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共謀罪廃案へ全国で抗議行動
学者や弁護士が相次ぎ緊急声明
               傲慢な暴走で火に油    2017年6月14日付

 安倍政府が参院法務委員会で採決を想定した「共謀罪」審議を開始し、18日の会期内に強行成立を図る意図をあらわにしている。参院法務委員会の開催を委員長職権で決めるなど強引な姿勢を見せて揺さぶり、野党側に金田法相問責決議案や内閣不信任決議案をさっさと出させて速やかに否決する方針だ。加計学園や森友学園問題への追及を封じ込めたうえ、「共謀罪法案」も与党議員の頭数だけで強行採決を狙うもので、抗議行動は全国で活発化している。大学人、弁護士が新たに緊急声明を発し、地方議会も抗議決議をあげ、国連関係者など国際社会も巻きこんで共謀罪法案廃案の動きは急速に広がっている。安倍政府は秘密保護法、安保関連法等のときと同様に強行採決で諦めを煽る構えだが、沈静化するどころか「共謀罪法案成立で終わりにはならない」と行動機運は高まっている。

 国際世論も安倍政府を批判 公権力・財産私物化やめよ

  13日の国会審議では野党が金田法相問責決議案と、加計学園の獣医学部新設問題で国家戦略特区制度を担当する山本幸三地方創生担当相の問責決議案を参院に提出した。だが問責決議案は14日の参院本会議で与党が反対多数で否決する方向で、全国各地で「また衆院と同じ出来レースをそのまま放置してはいけない」「国会は国民の世論を反映する場所ではないことが良く分かった。国会議員に頼っていてもなにも変わらない」と憤りが拡大している。
 国会前では連日大規模な抗議行動がおこなわれ、一般市民の行動も目立っている。9日には約4000人が集結して共謀罪反対集会が持たれ、翌10日にも沖縄県名護市辺野古の新基地建設と「共謀罪」法案に反対する集会が1万8000人規模で開かれた。学者や市民団体などが11日に東京・渋谷でおこなった街頭宣伝には約4000人が参加し、子育て中の母親など一般市民も参加してマイクを握り、共謀罪法案の廃案を訴えた。
 13日夕方には日比谷野外音楽堂で共謀罪反対の抗議集会が開かれ、5200人が結集し「安倍政府退陣」の声をあげた。首都圏では国会周辺の集会に参加できない市民がさまざまな場所で「共謀罪法案反対」のプラカードを持って訴える行動も広がっている。
 さらに共謀罪法案反対の抗議集会はここ数日間で北海道、青森、秋田、富山、長野、岐阜、千葉、愛知、埼玉、神奈川、静岡、三重、滋賀、大阪、和歌山、京都、岡山、鳥取、鹿児島、福岡、沖縄など全国各地で開催されている。共謀罪法案の内容に加え、強権的な国会運営や森友・加計学園問題を隠蔽する安倍政府の退陣を求める行動は全国へ波及している。

