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 <論壇> 復興を阻む自由化徹底策 共同化と国の助成が当然 
                                          2011年6月13日付

 東日本大震災から3カ月がすぎた。空襲で丸焼けにされたのと同じ光景が東北沿岸に広がっている。被災者は親兄弟や家屋敷を失い仕事も失ったが、仮設住宅の建設は遅れ、できても食料支援などがうち切られ、生活のめどがないため入居辞退が相次いでいる。自治体は機能がマヒして義援金の配分も遅れ、職安には人があふれている。人人は仕事を求めて流出し、地域再建のめどがますます遠のいている。
 津波でやられたのは沿岸部であり、主に漁業を中心にした地域経済が打撃を受けている。このなかで宮城県、岩手県の水産都市、漁村部では、復興のとりくみに違いが表れている。東北最大の水産都市である宮城県石巻市では、魚市場も水産加工団地も沈下した地盤はそのままで、水道や電気も通らず建築制限もかけられて更地が広がるだけで放置されたままである。気仙沼市では市が単独で予算をつけて市場の岸壁のかさ上げ工事をやり、六月からのカツオの水揚げに備えようとしている。一県一漁協合併をした宮城県の漁村は動きがままならないところが多く、漁協合併をしていない岩手県の漁村は漁協が主体となって共同生活から瓦礫の撤去、漁の再開に意欲を持ってとりくんでいるところが目立つ。
 明らかに市町村合併や漁協合併したところが動きがにぶく、単独の市町村、漁協を維持したところが地域の自治機能、共同体機能を発揮して動きが強い。被災地の漁村では、漁業協同組合が指導性を持って、少なくなった漁船を共同で所有・管理し、共同で使用しながら、地域みんなで復興がはかられている。水産都市でも、漁業者や魚市場、後背地の水産加工業者、製氷、製缶、運輸、造船、鉄工などの相互依存しあう企業体が、それぞれ単独では展望が描けない状態にある。これも共同の力で、そこに国の資金が入ることがなくては展望は見出せないでいる。
 大地震と大津波は、自然とかかわって生産し生活するには、個人が目先のもうけでバラバラの競争ばかりしていたのでは太刀打ちできず、みんなが力を合わせるほかないことを痛感させた。漁業集落は大昔から地先の漁場に張り付いて形成され、漁場や港の管理を含めて共同体機能を形成してきた。自然条件に規制され、住民みんなが助けあい協力しあった生産活動を基本原理にするところが復興の力は強く、競争原理、企業論理の色濃いところほど復興の力は弱い。アメリカの金融資本が持ち込んだ新自由主義改革、つまり金もうけ原理、競争原理、市場原理、資本原理では社会は成り立たず、自然と向きあった生産原理、社会的利益優先、公益優先の原理でなければ成り立たない事を痛感させている。
 さらに水産業を中心とした地域経済の復興を困難にしている根本的な要因は、津波が来る前からの漁業経営の困難である。高齢化や二重債務などの問題としてあらわれているが、それは漁船や漁具、燃油など高価な工業製品と、トヨタなどの輸出拡大の見返りとしての農水産物の低関税による輸入拡大、また量販店の買いたたきなどによる安い魚価による漁業破壊という、自由化政策の問題である。
 ところが国の復興会議や村井宮城県知事は「漁業権の民間開放」とか「漁業特区」などをやるといっている。養殖などの沿岸漁業に大手商社やイオンなどの流通大資本の参入を自由化しようというのである。復興の力を弱くしたこの間の新自由主義改革の方向をこの機会にさらに徹底しようとしている。大手流通資本は大型店を乱立させ、商店をなぎ倒し、生産者を買いたたき、もうからなくなったらさっさと撤退し買い物難民をつくってきた。自分がもうけるだけで住民生活や社会的責任などまったくない。漁民をパートかアルバイト雇用のモノ扱いにして、漁場荒らしで目先の金もうけに走るのは目に見えている。これでは自然の津波のあとに、今度は強欲資本の津波が押し寄せることになる。
 東北の復興が遅れているのは、菅政府の無能・サボと「菅おろし」なる国会の騒ぎも含めて、被災地を放置して疲弊させ、金融資本や財界、アメリカ外資など外部資本が東北大収奪の大チャンスとする意図的な政策としてあらわれている。彼らから見たら人人が生活できなくなって、広大な更地を出現させるのがビジネスチャンスと見なしている。こういう「まさか」と思うことを平気でやるのが強欲な新自由主義政策である。
 復興には資金がいる。復興会議は、消費税を中心とする大衆課税で調達するといっている。日本は世界一の債権国である。政府が持つ数百兆円の金融資産とか、数百兆円抱えるアメリカ国債を少し売るとか、金融機関から免除されている法人税を取るとか、大企業が抱える200兆円以上の内部留保を何分の一か出させるならば簡単に調達できることである。電力会社の原発のために交付金を出したり、大企業の新技術開発に膨大な予算を出したり、米軍再編に三兆円も出すが、国の食料自給を担う農業や漁業に補助金を出すのは民族存亡のかかった利益であり国益である。
 大震災からの復興をめぐる問題は、より自由化の徹底による被災地だけではない全国的な大収奪の問題としてあらわれている。それは「国際競争力に耐える創造的復興」などといって、TPPの先取りとしてあらわれている。この寄生的な金融資本優先の自由化政策とたたかってみんなが協力しあって、生産を振興することを基本にして地域、国を復興することが迫られている。
 
 

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