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政府の労働政策との斗いを
全国結ぶ労働者組織を切望
             労働者奴隷化と大企業天国   2007年2月26日付

 若者が食べていける職がない。アルバイトや派遣、契約社員のような不安定雇用ばかりで将来の設計もできない。正規雇用といっても、責任ばかりをおわされ、長時間労働で追いまくられ人間的な生活もできず、その上に過労死や「心の病」に追いやられる。大企業は売上は伸びないのに史上最高の利益を上げ、外資が好きなようにもうけをせしめている。労働災害はひん発し、列車やトラック、バスの大事故、工場の火災や爆発事故まで起きている。労働が愚弄されるのが、資本の大もうけを保障し、社会は混乱するもととなっている。これは,、政府の労働政策によってもたらされている。それはアメリカが要求する規制改革、構造改革のもっとも重要な内容となっている。労働組合はどこに行ったのかわからない状態にある。企業の成長によって待遇をよくするといってきた流れが、いまでは大企業がもうけているのに、労働者の地位を低くすることの手伝いをするような状態になっている。労働者の運動はこのままですむはずはない。

 急増する不安定な派遣や請負
 労働者のなかで「働いても生活できない」「奴隷か囚人と同じ」という憤りは渦巻いている。北九州市内の職安にきた失業男性(40代)は「派遣会社に4社登録している。しかし仕事は1カ月に10日程度」と話す。毎月の収入は10万円前後で、自分1人が食べていくのがやっとである。このような派遣・請負労働が全産業で急増している。
 路上生活する40代の男性は、携帯電話での連絡を命綱に建設の日雇いで働く「ワンコールワーカー」だ。仕事はコンクリートのはつりなど消耗の激しい重労働で、1日出れば2日間寝込む。日当は約8000円で10日働いても月収は8万円程度。家賃が払えないためテント生活を送るが、路上もいつ立ち退きで追い出されるかわからない。
 さらに野宿テントもなく、リュックサックと携帯電話を片手に仕事を探しながらさまよう若い派遣労働者たちがいる。昼間はティッシュ配りなどをするが日当は交通費込みで8000円程度。食事はハンバーガーなどで済ませ、夜はネットカフェやマンガ喫茶などを転転とする。「難民キャンプ」さながらの状態で、「出勤するホームレス」とも呼ばれる。病気や事故ですぐ収入源をたたれるため、孤独死や餓死は人ごとではない。「難民」とは遠い外国の話ではない。
 「偽装請負」問題が昨夏に表面化した。大手メーカー直結の請負業者が、派遣会社を通じて東北や九州の若くて体力のある人材を買い占め、工場が多い愛知などへ運び、過酷な製造ラインに送り込む。「請負業」という看板で、実態はアフリカで黒人狩りをやってアメリカで売り飛ばした奴隷商人と同じ「人買い」業なのだ。05年度に請負を発注した企業660社のうち、半分以上の358社が「偽装請負」で摘発された。経団連・御手洗会長のキヤノンを筆頭にトヨタ、松下電器産業、東芝、富士重工業、ニコン、コマツなど大手メーカーがほとんどである。
 「偽装請負」で働く主力は20〜30代なかば。正社員と同じ仕事をしても時給は1000円程度でボーナスや昇給はない。年収は生活保護世帯と同じ200万円前後で、社会保険の加入も保証されない。過労死で問題になるが、責任を追及するといつもメーカー、請負会社、派遣会社の間をたらい回しにされ、いつの間にか「契約打ち切り」となる。こうして劣悪な労働実態が闇から闇へ葬られるのが特徴である。
 たまりかねて「同じ仕事をしているのだから正社員にしろ!」とトヨタの下請で派遣労働者が数年前労組を結成したが、すぐ「契約打ち切り」で全員解雇となった。「ものをいえばクビ」なのだ。

