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郷土食い物にするPFI
下関新博物館問題
              撤回署名、10日で1万人    2005年6月23日付
 
 究極の官制談合で突っ走る江島市政
 下関市の江島潔市長が、PFI事業で新博物館建設をおこなおうとしていることに、白紙撤回を求める市民世論が噴き上がっている。10日からスタートした「新博物館の白紙撤回を求める署名」は、10日間で1万人分近くが集約され、旧郡部もふくめた広がりを見せている。地元長府の自治会や市内の商店街で、熱心なとりくみとなっているほか、地元の建設業者など中小企業ぐるみで署名簿が手渡され、大きなうねりとなっている。江島市長は三カ月まえの市長選で、安倍事務所丸抱えの選挙戦を展開して、得票率19%の不信任を突きつけられているにもかかわらず、反省もなくPFIで全国に先がけた利権事業に拍車をかけている。
 下関駅前で19日におこなわれた「新博物館の白紙撤回を求める緊急署名」で、真黒に日焼けした建設作業員の50代男性が、「あんなもの建てさせてはいけない。どうせ仕事をやるのは九州の業者ばかりではないか」と、意気ごんで語っていた。街頭宣伝では署名とあわせて、本紙号外「利権に輪をかける安倍代理市長」が配られていたが、40〜50代の働き盛りの男性がすすんで受けとり、共感を示していくことがたびたびあった。
 また市内の住宅街では、近所に署名をとって回る建設労働者たちや、事業所でも「○○建設さんから、回ってきました」などと、署名簿が回されていた。会社ぐるみでとりくまれ、取引業者や地域にも、1枚1枚と署名簿が持ちこまれているところもある。ある経営者は、「PFIになると大手の独壇場。地元は資金力もノウハウもなく、はじめから入れない。国の政策だからといって、そんなことを一番に下関がしなくてもいいではないか」と、PFIが広がることは地元の疲弊につながると憤り、署名運動の広がりに期待する。
 地元の中小業者がリコールさながらの署名運動に力をこめるのは、PFIで利権がらみの大手発注に輪をかける江島市長と市議会にたいする怒りと、さし迫っている地元経済界の深刻さも背景にある。20日には建設資材の三協管財が5億3000万円の負債をかかえて倒産した。今月はじめにはイタヤ塗装が負債総額1億3500万円で倒産したばかり。バタバタと地元業者がつぶれていくのは、公共事業の大手発注がふえて、地元は受注難で経営不振に陥っているからだ。
 そのもとで下関市内にいる約1万5000人の建設労働者が、路頭にあふれる失業者の群のなかに、いつ放り出されるとも知れぬ、不安を胸中に抱きながら生活している。建設労働者は、妻子も養えないような状態で、深夜の代行タクシーや製造ラインなど、職をかけ持ちし体を壊して働いている。「いまでも食っていけないのに、また仕事がなくなれば、はかりしれない犠牲者が出る」と、商店街や自治会、職場など、経済を下から支える市民層のあいだで、緊急署名は共通の課題として迫力を持って広がっている。
 江島市長が全国に先がけて導入をすすめる公共施設のPFIは、1999年に政府が「PFI推進法」を成立させ、国の機関や地方自治体に実行を求めているものである。PFIは英名でプロポーザル・ファイナンス・イニシアチブの略で、「グローバリズムの流れにそって、民間の資金、ノウハウをとりいれて国際競争力をつける。土建業者の談合もなくなる」と、説明されている。しかし実体は、「安倍代議士や江島市長の意向一つで、契約相手を決められる、“究極の官制談合”」と指摘され、地元経済界がダンピング入札政策に投げこまれているのと比べて、雲泥の差のダブルスタンダードとなっている。

 ピンハネするのに都合がいい制度
 江島市政により選定されたプランハウスグループが提示している、20年間で100億円をこえる度外れた建設費や運営費は、類似施設や市立美術館、人類学ミュージアムと比べて、けた外れの金額となっている。17日の総務委員会では、新博物館が30億2900万円、駐車場が2億800万円と、さらに予定より5億円も上回る建設費を、提示していることが明らかにされた。「ピンハネするにもひどすぎる」と非難ごうごうだった管理運営費は、20年間で8億8500万円少ない54億3100万円とした。それでも年間2億7000万円は、長府博物館が年間2700万円と比べても、破格の待遇となっている。
 行政がおこなうより、PFIの方が安くできると説明されているが、プランハウスグループの示した裁量が、際限なく反映されたかたちとなり、はるかに高い契約額となっている。予定価格や落札率などという、旧来の談合チェックにしばられることなく、いい値どおりに下関市が払ってくれるという、利権あさりにとっては都合のいい、アメリカン・スタンダードの規制緩和である。
 当初の計画どおりにいけば、本契約は6月末に迫っているが、展示内容はいまだに決まっていない。市の文化財保護課によると、プランハウスグループが具体的な展示概要について決めるなどという、ゲタ預けの状態となっている。長府博物館に収蔵している既存の資料や出土品が、おもな内容になるとしている。「高杉晋作と奇兵隊」がキーワードになるというが、高杉晋作史料は萩に持っていかれた状態のままであり、既存の東行庵や長府博物館を充実させた方が、維新の顕彰になると市民のあいだでは語られている。内容も決まっていないのに、箱物づくりのPFI事業を強行しようとするのは、相当の利権があるからであろうとみなされている。
  
