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政府は住居・職を保障せよ
            モノ扱いの派遣切りに抗議   2009年1月9日付

 世界恐慌が進行するなか、これまで史上最高益を更新しつづけてきたトヨタやキヤノンなどが真っ先に強行した「派遣切り」で、住居や職を奪われた非正規労働者が東京都内の「年越し派遣村」に押し寄せたことが、大きな社会問題となっている。それは首を切られた労働者にとって深刻な問題であると同時に、現在就業している労働者、地域社会全体にとっても深刻な問題となっている。労働者は企業が儲からないからといって生きていけなくても仕方がないというわけにはいかず、黙って首をつるわけにはいかない。労働者に「失業と無権利の自由」、大企業には「首切りとボロ儲けの自由」を保障した「労働者派遣制度」の犯罪性が露呈しており「派遣法を撤廃せよ」「政府は職をよこせ」の声が全国で渦巻いている。

 派遣法撤廃求める声広がる
 年末年始にかけて労組などが東京・日比谷公園内で開いた「年越し派遣村」には、住む家も仕事も奪われた労働者が続続と詰めかけた。当初の受け入れ予測は150人とされたが、大晦日の夜に139人が集まり、2日夜には300人を超過。用意されたテントが足りなくなり、なにも有効な措置をとらない国政への批判が高まるなか、厚生労働省は五日朝までの期限付きで講堂を緊急開放する措置をとる事態となった。「派遣村」には野宿生活やネットカフェでの屈辱的な生活を強いられてきた人人が総勢500人近く押し掛け、5日には国会周辺をデモ行進。「大企業は首切りをやめろ!」「労働者派遣法を抜本的に改正しろ!」と訴えた。
 ボランティアが日比谷公園でしていた炊き出しは5日朝で終えたため、厚労省が12日までは東京都内4カ所の公共施設(中央区の閉校になった小学校2カ所と練馬区にある都の体育館、大田区にある都の労働者向け一時宿泊施設)に500人分の宿泊場所を確保。いまは行政が1日3食、弁当を提供し、7日からは厚労省が「就職活動のための交通費」などとして最大5万円の貸し付け(生活保護を申請した人には1万円)をはじめた。しかし定職も住居もない状態はかわらず、入居者はいつ仮住まいを追い出されるか分からない不安な日日を過ごす。「職と住居を保障せよ」という要求は、政党による選挙目当ての人気取りやパフォーマンスなどの思惑を超え、切実で急を要する問題となっている。
 福岡市の明治公園でも昨年末、日雇労働者がつくる労組が実施した炊き出しに300人が列をつくった。同労組は5日、須崎公園(福岡市中央区)で150人分の炊き出しをやった後、天神の繁華街で「福岡市は日雇い・野宿の労働者に仕事を出せ!」と書いた横断幕を掲げてデモ行進をした。約130人が福岡市役所玄関前に押し掛け、「福岡市は仕事を出せ!」「日雇い労働者を働かせろ!」とこぶしをあげた。「雇用対策」「食糧給付」「入浴券配布など生活上必要な便宜」の3点を求める要望書を同市保護課に提出し、代表者が「労働者が失業、野宿、飢えに苦しんでいる現状を放置する福岡市の姿勢には強い憤りを覚える」と訴えた。
 同労組は毎年1月にデモ行進をしているが、今年は市が緊急対策を打ち出すまで毎週、市への要請活動をおこなうとしている。そのほか大阪市の扇町公園でも年末の炊き出しに約90人が列をつくり、3日には北九州市内でおこなわれた炊き出しに約80人の野宿者が集まるなど、各地で「派遣切り」を強いられた路上生活者が溢れはじめている。

 30人の募集に対し117人応募 焼け石に水の雇用策
 「雇用創出」で地方自治体が「派遣切り」や「雇い止め」の非正規労働者を臨時職員として採用する動きも出ているが焼け石に水の状態だ。外国人労働者が多い岐阜県大垣市をみると5日に臨時職員30人の募集を開始したが、2日間で募集数の4倍近い117人から相談が殺到。とくに蓄えが底をつき帰国することもできず、言葉が不自由で再就職も困難という日系ブラジル人が多数応募。あっという間に募集打ち切りとなった。「3月末まで道路や公園の維持管理などにあたってもらう」としているが、仮に臨時職員として就職できても4月以後は再び失職するため、その場しのぎにしかならない。しかも同市では市内に住む約1500人の外国人労働者のうち、3月末までに770人が解雇される見通し。黙って待てば好転するどころか、時がたてばたつほど事態は悪化するすう勢にある。
 厚生労働省が12月に発表した調査ですら10月から来年3月までで切られる非正規労働者(派遣、請負、契約など)の数は8万5012人に到達。正社員の首切りは3295人となっている。今年に入ってもベアリング大手の日本精工が3月末までに派遣社員の2000人削減を発表し、三菱自動車水島製作所(岡山県倉敷市)も3月末までに非正規社員の1000人削減を発表するなど「派遣切り」がまだ拡大している。さらに工場閉鎖、減産やライン停止、新工場稼働の延期の動きも広がっており、今後は正規労働者にも影響が広がるすう勢。大企業の大量首切りを野放しにしたまま、微微たる雇用創出をしても追いつくわけがないのは当然で、求職者や派遣労働者、職安関係者は「大企業の首切りを規制せよ」「派遣法を撤廃せよ」と共通して指摘している。
 労組を結成し団結した行動で企業や行政と対決する動きも活発化している。昨年までにトラック大手いすゞ自動車、キヤノン、日産ディーゼル工業、三菱ふそう、シャープ福山工場関連の派遣会社などで、非正規労働者がつぎつぎと労組を結成。今月6日にはJMIUいすゞ自動車支部や日野自動車ユニオン、日産ディーゼルユニオンなど8労組が結束し経済団体の新年パーティー会場のホテルを訪れ、日本経団連の御手洗会長あての公開質問状を提出。質問状は「大量解雇を謝罪する考えはないか」「年度末に派遣切りが発生しないよう安易な解雇を許さない決議をしないのか」「企業の内部留保を拠出し、住居や生活への支援で社会的責任を果たさないのか」など企業の社会的責任を追及している。

