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政府や日銀がバックの犯罪
村上ファンド事件
               利ザヤ稼ぎ奨励の規制改革    2006年6月19日付

 ギャンブル金融が花盛りで、ヤクザまがいの村上ファンドやホリエモンなどの、エリート「問題児」が「ボクはむちゃくちゃもうけた」といってお縄になったり、それに中央銀行総裁まで加担してボロ儲けをやっていたのが発覚するなど、資本主義の末期的な症状をさらけ出している。一連の知能犯的ギャンブラーたちは、本人たちが何らの価値や富を生み出しているわけでもなく、実体などないのに、だれかの懐からお金を巻き上げ、上積みに寄生して儲けをあさっている。大企業や銀行が軒並み史上空前の利益を上げ、投資先に困るほどの余剰資金をつくり出し、そこにファンドやハゲタカ外資がまぶりつくシカケとなっている。一方でその富をつくり出した一般庶民は、パートやアルバイトなど超格安の労働力として使い捨てられ、60歳を過ぎたら餓死や孤独死するような悲劇的状況に直面している。人間社会の格差は、ふざけ過ぎなぐらい進行し、究極のピンハネ・ギャンブル経済が横行しているのである。村上ファンドをめぐる事件は、そうしたカラクリの一端を暴露している。

 米国の投機集団も裏で暗躍
 ニッポン放送株の売買をめぐって、村上ファンドがインサイダー取引をした疑いが強いとして、東京地検特捜部は今月5日、同ファンド代表の村上世彰氏を、証券取引法違反容疑で逮捕した。株をめぐる利ざや稼ぎで、ホリエモンや「ヒルズ族」の兄貴分として大暴れした結果、縄がかかったのである。4月には経済誌などで「世界最強」といわれる米国投資ファンド・KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が日本上陸を果たすなど、大競争をまえに淘汰された格好にもなった。
 逮捕にいたった直接の容疑は、同ファンドが、ライブドアがニッポン放送株取得を目指す方針を知った(ライブドアをそそのかした)のち、事前に大量のニッポン放送株を買い付け、いざフジテレビとのニッポン放送株争奪戦がはじまるや、株価が急騰した段階でいっきに売却して売り抜け、30億円前後の利益を得たというもの。
 当時、メディアが騒ぎ上げたニッポン放送の争奪合戦は、外資のメディア支配という要求にそって、堀江貴文氏のライブドアがフジサンケイグループ乗っとりに走ったものだ。ホリエモンはアメリカの金融投機集団であるリーマン・ブラザーズ証券から800億円もの資金を借り入れ、その後押しでニッポン放送株を35%取得。筆頭株主になった。結果的には、フジテレビから約1400億円をせしめた。
 その陰では、ライブドアを操ったリーマン・ブラザーズ証券がテクニックを駆使して100億円超を儲け、もともとニッポン放送株を大量に持っていた、米投資運用会社サウスイースタン・アセット・マネジメントも売り抜けて17億円以上もの利益をあげ、村上ファンドも三〇億円前後を手に入れた。踊ったホリエモンは牢屋にぶちこまれてアウト。人人を騙して金を集め、自分が「兄貴」や「親分」たちに騙されて終わりとなった。しかし、3億円もの保釈金を払って檻から出てくるなど、しっかり儲けたことだけは見せつけた。

 労働者の合理化に拍車 かみつかれた企業
 阪神電鉄、TBS、ニッポン放送(フジテレビ)、大阪証券取引所、西武鉄道、明星食品など、数々の日本企業が村上ファンドにかみつかれ、古手の日本企業社長らが、泣きっ面を見せてきた。株価が安い上場企業を探して株を買い占め、大株主になって経営改善などを求める騒ぎを起こして注目をあび、株価が値上がりすると売って利ざやを儲けるというのが、この手のファンドの手法であった。
 余剰資金があふれかえるなかで、従来の金融方式(金融の中心は銀行で、銀行は貸付・返済が中心だった)から証券金融(株で資金を調達する直接投資型の金融・ギャンブル)へと切り替わってきたことが、ファンド暗躍の背景にあった。大企業や銀行などがバックアップして、株取引が過剰資金の投機先になっているのである。
 そうして「モノいう株主」が増配させたり、自社株買いを強いたツケは、リストラや合理化などで末端に転嫁されるほかなく、徹底的なコスト削減、資産売却など迫り搾り上げていくことになる。村上ファンドが過去5年間に食い逃げした企業36社のうち、12社が上場廃止や合併で消えて淘汰され、残る24社のうち経常利益が減少した企業は13社にのぼる。決算のなかで現預金を減らしているのも特徴で、24社全体では1820億円(10・5%)も減少している。あとは野となれ方式の寄生虫であることを物語っている。
 近々、阪神電気鉄道株の約47%を持つ村上ファンドは、阪急ホールディングスによる阪神株の公開買い付け(TOB)に応じ、保有株をすべて売却するとされている。これによって約450億円の差益を得ると見られている。その450億円分も、最終的には阪神電鉄の労働者や阪急傘下の労働者のリストラ合理化となって跳ね返るほかないものだ。
 株主のもらう余剰資金、大企業がもてあましている「金銀財宝」の類(巨大資本の下には80兆〜90兆円の過剰資金が形成されている)は、労働者を過酷にピンハネした資金にほかならないからである。

