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世代こえ衝撃与える舞台創造へ
第2回実行委員会
              礒永秀雄詩祭の内容定まる   2011年10月17日付

 11月5日に開催予定の「没35周年記念・礒永秀雄詩祭」に向けての第2回実行委員会が、16日、下関市の福田正義記念館で開催され、山口県と福岡県の教師と退職教師、平和の会の高校生、下関原爆被害者の会や下関市民の会、文化人など約40人が参加した。この日の実行委員会では、第1回実行委員会以降、詩祭のポスターやチラシによる宣伝が進み、本紙号外や書籍によって礒永作品が広範な人人に届けられるなかで、子どもからも大人からも新鮮で深い感動が寄せられ、大衆的な顕彰運動が勢いよく発展している状況が生き生きと報告された。そして詩祭当日の舞台をどのようにつくっていくか、作品展示コーナーをどのようにするかをめぐって熱のこもった論議がかわされ、より多くの人人に参加を呼びかける活動を一段と強めることが確認された。
 はじめに実行委員長の宇部市上宇部小学校教師・佐藤公治氏が挨拶をおこなった。佐藤氏は六年生の子どもたちに礒永童話「とけた青鬼」を読み聞かせし、感想文・感想画を描かせているところだとのべ、一人の子どもの感想文を紹介した。「青コブは、角もキバも全部とられてもう半日しか生きられないのに、その命を良太や村人たちのために役立たせるところに目頭が熱くなった。青コブは悪いやつらをおしおきして、この世からいなくなった。切なすぎて涙が出てきたけど、この世の中に青コブみたいな人がいたらすごくいい世の中になると思った。私は青コブのように弱い人や困っている人のために役に立つ人になって、少しでもいい世の中にしていけるように頑張ろうと思った」
 佐藤氏は続けて子どもたちの絵を紹介した。子どもたちの絵は、良太と母親をいじめる代官に生まれて初めて怒った、般若のような青コブの顔を描いたり、すもうで青コブの大きな大きな腕がのびてテング山をねじふせている場面を描いたり、画面いっぱいに描いた青コブの怒った顔から最後の力をふりしぼったオーラが出ていたりしている。
 そして「子どもたちは礒永童話の青コブやおんのろが大好きだ。子どもたちはそこから弱い人や困った人の立場に立つ精神、人民のために奉仕する精神を感じている。正義感や、自分の身を犠牲にしてでも人を助けるというところに響いている。子どもたちは去年までは感想画を描かせても小さく、自己表現ができなかったが、この間の鉄棒や運動会のとりくみを通して、自信を持って絵を描いている。礒永作品の持つ力はすばらしいものがある。きょうはこうした実践をおおいに交流しよう」とのべた。
 続いて事務局長・近藤伸子氏(劇団はぐるま座)より、実行委員会への報告がおこなわれた。近藤氏は、詩祭のポスター1000枚以上が下関市を中心に、商店、官庁・公民館、学校、自治会掲示板などに貼られ、チラシ二万枚が活用され、号外や書籍普及によって礒永秀雄の詩と童話についての論議が発展していること、詩祭での舞台発表や作品展示の応募があいつぎ、熱のこもった準備が進められていることを明らかにし、現段階で検討されている舞台のプログラム骨子と展示内容について報告した【別掲】。
 関連して舞台づくりについて、はぐるま座が報告した。舞台には「戦後日本民族の魂をうたった詩人 没35周年記念 礒永秀雄詩祭」という文字と礒永秀雄の写真を掲示するとともに、バックには関門海峡をイメージした幕をつるし、詩の内容にあわせて照明によって夕焼け、星空の輝き、朝焼けのすがすがしいイメージをあらわせるようにすること、紙芝居や子どもの絵などは舞台のスクリーンに映し出す工夫をすることなど、出演者と協議しつつ進めるとのべた。また、展示部門は会場入口のロビーに展示することが報告された。