 正社員のパート化等を策動 財界や政府
 しかし「派遣切り」や大量解雇を強行した自動車業界大手をはじめとする財界側は「ワークシェアリングも1つの選択肢で、そういう選択をする企業があってもいい」「企業が緊急的に時間外労働や所定労働時間を短くして雇用を守る選択肢もあり得る」(御手洗経団連会長)などと、主張。現在、正社員や派遣労働者が1人でしている仕事を2人か3人で分割して働かせ、給料も半減させればよいとするもので、正社員をさらにアルバイト・パート化する意図を示している。経済同友会の桜井代表幹事(リコー会長)も派遣法撤廃を求める声について「製造業を派遣対象から排除するのは行き過ぎ」「経営に柔軟性を与え、長い目で見て成長につながる」と反発。日本商工会議所の岡村会頭も「(派遣制度は)うまく機能している時は従業員は仕事の選択ができ、企業は繁閑期の労働調整ができた」とのべ、派遣労働を規制しない考えを強調している。
 麻生政府も坂本総務政務官が「派遣村」をめぐって5日に「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まっているのか」と発言し批判が噴出。このなかで「国会に出された(派遣法)改正案が通ることがまずは大事」(麻生首相)「製造業まで派遣労働を適用するのはいかがなものか」(舛添厚労相)などと発言している。現在、麻生政府は、派遣法をめぐって日雇い派遣だけを禁じる改正案を提出している。だが期間にかかわらず製造業への派遣を規制する要求には抵抗をつづけ、財界の利益を代表する立場を崩しておらず、労働者の追及する声は高まっている。

 大企業のボロ儲けのみ保障 犯罪的な派遣法制定
 派遣労働者が共通して憤りを語る労働者派遣制度は戦後一貫して禁じられてきたものだ。しかし1986年に米国の規制緩和要求を受けて開始。当初はソフトウエア開発、通訳、翻訳、速記など13業種限定だったが、96年に26業種に拡大。99年には一部の業務を除いて適用対象業務を原則自由化した。
 とりわけ01年からは小泉改革の一環で規制緩和を強行。タクシー、トラック、バスなどでは需給調整規制をなくして殺人的な「競争」に駆り立て、「郵政民営化」で1万5000人の郵便局員を削減。通信「自由化」でもアメリカの接続料値下げ要求に従い日本の通信市場を明け渡し、NTT労働者10万人削減に着手した。この次なる段階として03年に全産業のM&A(合併・買収)や正社員の首切りを促進する産業活力再生法「改定」を強行。これと同時進行で「雇用流動化」や「国際競争力をつける」と叫んで04年、製造業にも派遣労働を解禁した。07年には製造業派遣の制限期間を1年から3年に拡大している。国主導で正社員を無権利な派遣労働者にかえていく政策をおし進めてきた結末が、現在の「派遣切り」に至っている。
 トヨタのここ数年の動きを見ると労働者の賃金水準とトヨタの上げた利益は反比例している。期間社員は正社員と同じ生産ラインで働いているのに平均賃金は年間220万〜250万円程度。トヨタ本体の正社員の平均賃金(年間830万円)の3分の1にも満たない。派遣労働者の扱いはそれよりも劣悪だがこの非正規労働者が生産の主力を担っている。
 トヨタは、2003年から本格的に期間社員を増やしトヨタ本体では8000人だった、期間社員が08年には1万8000人になり、トヨタグループ全体では4万人だった期間社員が8万7000人(08年)へ倍加。当然人件費を削減している。このなかでトヨタグループは03年度に9兆5000億円だった内部留保が、07年度には13兆9000億円に達した。非正規労働者の多用によって4兆4000億円もの内部留保をため込んでおきながら、それを生み出した労働者を「不況の調整弁」などといって路頭に放り出すことが許されていいはずはない。
 労働者全体で見ると、製造業に派遣労働が解禁された04年度の派遣労働者は227万人。それが毎年増え続け07年度には384万人に達している。これまで「失業者が減った」「景気がいい」と宣伝された内実は不安定雇用の急増と、大企業一人勝ちの好景気でしかなかった。それは労働者をモノや部品としか見なさず大手企業だけがボロ儲けすることを保障し、「不況」となれば「派遣切り」によって非正規労働者を大量に切り捨てる、労働政策にもとづいている。
 こうして全産業的に吹き荒れる人員削減、とりわけ派遣労働者にかけられた大「合理化」は独占大企業が労働者に犠牲を転嫁して生き延びるための一致した攻撃として表れている。独占大企業は、労働者を人間とみなさず奴隷か家畜使い捨ての部品の如く扱って肥え太ってきた。しかし労働者が企業、産業を超えて団結するなら、いかなる大企業といえども労働者全員を解雇することはできない。「会社あっての労働者」ではなく、「労働者あっての会社」というのが実際の姿である。労働者の側は、生きていくため、働く者の誇りのために横暴な資本と団結してたたかう以外にはない。残酷な労働者派遣法は撤廃されなければならず、労働者の住居、職を政府に保障させなければならない。労働者の全国的団結を広げる方向で、独占資本集団とその代理人である自民党政府との政治斗争を起こすことが重要な段階にきている。

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