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反社会的な患者追い出し
療養病床22万床廃止
              家族総働きで打つ手なし    2007年8月24日付

 療養型病院、とりわけ中小病院のなかで「小泉―安倍の療養病床六割廃止で受皿はなく、どうなるのか。政府ははっきりとした対策を出せ。高齢患者をかかえる病院として、簡単に追い出しはできない」との怒りの声が高まっている。療養型病床はすでに1万5000床減って現在37万床弱、これを2011年度末までに22万床廃止して医療用療養型病床15万床だけとする「改革」が強行されているからである。
 下関市内の中小療養型病院で、医療用病床から介護用病床に高齢患者を移したさい、家族との話になった。「2011年度末までに、この介護病床も廃止になる。医療用も残せるかどうかわからない」との説明、家族は「今日、明日のことではないにしても、どうすればよいのか。同居していた親父も病身であり、私ら子どもも多忙で、家も小さい。これでは一家破産。年金がきちんとなっているかどうか、どころの話ではない」との論議となった。
 小泉―安倍の「改革」で、昨春、医療制度改革関連法を強行。その柱の1つが、療養型病床38万床を6割廃止して15床とする計画である。実施は2011年度末としているが、昨年4月の診療報酬改定で療養病床の診療報酬をこれまでの一律から、「医療の必要度」を基準に3ランクに区分、昨年7月から実施した。この結果、療養型病床入院基本料(月額)はこれまでの一律49万円(患者1人当り)から、医療区分@では36万円、医療区分Aで52万円、医療区分Bで65万円となった。
 このため、医療区分@の患者が半数を占める病院は赤字となり、療養型病院の閉鎖、病棟の廃止などが始まり、この1年で早くも1万床以上がなくなっている。
 療養型病床廃止の責任と負担、すべての犠牲は、高齢患者とその家族、現場の医療機関に転嫁され、安倍政府は涼しい顔をして医療・介護の切り捨てを国民に押しつけている。
 療養病床廃止で、自宅療養となった高齢患者の多くは脳出血の後遺症などで、手足や身体のマヒをかかえており、今年の歴史的な猛暑のなかで命を落とす例も少なくない。自宅では病院のような温度管理は不可能で「冷房は高齢の体にこたえるし、冷房なしでは熱中症になる。安倍さん、どうすればよいのか」との声は全国に広がる。
 また、大きな赤字経営となり療養型病院を廃院した医師は、自宅への毎日往診を約束して退院してもらい、知人が経営する介護施設に頼みこんだり、入院していた高齢患者の行き先が見つかるまでは責任を持たざるをえない。
 療養型病床は、もともと急性期医療後の長期入院患者を一般病床とは別枠で受け入れるために、政府・厚生労働省が設置を進めたものである。とくに、2000年の介護保険制度の見切り発車前には、療養型病床の3分の1を、介護用に転換することを上から強制した。このため、医療機関は介護用の基準に合わせ、ばく大な借金をして増・改築させられた。ところが、5年もたたないうちに介護用全廃、医療用も10万床廃止し、15万床とする改悪をうち出し、自民・公明の多数で強行決定した。
 療養病床を設置した医師たちから、「小泉―安倍は他人のふところに手を突っこんで、好き勝手に制度改悪をやる。こんなことがいつまでも続くと思うな」との怒りが噴き上がった。今回の参院選で、日本医師会会員の4割が「自民支持」から離反したといわれているが、この医療界の国民のための医療を守る動きは、さらに強まろうとしている。

