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長崎で県庁舎移転が問題に
                独特の歴史と文化潰す    2009年4月10日付

 長崎市内では、県庁舎の新築移転問題をめぐって市民の反対運動が熱気を帯びている。金子県政は県庁舎を旧魚市跡地に新築し、JR九州は長崎新幹線計画と合わせて長崎駅に巨大商業ビルを計画している。下関市でも市庁舎移転による都市構造のスクラップアンドビルドを計画して失敗、広島市では市民球場を駅周辺に移転させて旧市街地をスクラップする。長崎でも都心部移動の中心市街地スクラップアンドビルドである。これは麻生型ニューディールなのか。
 市民・県民の頭越しに計画がごり押しされていくなかで、長崎市内の商店街や自治会が「県庁舎整備計画を考える会」(宮城直泰、松田祥吾代表)を立ち上げ、移転新築反対の市民運動をくり広げてきた。先月20日からは、「県庁舎移転絶対反対!」署名活動をはじめ、市内での街頭署名や、各自治会単位で集めるとともに県内にも呼びかけるなど、活発に運動の輪を広げている。

 商店街や自治会軸に反対運動
 署名趣意書には賛同する26の自治会名が連記され、県庁舎移転は、県民の財政負担の増大、移転は旧市街地の崩壊につながることなどをあげ「県庁舎移転計画を中止し、現在地での整備とすること」を要望。
 さらに、この計画が巨額な税金を投じた開発事業と連携しており、「過度の財政負担は、まちなかの再生や、くんちなどの祭りの継承を困難にし、長崎市の魅力を崩壊させる」こと、「中心部の空洞化が進み歴史によって培われた長崎らしさが失われ、どこにでもある個性のない都市へと変貌する危険性」を訴えている。
 署名を進める商店主は、「今の県庁は、旧長崎奉行所西役所がおかれ、周辺に国の官庁や民間団体のビル、市役所が連なる形で長崎の町は成り立ってきた。精霊流しでは、県庁坂の前で船を回すのが長崎市民の心意気だ。くんちのように市民総出でやるまつりは全国を見ても他にはない。県庁がなくなって浜町がシャッター通りになってしまえば、くんちの存続さえも危うくなる」と危惧(ぐ)を語る。
 別の商店主は、「鹿児島も新幹線が通って駅前だけは賑やかになったが、それまで市の中心だった天文館には人が流れなくなり、一気に寂れたといわれている。長崎に新幹線を通しても、“かもめ”と比べて博多までは20分しか変わらないという。県民が明日の生活もわからないというなかで莫大な税金を使ってやる事業ではない」と憤りを語った。
 また、「長崎さるくも、長崎の歴史的な町並があったからこそ成功したもので、金を投じて箱物をつくったって人が集まって来ることはありえない」「長崎は離島が多く、漁業や海運業が主だが石油や物価の高騰で壊滅的な打撃を受けている。県庁をきれいにするよりも先に県民生活の安定を真先にやるべき」「まちなかの再生は、市民の結束で成り立ってきた。それを行政の効率化のために壊すというのは本末転倒だ」と批判は渦巻いている。
 一方、県議会では、最大派閥で「移転推進」を叫んできた自民党会派に加えて、これまで慎重論を唱えてきた民主・社民系の会派も「魚市跡地での建て替え」を承認する動きとなっており、市民から浮き上がった姿をさらしている。

