トップページへ戻る

黒石小でも鉄棒全員達成
宇部市・5年生81人2カ月で
              平和の担い手育む教育    2013年6月24日付

 宇部市立上宇部小学校の6年生114人が鉄棒逆上がり全員達成をやり遂げた実践は、子どもたちが「みんなのために」で知・徳・体の全面で大きく成長し、父母や地域の大きな支持を得たが、この実践がその後各地に急速に広がっている。宇部市立黒石小学校でも、4月から「目指せ全員達成 鉄棒逆上がり」をスローガンにとりくんできた5年生81人が12日、わずか2カ月間でみごと全員達成を果たし「みんなの力でやればできるんだ」と大きな自信になっている。子どもたちは毎日の練習によってできた手の豆を誇りにし、逆上がりや体育の授業を通じてできないことも努力すれば乗り越えられることを確信し、それが他教科の学習意欲へとつながり、友だちと団結していきいきと学校生活を送っている。5年生を担任する教師たちに集まってもらい、実践の経過や教訓を聞いた。
 
 皆が心一つにして頑張り成長

 黒石小学校では、四4月から鉄棒の他に5年生や6年生の合体(体育の授業を学年合同でおこなう)や、5年生のクラスと4年生のクラスが一緒に体育をやり上級生が下級生に教えるなど、学校あげて体育重視の教育を盛んにおこなってきた。
 逆上がりをとりくむきっかけは、上宇部小で体育実践をとりくんできた教師が転勤してきて呼びかけたこと。同学年の教師たちも「逆上がりというのは、運動ができるかできないかの基準。自分たちが子どもの頃は鉄棒が主な遊具だった。でも、今頃の子たちは鉄棒があってもだれもやらない。体育の授業では必ずやるが、できない子はいっぱいいるのに、少し頑張らせても徹底してやることはなかった。だから全員達成はやってみたいという期待があった」「これまでの経験から、教師が一つになることの大切さはいつも感じていた。普段自分の学級だけに目が行きがちだが、子どもを変えるには学年が一つになることが大事だし、さらに学校全体が一つになることが大事だといつも思ってきた」と応えていった。
 毎朝と昼休みに逆上がりを始めた。子どもたちは朝7時50分にはすでに運動場に出てくる。5年生全員が一つのことに向かって頑張るし、それに対して担任だけでなく、5年生の教師3人がそれぞれ毎回意見をいう。助っ人で来た先生にも一言いってもらう。子どもたちが集まっている場で、教師集団の気持ちが直に伝わることは大きい。
 朝は所用があってどうしても早く出ることができない教師は、逆上がり実践を写真で記録しようと思い立った。教室の廊下に貼り出すと、子どもたちが鈴なりになる。そして逆上がりをしている自分の姿を写真で客観的に見て、へそが鉄棒に近づくとはどういうことかと、だんだん教師にいわれていることを科学的に理解できるようになった。
 逆上がりを始めたときは、81人中46人しかできなかった。しかし1カ月で77人ができるようになった。残りがあと3人になってからがたいへんだったが、最後の2人になったとき、へそが鉄棒から離れていて、一番無理だろうとみていた子が先にできた。もう一人の子もその日にできた。
 最後の方でできた子の一人は、できてからも雨の中で練習するなど積極性が出ている。母親も涙を流して喜んでいた。ある教師は「子どもたちは校長室に報告に行き、事務室の先生にまで話していた。なんで事務室? と不思議だったが、体育倉庫の鍵を返しに行くときに、毎回気にかけて声をかけてもらっていたらしい。子どもたちは、相当うれしかったんだろう」とのべている。

