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制御不能の金融資本主義
日本食い潰す米欧投機集団
              大企業の海外移転に拍車     2012年6月6日付

 「100年に一度の経済危機」といわれたリーマン・ショックから4年目を迎えるなかで、世界経済はさらに変調をきたして、ドル安・ユーロ安とかかわった超円高や世界同時株安の急激な進行など、深刻な様相を帯びている。07年の米国サブプライムローン問題に端を発した金融危機がリーマン・ショックとなり、その後はヨーロッパに波及し、ギリシャの債務危機からポルトガル、スペイン、イタリアといった国国の債務危機、それらの国債を引き受けてきた金融機関の危機に連鎖しはじめるなど、世界的な恐慌が深刻になっている。
 
 世界同時株安が急激に進行

 円高に見舞われている日本では製造業を中心とする大企業の海外移転に拍車がかかり、失業と貧困がかつてない状況になっている。対ドルで1円円高が進むだけで、トヨタ自動車なら年換算の営業利益が約300億円吹き飛ぶ関係といわれ、自動車・電機など輸出産業・製造業は国内をさっさと切り捨てて海外移転を繰り返している。資本だけが生き延びるために、働く労働者や日本社会がどうなってもかまわないという姿をあらわしている。株式は90年代の“金融ビッグバン”以後、外国人に握られて無国籍企業化してきたが、ますますこの流れに拍車がかかる様相となっている。
 4日の東京株式市場の日経平均は8300円を割り込んで、29年ぶりの最安値を記録した。ソニーは1000円。パナソニックは500円といった水準まで株価が下落するなど、代表的な銘柄の紙屑化が取り沙汰された。リーマン・ショック前の06年に538兆円あった東証一部上場企業の時価総額は、6月4日時点で240兆円まで減少。300兆円近い資金が逃げ出している。
 このなかで売り浴びせているのが外国人投資家。それを買い支えをしているのが日銀で、1日で200億〜400億円という規模の株式や不動産投信を購入するなど、世界的にも例がないことをやっている。株式市場において外国人投資家の支配率は東日本大震災が起きる前は六割、その後は七割近くまで高まっていると指摘されてきたが、外国人投資家つまりファンドが売り逃げする株を日銀が買いとるという、おかしな行為がおこなわれている。
 一連の株価急落や円高による業績悪化で苦境に立たされている企業のなかでは、パナソニックが7000人いた本社社員を3500人に削減することを打ち出し、ソニーも従業員の1万人削減を打ち出すなど、労働者を路頭に迷わせ、海外移転する方向をごり押ししはじめている。
 