 正社員は過密労働横行
 正社員といっても、長時間過密労働がひどくなり、人間的な生活条件は破壊されている。05年4月に107人の犠牲者を出したJR宝塚線の事故が起きた。JR宝塚線はドル箱路線で1日の発着本数は397本、ラッシュ時は3分に1本の間隔で走らせる超過密路線だった。そのために制限速度を120`に引きあげ、車体はスピードアップのため軽くてつぶれやすいステンレス製列車にした。そこへ睡眠時間が4時間しかない若い運転士を乗せて酷使していた。ミスがあれば「日勤教育」で自殺するほどの懲罰を加えていた。労働者の発言権が封殺されることが、安全性の破壊になっていた。国交省が1日に開いた意見聴取会で、JRは「日勤教育」を「必要かつ有益」と正当化し、過密ダイヤへの批判にも「標準的な運転をすれば定時運行できる」と開き直っている。
 製造現場では03年9月にブリヂストン栃木工場でタイヤ15万本が焼失し、住民約5000人が避難した大火災が起きた。可燃性が強い薬品を大量に扱い、出火すれば大火災になると分かり切った工場を無人化し、消火体制もとっていなかった。その工場の労働者は事情聴取中に自殺した。
 「手取りは高い」という正社員は「クビ」の前に過労死や精神病に追い込まれている。正社員のうちで過労死ラインの年間3000時間以上働く労働者は6人に1人となり「心の病」は1525件(05年)に上っている。
 安全対策、技術継承のための教育、品質管理部門などが切り捨てられた結果、欠陥品が続出した。トヨタの欠陥車リコール(無料の回収修理)台数は01年の5万台が05年には193万台となった。ガス機器メーカーではパロマ、松下電器、リンナイ、日立、三菱電機などの製品で約200人がガス中毒死した。食品産業も雪印や不二家のように腐った材料が使われるなど、製品の信頼性も崩壊している。
 そして深刻なのが個人請負業の現実である。03年9月に軽急便名古屋支店に運転手が立てこもり「3カ月の委託代金25万円を支払え」とガソリンをまいて放火自殺した事件はその走りだった。失業者に月賦で「お古」の軽トラを105万円で買わせ「がんばれば、手取りは月40万円」と欺き、日通など大手はしない遠方に運ぶ「儲けが少ない」仕事ばかりさせた。昼も夜も寝ずに働くが手取りは10万円以下。トラックの月賦で借金まみれにし、結局、最後は自己破産させる構図だった。

 政府主導で奴隷化 米国と大企業の要求・労働政策で実行

 このような労働者の権利の剥奪、奴隷化は、アメリカと大企業の要求によって政府の労働政策として実行された。
 1986年に発表された「前川リポート」(中曽根元首相の私的諮問機関の報告)は今後の産業政策で「鉄鋼、石炭、化学など従来の基幹産業のほとんどを海外に移し、そこから製品の逆輸入をふやし、農産物も輸入に切り替え、国内には先端技術部門や最終加工組み立て部門、金融流通部門のみを残す」との方向を打ち出した。それは国内の労働者を搾り上げて蓄えた資本をアジアを中心とする海外に投資し、そこで膨大な超過利潤をあげる方向だった。
 そしてこの年、派遣労働法を施行し専門性の高い16業務で労働者派遣業務を合法化した。男女雇用機会均等法も施行した。翌年の労基法改悪で「1日8時間、週48時間」という規制も取り払った。「1週間40時間」労働制とし、週5日・40時間以内であれば1日に8時間以上働かせることを可能とした。
 95年には日経連が「新時代の日本的経営」を提言した。それは「多様な働き方」を進めるとして長期蓄積能力活用型グループ(正社員)、高度専門能力活用型グループ(契約社員)、雇用柔軟型グループ(パートなど)にわける構想だった。
 そして98年には在日米国商工会議所の問題提起としてアメリカが日本の労働省に具体課題を要求した。それは「過度に規制された日本の労働環境は外資が望む人材の求人・採用を困難としているから、対日投資の障害となっている」として「職業紹介など労働省が行うサービスの民営化」、「集団解雇制限」の削除、女子保護規定の全廃、有料職業紹介と人材派遣事業の原則自由化などが要求だった。
 このもとで99年には直接雇用を基礎にした有期雇用以上に労働条件切り下げができる制度として派遣労働の対処業務拡大に乗り出した。派遣できる業務を限定する方式から派遣できない業務を決める方式に転換した。
 労働時間法制もノルマを設定し、その仕事の時間配分を労働者自身にゆだねる裁量労働制を導入し、98年の法改定では各企業の本社に勤務する企画や立案などをするホワイトカラーに裁量労働制の対象を拡大した。
 男女雇用機会均等法改定では九九年に女性労働者への残業や深夜勤を禁ずる規制も全廃した。女子保護規定を撤廃し労働時間は男性基準とし、賃金水準は女性基準とした。