 福井総裁も大儲け 村上ファンドに1000万円を出資
 これらチンピラまがいの「問題児」を野に放ったバックボーンは悪質極まりない。村上ファンドのアドバイザーをやっていた日本銀行の福井俊彦総裁などは、私募ファンド(だれでも出資できるわけではない)である村上ファンドにたいして、1000万円を出資していたことが発覚。紳士面して、やることはやっていた。市中の資金量を調節したり、株式相場や金利を操作コントロールする人間が、「問題児」をつうじてボロ儲けしたのだから、ひどい話である。
 1999年に1000万円だった元手は、同ファンドが年率20〜30%を売りにしていたのから考えると、2000万円以上に膨らんでいてもおかしくないと指摘されている。7年間続けて20%の利回りだったとして、単純計算しても1400万円の利益。7年間30%だったとして2100万円にもなる。福井総裁のお小遣いは、2倍にも3倍にも膨らんだのである。
 日銀の超低金利政策が資金余剰を生み出し、投資ファンドへの資金流入の流れをつくり出した。その旨味を金融政策の最高責任者がつまみ食い。それとは対照的に、超低金利によって、庶民が銀行に預けて巻き上げられてきた利息収入の額は、日銀の試算で304兆円とされている。一般人が1000万円の普通預金を持っていたとしても金利は年間100円に過ぎない。ATMを使ったらアッというまに銀行に没収される額だ。実際に1000万円を預金している人間などあまりおらず、貯蓄ゼロ世帯が25%というのが国民生活の実態でもある。
 本来預金者がもらうべき利息はただ同然で銀行や大企業に渡り、マネーゲームにつぎこまれる。給料は規制緩和・労働法改悪を背景にしたリストラ合理化によって切り下げられ、ピンハネされ放題。巨大企業にはめちゃくちゃな低金利で資金が融通され、どこに運用するか困るくらいの過剰資金を生み出し、生死の際で困った貧乏人は、大企業や銀行がこれらの金で運用したサラ金のカモにされるか、自殺や餓死、ドロップアウトしてホームレスになるという、バカげた事態が進行しているのである。

 官僚等も大儲け組 「プロ」の中味は詐欺
 今回の事件で、金融改革をすすめる側では、村上氏と入省同期前後の経済産業省エリート官僚たちもボロ儲け組だったことが明らかになった。退職してファンドを立ち上げた村上氏に「餞別」として投資した人たちも少なくないといわれている。金融政策の張本人たちが、人人が寝ている間にこぞって人の金に群がり、打ち出の小槌を乱打したのである。「金融改革」なるものがいかなるものか、正体をさらすこととなった。
 村上氏は「ボクは証取法のプロ中のプロ」と威張った。通産省のキャリア官僚だった時期に、自分が中曽根内閣傘下のM&A法整備にかかわって、ルール作りをした経緯があるからである。自分のつくったルールで自分が儲けたのだから、「ボク」は「プロ」というより、ただの抜け駆け詐欺師。他の人はそんなルールなど知らないのだ。
 同氏は退職したのちの1999年にファンドを設立。同社幹部には、東大を卒業したのち野村証券で金融投機の腕を磨いた人物や、東大卒業後に警察庁官僚をへて米国大使館の政治顧問をやっていた人物ら「東大仲間」が脇を固めた。
 転身するさい、オリックスの宮内義彦会長兼CEOが資金援助するスポンサーとなり、傘下の「クロス・ウェーブ」を村上氏に斡旋し、村上ファンドにまで育て上げた黒幕だ。最近まで45%出資していたほどで、同ファンド傘下の投資事業組合への出資者募集は、オリックス投資銀行本部が代行していたことも明らかになっている。
 その宮内氏は、政府の諮問機関である規制改革・民間開放推進会議の議長として、教育改革、行財政改革、医療保険・年金改革、労働法改悪など、アメリカ外資に日本市場を開放する施策をすすめている中心人物である。ファンド設立時に約4000万円を出資し、運用の元手としても約3億円を出資。投資資金はファンドの大暴れで100億円超にまで増えた。

 勤労者を生かさぬ状態 資本主義の末期示す
 ファンドの3月末時点の運用試算残高は4444億6300万円で、国内の資金が739億2800万円(17%)で、海外が3705億3500万円(83%)。約六割は米国の大学基金とされ、その他には海外の年金基金、オリックスからの資金が運用されていたとされる。農民・漁民の金に吸い付いている農林中金も数10億円を拠出してボロ儲けした。その他の大企業や大銀行、保険会社などは、すでに直接海外ファンドなどに余剰資金を委ねており、日本国民の汗と涙の結晶は、どっちにしろアメリカに流れるシカケとなっている。
 ホリエモンといい、村上ファンドといい、一連の悪事は、金融自由化・構造改革が進められ、アメリカが押しつける規制緩和の隙間をぬって花盛りになった。リーマン・ブラザーズ証券やゴールドマンサックス証券、モルガンスタンレーなど、長銀や日債銀を二束三文で買い叩いたことなどで有名なアメリカ金融資本がバックアップして、規制を取っ払ってきたのは、これから本格化する外資の利潤追求のためにほかならないのである。
 もっとも大きな問題は、金融改革などというのが、寄生虫のように相手資本をつぶし、その屋台骨を支えている生産人民を過酷に搾り尽くし、労働者や勤労者が人間として生きていけない状況をつくり出していることである。しかし同時にいえることは、富を生み出す源泉はまぎれもなく労働・生産活動であり、生産人民を死に追いやる市場原理主義は、自分で自分の首をしめているということである。極めて歪んだ社会構造と、資本主義社会の行き詰まりを物語っているのである。

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