 小中高生平和の会、詩を朗読

 引き続きどのような詩祭にするかをめぐって、参加者からの発言があいついだ。北九州市の小学校教師は、4年生のクラスで礒永童話を読み聞かせしたところ、子どもたちは「鬼の子の角のお話」が大好きで、「いのししがやりたい」「タケノコがやりたい」といって朗読劇にとりくみ始め、それは同学年の他のクラスにも広がって学年で礒永童話が教材にされているとのべた。「隣のクラスでは“どうして動物たちは鬼の赤ちゃんのためにいろんな物を差し出せるのだろう。自分たちはそうしていない”という子どもの意見から、みんなのために尽くすとはどういうことかとずいぶん論議になったそうだ。礒永童話は他学年や親のなかにも広がっている。教師も喜んでいるし、なにより子どもたちが喜び、日頃にない力を発揮している。詩祭に向けて朗読劇が完成するよう頑張っていきたい」とのべた。
 別の北九州市の小学校教師は、「詩をとりくんでいるが、子どもたちが一番読みたいというのが“虎”だ。一人で読んだり、群読したりしている。気の弱い子が、虎のように強く勇ましく生きようと思ったと書いている。茶髪でピアスについて注意したある女子は、やる気になって暗誦に挑戦している」とのべ、子どもの感想を紹介した。
 「この詩をくじけたときとかに聞くと、すごく勇気づけられていいなと思った。この詩を読むとすごく力強い気がする」「こうべをあげて吼えるのところが一番心のなかに響いた。さっきまで弱弱しかった虎が力強く吼えることで、仲間に悪い虎になるなとうったえていたからだ」「最初の言葉を読んで、ちょっと身ぶるいしてしまいそうになった。俺たちの祖先は龍が天に昇るのさえ阻んだというではないかというところは、とくにすごくよかった」。そして感想画にもとりくむとのべた。
 礒永童話を二つのクラスでとりくんでいる長門市の小学校教師は、「『おんのろ物語』を同僚の先生が六年生のクラスで読み聞かせをした。子どもたちはおんのろと、親がいない自分を重ね、本当は力を持っているのに力のない弱いと見られている者を、みんなで支えて強く立ち上がらせていくという精神を、子どもたちが受けとめている。礒永作品は子どもたちにとって正しい生き方を教えてくれる教科書だ。感想画も描く予定にしている。悪いものをこらしめて正しいものを勝たせていく礒永精神を育てていきたい」とのべた。
 小中高生平和の会の高校生は、一週間前に平和教室をやり「おんのろ物語」の感想文と感想画を描いたことを報告。「小さい子からみんな静かに集中して聞き、絵も真剣に最後までとりくんだ。礒永作品を聞いて思うことがあったからこそだと思う。30日には、詩祭で発表する詩の練習をする。“虎”は全員で、“ただいま臨終!”は高校生で、“一かつぎの水”は小・中学生で朗読する予定。頑張ってやっていきたい」とのべた。

 被爆者の会や市民の会出演

 下関原爆被害者の会からは、会の論議をつうじて「夕焼けの空を見ると」を詩祭で朗読することに決めたと発言、「きょうの実行委員会の前に会員で集まって朗読の練習をしたが、一人で読むのとちがってすごく感慨深かった」とのべた。
 下関市民の会からは「連帯」と「夜が明ける」を詩祭で朗読すると発言があった。ある婦人会員は「5年前の30周年で初めて礒永さんの詩に出会った。それまで詩というのはピンとこない、なじめないと思っていた。礒永さんの詩はやさしい詩で、人の生きる道を教えてくれる詩だ。それから読むようになった。きょう、子どもたちの感想を聞いてすごいなあと思うし、自分自身を若返らせ、礒永さんの詩を読んでもっと吸収するようになりたいと思った。もっと練習して、当日は舞台装置に負けないように朗読しようと思う」と語った。