 規制撤廃し首切り支援
 さらに99年には「産業活力再生法」を制定し企業リストラへの支援を開始した。
 そして01年に小泉内閣が登場し「痛みをともなう改革」に着手した。「郵政民営化」で1万5000人もの郵便労働者削減を公言。通信「自由化」ではアメリカの接続料引き下げ要求に従い、日本の通信市場売り飛ばしをすすめ、NTTなど通信労働者10万人の削減に着手した。
 他方でブッシュ大統領に100兆円の不良債権を今後3年で処理すると約束し公的資金を投入した。日本の企業はアメリカに資金を回す「不良債権処理」による金融引き締めで倒産、労働現場はリストラが吹き荒れた。
 このもとで小泉政府は03年に産業活力再生法を「改定」し、M&A(合併・買収)やファンド支援を促進した。同年に労働者派遣法と労基法も「改正」。派遣労働は有期雇用契約の上限規定を3年(専門職五年)に延長し、派遣労働の適応業種を製造業にも拡大した。労基法改定では裁量労働制を本社以外の支店を含めたホワイトカラー業務への適用を拡大した。05年には労働安全衛生法も改悪した。以前は残業を月間100時間した労働者には医者が診断と指導をするよう企業に義務付けていたが、それを「労働者の申し出があった場合」とし「自己責任」に変えた。
 05年に政府は規制改革・民間開放推進3カ年計画で「米国を参考にした労働時間規制の適用除外を検討する」ことを柱にした「労働ビッグバン」を閣議決定した。そして日本経団連が昨年末に発表した「日本の目指すべき10年後の姿を描いた」という政策提言「希望の国、日本(御手洗ビジョン)」に関連し、御手洗経団連会長は「米国を参考にして(社会秩序の)仕組みを考える。小泉改革では不十分」などと主張している。
 このなかで安倍政府は、非正規雇用を増やした次の段階として、正規労働者の首切りを可能にする法制を急いでいる。「労働契約法」新設は労働者に会社と請負業者の個人契約を結ばせるもので、会社側が一方的に定めた就業規則を認めなければ就職もさせない。雇用後に「就業規則を認めなければクビ」との脅しで就業規則変更も可能にするものである。そして水面下で「残業代をゼロ」にする「ホワイトカラー・エグゼンプション」制を準備し「1日8時間労働」という歴史的に勝ち取られた労働者の権利を破壊し、「死ぬまで働かせる」奴隷にしようというのである。
 この労働者がかけられている困難と攻撃は、1企業内で解決できるものでないのは明らかである。根源はアメリカのグローバル戦略であり、「日米安保」条約による植民地的抑圧にほかならない。安倍政府の進める労働法改悪はアメリカが日本の独占資本集団を従えて好き放題な支配をするための政策であり、あげくは失業者を戦争の肉弾にするものである。
 このなかで、労働者の組織された力の結集が切望されている。労働組合の多くは、企業の枠内で待遇改善を願う労資協調の企業主義・経済主義が破産している。労働者が生活を守るにはたたかうほかはないという真実が嫌というほど突きつけられている。しかも、企業の枠をこえて、全地域的、全産業的、全国的に結びついた、アメリカと独占資本全体が政府を使って実施している労働政策と対決することによって展望を切り開くことができる関係である。労働運動の爆発的な発展は必至といえる。

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