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労働力再生産潰した小泉改革
アメリカの指図で労働改革
              大企業は百数十兆円留保    2009年7月10日付

 若者が働きたくても一家を養える職がない。就職してもアルバイトや派遣、契約社員のような不安定・短期雇用ばかりで将来設計もたたない。正社員になっても長時間労働で人間的な生活もできず、過労死や自殺に追いやられる。そして生産現場は労働災害がひん発し大事故が絶えない。そして「ワーキングプア」と呼ばれる貧困層が拡大し、失業率は5・2%に到達。このなかで日本の富はアメリカにまき上げられ、独占企業は百数十兆円の内部留保をためこんでいる。この間進行したのは、アメリカが日本の国民経済を散散に大収奪し、独占大企業が好き勝手にもうける一方で労働者が生存費すら保障されず、子育てもさせず、労働力の再生産すらできないようにして、日本社会をぶっつぶすことであった。これは小泉・安倍と続く労働分野の市場原理改革で進行したすさまじい破壊である。労働者が食っていけない世の中にした自民党政治への審判が次期衆院選の大注目点である。
 失業者のなかで「食える職をよこせ!」「大企業のボロ儲けを規制して国民に還元させろ」との憤りは年齢、性別を問わず渦巻いている。北九州の職安で職を探す40代の男性は「表向きの求人数はある。でも、ほとんどがアルバイトやパートで正社員はない。しかも、1日に2時間とか1週間に2日とかでどうやって生活しろというのか。派遣切りで20代の失業者が増えたうえに、派遣の求人もガタベリ。家計を助けるため女性求職者も増えたから、いまはアルバイトに就職するのも難しい。“職を選ぶからない”などというがまともな職につかせろ」と憤りをぶつける。
 リストラにあった青年労働者たちも「大企業は働かせるときはおだててこき使うが、“不況”となると簡単に切り捨てる。労基署に文句をいっても“法律には違反していません”とか“労資間で解決するか納得できなければ裁判すればいい”というだけ。どうして一生懸命働くものが突然クビにされたり、賃金未払いというようなサギ行為が日本では通用するのか。さんざんボロ儲けしてきた大企業ばかり優遇する自民党政府は絶対許せない」と語気を強めた。
 昨年来の世界恐慌以後、急増したのはトヨタやキヤノンなど大企業から放り出された元派遣労働者、期間工、下請労働者などの失業者である。仕事がある期間だけあてがわれていた家具つきワンルームマンションなどから「契約終了」とたたき出され、いまは田舎の実家、友人の家などで暮らしながら職を探す状態。知り合いがいなければ夜はネットカフェやマンガ喫茶を転転とする。食事は見切り品のパンやカップラーメンなどで切りつめ、短期アルバイトでしのぎながら職安に通う。しかし短期アルバイトを探す求職者も増えており、資金源が底をつけば路上生活をするしかない。こうして野宿者が増加しはじめている。広がっているのはもはやその場しのぎの「派遣村」「炊き出し」だけで解決しえないとの実感である。
 総務省が発表した5月の完全失業率も5・2%となり、完全失業者数は347万人にも達した。完全失業者は、20年前の90年(完全失業率が2・1%、完全失業者数・134万人)と比較すると200万人も増加した。深刻なのは、貧困層と非正規雇用の急増。「ワーキングプア(働く貧困層・年収200万円以下)」と呼ばれる生活保護水準並みの労働者は1993年は736万人だったが07年は1032万人に到達。この14年で296万人も増加した。非正規雇用労働者も1990年は881万人だったのが08年は1737万人に達し、18年で856万人も増加している。貧困・失業・非正規雇用が急増し、仕事があるときしか生かさず、仕事がなくなれば「餓死」「孤独死」「自殺」の自由しか与えない。残酷な「市場原理・自己責任社会」への改革が進行してきたのである。

