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     「国変える」と青少年が多数観劇
    はぐるま座『雷電』 倉敷・尾道公演
                全市巻き込む大衆自身の取組  2013年2月27日付

 劇団はぐるま座『動けば雷電の如く――高杉晋作と明治維新革命』の公演が岡山県倉敷市(12日)と広島県尾道市(13日)でおこなわれ、小・中・高校生や大学生が集団参観したのをはじめとして、全市を揺るがすとりくみに発展して大きな反響が寄せられている。はぐるま座から寄せられた通信を紹介する。
 劇団はぐるま座の『動けば雷電の如く―高杉晋作と明治維新革命』の今年初公演が12日に倉敷市で、13日に尾道市で開催された(主催・各地実行委員会)。製造業大手の縮小や撤退、生産拠点の海外移転、TPPの先取りや大型商業施設の進出などにより、地域経済の疲弊が深刻化するなか、広範な人人の日本立て直しの底深い思いと、欧米列強の侵略を阻止して独立と世直しを成し遂げた父祖たちの誇り高い志が響き合い、全市を巻き込んだ新しい質のとりくみに発展。時代の転換機運が高まるなか、とくに小・中学生や高校生、大学生がかつてない規模で集団的に観劇するなど、両会場で各界各層の650人が駆けつけ、現代を変革していく大きな熱気に包まれた。
 年明けから本格化したとりくみは、ポスター掲示を依頼して回り始めた当初から、日本の独立の問題意識が激しく語られ、社会的利益を守る精神をおおいに高めるものとして歓迎された。

 TPPの怒り重ね共鳴 倉敷市

 倉敷市児島地区は、繊維産業が多く、現在も全国の学生服の八割が生産されている。国産ジーンズ発祥の地でもあり、駅の移転と大型店の進出、“平成不況”で大手の会社が行き詰まって提携先も倒産があいつぐなか、中小の優れた伝統技術を持つ職人たちが多くのパーツを分業して品質の高い製品をつくり、若い人たちが国産店を次次と出店。若手店主たちは、高杉がみずからの地位や命もなげうって正義を貫いたこと、原動力となった大衆が世直しの志で助け合い、外国の侵略や幕府の支配を打ち破ったことに熱烈な共感を寄せた。
 年間300万人の観光客が集まる倉敷市美観地区の恵比寿通り商店街では、「4年前に閉園したチボリ公園跡地にも巨大な商業施設ができたが恩恵はない。商店街は飲み屋ばかりになった」「消費税が上がったらやっていけない。偉いさんに頼るのではなく、自分たちがしっかりしなければ」「アメリカをたたき出して独立しないといけない」と口口に語られた。
 昨年海底トンネル落盤事故が発生した水島コンビナートで、長年中華料理店を営んできた男性は、「戦後、コンビナートには日本鉱油や三菱石油、日本鉱業、旭化成、川崎製鉄などができたが次次に縮小したり撤退していった。大手は目先の利益しか頭にない。原発も大元はアメリカだが、石油精製技術も莫大な特許料をアメリカが巻き上げている。アメリカ型の金儲け第一主義が元凶だ」と、喜んでポスターを掲示。70代の女性は、市内の企業が3分の1の賃金で中国人を働かせていることに触れ、「このうえTPPになれば、ますます若者たちの仕事がなくなる。高杉のように“世のため人のため”が第一でないといけないし、それこそが日本人の精神だ」と語り、「一人でも多くの人に知らせよう」と、詩吟教室での紙芝居をおこなった。
 茶屋町の商工会役員は、「高杉が身分や職業の違う人たちで奇兵隊をつくり、黒船や幕府とたたかったように、われわれも地域で結束して頑張っていきたい」と実行委員に連名。女性部役員会の紙芝居でも、「みんなでこの劇を観にいこう!」と語り合われた。
 両市でポスターが自治会、飲食店、理美容院や病院・薬局、工業団地、学校、公民館、郵便局、寺院・神社など各所に1400枚貼り巡らされ、実行委員には大学生をはじめ、PTAや教師、退職教師、剣道指導者などの教育関係者、商工業者、商店主、理美容師、薬剤師、町おこしグループなど、63氏が連名してとりくまれた。