 欧州は国家破綻も ギリシャから南欧に波及 新興国も危機

 日本の株式市場だけでなく、世界的に同時株安が進行している。もっともひどいのが債務危機が進行しているギリシャ、スペイン、イタリアといった南欧の国国で、円高に直面している日本もこれらの国国と同レベルの下落率を見せている。リーマン・ショックの後はアメリカやヨーロッパの銀行が幾つも破たんした。その後の欧州危機では国家破たんが現実にあらわれはじめている。
 ヨーロッパではギリシャの財政危機が1昨年から取り沙汰されてきた。債務不履行になるとヨーロッパの金融機関が抱えてきたギリシャ国債が焦げ付くため、欧州各国やIMFなどが金融支援をやり、「債務の50%棒引き」などなんでもありの策を講じてきた。それでも10兆円近い焦げ付きを金融機関はかぶったとされている。ギリシャの政府債務は38兆円だったのに対して、同国が破たんすればもうかる保険証券・CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が100兆円近くばらまかれるなど、デタラメな金融商売が繰り広げられていたことからパニックは拡大した。
 ギリシャ国内では緊縮政策に反対してストライキが連続し、総選挙をしても政府が発足しないために再選挙(6月17日)をよぎなくされるなど混乱が続いている。
 このギリシャ危機が「PIGS」(英語で「豚ども」の意味。ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字)といった南欧に飛び火し、対応に追われている。
 不動産バブルが破たんしたスペインでは、大手銀行のバンキアが政府に約1・9兆円の支援を要請。スペイン政府が事実上の国有化に乗り出した。これまでに注入してきた公的資金を合計すると日本円に換算して約2兆3500億円にものぼっている。スペイン国内からの資金流出も本格化しているため、国債の利回りは危険水域に到達。公的資金注入といってもスペイン政府そのものに銀行を救済する力など乏しく、資金調達のメドがないためEU各国の財政出動が必至となっている。
 ギリシャ、スペイン危機が波及しているイタリアでも、10年国債の利回りが6%を越える状態になった。国の信用がなくなって国債の金利が上昇すると、ギリシャと同じように国債発行によって税収を賄おうにも借金の利払いで首が回らない状態になることが避けられない。200兆円もの政府債務を抱えているイタリアは、フランスやドイツに次ぐ経済大国で、35兆円の政府債務で七転八倒しているギリシャと比較しても、破たんした場合の影響は計り知れない。
 これらの国国が借金踏み倒しの債務不履行をやると、今度は大量の国債を購入してきたヨーロッパの金融機関が連鎖倒産していくと見られている。すでにギリシャ危機で大手銀行のデクシア(仏系ベルギー)が破産し、スペインのバンキアは国有化でごまかしているものの、次次とたおれたら世界中がリーマン・ショック時の金融危機どころではなくなる。しかし一方で、こうした国家破たんの危機が深まれば深まるほどCDSの保証料率が高まり、ヘッジファンドなどの投機集団はもうけていくシカケになっている。
 緊縮財政が敷かれたヨーロッパでは、イタリアのベルルスコーニ首相が交代、フランスではサルコジが大統領選挙に敗れ、ギリシャでも政府与党が惨敗するなど、金融危機のツケを国民生活に転嫁していくことへの反発が各国で強烈なものになっている。
 リーマン・ショックの後米欧は量的緩和で札を刷りまくりその投機資金がアメリカやヨーロッパからBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国の新興4カ国)といわれる新興国になだれこんだ。サブプライム破たんのあとは新興国がバブルを引き継いで世界経済を牽引するのだといわれていた。しかしこれも鈍化し、チャイナクライシス(中国バブルの崩壊)が叫ばれるまでになった。
 資金を引き揚げられた新興国では、通貨高や急激なバブルに頭を抱えていたのが逆に通貨安、株安、バブル崩壊の危機がもたらされている。ブラジルも日本と並んで株価暴落がひどい。90年代末のアジア危機のときと同じように、すさまじい量のマネーがいっせいに引き揚げられたからである。
 その最大の要因は、世界的に経済活動が停滞し、需要が落ち込んでいるからにほかならない。金融緩和で溢れたマネーが張り付き、しばらく相場がつり上げられていた原油や穀物といった現物市場も、暴落の一途をたどっている。株も証券も通貨も国債も危ないというので投機資金も行き場を失い、ヘッジファンドもつぶれる。そのなかで、投機資金が円に投機して円高がひどくなり、大企業の容赦ない首切りと海外移転が気狂い沙汰のように進行している。この調子で産業が空洞化したら日本国内に仕事はなく、国民生活が成り立たないという大矛盾になっている。
 
 世界経済大破局へ 暴れ回る金融機関 熾烈な通貨戦争

 世界経済はまったくコントロール不能になった姿を露呈している。原発ならぬ世界経済のメルトダウンであり、原子炉暴走ならぬ金融資本主義の暴走である。社会がどうなろうと自分の金もうけしか考えないヘッジファンドなどの金融機関が各国政府を支配して働く者から職を奪い、まともに生きていけなくし、世界経済をぶっ壊しているのである。
 アメリカは戦後資本主義世界で圧倒的に優位な地位をえた。しかし1970年になると、ドル危機が進行して金ドル交換停止をせざるを得なくなった。一方では、ベトナム戦争でドルを垂れ流し、もう一方では日本やドイツの重化学工業化が進んでアメリカの産業を凌駕しはじめたからだった。
 ニクソンの金ドル交換停止で、戦後のいわゆるブレトンウッズ体制は崩壊したが、その後アメリカがやったのは情報力とあわせた金融立国路線であった。「強いドル」を標榜して世界中の資金を集め、大借金で消費をつくり経済を回すという芸当であったし、金融派生商品というイカサマ金融技術開発による金融投機であった。それは市場原理、新自由主義と称して、個別資本の金もうけの障害になるすべての規制の撤廃であり、医療、教育、福祉、文化など社会的な機能の破壊であった。なによりも労働規制の撤廃であり、奴隷労働を世界中にまん延させ、何千億円もの資産を持つ大富裕層が生まれる一方で飢餓状態にある貧困人民の蓄積であった。
 そしてリーマン・ショックは、アメリカのこの間の金融資本主義の破産としてあらわれた。返済能力のない貧困層に貸し込んだサブプライムローンなどを組み込んだ証券をつくり、それを格付け会社が優良証券と評価し、世界中に買い込ませていたのが、アメリカの住宅バブルが破裂したことによって崩壊した。イカサマ証券をかかえた金融機関がマヒしたのを、アメリカでもヨーロッパでも「自己責任」というのではなく膨大な公的資金投入で救済し、また量的緩和による紙幣の大増刷で破たんを回避してきた。
 同時に、通貨戦争が熾烈になって、先進各国が自国通貨の切り下げに躍起になってきた。通貨安で自国産業の競争力を強め、近隣諸国の犠牲で危機を乗り切るためである。大恐慌のなかで、産業破たんと失業、貧困が国内の危機を深刻にするからである。
 歴史的にみても、世界大恐慌が起きた1930年代も似たような通貨切り下げ競争が起こっており、他国による関税引き上げなど輸入を規制する保護主義が台頭して、やがてインフレとなり最終的には軍事力で市場を奪いあう第2次世界大戦に突入していった経緯がある。