 派遣労働製造業に拡大 女子保護全廃も強行
 この20年、労働者の権利の剥奪、奴隷化が、アメリカと大企業の要求によって、政府の労働政策として意図的に実行されてきた。1986年に発表された「前川リポート」(中曽根元首相の私的諮問機関の報告)は今後の産業政策で「鉄鋼、石炭、化学など従来の基幹産業のほとんどを海外に移し、そこから製品の逆輸入をふやし、農産物も輸入に切り替え、国内には先端技術部門や最終加工組み立て部門、金融流通部門のみを残す」と指摘。それは国内の労働者を搾り上げて蓄えた資本をアジアを中心とした海外に投資しさらなるボロ儲けをむさぼる方向だった。98年になるとアメリカが在日米国商工会議所を通じて「過度に規制された日本の労働環境は外資が望む人材の求人・採用を困難としているから対日投資の障害だ」と労働省に圧力をかけた。職業紹介など労働省が行うサービスの民営化、集団解雇制限の削除、女子保護規定全廃、有料職業紹介と人材派遣事業の原則自由化など詳細に指示していた。
 このもとで、雇用形態は戦後一貫して禁止されてきた派遣労働解禁を強行した。1985年に「専門的な16業務に限定する」といって労働者派遣法を制定。ついで、96年には派遣対象業務を26業務に拡大。99年には一部の例外を除いて派遣労働を解禁した。そして2004年3月、製造現場への派遣解禁を強行。派遣期間も最高3年に延長した。労働時間に関する法制も87年の労基法改悪で「1日8時間、週48時間」という規制を取り払った。「1週間40時間労働制にする」と欺き、週40時間以内であれば1日8時間以上働かせていいようにした。
 一定のノルマを決め、その仕事の時間配分を労働者自身にゆだねる裁量労働制も「都合のいい時間に仕事ができる」と宣伝して導入。98年の法改定でホワイトカラーに対象を拡大したが、実際はとんでもないノルマをかぶせ、長時間労働で過労死に追いやるものだった。50年になると年間総労働時間を短縮するためにつくった時短促進法廃止を強行した。
 さらなる利潤を追求するため、男性より低賃金の女性や外国人労働者を労働現場にかり出す体制も整備した。18歳以上の女性はもともと残業を1日2時間、週6時間、1年150時間とし、深夜勤務は禁止していた。この残業や深夜勤を禁ずる規制を男女雇用機会均等法改定で99年に全廃した。「女性差別はいけない」というが勤務時間は男子にあわせ、賃金水準は女性のまま。ていのいい低賃金長時間労働を拡大したのである。
 外国人労働者の受け入れも90年から「開発途上国の人材育成に貢献する」といい「研修生制度」として導入。93年には1年の研修を終えても「実習生として2年間働くことを認める」として労働期間を拡大した。これも「派遣法」の手口と同様、最初は対象職種を17種に限定し、しだいに食品製造、木工など62業種に拡大した。日系人についても90年の入管法改定で「日本人の配偶者」または「定住者」として在留する条件で就労制限を取り払った。1990年に26万人だった外国人労働者は06年段階で92・5万人になっている。しかし「研修」とは名ばかりで、ほとんどが小遣い程度の低賃金で過密労働が横行。それが日本の労働条件を引き下げることに作用している。

