トップページへ戻る

長崎県漁連が7月に海上デモ
原発再稼働反対で2000隻
被爆の苦しみ知る県として

 九州電力・玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働をめぐって、隣接する長崎県の漁業者による直接行動の機運が高まっている。長崎県漁連(川端勲会長)は、7月にも玄海原発の再稼働に反対する海上デモを県内漁船2000隻を動員して実施することを発表しており、全国有数の水産県としての命運をかけた、譲ることのできない問題となっている。
 長崎県では壱岐、平戸、松浦、佐世保の四市が玄海原発から半径30`圏内の緊急時防護措置準備区域(UPZ)に入り、とくに玄海町に隣接する松浦市は、沿岸部の全域を占める伊万里湾から沖合にかけてのほとんどの漁場が30`圏内に含まれる。フグやハマチ、クロマグロ、車エビなどの養殖業、定置網やイカ釣り漁などが盛んな好漁場であり、遠洋旋網の基地としてアジ・サバの水揚げでは全国有数の松浦港を含んでおり、水産県・長崎の一角を占める水産基地となっている。
 佐賀県との県境にあたり、玄海原発から8・3`地点にある松浦市鷹島(人口約2400人)では、福島原発事故の直後、住民レベルで元町長を代表にした「原発を考える会」が立ち上げられ、再稼働に対する町民アンケート(8割が反対を表示)や島民集会を実施。漁協として原発再稼働反対の緊急動議を決議するなど島ぐるみの反対世論が高まった。原発から目と鼻の先であるにもかかわらず、県境を挟んで再稼働のための同意が必要な「地元」には含まれず、交付金や漁業補償はおろか住民意志を反映させる取り決めは何一つない。福島原発事故によって沿岸漁業の壊滅的な被害が顕在化するなかで、政府の再稼働推進の動きやずさんな「安全対策」に対する強い怒りが渦巻いている。
 新松浦漁協(組合員約800人)の本所がある鷹島阿翁浦地区は、全国に先駆けて生産高日本一を誇っていたトラフグをはじめ、クロマグロやハマチなどの養殖業やゴチ網漁などが盛んな漁港集落。沖合に点在する島島や複雑に入り組んだ入江によって育まれた漁場は、プランクトンが豊富で海流が激しく、身の締まったおいしい魚がとれるといわれ、福岡を越えて近畿圏にも出荷されているという。だが、高台に上がれば玄海原発が目視で確認できるほど近いため、原発の動向に対する関心は漁民だけにとどまらず、町民からは「再稼働は絶対に反対」「もっと早く行動するべきだ」と口口に語られる。
 ゴチ網漁を営む男性漁業者は、「玄海原発が稼働をはじめて40年になるが、漁師をしていても、海水温の上昇で魚群探知機が機能しないほどの赤潮が発生したり、原発の排水溝付近では奇形種の魚を見かけることもあり、表沙汰にならない事故も無数にあった。40年もたっている一号機をはじめ、危険とわかっているものを“安全”といって動かしてきた結果が福島原発事故だ。この地域は、県外ということで補償対象にもならず、交付金も下りないが、一時的な金と引き替えに後世に残すべき故郷を捨てるわけにはいかない。事故が起こって泣きを見るくらいなら、断固反対で貫こうと腹を決めている」と語気を強めた。
 また、「数年前から県の呼びかけで防災避難訓練が年に一度実施されているが、サイレンが鳴ったらバスに乗って集合して弁当を食べて終わりというもので、年寄りはまったく参加しない。あんな無駄なことに金を使うのではなく、本気で県民の心配をするべきだ。魚価にしても14年前まではキロ1000円を下らなかった大鯛が、今では500円にまで値下がりしている。原発から少しでも汚染が出たら値はつかない。長崎県漁業全体が壊滅する」とのべた。
 30代の男性漁師は、「鷹島では漁業が主力産業で、自分も物心ついたときから船に乗って親から仕込まれてきたし、都会に就職せずに地元で漁業を継いでいる若手も多い。漁業の将来もあるが、原発で一度事故が起これば鷹島には人が住めなくなる。事故後の避難といっても、島唯一の出口は唐津方面にかかる鷹島肥前大橋しかなく、島を出るには原発方面に向かって逃げなければいけないというバカげた始末。命は助かっても福島のような生き地獄を味わうことになる。自分たち一代の問題ではなく、子どものためにも絶対に反対」とのべた。
 強い反対世論にもかかわらず、県外というだけで九電からは「聞く耳持たず」の対応が続いており、地元長崎県の中村知事や松浦市長も再稼働の条件として佐賀県と同様の「事前了解」ではなく、決定権を持たない「事前説明」だけを義務づけて九電と「安全協定」を結んだことへの怒りも強い。煮え切らない行政当局を下から突き上げる形で生産者による行動機運が高まっている。
 ある漁協関係者は、「原発があるというだけで漁業資源の価値がガタ減りしていることをなぜ考えないのか。原発があるだけで漁業の後継者が地元に帰れない条件をつくっている。再稼働にあたっては、少なくとも30`圏内にある自治体には地元同等の“事前了解”が必須条件だ。それを住民や漁業者の頭越しの取引で素通りされたのではたまったものではない。養殖業をはじめ沿岸漁業は、政府の野放図な輸入拡大で価格競争を強いられて漁協はどこも苦境に立たされている。市場にはジャブジャブと外国産の魚が出回り、アベノミクスの円安で重油が高騰して漁業者の夜逃げや首つりも起きている。自民党はTPP参加とか、輸出によるもうかる漁業と叫びながら国内の水産業を壊滅させようとしているとしか考えられない」と怒りを露わにした。
 「40年前、玄海原発の建設に先だって九電が立地計画の白羽の矢を立てたのは鷹島の北端の岸壁だった。そのとき“被爆の記憶を思い出せ”と全島をあげた反対運動で追い出したが、九電は領海面積の狭い佐賀県を狙って建設を強行した。これまで一切無視されてきたが、福島の現実がある以上、被爆の苦しみを知っている県だからこそ一丸となって声を上げていくべきだし、県や九州全域の漁業者にも反対世論を広げたい」と意気込みを語った。
 九電は7月20日をめどに原発再稼働の申請手続きを進めるとしており、長崎県漁連では全7海区の漁協長会長会で7月の再稼働反対の海上デモを決定し、6月半ばの県漁連総会で正式決定する見通しとなっている。長崎県漁連の組合員数は約2万8000人で、県漁連による直接行動は全国初めてとなる。

トップページへ戻る