 「数」の中身は欠格議員 森友・加計問題も追及

 こうしたなか大学人や弁護士などの緊急声明や要望書提出が連続している。9日には、濱田邦夫(弁護士・日比谷パーク法律事務所・元最高裁判所判事)、岡田知弘(京都大学教授、地域経済学)、水野和夫(法政大学教授、マクロ経済学)など弁護士と経済学者の26氏(弁護士11人、経済学者15人)が緊急に「弁護士と経済学者有志の声明」を発表した。
 声明は「今国会で何度となくとり上げられた森友学園問題や加計学園問題などから明らかな通り、今や日本では首相官邸そのものによって、行政や司法の公平性が著しく歪められてしまい、その結果、法の支配が脅かされ、“人による支配”というべき状況が生じている。政権と近い者、政権と縁故を持つ者に対し恣意的に利益が誘導されるという状況は、客観的な予測可能性が乏しくリスク管理が機能しなくなるためビジネスにとっても重大な悪影響を及ぼす」と指摘。「資本主義社会において何より重要なのは、公平、公正、平等な競争が確保されていることにある。これが確保されず、縁故による優遇が入り込めば、新規参入はおこないづらく、海外企業の参入も阻まれ、ビジネスの健全な発展が阻害されることは明らか」「金融商品取引法や税法違反の罪についてまで要件のあいまいな共謀罪が創設されると、ビジネス計画の立案の過程における議論に重大な悪影響を与え、ビジネス活動に対する萎縮効果が大きい」とした。
 そして「これほど政治家の質が下がり、政治が乱暴に、政府が横暴になったことはいまだかつて例がない。わが国の民主政治の危機はまさに頂点に達しており、三権分立の原則、立憲主義(法の支配)は政府と国会多数派の数の横暴で蹂躙されていると言わねばならない。この政権が今、市民の自由を脅かし監視社会をもたらす共謀罪法案を成立させようとしていることは戦慄すべき事態だ」とのべ「共謀罪審議を停止し、森友学園・加計学園問題に関する公権力と公有財産私物化の疑惑を、国会で徹底的に究明することを求める」と訴えた。
 10日には、臼杵陽(日本女子大学教授、中東研究)、小森陽一(東京大学教授、日本文学)、高桑和巳(慶応義塾大学准教授、フランス思想)、西谷修(立教大学大学院特任教授、哲学・思想史)など人文系の学者と若手弁護士の45氏(学者25人、弁護士20人)も「権力の私物化と共謀罪審議に怒り、加計学園疑惑の徹底究明を求める」緊急声明を発表した。
 声明は森友学園や加計学園問題、元TBS記者の準強姦事件にふれ「国会答弁では数を頼みにゴマカシと居直りで押し切り、メディアや警察権を駆使して批判や告発を潰そうとする。このような理不尽で横暴な政権の振舞は前例を見ない」とのべ「今や日本では首相官邸そのものによって、行政や司法の公平性が著しく歪められているが、まさにその政権が、人びとの内心の監視を可能にし言論・表現の自由を危うくする組織犯罪処罰法改正案(共謀罪法)を強引に成立させようとしている」と指摘した。「いま国会では自民・公明連立与党と日本維新の会の“数”によって、事実上どんな法案をも成立させることが可能である。だがその“数”の中身はと言えば、この間明らかになって国民を呆れさせているように、不祥事の絶えない欠格議員たちであり、答弁もできず任に堪えない失格閣僚ばかりである。国会における審議は、首相や担当閣僚が疑惑の“説明責任”を放棄したことで完全に形骸化しており、失格閣僚の“任命責任”と合わせて、首相みずからがその責を負わなければならない」とのべた。
 そして「政権が官庁やメディアを巻き込み、これほど政府が横暴になったことはかつてない。政権そのものが国の柱である民主主義、三権分立の原則、立憲主義(法の支配)を蹂躙(じゅうりん)している。振り返れば、1990年代以降、“政治主導”によって官僚支配や政官業の癒着を打破することを標榜し、政治改革や行政改革が進められ、小選挙区制の導入や中央省庁再編などを通じて、首相権限(官邸機能)の強化が進められてきたが、現在の安倍政権で現実のものとなったのは、政治主導でも政官業の癒着打破でもなく、首相個人による、公権力と公有財産の私物化以外のなにものでもない。ただちに共謀罪審議を停止し、加計学園問題を国会で徹底的に究明することを求める。これが現在の国会の、そしてわが国の政治の劣化を座して見過ごせない者の火急の責務だ」と強調している。
 首都圏大学・市民有志連絡会の27大学・2団体も12日に「組織犯罪処罰法改正案の慎重審議を求める要請書」を参院議長、参院法務委員会委員長宛に提出した。
 要望書は「衆議院での審議を通し、内心を処罰するというこの法案の違憲性がより一層明らかになった」とのべ「国際条約のための法案だと主張しながら、プライバシー法の権威でもある国連特別報告者の指摘を敵視するような態度は、国際的な孤立を招くものだ」「私たちは政府が法律家をはじめとする専門家の意見を無視し、強引な手法で法案の成立を図ろうとしていることに重大な懸念を覚える」と強調した。同要望書は青山学院、慶応義塾大、国立天文台関係者、上智大学、信州大学、成蹊学園、専修大学、創価大学・創価女子短期大学、拓殖大学、中央大学、中央学院大学、東京学芸大学、東京経済大学、東京工業大学、東洋大学、獨協大学、日本大学、一橋大学、フェリス女学院大学、法政大学、武蔵野美術大学、明治学院、明星大学、立教大学、早稲田大学などの有志が共同で提出している。
 「安保関連法案に反対する立命館学園有志の会」も12日に緊急声明を発表し、「私たちは、“学問の自由”を尊び、自由で、安心して暮らせる社会を願う立場から、同法案の廃案を強く求める。また、法案に関する疑義がほとんど解消されていないのに、参議院での強行採決によって法案の成立を図ることは、議会制民主主義の軽視であり、決して容認されるものでない」と訴えている。