 造船業の苦境も論議に 尾道市

 幕末、北前船の寄港地として栄えた商業地である尾道市は、戦後も海との関わりで造船業や水産業が発展した。だが吉和漁港だけで400軒あった漁師が半分以下になり、そのうちの4割が造船労働者になっているが、造船現場でも賃金の安い中国人労働者などが3年サイクルで大勢雇用されている。「日立造船と尾道造船のうち受注があるのは尾道造船だけ。発注元は国内企業にキャンセル料を払ってでも工賃の安い中国に発注するようになっており、2年後には造船業は壊滅する」「日本は膨大なアメリカ国債を買い、植民地だ。アメリカはもうすぐ財政の崖から落ちて世界中に影響が出る。ここらの漁師は漁場がないので愛媛県に行き、金を払って漁をしているが、燃油が上がって燃料代にもならないため漁に出ない人が増えている。輸入魚には2%の関税しかなく、漁業はすでにTPPをやられているようなものだ」と切実に語られた。
 こうしたなかで、実態経済を伴わないアベノミクスに対して、水産加工業の男性は、「国内産業が空洞化しても株価が上がり、もうかればよいという考えでは絶対にダメだ。日本経済は根本的におかしくなっている。戦後日本の伝統が薄れ、食文化も変わり、アメリカの安い牛肉のせいで魚離れが進んだ。高杉のような人こそ必要だし、ぜひ観たい」と熱く語って実行委員になった。現状をどう打開していくのか、激しい問題意識が語り合われ、海沿いの工場街でもほとんどの事業所がポスターを掲示した。倉敷市の商店主も「アベノミクスは投機経済。消費税増税、TPPをやれば参院選で必ずしっぺ返しがくる。どのように維新を成し遂げたのか、ぜひ観たい」と話し、券を預かった。
 各所で長周新聞の紙面を持ち込んでおおいに論議になったのも特徴的で、終戦が小学校二年生だった老人会役員の男性は、「どんなふうにアメリカにやられてきたかを見てきた。私利私欲では経済はよくならないし、資本主義の限界だ。独立するためには日本が自力でやる精神を持つこと。市民の力、これが今の政治に必要だ」と下関市民の会の活動にも強い関心を示し、「世の中を変える情熱で動いたこの時代の人たちのことは絶対勉強になる」と券を預かり回覧を回した。
 薬剤師会の人たちは、薬のネット販売規制緩和やTPPに、「薬屋と医者はもとは薬師といって一つのものだった。明治7年の法律で分けられたが、薬剤師と患者が話し合い、あう薬を処方するのが基本。ネット販売などは非常に危険で絶対反対。ずっと主張したが政府に押し切られた」「ネット販売はTPPの先取り。日本はアメリカのいいなりだ」と激しく語られ、実行委員に連名し、ポスター掲示や券を預かって観劇を呼びかける動きになっていった。ある薬剤師は、「昔は火薬を扱っていて戊辰戦争のときは長州藩に火薬を調達した。それが隣の福山藩の怒りをかい、店に火をつけられたこともある。自分たちは長州びいきだ」と語った。
 両市の郵便局長会で舞台の内容を紹介した紙芝居がおこなわれ、郵政民営化やTPPと重ねて、「現代の黒船に立ち向かおう」と沸き立った。ある郵便局関係者は、「ゆうちょ、かんぽなど日本人の預貯金をすべてアメリカが狙っている。郵政民営化はそのための足がかりで売国奴だ」と語った。
 各地で劇の内容を紹介する紙芝居や台本とともに、とりくみの様子を反映したニュースが歓迎され、福山公演を観劇した尾道大学生の感想文が反響を呼び、地域を結ぶとりくみとして広げられていった。高校野球部の集団鑑賞に加えて、ラグビー部でも「この劇の精神はラグビーの精神と同じだ。どんな人間に成長するかが大事だし、ぜひ学びたい」と、集団での鑑賞が決まり、尾道公演には市内の全高校の生徒が誘い合って観劇する動きとなるなかで、「この公演は、日本の将来を切り開く活力になるものだ」「みんなで鑑賞し、自分たちの力で社会を変えていく糧にしていこう」と、教育関係者や多くの市民が喜び、市民自身の運動が大きくうねりとなって発展。両会場とも、並並ならぬ期待の高まりのなかで公演を迎えた。

