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長周創刊50周年記念出版 礒永秀雄童話集 
 おとなの童話・みんなのお話 
 おんのろ物語

    花咲く桃の木の下で/天狗の火あぶり/鬼の子の角のお話/
    もらった勲章/四角い窓とまるい窓/おんのろ物語/乞食と神様
    など長周新聞掲載の全童話23編を収録
       
 
   表紙の題字は福田正義、挿絵は名井玲
                   B6判300頁  1500円

 
                                                     


 長周新聞社は、創刊50周年事業の一つとして、長周新聞に掲載した礒永秀雄の全童話・23編をおさめた童話集『おんのろ物語』を出版した。
 礒永秀雄は長周新聞の創刊まもない1955年6月に詩論「現代詩の根本問題について」と詩「殺しにいけ」を発表して以来、詩や詩論、エッセイ、童話をふくめて百数十編におよぶ作品を寄せている。童話は、1958年4月の「花咲く桃の木の下で」から1972年11月の「血の花の咲き終わる頃」まで23編を寄せている。1964年に扉同人会が出版した童話集『四角い窓とまるい窓』のあとがきに礒永秀雄は、「童話を書きはじめたのは、詩劇などを書きはじめたと同様、もっと自分の詩の幅を広げ、また詩を深めていきたかったからです。……およそ世の通念では見捨てられたり、忘れられがちなものを大切に取り上げていきたいと考えています」と記している。
 礒永秀雄は、第2次世界大戦ですでに日本軍の敗色濃い1943年、学徒臨時徴集でニューギニアの手前にあるハルマヘラ島に送られ、斬り込み部隊要員として、血みどろの戦争体験をし、1946年に復員した。後日、南の海に散った幾多の戦友のことを思い、生き残って帰ったからには、永遠に青春につながる仕事をしようと心に決めて、詩人を志したとくり返し語っている。
 福田正義は、1977年の礒永秀雄選集の出版にあたって、「かれ自身は、太平洋戦争という支配階級による犯罪的戦争を身をもって経験した一人の誠実な人民として、あるいは人民の芸術家として、戦後の社会を、戦前をひきついでいるが同時に新しい特徴をそなえているものとしてとらえている、ということができます。つまり、もはやイデオロギー的には腐りきった崩壊を支配階級のなかに見てとり、抑圧のなかから立ち上がっていく人民の新しい生命力に未来を見出しそれに惜しみない賞賛をささげた。ここにかれの時代意識の新鮮さの根拠があります。このことを見逃すならば、かれの詩を理解できないように思います」とのべている。
 童話集『おんのろ物語』におさめられた全童話のなかにも、この礒永秀雄の新鮮な時代意識に立った人民への愛情、賞賛があふれている。
 収録されている「おんのろ物語」「花咲く桃の木の下で」「天狗の火あぶり」「鬼の子の角のお話」「ジュンと河童たち」などは、県下の小学校の授業でも何度となくとりあげられ、子どもたちに人気のある童話である。親がおらず、「のろま」といわれていた鬼の子がみんなにおされてがんばって大将になり、悪い長者を改心させる「おんのろ物語」は、とくに子どもたちに好かれている。また、「天狗の火あぶり」で子どもたちは、天狗が村人につかまる危険さえおかして、村八分にされた孫兵衛のために魚をとってやるやさしさに心を動かしている。
 「天狗の火あぶり」は1958年8月、「おんのろ物語」は1959年2月に長周新聞に掲載されており、60年「安保」斗争がしだいに全国的に高揚していく前段に、日本人民の深部に脈打っていた民族的な胎動を鋭くとらえ、それと結びついた作品である。
 1950年代の童話には、「花咲く桃の木の下で」「もらった勲章」「雪と鴉」「天狗の火あぶり」「四角い窓とまるい窓」「おんのろ物語」。60年代には、「乞食と神様」「角を失った鬼の話」「デモと神さま」「花咲爺異聞」「888」「鬼の子の角のお話」「森で迷った天狗のお話」「みどりの鬼の物語」。七〇年代には「桃太郎」「すりかえられた玉手箱」「ジュンと河童たち」「鬼とヒイラギ」「サルカニ合戦」「キノコ天狗とバラ天狗」「アオイ貝の歌」「お手玉バクダン」「血の花の咲き終わる頃」がある。
 礒永秀雄は一九五五年に「こうした歴史的な社会のなかで、少なくとも現代詩を口にする場合、この社会情勢と無縁な詩を書くことは、どの良心もが許さない」「人間と社会と歴史と、その組み合わせのなかで詩人は、なによりも意志的で行動的で冷静かつ鋭敏に、新しい世界の想像に参与しなければならぬ倫理的な命題をもち、その線にそって作品活動をつづけなければならない。そうした場合、わたしはやはりなんらかの意味で役に立つ詩を、と願う。そしてそれは少数よりも多数の人人に役立つ詩をと願う」と書いているが、これらの童話の全編にもその精神が貫かれている。
 戦後60年をへた今日の日本社会で、礒永秀雄の作品は、戦争を阻止し平和で豊かな新しい日本を築くうえで、日本人民の生活やたたかいの歴史や伝統を継承した、美しい人民的な思想・感情を讃え、つちかい、人民の団結を強め、人民の根本的な利益のために勇敢にたたかう人人をかぎりなく励ましている。
 童話集の副題には「おとなの童話・みんなのお話」とつけてあるが、子どもだけでなく、おとなの鑑賞にもじゅうぶんにこたえる童話集である。なお礒永秀雄の詩業の骨格については、創刊45周年記念事業として出版した『礒永秀雄の世界』に収めている。
 表紙の題字は福田正義、挿絵は名井玲。B6判300頁、1500円。

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