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日本の産業潰すTPP
米国主導の大略奪制度
               移民受け入れや郵政も    2010年11月5日付

 菅政府は13、14日に横浜で開催される、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明しようとしている。TPPはアメリカ主導で推進されており、菅首相はまともな論議もなしにアメリカに盲従し、農業者、漁業者、消費者団体、地方自治体など広範な各界各層の反対を押し切って強行しようとしている。
 TPPはアメリカ発の構想である。TPPは当初はブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの4カ国が参加する自由貿易協定として06年5月に発効した。昨年アメリカのオバマ政府が正式に参加を表明したことで加盟国拡大が促進され、菅政府も飛び上がり急遽TPP参加へ動き始めた。大畠経済産業相も「アメリカが加入を表明してから、検討が開始された」と認めている。
 昨年12月カーク米通商代表は「アジア太平洋地域で米国が関係しない通商協定が広がっており、過去10年間、同地域の市場で米国のシェア後退を招いている」と議会で訴え、今年5月には「米企業がアジア市場でシェアを高めるため」には、関税だけでなく、各国の「規制や非関税障壁など“国境の中の問題”にとりくむ必要がある」と強調し、商習慣、競争政策、労働、環境など幅広く対象にするTPPを「米国の自由貿易協定のモデル」と持ち上げた。すなわちTPPによって各国の国内制度を米企業の都合のいいように改変させることを可能にすることを表明し、そのことで利益を受ける分野として、エネルギー、環境技術、生物工学、医療技術などをあげた。食品安全では「規制の共通化」を主張した。
 このアメリカの構想に対し、日本財界は「米国を含めた枠組みづくり」を主張し、対米従属でTPP推進に乗り出している。日本経団連は六月に、「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して、2010年APEC議長国日本の責任」との提言を発表し、TPP、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現を菅政府に迫った。提言では、関税撤廃だけではなく、「ヒト、モノ、資本、サービス」などが域内を自由に行き来できる「経済統合」を要求した。
 提言をまとめたのは、三菱商事相談役の佐々木経団連副会長やトヨタ自動車副会長の渡辺経団連副会長らで「アジアで生産して欧米へ売る日本企業のサプライチェーン(供給網)」がTPPとFTAAPによる経済統合だと表明している。そのために提言は「国境措置、国内措置を問わず、聖域をもうけることなく、制度・ルールを大胆に見直す」と主張し、具体的には関税撤廃、各国の職業資格の互換性、輸出入手続きの簡素化、内外企業の平等な扱いなどをあげている。
 TPPは、関税撤廃、物品の貿易、サービス貿易、電子商取引、競争、税関手続き、投資、貿易の技術的障害と衛生植物検疫、政府調達、知的財産なども含む包括的な協定である。さらに労働と環境も補完協定として協力が規定されている。
 関税は原則として10年以内に100%撤廃させなければならない。関税撤廃で農漁業や林業など第一次産業は壊滅する。農水省の試算でも関税撤廃で、食料自給率は10%台に低下する。農漁業の壊滅は関連産業を含めて地域経済を衰退させ、雇用喪失にもつながるとともに、さらには食料を輸入に依存するということは国家の存立にも関わる重大問題である。
 関税撤廃はまた独占大企業の生産拠点の海外移転を促進し、国内の産業を空洞化させる。製造業など中小零細企業への打撃も甚大である。
 TPPは、関税撤廃だけにとどまらない。重大な影響を与えるのは、外国人労働力の受け入れの問題である。フィリピンやインドネシアとの2国間ではすでに認めている、看護師や介護福祉士などへの外国人労働者の受け入れを、より広範な業種で求められることが想定されている。
 ちなみに自民党の「外国人材交流推進議員連盟」(中川秀直会長)は08年に「日本の総人口の10%(約1000万人)を移民が占める“多民族共生国家”を今後50年間でめざす」との提言案をまとめているがその規模の外国人労働者の受け入れをめざしていることが予想される。
 今年9月の完全失業者数は約340万人である。加えてTPP参加による農漁業壊滅、関連企業の倒産などで同規模の340万の雇用が失われると農水省は試算している。そこに低賃金の外国人労働者が業種を問わず大量になだれ込んでくる。
 リーマンショック後、独占企業は派遣労働者や非正規労働者をはじめ大量の労働者を解雇することで生き残りをはかり、業績を回復してきているが、とりわけ若者の失業は深刻な社会問題になっている。ここに「労働力の自由な移動」を掲げて大量の低賃金の外国人労働者を導入するならば、日本人労働者の雇用や生活は破たんすることは目に見えている。外国人労働者にとっても、低賃金で無権利労働がよぎなくされることは必至である。
 また、アメリカは300兆円をこす郵貯・簡保を巻き上げることを狙い、郵政事業の規制緩和を要求してきている。
 また、狂牛病対策として日本は現在、米国産牛肉を20カ月未満のみ検査なしで輸入しているが、この規制も撤廃させすべての米国産牛肉を検査なしで輸入することも迫られている。
 TPPは、深刻な危機に直面するアメリカ・オバマ政府と独占企業が、日本の産業という産業を犠牲にし、また日本国民の資産を根こそぎ奪いとり、丸裸にして生き残りをはかるものである。


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