 新しい質の普及が発展 劇団員の取組も

 劇団員もまたとりくみの過程で、昨年の創立60周年を経た人民劇団の出発点に立った新しい段階の第一歩として普及活動をおこなった。それは、昨年までの舞台創造上での発展に対して、普及のなかにあった弱点、大衆の切実感とかけ離れて“売れればいい”と芝居を売り込む流れや、組合主義や目先の経済要求で体制内安住をこととする勢力に乗っかって社会の片隅で小集団の安住をはかろうとする流れと決別する実際的な転換点となった。とりわけ広島県東部は、それらの政治勢力に基盤をおいた公演活動をおこなってきた歴代のとりくみとまったく質を異にする、新しい質のものとなった。
 大胆に圧倒的市民のなかに入り、作品のテーマを持ち込んで、大衆のなかにある現代に対する切実な問題意識と変革要求と結びつき、大衆のなかから大衆のなかへの活動を通じて、根本変革を求める時代の要求に応える人民劇団としての普及活動が大きく発展し、圧倒的多数派になるとともに、その活動の転換が、より多くの大衆と深く結びつき、大衆自身の運動となって広がっていった。
 そして舞台創造でも、昨年までの到達点に立って、さらに日日発展する大衆の意識に呼応して現実社会に力を発揮するリアリズムの舞台に練り上げて発展させようと、集団的な論議と稽古を積み重ねて公演に臨んだ。
 倉敷公演の会場では、芸術科学大学の学生や商店街で朝市にとりくむ若手経営者が受付を担い、尾道公演の会場でも高校演劇部の生徒たちが受付に立ち、尾道大学の女子学生や退職教師らが場内整理を担当。倉敷では剣道道場の小学生たち数十名が保護者とともに最前列に、尾道では舞台を心待ちにした160人もの小・中学生や高校生、大学生が、保護者や教師、野球部やラグビー部などの監督らとともに、続続と詰めかけた。

 社会変えるのは自分達 実行委員も確信

 開幕と同時に客席は舞台に引き込まれ、各場面ごとに随所で笑いや共感のざわめき、拍手が起きた。2幕に入ると会場はさらに一体感に包まれ、功山寺で決起する場面からは、暗転の前から怒涛のような拍手が沸き、戦場に米俵を届けた百姓衆の姿と礼を尽くす高杉や隊士たちの場面では涙をぬぐう人人の姿が多くあり、尾道では高杉辞世の句とともに幕が降り始めると、「頑張れよ!」「ありがとう!」などの掛け声が飛び交った。
 終演後のロビーには、出演者と握手する小・中学生や高校生の行列ができ、老若男女の観客との交流が長く続いた。また、「時代を変えるのは人であり、新しい流れのなかから志ある若者が既成社会を倒し、新たな時代へ向け創造するのだと思った。そしてこれは、明治維新だけでなく現在の日本社会にも通じると思った」「高杉は私利私欲では動かず、常に世のため、国のためにどうあるべきかを考え、行動しており、その思いに強く響いた人が同志として戦った。それが百万の強兵も恐れない強さとなった。高杉のような人を待つのではなく、自分たちから高杉になり国を変えていきたい」(男子高校生)など、熱烈な感動を綴った数百枚のアンケートが寄せられた。
 実行委員の美容組合役員の男性は、「社会を変えるのは自分たちだ。劇を観て、自分たちの力で社会を変えていくのだと改めて思った。なによりも、私たちのそうした思いを受け継いでくれる青少年が育っていることが本当に嬉しい」と満面の笑みを浮かべ、武道の指導者は、「実行委員会が結成されて、共通の思いを持つ人人との出会いの場ができたことがとても嬉しい。桜宮高校の体罰報道などにより、指導が難しくなってきているなかで、こういう劇を青少年に観せることは非常に大切なこと。道場の子どもらも素晴らしいアンケートを書いていた。全国で日本を立て直すために頑張ってほしい!」と、劇団が高杉の志で全国の人人をつないでいくことに期待を寄せた。
 また、尾道市の水産関連会社の若手経営者が、「今後は全国でおこなわれるすべての公演を支援したい」と協力を申し出たのをはじめ、福山市に続いて尾道市でもとりくんだ退職教師は、「はぐるま座の舞台は観るたびに進化している。発展が止まることがない。引き続き四月におこなわれる府中、神辺の公演も大成功させよう」と動き出している。倉敷市の武道指導者も広島県や福岡県の友人・知人に連絡をとって協力を要請するなど、多くの人人が新たな行動に立ち上がり、時代の転換期にふさわしい全国的な大運動の発展を確信させる公演となった。

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