 友達に心寄せる子供達 共に励ましあう中で

 教師たちは、子どもたちのいきいきとした成長を次のように語っている。
 「子どもたちの友だちを応援する姿は真剣で、必死になって友だちの踏み板を、泥が散ろうが支えている。友だちをずーっと見守ってやるんだという美しい姿が見られた。逆上がりができたら、誰彼にかかわらず“やったー”と喜んでいる。今の学校は差別・選別の競争主義で、放っておいたら子どもたちはバラバラ、自分さえよければという考えが中心になる。そのなかで子ども同士が成長を喜びあうというのはすごく貴重だ」
 「家庭訪問に行くと、“うちの子が、今日は○○君ができた、○○ちゃんができたと、友だちのことをいうようになった”“自分のことだけで精一杯だった子が、友だちのことで喜べるようになった”と保護者がたいへん喜んでいる」
 「できた日は子どもに必ずコメントをいってもらうのだが、“自分ができました”ではない。“みんなのおかげでできました”と全員がいった。応援してもらったことが、とてもうれしかったのだと思う。感謝の気持ちが芽生えている」
 「手に豆ができて2回ぐらい皮がむけたらできるようになるよと最初にいった。簡単にはできないんだよと。それが“頑張る姿は美しい”になって、その後子どもたちが手の豆を見せに来るようになった。“保健室に行ってもいいですか”でなく、“豆を見て下さい”という。頑張ることがうれしいし、誇りになっている」
 「水泳でも奇跡が起こっている。25b泳げない子、顔をつけられなかった子が泳げるようになった。逆上がりが達成できたことで自信を持ったし、子どものなかで一丸となって頑張っていこうという雰囲気がある。運動ができない子が自信を持っている」
 「漢字の50問テストをやったとき、はじめ20点台しかとれなかった子が、3日間練習する宿題を出すと、今度は90点台になり、クラスのみんなが驚いた。逆上がりで学んだ、みんなが心を一つにして頑張り続けるという経験が、他の教科の成長にもつながっている」
 高学年になると、「自分だけいい格好して」と、一生懸命頑張る子を茶化したり、足を引っ張る空気はどの学校でも一つの障害となっている。だが今回、同学年の教師集団が一丸となって同じ歩調で指導にあたり、鉄棒を通じて“頑張ることが美しい”という方向で子どもたちを一つにまとめることができる、ということが実証された。ある教師は「普通は子どもたち全員の前で全員の教師が話をするということはない。合体でもたいていは一人の教師が指導して終わりだ。職員室で話しあったことをそれぞれが教室で伝える。今回のように、全担任が毎回毎回、朝練でも合体でも一言いうことは、子どもたちにとっても、自分の担任だけでなく3人の教師から思いを聞くので、“1組だから、2組だから”という垣根がなくなった」と、教師集団が一致してとりくむことの重要性を語った。
 ある教師は鉄棒実践を通じて学んだこととして、次のようにのべた。
 「最近の世の中は個人主義だと思う。心を一つにして何かをするという経験が子どもにとってほとんどないし、私たち教師もそうだ。自分の学級に目が行って、全体が一つになってとりくもうという雰囲気がなかなか生まれない。家でもテレビが各部屋にあったりと核家族化して、家族が一つになることがない。それがいつも頭の中にあった。そういうところから逆上がりの実践をやって、一つになってなにかをやるというのはすごく価値があるなと感じた。一つになるというのは、ただ見た目の形ではなくて、心がまとまるとか、認めあうとか、お互いができないことを知りあってそれを助けあうとか、そういう意味で、それは教師も子どもも同じだ。教師がしていないのに、子どもにやれといえない。みんなが同じ目標に向かって一つになって、頑張って達成できたといういい成功例があるから、いろんな場所で指導するときにそれが言葉になって出てくると思う」。
 また、鉄棒実践を通じて子どもたちのなかに「みんなのために」という勤労人民のモラルを育むことが、戦争に反対し平和の担い手をつくっていくことにつながることも論議されている。
 ある教師は、「被爆者の方から、“最近、戦争が近づいてきていることを感じる。子どもたちを戦場に送ってはいけない。戦争を押しとどめ平和の担い手になる子どもを育ててほしい”といわれた。今の世の中、自分の利益のために平気で人殺しをするような凶悪な考え方があるが、それが戦争につながるものだ。そういう子どもをつくらないために、私らは被爆体験を語っているのだと。鉄棒実践は、そういう被爆者や戦争体験者の方たちの気持ちを代表しているのではないか。子どもたちのなかに、みんなで力をあわせて逆上がりができるようになったとか、友だちの成功をわがことのように喜べるようになったという気持ちを育てることが大事だ。二度と戦争を起こさせないために」と語った。
 別の教師も「自分の欲求ばかり主張し、人のことを思いやれず、気に入らなければ暴力を振るう。歯止めがなくなれば戦争にもっていかれる。最近の子どもたちは兄弟がおらず、学校でしか集団生活が送れない。そのなかでしっかりもませて、仲良くなるようにかかわらせていくことが平和につながる」とのべた。

 子供の感想

 A子
 4月頃から始めている逆上がりの練習。さいしょは、ふみだいでもできなかったのに、今はもう足がてつぼうにつくまでになってとてもうれしかったです。今日は、ゆびのかわがむけました。ちょっといたかったけど、なんかうれしかったです。それは、こんなにがんばったのかと思えたからです。それに、朝、毎日練習します。できるとどんだけうれしいのかが、友だちができるのを見てよくわかります。
 あと、マット運動もやりました。すこしだけたいへんだったけどおもしろかったです。それで、台上前転やとびばこなどもやりました。まだできないけどがんばりたいです。
 わたしは体育が苦手なので、これからも苦手をなくすようがんばります。
 B子
 5年生になって、合体の体育がありました。マットとそく転と鉄棒と台上前転などをしました。
 マットでは、前転・開きゃく前転・後転・開きゃく後転・台上前転の練習をしました。そく転は、片足ずつおりるのと両足でおりるのをしました。両足では、なかなかできませんでした。
 鉄棒では、逆上がりの練習をして今では、できる人は七二人もなって、みんなで応えんしたら力もでるんだなと思いました。台上前転はマットで練習した後にやったので上手にできました。みんなと協力したら、いろんなわざができるようになったので、できない人は最初からあきらめたらいけないことがわかりました。なので、きっと逆上がりができない人は、できると思ったらできるようになると思います。


トップページへ戻る