアまで号外を出して騒いだが、現地ではどさくさ紛れの米軍の情報を丸呑みにするだけであり、それで大騒ぎをする日本の政府やメディアのお粗末さを暴露した。同時にそれは、小泉政府とメディアが、青年は殺されるしかない、としか見ていなかったことを暴露するものとなった。
 小泉政府の立場は、「退避勧告を無視してイラクに入った」「軽率な行動で自己責任」といい、殺害された青年が愚かであったといっている。
 だが、日本のほとんどの国民は、イラクからの「退避勧告」が出ていることは知らない。イラクにおいて、米占領軍の統治が破たんしており、米軍司令部があるバグダッドですら、米軍の統治が崩壊し、ホテルに泊まっている外国人は恐れて一人もいなくなっているなどということは、ほとんどの日本国民は知らされていない。
 メディアも、イラクの情勢についてあれやこれやといってきたが、記者が取材することもできない状態で、米軍などの間接情報でいい加減なことをいってきたことなど、素知らぬ顔で「大本営発表」ならぬペンタゴン発表をしてきたことは、今回の事件への重大な責任がある。事件はこれらがウソをついて、日本国民をダマしてきたことを暴露しており、それは犠牲になった青年だけでなく、すべての国民にとって、死活の問題となる。
 小泉政府は「イラクは非戦斗地域である」といいはって自衛隊を派遣した。イラクは非戦斗地域どころか、全土が戦斗地域であり、しかも米軍の占領統治が崩壊するほど、イラク人民の反占領斗争が力を強めているのが現実である。
 
  心配するイラク人民、−事件で明らかになった真実−
 この事件をつうじて、イラクの真実が一定明らかになった。
 一つは、この青年の行動について、アンマンやイラクの人人がひじょうに心配してくれたことである。
 アンマンのホテルのフロント係は「バグダッドに行きたいのでタクシーの予約をしてほしい」という依頼にたいして、「バグダッドは危険なのでやめた方がいい」と強く静止した。それでも青年の意志が固いというので、「タクシーは狙われやすいのでバスの方がいい」と忠告した。
 バグダッドへ行くバスは、危険なため欧米人はおろか、ヨルダン人すら利用することはほとんどなく、乗客のほぼ全員をイラク人が占める。日本人の存在に驚いたイラク人乗客らは武装グループの襲撃を恐れ、協力して日本の青年を守った。イラクのバス運転手は「過去数カ月、外国人が乗ってきたことはなく、日本青年はひじょうにめだった。国境や途中の街でも携帯電話がつうじるため、だれかが武装グループに連絡することは容易」と語り、国境手前の商店街に立ち寄ったときも「絶対に車をおりてはならない」と告げた。
 飲み物や食料を買ってくれ、国境では日本青年をバス内に残し出国手続きも代行してくれた。係員が本人との面会を要求したイラク側の入国審査では運転手と乗客の有志6人が日本青年を囲んでかくして連れて行った。普段は入国審査終了直後にバスを出発させるが、夜間の襲撃を避けるため午前5時まで待機して出発している。
 アンマンのホテルも、「日本の青年がバスでイラクにむかった」とアンマンの日本大使館に連絡した。バグダッドの日本大使館は外務省の指示で情報収集をはじめたが、これも「日本人が泊まりそうなホテルを訪ね歩くのは不可能な状況。電話で問い合わせし、現地警察にも依頼したがそれまでだった」(外務省)。大使館は手も足も出ずに、青年の実家に「本人と連絡がついたらイラクを退避するよう伝えてほしい」と伝えただけだった。
 バグダッドのホテルは、いずれも「外国人が宿泊すると爆弾攻撃の対象になる」と断った。その間、ホテル名を書いた紙などを通行人に見せて場所を訪ねる姿を心配して、ホテルに自家用車で連れていくイラク人もいた。

  バグダット中枢ですら米軍統治崩壊
 さらにハッキリした事実は、ファルージャなど反占領斗争が強い地域だけでなく、米占領軍司令部があるバグダッドもまったく米軍の占領統治がきいていないという事実である。
 これまでの人質事件はバグダッド周辺の幹線などで起きるケースが多かった。それが今年7月ごろからバグダッド市内でひん発するようになった。タクシーも外国人を乗せるのを嫌がり、ホテルも外国宿泊客は断る状況となっていた。外交官や米英系企業は米軍が警備する大使館やホテル内にこもる状態になっていた。
 10月末には米大使館の治安担当の外交官が殺された。米軍司令部があり厳重な警戒を敷いている「グリーンゾーン(米軍管理区域)」のなかですら、米政府職員の誘拐未遂事件が起きていた。バグダッド中枢ですら米軍支配は崩壊しており、イラク全土の米軍支配がガタガタに崩壊しているのである。これらの状況を知らせず、ウソをついてきたメディアと政府の責任は大きい。
 戦後アメリカの後押しで、パレスチナへの残虐な攻撃をくり返しているイスラエルに滞在したのちに、反米斗争の火が燃えるイラクに入るというのは、きわめて危険な行為であった。この青年の行動がどういう目的であったかは不明な点が多い。しかし、バグダッドですら米軍統治が崩壊し、それほど危険になっていることを知らされていない日本国民全体も似た境遇といえる。それは派遣されている自衛隊の危険性にも共通しており、また日本の港などにテロ対策といって金網をはったり、テロ対策訓練をやっているような本土の危険性にたいしても、あまりにもウソをつかれているとみなさざるをえない。
 小泉首相は、青年が殺害されたことを確認したのち、「テロには屈しない」「人道復興支援はつづける」と、当初「米軍が撤退しないかぎり自衛隊は撤退しない」といった勢いは手直しして発言した。そしてこの期におよんでも「自衛隊は歓迎されている」などといって、期間延長や増派までたくらんでいる。五人の犠牲で終わらせないというのである。

   米国の巨大テロに卑屈に従う小泉
 米英軍のイラク戦争は、10万人におよぶイラクの人人を無差別に殺害した。そのほとんどは、非戦斗の市民である。自衛隊は人道支援ではなく、米軍に人殺しのための武器弾薬や兵員をはじめ補給物資を運び、米軍がとおるための幹線道路警備をやっている。バグダッドで目にする自衛隊は、人殺し道具を空輸する自衛隊機である。イラク人がそれを米軍の占領とイラク人殺害に加担しているとみなすことは当然である。
 その犯罪的な侵略戦争は、イラク人民の英雄的な武装斗争によってすっかり破たんしている。イラク戦争は、「大義」としてきた「大量破壊兵器の存在」も、アメリカ政府自身が「なかった」といわざるをえなくなり、石油略奪と市場支配のための強盗の侵略戦争であり、植民地占領であったことが世界中に暴露された。この根本問題を解決しなければ犠牲を拡大する以外にない。
 小泉は「テロには屈さない」というが、すべてのテロに屈しないのでなく、イラク人民へのアメリカの巨大な軍事テロに卑屈に従っている。小泉は、強がっているが、虎の威をかるキツネであり、アメリカをうち負かしている人民の側をあなどるという愚かな姿を暴露している。これは日本民族を不幸に導く以外のなにものでもない。
 いまや首を切られなければならないのは小泉政府である。自衛隊を撤退させるために、日本人民の声を強めることは、イラク・中東の人民、アジア・世界の人民との友好連帯と、世界の平和のためであり、日本民族の根本的利益を守ることである。

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