 地方を搾るモデル 税も中央へ貢ぐ
 PFIそのものは、赤字たれ流しで悪名高い第三セクターと、あまりかわりばえしないものだ。官民とのあいだに、長期にわたる事業契約が結ばれることと、民間側の裁量が大きくなることが特徴である。指名競争入札は、参加業者のなかで基本的に一番低い入札額を入れれば、落札者として契約となり、価格一本でインチキがあってもすぐわかるシステムだった。ところがPFIは総合的な判断により契約者が選ばれるという、選定基準もよくわからない代物となっており“究極の官制談合”をオブラートでつつんでごまかすことに、効果を発揮している。
 新博物館の事業者選定では、わずか一カ月ほどで公募が締め切られ、「そんなに短くては、判断のしようがない」と大手ゼネコンのなかからさえ声が上がった。「100億円をこえる大型公共事業なのに、募集期間が実質は1カ月ほどしかなく、はじめから1グループだけのプランハウスグループに内定していた出来レース」と見られていた。あたりまえの経営をおこなっておれば20年間にわたり108億円もの大型公共事業を、設計図から管理計画まで、「半年はかかる」と指摘されている。「下関市の物件は、どうせ“天の声”が下りて決まるから、公募してもダメで危ない目にあうばかりだ」と、関係者のあいだでは語られている。
 公募のさいに応募者を決めた審査委員会メンバー5人のうち3人が、野村宗成・市総合政策部長をはじめ市職員、市教委の関係者であり、「市の幹部職員で、トップの意向に逆らえば、どんなことになるかはわかりきったこと。公募などといかにも公平公正をよそおって、訴訟されても対応できるようにしているが、PFIとは究極の官制談合以外のなにものでもない」と、地元の経営者は断言する。
 これまでも江島市政は、新水族館、新唐戸市場、奥山工場、リサイクルプラザで、1社と随意契約したり、3社のみの参加で疑惑の指名競争入札をごり押しするなど、大型公共事業のたびに談合情報が飛びかってきた。市民の批判世論が高まるたびに、小浜俊昭議長が牛耳る去勢された市議会に、強行可決してもらい助けられてきた。その額は3期10年間で、800億〜900億円にのぼるといわれる。PFIでいけば、欲の突っ張った議員先生に手伝ってもらわなくても、市民の批判を無視して、合併特例債の450億円が底をつくまで、ドシドシと箱物が建てられるというものである。
 下関市ですすめられるPFI事業は、とん挫したし尿処理場をふくめて、新博物館、細江町の文化会館改築、市立中央病院と、地方自治体としては先進の四つが計画されてきた。金融機関からの資金とノウハウを用いて、公共投資をおこなえるのはゼネコン、中堅ゼネコンといわれる全国大手、海外組しか応募することができないものといわれる。全国の建設業者・57万社のうち、スーパーゼネコン、中堅ゼネコンといわれる50数社が、日本の40兆円といわれる公共事業の90%前後をぶんどってきた。中小の建設業者はわずか10%の公共事業からも、0・01%しかない独占グループと海外組からしめ出されようとしており、下関はそのモデルケースとされようとしているのである。
 地元経済界のあいだで、PFI導入にたいする反発が広がっているのは、これまでは近所の工務店や中小企業が建ててきた公共施設や病院、学校といった地元で十分やれるものさえ、ゼネコンや大企業がとっていくことへ、怒りが渦巻いている。PFI事業の新博物館では、建設から20年間の管理までおこなう優先交渉権者(1グループ・8社)のうち、東京の大手4社が占めている。
 代表企業プランハウス(山の田本町)が、信用性などの問題でとりざたされているが、地元経済界のあいだでは、むしろグループの構成員として入っている三建設備工業(東京・資本金7億4000万円)、丹青社(東京・資本金34億2000万円)、佐藤総合計画(東京・資本金5000万円)、佐伯建設(大分・資本金2億2000万円)、トラストパーク(福岡・資本金2億円)が、「下関市民の払った税金を、中央に吸い上げていくものだ」と指摘されている。

 あげくは欧米独占企業の食い物に
 PFIは電子入札導入と同じく、86年に米国通商代表部が公共事業の市場開放要求したことに、端を発している。つづけて米国議会が「米国企業にたいして、市場参入の機会をあたえていない国を相手とする、公共事業の契約に関しては、連邦政府の支出を禁じる」との条項を可決。これを受けて日本政府が、「大型公共事業への参入機会等に関するわが国政府の措置について」の閣議了解がなされた。
 関西国際空港プロジェクトを皮切りに、国際入札が広げられ、24億円以上の中型、大型公共事業が対象に、入札条項には英語が併記されるようになった。日本より一足先にアメリカン・スタンダードの波に洗われたイギリスでは、90年代からPFIが公立病院など公共施設の建設・管理にとりいれられた。働くのはイギリス人だが、利益を吸いあげるのは資金を出している米国、欧州企業という、経済支配があっという間に広がった。イギリスで行われるテニスの国際試合に、イギリス人が見当たらず、外国勢ばかりがコートに立っている、「ウインブルドン現象」とだぶって語られている。
 またイラクでは米軍から武力制裁を受けて、軍事統制下におかれたうえでベクテル、ハリバートンといった「公募」された米国企業が、石油関連施設から都市建設、軍事施設にいたるまで請け負っている。ベクテル一社だけで、年間の売上高が4兆円という度はずれた独占が、アメリカン・スタンダードのもとでおこなわれている。
 下関市で江島市政がおこなっているのは、金額や規模の違いはあっても、この先どりをおこなっているのである。江島市長を操っている安倍代議士は、渡米してブッシュ大統領以外の政府高官とのきなみ会って、好待遇を受けてきたとされる。おみやげも相当にいっただろうと語られ、地元経済界をさんざんに疲へいさせて、売りこみをはかったのだろうとみなされている。はじめてのPFI事業となる新博物館計画を白紙撤回させるとりくみは、郷土の経済と生活を守るためのたたかいとなって、市民のあいだに力強く広がっている。

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