 はぐるま座は「修羅街挽歌」

 劇団はぐるま座からは、礒永秀雄がその戦争体験から戦後詩人になる決意を、苦悩をへて彫り深くうたった詩劇「修羅街挽歌」の本格的な準備を始めたことが報告された。「団員のなかでどんなイメージなのか話しあい、音楽からつくり始めて、昨日構想が立ったところだ。“地獄の幻想”“修羅の怒号”“修羅の号泣”とあるが、それをどういう音として描き出すのか。この作品は礒永の戦争体験、生きるか死ぬかという極限状態のなかからつくり出されたものであり、『原爆展物語』のなかで出会った戦争体験者や被爆者にしかわからない世界がある。自分たち体験のない世代が、その戦争体験に根ざした人人の心の動きを追求することで、現代に生きる現役世代、若い世代にも響くものがつくれるのではないかと論議している。そして“修羅街挽歌”を論議し礒永秀雄の世界を深めることで、戦争体験者を代表し日本の未来を切り開いていく『原爆展物語』の舞台をどうつくるかが見えてくる。そういう作品ならもっと広範に詩祭への参加を呼びかけようと、意欲的にとりくんでいる」。
 また下関の会社員有志は、詩祭では礒永童話「桃太郎」を影絵で発表すると発言。「広い会場なので、高さ2b、幅4bのスクリーンを使う。会社のみんなと、夜仕事が終わったあとに人形の切り抜きをやり、60人以上の登場人物ができたところ。これから練習を積んでいく。礒永の詩精神を表現できるようにしていきたい」とのべた。
 これまで「おんのろ物語」「鬼の子の角のお話」を市内の子どもたちに聞かせてきた萩朗読の会は、今回は「とけた青鬼」を紙芝居にして詩祭に出演するとのべた。
 詩祭の内容について参加者から「子どもの感想文を見ると、子どもなりの表現で深いところでとらえている。さまざまな感想をいろんな学校から、小さい1年生から大きい子まで発表できたらいい」「感想文の発表のとき、子どもの感想画をスライドで映せないか」「広島や沖縄の参加者からも、詩の朗読や紙芝居がやりたいという要望が出ている」などの意見も出され、報告された骨子をたたき台に、プログラムはさらに充実したものに発展させることが確認された。
 詩祭全体のイメージが共有されるなかで、多くの人人に参加を訴える活動を大胆に進め、それを運動にしていこうという発言が続いた。
 小学校教師は「近々予定されている参観日では、子どもが“一かつぎの水”“虎”“夜が明ける”を群読し、一人ずつ“とけた青鬼”の感想画を発表する。親にも童話を読んでもらって、あわせて詩祭への参加も呼びかけたい」「教師と子ども、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが一緒になったとりくみにしたい」とのべた。
 下関市民の会からは、「ある会員は礒永さんの“連帯”の詩を練習すると、身体の悪い娘のことを思い出していつも詰まってしまうという。“それじゃあその娘さん夫婦にも来てもらおう”“家族ぐるみで参加してもらおう”“市民の会の読者にも広く訴えよう”と論議している」「近所の82歳の女性が、“父も戦死している。五日には行く。友だちも誘ってみる”といっている。礒永さんの戦争体験に共感がある。若い人にも響く」と出された。
 はぐるま座からも、『原爆展物語』を見た戦争体験者には礒永作品に対して強い共感があることや、山口県や広島県で「礒永作品を参考にして地域の文化運動をおこしたい。参考のため、詩祭をみんなで見に行こう」という動きがおこっていることも紹介された。また、広島、長崎、沖縄からの集団的な参加が予定されていることも報告された。
 初めて参加した山口市の文化人は「40年前、礒永さんから詩を教わり、“頭のなかで詩を書いてはいけない”と何度もボツにされたことがある。きょう話を聞いて、はぐるま座の“修羅街挽歌”がますます楽しみになった」とのべた。
 最後に実行委員長の佐藤氏が「人人のなかで劇的な変化がおこっており、子どもも一般の人も礒永作品に強く響いている。11月5日の詩祭の成功に向けて、一丸となって奮斗しましょう」としめくくった。

 プログラム骨子と展示内容

 実行委員会事務局から提案された詩祭のプログラム骨子と展示内容は次の通り。今後さらに新しい作品が加わるなど、充実させられる。
 【プログラム】(△は調整中)
 詩劇「修羅街挽歌」劇団はぐるま座
 △朗読「十年目の秋に」
 △歌唱「室積中学校校歌」
 △朗読「ゲンシュク」広島の大学生または高校生
 礒永秀雄童話の感想発表(「おんのろ物語」など)山口県と北九州市の小学生
 朗読「鬼の子の角のお話」北九州市の小学校の子ども・教師・父母
 朗読「虎」「一かつぎの水」「ただいま臨終!」小中高生平和の会
 △朗読「まるい背なかへ」
 影絵「桃太郎」会社員有志
 △朗読「燃焼する生命体」
 △朗読「真金になるまで」
 朗読「夕焼けの空を見ると」下関原爆被害者の会
 朗読「夜が明ける」「連帯」下関市民の会
 紙芝居「とけた青鬼」萩朗読の会
 朗読「新しい火の山に想う」長周新聞社青年
 【展示部門
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 「八月の審判」運天清正(沖縄県書道美術振興会顧問)
 「夕焼けの空を見ると」道岡香雲
 「新しい火の山に想う」津田峰雲(日展書家)
 「さて」石川幸子(下関原爆被害者の会)
 「室積中学校校歌」大楽義人
 短歌「詩祭によせて」吉本幸子、石川幸子
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 小中高生の感想画
 版画「ガジュマル」「下がり花」伊計光義(うるま市文化協会顧問)
 紙芝居「鬼の子の角のお話」「とけた青鬼」田中義雄(光市、元教員)
 ▼感想文
 北九州と長門の小学生
 ▼パネル
 「礒永秀雄の世界」と写真「礒永秀雄」〈礒永泰明氏提供〉

 没35周年記念・礒永秀雄詩祭の開演は午後1時。展示は正午から5時まで参観できる。展示ロビーに礒永秀雄関連書籍の販売コーナーが設けられる。

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