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教育切り捨てる非正規採用
               下関 1年契約や時給の教師    2010年11月17日付

 未来を担う子どもを育てる教育現場で非正規雇用の教員が増えている。「子どもの教育に責任を持てるように本採用を増やすべきだ」と行政による教育の切り捨てが問題視されている。山口県教委は、ここ数年独自の事業として35人学級化を進めてきた。ところが教員採用は増やさずに一年契約の臨時採用や時間給の非常勤講師で補充している。さらに学力向上や特別支援教育などで非常勤講師を増やして今年も県下の小・中学校に約700人の臨時採用の教師と約五〇〇人の非常勤講師が配置されている。「数合わせではなく子どもを育てる長期的スパンでやるべきだ」と語られている。
 
 子どもに責任持てぬ体制

 下関市内の4年生の母親は、最近子どもが通う学校に一年契約の教師がいることを初めて知り、「銀行の窓口職員ではあるまいし、学校の先生が一年契約のパートでできるのか」と驚いていた。
 今年度、山口県全体を見ると小・中学校の143人の新規採用者に対して、正規の教職員として必要な数のうち欠員補充として一年契約の臨時教員が429人配置された。国の教員定数法で学校規模によって教員数が定められているが、その最低限必要な数さえ臨時教員でまかなっている。新規採用の約3倍の数である。臨時採用の教員は同じ学校には基本は1年、長くても2年しか勤務できない決まりになっている。多くの学校で担任や部活を指導したりと、本採の教員と同じ仕事をこなしている。「20代の教師は臨採が多い。子どもは若い先生が好きだが、1年たったらいなくなる。子どもにとっても教師にとってもマイナスだ」と語られている。
 下関市内の小・中学校を見ると今年5月時点の教員数(管理職をふくむ)1293人のうち欠員補充の臨時採用の教員は74人となっている。小学校の教員数815人のうち46人、中学校では478人のうち28人となっている。下関市の今年度の新規採用は小学校11人、中学校8人だが、臨時採用の教師の数はその約4倍の数となる。
 下関市内の大規模校では年度末のお別れ会のとき、毎年のように壇上に異動する教員がズラーッと並ぶ。20人近い教員が一度に替わることもあるが、「子どもにとってはどの教師が臨採かわからない。信頼していた先生が1年でいなくなるのは生徒にとってショックだと思う。中学校ならせめて3年間責任を持って子どもとかかわれるような採用をすべきだ」と語られている。教師は授業時間だけでなく給食、掃除、部活動など学校生活全体を通して子どもとかかわり教育している。「授業でも今年はここまで教えたから、次はこうしよう」「勉強は苦手だが、まず部活でがんばらせよう」というように一年一年子どもの成長を見ながら、親とのかかわりも含めて系統性を持ってやっている。それが日本の教師の役割として大事にされてきた。
 アメリカなど諸外国では、校門前には警備員が立って生徒らの服装をチェックし、生徒指導はスクールポリスの役割で、教師は授業だけだが日本はまったく違う文化である。

 遠足の引率等もできず 1日4時間の非常勤

 また教育的でないと問題視されているのが時間給の非常勤講師の配置である。時間給で1日4時間までと決められており、職員会議も運動会など行事の指導にも、また遠足の引率などもできない。授業をおこなうためだけに学校に来る。また最近は特別支援教育の支援員や学力向上補助教員として非常勤講師が増えている。山口県内では小学校には266人、中学校には236人の計502人の非常勤講師が配置されている。
 とくに中学校に大量の非常勤講師が配置されるようになったのは、2004年度から導入された「35人学級」が契機となった。中学2、3年も40人学級から35人学級にするというものだが、1学級増えるごとに当然必要な本採用の教員を雇わず、2人の非常勤講師を配置するという方式をとったからだ。今年度も中2、中3の35人学級化にともなって県内では85人の非常勤講師が配置された。うち下関市は18人である。「35人学級は喜ばしいが、安上がりのパート教員ではなく、正規の教員を配置してやるべきだ」と現場から強い反発があり、昨年度から手直しがされ1学年4学級以上の学校で35人学級制度によって1学級増えた場合は、常勤の教師を1人配置することとなった。
 中学校の非常勤講師は、「生徒とかかわる以上は責任持ってやりたいが授業だけで生徒と人間関係をつくっていくというのは難しいし一番苦労する」と話す。担任の教師と生徒の家庭の状況など情報を共有しながらやっているという。学校によっては非常勤講師も子どもにかかわる教員の一員として職員会議に出席し学校全体の状況をつかませたり、放課後に同学年の教師と打ち合わせしたり、子どもの状況を報告しあうなど連携をとっている所もある。
 中学校の管理職の一人は、「非常勤や臨採の先生が子どものためにとても熱心で子どもから慕われている場合が多い。頭が下がる。県教委は試験の点数だけで採用するが、現場では通用せず、子どもとの人間関係が結べない先生が増えている。臨採などを経験して子どもとかかわれる教師の採用を増やしてほしい」と語った。また新規採用が少ないことで、中学校では部活を持つ教師がいなかったり、それ以上にベテラン教師の経験が若い教師に継承されないことが指摘されている。そして優秀な人材が県外に流れることも危惧(ぐ)されている。臨採や非常勤の教師たちは、一年契約のため常に不安定な状況に置かれている。非常勤講師などは学校と別の仕事を二つ掛け持ちする人もいる。
 山口県の教員採用をめぐる教育費切り捨てのやり方は、教員給与の義務教育費国庫負担金を削減する国の動きと無関係ではない。04年度(当時の小泉内閣)から義務教育国庫負担金を「総額裁量性」にし、各都道府県が国庫負担金の総額の範囲内であれば、非常勤や臨採を自由に増やせるようにしたことである。将来的には、教員の定数法や義務教育費国庫負担制度そのものを廃止して一般財源化することが狙われている。これまで全国どこにいても義務教育は平等に受けられるようにと国庫負担でまかなわれてきた教材備品費や図書費などはさんざん削減されてきたが、「最後の砦」といわれる教員給与まで削減の方向で動いている。国際的に見ても日本のGDPに占める教育支出の割合は3・5%と、OECD加盟国30カ国平均の5%に遠く及ばない。
 下関では「教育をつぶすことは下関の将来をつぶすことだ」と語られているが、それは日本の将来をつぶすことになる。「大企業などどこも安上がりのために派遣社員や期間社員などを増やしている。学校は人を育てるところ。もっと教育予算を増やして教員を増やすべきだ」という声は強い。

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