 県庁栄え県民滅びてよいか
 県の基本計画は、昭和28年に建設されて築55年となった現県庁舎は、老朽化していて耐震性が十分でないことや、庁舎内が狭隘(きょうあい)であるために周辺ビルに機能を分散していることなど、行政サービス上も、経済的にも効率的でないというのが表面上の主な理由。埋め立てを進めてきた魚市跡地に約368億円の建設基金をあてて23〜11階建ての高層庁舎(面積約8000平方b)を建てる案をぶちあげた。
 県民にとっては県庁に出向く県民はほとんどおらず、現在地から駅前にかわっても別に効率が良くなるわけではなく、もっぱら県庁内部の効率のためのようである。また東京から来るエライさんとか、東京に呼びつけられる県の役人にとってちょっと効率的になるかもしれない程度。また三菱造船側に近づくことになり、呼びつけたり呼びつけられたりするのには効率的になると見られている。
 企業経営者のなかでは、この明日をも知れぬ大不況のなかで、本社ビルを建てる経営者はアホだといわれるが、人のカネである税金を使う役所は別の基準なのだとも語られている。
 県庁舎移転はそれだけではなく、長崎駅周辺では、長崎新幹線の延伸計画にともなって駅舎を海側に移動させ東口と西口に広大な駐車場や広場の新設、JR長崎本線の連続立体化、浦上川を渡る旭大橋の低床化など大規模な再開発が計画されている。開発後には駅前に現在の駅ビル商業施設アミュプラザ(JR)の2・5倍もの空き地ができるため、「そこにJRが大規模商業施設を誘致する計画も進んでいる」といわれる。
 長崎市の都心部を駅周辺に移動させるという計画である。長崎が発祥した中島川周辺の中心市街地からJR長崎駅前に強引に都心を移すことになり、長崎における町づくりの将来を決定づけるものとなっている。
 この計画には、駅周辺に市民病院と原爆病院を統合して総合病院を建設する提案もぶちあげたが、市民の猛反発によって長崎市から拒否されるという動きもあった。
 この計画はアメリカのイカサマ金融が破産し、世界的に金融機関や大企業救済の大競争で大規模公共投資の「長崎版ニューディール」という調子で金子県政も議会も強行実施を既定事実のようにして進めている。
 また長崎県では、新幹線建設についての負担金として約515億円、JRの連続立体化事業の県負担金として93億円、2014年におこなわれる長崎国体費用として、毎年の積立金70億円に加えて県立総合運動公園の改修費等で約100億円、道路建設予算が毎年約540億円と税金を投入した利権事業のオンパレードとなっている。
 県財政のかかえる負債は、約1兆3000億円にのぼり、一般会計予算総額の1・5倍にもなり県民1人当りに換算すれば77万円にまで膨れあがっている。市町村も多くの負債を抱えており「建設基金といっても県民の税金。豪華な県庁舎よりも住民減少の激しい離島や郡部の活性化、教育、福祉のために使え」という世論は強い。
 ひじょうにはっきりしていることは、県庁舎の移転は長崎県の県勢の振興にはほとんど関係がないどころか、県民の負担を強めるだけだということである。県勢を発展させるには、水産業、農業の振興をはかるべきであり、長崎県に多い離島をはじめ地方は役場も郵便局も効率論理でなくなり、非常に困難になっている状況を解決することである。県庁栄えて県民は滅びるではたまったものではないと語られている。
 自民党政府がアメリカの要求ではじめた430兆円の公共事業で、自民党政府は「あとから交付税で負担する」といって、まんまとだまして市町村財政を破たんさせ、市町村合併すなわち市町村の解体に追い込んだ。現在では道州制で県は廃止して、現在の市の総合支所のようになるだろうに、豪華な県庁舎をつくってどうするのだろうかという疑問もある。
 また県の庁舎といっても、長崎市に世話になっているわけで、長崎の町の構造を勝手に変えたり、長崎市民の要求を無視してやるのはきわめて専制的である。市民無視の「悪代官の巣窟にする気か」という声もある。

 全国的な注目を受ける問題
 とくに浜町を中心とする長崎の中心市街地は、歴史を持ってきた町であり、全国にない長崎の特質をつくってきたところである。これをスクラップにさせるようなことは、長崎の大きな損失となるのは当然である。
 長崎県庁の現在地は、安土・桃山時代に豊臣秀吉が長崎を天領とし、長崎奉行所西役所が置かれて以来、長崎の成り立ちのなかで中心的な存在となってきた。中国を中心とする外国交易で発展した商業都市として、明治維新に貢献するなど、町衆の自治精神と結束、反骨精神をつくりあげてきた。
 この歴史的に培われた伝統が、おくんちなど長崎の風俗文化に脈脈と受け継がれている。県庁舎の移転を中心とする駅前開発計画は、長崎市民の生活だけではなく長崎の歴史と文化まで破壊する問題としてあらわれている。
 長崎では大型店の出店を阻止したり、市民の力で地域の活性化をはかる自治意識が高い。長崎の町を守る市民の世論は、全市的な運動に広がりつつあり、市民を無視して暴走を続ける金子知事、県議会をはじめ、長崎市、市議会をも下から突き上げる勢いで進んでいる。
 麻生政府はアメリカにならって、大型公共投資の補正予算で、大企業による税金のつかみ取りを活性化させているが、長崎県政の突っ走りは、その背景で起きている。長崎市民のみならず、全国的に注目されるところである。

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