 大企業リストラを支援 小泉改革で段階画す
 段階を画したのは01年に小泉内閣が登場し「痛みをともなう改革」などと叫び企業の首切り・リストラ支援策に乗り出して以後である。「郵政民営化」による1万5000人もの郵便労働者削減、「通信自由化」によるNTTなど通信労働者10万人削減など大ナタをふるった。
 アメリカには100兆円の不良債権を今後3年で処理すると約束し公的資金を投入。労働現場はリストラが吹き荒れた。このなかで小泉は産業活力再生法を「改定」し、M&A(合併・買収)やファンド支援を促進。さらに労働安全衛生法を改悪するなど企業の「安全対策切り捨て」も支援した。05年になると「米国を参考にした労働時間規制の適用除外を検討する」ことを柱にした「労働ビッグバン」を閣議決定。御手洗経団連会長は「米国を参考にして(社会秩序の)仕組みを考える。小泉改革では不十分」などとハッパをかけた。
 こうしたなか全産業では労働破壊が度はずれたものとなった。JR、バス、トラック、タクシーなどでは「週休2日制」導入と引き換えに1カ月単位の変形労働制が導入され長時間拘束される深夜交代制労働が横行。トラックは市場開放を求めるアメリカの要求による物流2法改定(02年)で、営業区域規制を廃止。タクシーも需給調整規制の緩和によって台数が急増し、車上生活を強いられる状態となった。
 その最たるものが05年に引き起こされたJR西日本宝塚線での乗客107人死亡、約550人負傷の大惨事だった。超過密路線にスピードアップのため軽くてつぶれやすいステンレス製列車をつくり、睡眠時間が四時間しかない若い運転士を乗せて酷使。ミスがあれば「日勤教育」で自殺するほどの懲罰を加えていた。
 製造現場でも03年にブリヂストン栃木工場でタイヤ15万本が焼失し、住民約5000人が避難した大火災が発生。これも可燃性が強い薬品を大量に扱い、出火すれば大火災になると分かり切った工場を無人化し、消火体制もとっていないことが原因だった。
 安全対策、技術継承のための教育、品質管理部門などが切り捨てられた結果、欠陥品も続出した。トヨタの欠陥車リコール(無料の回収修理)台数を見ると01年に5万台だったものが05年には193万台に急増。ガス機器メーカーではパロマ、松下電器、リンナイ、日立、三菱電機などの製品で約200人がガス中毒死した。食品産業も雪印や不二家のように腐った材料が使われるなど、製品の信頼性も崩壊する事態となっている。露呈しているのは営利一本槍の大資本にはもはやまともな製品をつくる労働を組織する力もない姿である。

 労働争議させぬ体制も 労働契約法も施行
 そして非正規雇用を増やし、安全切り捨てを促進したつぎなる段階として08年3月に施行したのは「労働争議を防ぐ」ことを目的にした「労働契約法」である。「労働契約ルールの明確化」「就業規則変更による労働条件の変更」を明記。これにより労働者は請負業者のように、会社と個人契約を結ぶことになった。
 「出向、転籍、懲戒ルール」をはじめ会社側が一方的に決める就業規則を認めなければ就職できず、いったん就業規則を認めればどんな扱いを受けてもすべて「自己責任」となる。「反抗したらクビ」「ミスをしたらクビ」「私語禁止」などの異常な契約内容でも「労資合意」があれば、国の指導も排除して、会社側が堂堂と労働者の首を切れる体制だ。トヨタやキヤノンなどの大手企業が「派遣切り」ラッシュに踏み切る数カ月前に、このような法整備を用意周到にすすめていた。切り捨てたうえなにも言わせないというのである。さらに08年4月からはパート労働法の改定も施行。こちらは「パートと正社員の格差是正」を叫び、事実上は正社員の総パート化、低賃金を促進するものである。

 大企業ボロ儲けの構造 労働者徹底的に搾り
 こうして労働者を徹底的にしぼることで大企業はボロ儲けを謳歌してきた。07年3月期決算は東証一部上場企業全体で五期連続の増益。経常利益総額は四期連続で過去最高を更新した。それは「不況だ」と大騒ぎを演じている大企業が恐慌突入以前に莫大な儲けをため込んできたことを明らかにしている。法人企業統計調査によると資本金10億円以上の大企業全体の当期純利益は約25・4兆円(07年)。1990年の約17・5兆円と比べると20年で7・9兆円の利益をふくらませている。個別報酬を見てもトヨタ自動車が役員33人(取締役と監査役)に払った役員報酬や配当などの総額は33億五200万円(06年)。1人当りでは、1億1575万円で月額846万円にもなる。
 生産を担い富をつくり出す労働者に寄生する大企業の株主や重役ばかりが莫大な報酬をせしめる体制にとってかえられたことが、労働が愚弄され、労働者家庭の生活も未来も破壊し、日本の国の将来もつぶすものになっている。
 小泉改革といって、金融投機資本が好き勝手をし、大企業がボロもうけする社会構造にしてきた。そして労働者はまともに暮していけなくなった。労働者が子育てができず、労働力の再生産もできないというのは、富の源泉を破壊することであり、いかなる大資本もつぶれるということである。

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