 医療現場
 追い出す仕組みに憤激 入院長くなると診療報酬カット・病院経営を圧迫
 小泉―安倍と、アメリカ型市場原理による「医療改革」が強行されるなかで、2011年に迫る療養型病床23万床の廃止が、医療現場で大きな社会問題を引き起こしている。これまで、急性期総合病院と療養型病院の連携のもとに、手術など急性期治療を終えた患者を、回復・療養を担当する療養型病院が引き受けてきた。ところが、廃止が迫るなかでこの連携は崩れつつあり、患者とその家族に悲惨な犠牲が押しつけられている。
 下関市内のA急性期総合病院の医師は、「政府・厚生労働省は、病院を兵糧攻めにして患者の早期追い出しを強い、入院日数短縮によって医療費削減をはかっている。ところが一方で療養病床廃止をうち出し、手術など急性期治療を終えた患者の行き場をなくしている。犠牲にされているのは患者である国民で、事態はますます深刻化している。人間のための医療を、利潤効率一点ばりの市場原理で改革されてたまるか」と指摘する。
 B急性期総合病院の医師は、「療養型病院は昨年7月来のこの1年で、すでに約1万5000床なくなっている。政府は2011年には23万床を廃止する。医療用療養病床を15万床だけ残すとしているが、こんな数で足るわけがない。脳や心臓、内臓の手術を終えた患者の行き場はない。こんな悲惨がゆるされてなるものか」と強調した。
 政府が診療報酬をてこに病院に患者の早期追い出しを強いる仕組みに、入院基本料の設定がある。入院日数が14日以内の患者1人当りの入院基本料(1日)は1万5610円。これを超えると1万4610円。さらに30日を超えると1万2610円と、3000円もカットされる。300床の一般病院で機械的に計算すると、1日90万円の減収、1週間で630万円、月で2700万円の減収。医師、看護師などスタッフをぎりぎりの体制にしている現状でも、経営は成り立たない。一般病院では、平均入院日数21日の基準を達成するのに、必死の実情にある。
 一方で、急性期治療を終えた患者を引き受けてきた療養型病床廃止を強行している。A病院の医師は「政府は在宅療養と老人保健施設に入れるとしているが、そんなことができるわけがない。昔のように親父1人の給与で、三世代同居の一家が社会的に平均の生活ができた時代ではない。一家総働きで、だれかが失業したり、非正規雇用という時代だ。小泉、安倍など今の政治家は国民から浮き上がっている。こういう連中に国民の健康と生命を左右されてたまるか」と強調する。
 B病院の医師は、「老人保健施設に看護師を増やすぐらいで解決しない。脳血栓の手術、療養病床でのリハビリなど回復期治療がなければ、重いマヒが残り廃人にさせられる」と指摘。続けて、「老人保健施設では、たんの吸引回数の多い患者は受け入れてもらえない。合併症や心疾患がある患者も、薬代が施設の持ち出しになるからと断わられるケースが多い、との指摘もある」と語る。
 そして、「療養病床がなくなり、在宅療養や介護施設に移った患者が、十分な医療を受けられず、容態が悪化して一般病院にかつぎこまれるケースが増える。“医療難民”とか“介護難民”と気易くいうような問題ではない。このような悲惨は阻止しなければならない。参院選で大敗しても、国民に対してなんの反省もなく、続投を叫ぶような政府は、国民の手で本当に変えなければならない」と語気を強めた。

 家族に大打撃
 無慈悲な退院の通知 受け入れ先探しに奔走・寝た切り老人をも

 療養病床廃止にむけて、入院日数制限など病気を落ち着いて治すこともできず、病院からの追い出しをよぎなくされるという事態が横行し、入院患者はもとより家族にも深刻な打撃となっている。家族も生活がままならないなかで、働きながら次の受け入れ先を探すため奔走し、ツテもなにもなければ在宅など不可能な体で追い出され、一家もろとも路頭に放り出されかねない。
 父親の介護をしている40代の婦人Aさんは、医療制度改革の名の下で病院からたらい回しにされる介護の必要な家族を抱えた家庭の無慈悲な現実に直面し、腹が立ってやれないと実情を次のように語った。
 Aさんの父は現在下関市内の総合病院に肺気腫で入院しているが、一緒の病棟にはやはり肺気腫で同じ年頃の男性が2人いる。比較的症状も安定し、もう少しで退院できるAさんの父に比べ、2人は体があまり動かせず寝たきりで、のどを切開しているので声を発することもできず、そこから流動食をとり、痰の吸引などもしている。ベッドの周りには機械が並ぶ。
 先日、同部屋の2人に病院から「国の方針なので退院してほしい」と“お達し”があった。「退院してほしいといわれても、体中に機械がついている状態で、これがなければ生きられないのに…」と2家族は愕然とした。
 2人のうちの1人(B氏)は、以前個人病院にかかっており、B氏から筆談で家族に「この先生に相談してみてくれ」とあって相談したところ、かかりつけの主治医が2回往診し、B氏に必要な設備の整った施設を探して交渉してくれた。そして施設の空きができ次第、受け入れてくれることになった。病院側も次のところに入れるまでは入院を承諾してくれた。
 もう1人(C氏)の家族は頼れるところがなにもない。C氏は以前別の病院で肺に悪性腫瘍があると診断されて手術。しかし切開すると腫瘍などなく、手術がもとで肺気腫がさらに悪化、体調不良となり現在に至る。入院する前に介護保険にかかっていたこともないので間に入ってくれるケアマネージャーもおらず、今は娘夫婦が必死でC氏を受け入れてくれる病院や施設をあたって奔走している。
 いくら退院してくれといわれても、体中に機械がついて動けない体で在宅で看ることなどできない。家族も生活のために働かなければならないし、このまま時間だけ経てば一家が路頭に迷うことにもなりかねない。だが仕事をしながらまったく手探りのことでもあり、いまだにいい返事をもらえるところはない。
 お互いの体調が安定しているときは、家族を介して話をすることもある。Aさんの父は先の戦争で中国に行き、偶然Bさんも同じ戦地から帰ってきたことがわかり意気投合。Aさんの父は、「わしら戦争のときは兵隊に行き、帰ってからは必死で働いて生きてきた。体が動かなくなったら“使いものにならないから勝手に死ね”というのでは腹が立ってやれない」と込み上げる思いを語っている。

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