 強行しても終わらない 民意得られぬ政府

 現在、全国で約60の地方議会が共謀罪法案の廃案、慎重審議を求める意見書を可決しているが、新たに可決したり再度抗議決議を上げる議会も出ている。
 沖縄県の北中城村議会(比嘉義彦議長)は6月の定例会本会議で、共謀罪法案廃案を求める意見書を全会一致で可決した。基地建設に連日抗議行動がおこなわれている沖縄の現状にふれ「県民の正当な反基地、平和運動が真っ先にテロ等準備罪の標的となりかねない」とし、廃案を求めた。また「思想や内心まで処罰の対象となりうる違憲立法の可能性も極めて高い」と訴えている。意見書は衆参両院議長、首相、法相、総務相、外相に提出する。
 すでに慎重審議を求める意見書を可決している三重県議会は、共謀罪法案の衆院採決に抗議する意見書を再度賛成多数で可決した。意見書は「適用対象である“組織的犯罪集団”の定義もあいまい。一般国民も処罰の対象になる恐れがある」とし、「懸念を払拭するには至っていないにもかかわらず採決がおこなわれたことは遺憾」とのべている。自民、公明が反対したが、採決の結果、24対23(退席1)で可決した。地方議会では与党議員の反対で僅差で意見書可決に至らない議会もあるが、地方議会を下から突き上げる動きが各地で顕在化している。
 国際的にも日本政府の対応や日本の監視・弾圧体制強化に批判が強まっている。国連特別報告者のジョセフ・カナタチ氏は共謀罪の内容と強引な審議の仕方を批判し「立法を焦らず再考するべきだ」と日本政府に説明を求めている。しかし一切聞く耳を持たず、逆に抗議する政府対応をさらに批判し、「法案の成立で終わりかと問われれば、答えは“ノー”だ。日本人は民主主義や基本的人権を享受する権利を持つ」「この問題は永続的に辛抱強く対処するしかない」と共謀罪法成立後も改善要求を続ける姿勢を表明している。
 2万6000人以上の作家やジャーナリストが参加する国際組織「国際ペン」も今月、ジェニファー・クレメント会長名で声明を発表し「日本国民の基本的な自由を深く侵害することになる立法に反対するよう、国会に対し強く求める」と訴えている。環境や平和問題にとりくむ国際的なNGO団体も共謀罪法案廃案を求める共同声明を発表し、メコン・ウォッチやアフリカ日本協議会、日本国際ボランティアセンターなど14カ国から142団体が名を連ねた。
 共謀罪法案廃案を求める声は国際世論も巻きこんで広がりを見せている。
 この間、安倍政府はまったく民意を得ることができないなか、国民の弾圧・監視を意図した整備を急いできた。しかし有事法制、盗聴法、秘密保護法、マイナンバー法…と強引に成立させるたびに批判世論が拡大し、とうとう自由な会話まで監視・規制することに着手し始めた。それは表面上は強権的だが、裏返してみれば、説得や説明能力を喪失し、まったく国民の支持を得られない権力機構の劣化を露呈している。共謀罪審議の経過をみても最初から国民へていねいな説明をおこなう構えは皆無で、審議時間だけ稼ぎ強行採決する方向が既定方針だった。しかも国民のなかで渦巻いている不安は「テロリストの脅威」よりも、窃盗、盗撮、殺人などを繰り返す警察組織や、安倍政府に、盗聴・盗撮し放題の権限を持たせた場合、一般市民の生活の安全が守れるのか、という懸念である。この懸念はますます拡大している。
 共謀罪法案は仮に政府が強行成立させても、決して終わりにはならない。強引に共謀罪法を成立させて国民弾圧に乗り出すなら、それを上回る巨大な力を総結集して共謀罪法案を再び廃案に追い込み、まともな社会制度なり法律につくり変えることは可能だからである。すでに日本では秘密保護法、安保関連法、共謀罪法案の国会審議の経験から国会の私物化、民主主義否定への憤りは極点に達している。共謀罪法の成立を強行するなら火に油を注ぐ効果となるのは必至で、安倍政府と日本社会を裏で操るアメリカの支配を徹底的に糾弾する行動が、全国でさらに噴き上がるところにきている。

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