 超円高にし米国が略奪 食い物にされる日本

 ヨーロッパもアメリカも通貨安を仕かけているなかで上昇しているのが円である。それはアメリカが必死に量的緩和をやってドルを刷りまくってきたことが最大の要因になっている。アメリカが抱えている債務を棒引きさせ、輸出をテコ入れするために意図的に仕かけているものだ。そして、「対日輸出を2倍化させる」(オバマ)といってTPPが持ち込まれ、アメリカの経済ブロックに縛り付ける動きとしてあらわれている。
 アメリカは日本を完璧な隷属下において市場を奪ってしまうとともに、中国と対抗する。それが軍事的な緊張関係となって、普天間をはじめとした米軍再編や、次期戦斗機の整備、国内の重要港湾や自衛隊・米軍基地周辺の異様な軍事都市整備となっている。
 アメリカの住宅バブルの最大の原資はジャパンマネーだった。円高も今に始まったことではない。超低金利を二十数年ずっと続けたおかげで国内に金は回らず、その分を欧米の金融機関が「円キャリ」で調達して、世界的なバブルをつくっていった。この間の低金利政策だけでも家庭収入を400兆円近く国民から剥ぎとってきた。そして、預けているはずの預貯金や年金資金も、金融機関が米国債やサブプライムローンのようなイカサマ証券を買い込まされて、相当部分がアメリカに巻き上げられ焦げ付いている。年金基金の消失どころではない、預貯金、保険、年金資金の消失である。ドル安と円高によって日本政府や金融機関が山ほど抱えていた米国債は、1j=120円くらいの時期と比較すると四割近く吹っ飛んだことになる。ドル安はアメリカの借金棒引き策となっている。
 そして大企業は「円高はチャンス」「海外企業の買収に有利」などといって、国内工場撤退、海外移転に拍車をかけている。農漁業もつぶした上に製造業もつぶしている。日本をつぶしてしまうのだ。日本社会に失業と貧困があふれるすう勢はひどくなるばかりとなっている。
 国内の経済が疲弊し人人が貧乏になっていくなかで、民主党野田政府は消費税増税をやるといっていき巻いている。それはIMFすなわちアメリカが要求したものであり、そのためIMFへの拠出金を最近でも十数兆円ポンと出した。米軍再編への上納金は上限知らずである。そしてアメリカの要求するTPPをやって、日本市場を全面的に明け渡してアメリカの収奪にまかせることに必死になっている。選挙公約は破るのが当然となり、議会制民主主義はないことが明白となった。政府はだれがやっても、アメリカとそれに従って金もうけをあさる財界の代理人であり、官僚機構やメディアやあらゆる権力機構がそのように動く仕かけとなっている。
 そして戦争の危機である。経済学者のなかには「1930年代の世界恐慌は第二次大戦によって克服した」「戦争が恐慌を乗り越える特効薬」などと主張してはばからない者まであらわれている。大恐慌が深刻になり、世界的な争奪戦が激化する中で、アメリカを救うために日本を食い物にし、戦争の盾にするというものである。
 為政者が国民が生きるためになにかをやるという期待は縁遠いものとなっており、人人はたたかわなければ生きていけないことを痛感している。

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