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急速に広がる閉鎖撤回署名
下関・MCS工場
             「諦めでなく行動を」の機運   2012年1月13日付
 
 下関市内では、市民の会が開始した「MCS工場閉鎖の撤回を要求する/三井金属と中尾市政は雇用を作れ」の署名が、市民のなかで強い反響を呼びながら急速に広がっている。MCSで家族や知人が働いているという市民や彦島地域の住民をはじめ中小企業や商店、飲食店、散髪屋、不動産関係者など、市内各地で用紙が手から手に渡っている。直接MCS労働者とかかわりあいのある市民も多く、また落ち込んでいる下関の経済に打撃を与えるものとして、「他人事ではない」「下関だけでなく、日本全国の問題だ」と語られている。12日からは下関市民の会の宣伝カーも回り始めており、「仕方がないと黙っていてはいけない」「市民みんなにかかわる問題だ」と、あきらめでなく行動しようという機運が高まっている。

 「全国共通問題」と手から手へ

  ある業者の男性は、「市内のマンションをMCSの人がけっこう買っていた。35年ローンなどを組んでパーになった。だれが見てもIT産業は5年も持てばいいという感じなのにむちゃをさせた。MCSだけでなく、今全国そんな感じだ」と話した。客づてに神戸製鋼のなかもガラガラになっていることや、日清食品が撤退する噂などが伝わってきているという。「スーパーやゆめタウンなどは全然お客がいなくなっていて、トライアルとダイレックスだけが繁盛している。だがここの従業員は全部パートでスーパーそのものが土地も人も物も全部使い捨てだ。もうかっているが悪循環。この社会も末期だ」と話した。
 中小企業の男性は市民の会が署名を開始したことに喜びを語り、「天下の三井が、特許のあるあいだだけたくさん雇って働かせ、もうからなくなったら捨てていく。3000人いたというから、家族を含めたら1万人近くいなくなるということだ。下関の経済への打撃は大きいし、こんなやり方では技術継承も人材育成もできない。社会が成り立たない」と語り、タイの大洪水で日系企業の工場がやられ、あわてて国内工場で生産をまかなうといってタイの労働者を連れてきていることを指摘した。「問題は最近の経営のやり方がアメリカ式の投資家中心、株主利益第一になっていることだ。アメリカではIT製品ですら、メイドインUSAがなくなり、多くがメイドインチャイナになっているそうだ。軍需産業以外は、アメリカから製造業がなくなって、金を転がして他に寄生して生きるヒルのような金利生活者国家になっている。日本がその後追いをしたらおおごと」と話し署名用紙を預かった。
 建設業者の一人は、「年末に家をリフォームしようとしていたMCSのお客さんがいたが、工場閉鎖が発表されて、ちょっと待ってくれということになった」と話す。直接MCSの社員の家族の収入が断たれることに加えて、こうした契約解除などが出てきて、市内に影響が広がりつつあることを語り、「やはり雇用をつくることが一番の問題だ」といった。
 ある男性は「MCSに勤めている知人が、今年結婚する予定で、自分が持っている家をリフォームして貸すことになっていたが、年末の発表で、全部ストップがかかった。今仕事を変わるといっても職はなく、家族みんなが大変。本当に人生が狂ったという感じだ」と語っていた。
 関係者のなかでは、MCSの労働者が「三月までだろうか、これからどうしようか」と悩んでいることや、30代の若者がMCSを首になり、離婚して帰ってきたこと、家を建てたばかりで解雇されたり配転になったこと、配転で他県へ引っ越したが、子どもが学校になじめず、父親だけ残ってみな帰ってきているなど、労働者の家庭が、めちゃくちゃになっていることが語られる。
 ある彦島の住民は「初めは仕方がないと思っていたが、宣伝カーなどを聞いていると、やっぱり社会的な責任をとらせないといけないと思った。人を使い放題で、実際に身近でも単身赴任になったりして家族が大変なことになっている」と話し始めた。正社員だった知人が、一度解雇され、保育園からも「働いていないならやめてください」といわれて困っていたこと、職探しをしているとMCSから「非正規で働かないか」といわれ、腹は立つが、また働きに行くようになったことを話した。この間の整理で主人や家族が遠方に配転になるなど、企業の都合でふりまわされてきた社員が多いと語り、「社員だけでなく、地域のタバコ屋やガソリンスタンドなども影響が出てみんな大変になる。黙っていてはいけない」といって署名用紙を預かった。
 別の彦島の商店主は、「新年になって、経団連の会長が“海外移転は仕方がない”みたいなことをいっていたが、小泉の規制緩和や派遣法で、本当に世の中がおかしくなった」と怒りを込めて話す。身近にもMCSに勤めている人ややめた人がたくさんいるが、「年末、この周辺の中小企業もボーナスが軒並み出ていない。MCSの人だけでなく住宅ローンのボーナス払いができない人がたくさん出ている。2カ月余裕があるが、それが払えなければ競売にかけられるから、深刻な状況がある。みんな他人事ではない」と語り、店に来ていた客に署名を訴えた。
 タクシー労働者も「タクシーも同じ状況だ」といいながら次次に署名に応じている。ある労働者は、「三井というが、なんなのか。働く者を使い捨てにして、最初からそのつもりでさんざんもうけるというのは、タクシーも似たようなものだ」と月10万円も収入がない実情を語り、「今からどうなるかわからないが、三井だけが生き残るんだろう。この前安倍が帰ってきていたが、代議士や政治家はいったいなにをしているのか。下関からしぼりあげて、市民は10万円の生活だ」と憤りを語った。

 唐戸や長府も強い反響

 唐戸地区の商店主は、年明けからまったく物が売れない実情を語り、「三井金属があんな首切りをしたら、買い物どころでなくなり、もっと下関が冷え込む。世の中全体がどうしようもないところに来ている。大きいところは中国などに行ったりして生き延びていくが、私たちは生き延びることもできない。このまま黙っていたらいけない。あきらめてはいけない」と語りながら、署名を預かった。
 長府地区の鉄工所は、以前造船不況のときに三菱でも配転がやられたことを語る。「今までやっていた仕事とは別のところにわざと行かせて、40歳くらいになって一から仕事を覚えるなどできないから自分でやめていく。その場で首切りをしなくても結局やめさせるというものだった。同じ手口だ」と憤りを語った。大手の下請に入っていたが、いつも大手は守られて、下請にしわ寄せが回ってくることを語り、「大手というのはまわりに大迷惑をかけているのに立ち直っている。今までの労働運動は自分たちの主張ばかりいって発展がないから、結局社会党もつぶれたが、社会をどうしていくか、全体をどうよくしていくかが今から大事なんだ」と話した。
 小・中学校の教師のなかでも論議が広がり、署名が職員室で呼びかけられている。ある教師は「光市でもシルトロニックの工場閉鎖があり、同僚が担任する子の親が二人ともそこで働いていた。家を建てたばかりだ。その同僚も“教師として、この現実に直面してどうすればいいのか”と話していた。家庭が不安定になると子どもにもいろんな形で影響が出てくる。教師も社会の状況をよく知っておかないとやっていけない」と話していた。
 知人がMCSに勤めているという婦人は、「みんなが集まったときに、“この世の中はおかしい”と話になった。こんなやり方が全国どこでも当たり前になっているが、絶対に反対だ。働く人がいて、それを支える地域や家族があって、初めて企業が成り立っているのに、こんなことをしていたら日本が崩壊する。家のなかでぶつぶついってもなにも変わらないが、署名が始まったことを知って、やっぱり黙っていてはいけないと思った」と署名用紙を預かった。

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