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生活のメドがない労働青年
江島市政下の下関
             働く者が食えない不合理    2006年12月8日付

 大企業やメガバンクは史上空前のボロ儲けをしているのに、働く者はますます食っていけない状況になっている。この下関市内でも、とりわけ若年労働者の低賃金、雇用形態の不安定さは増している。各種産業・職場で働く若者たちに実情を聞いた。

 奴隷みたいな製造現場
 市内の工業高校を卒業して、地元大手の工場に勤める23歳のAさん(男性)は、3交代制勤務で目一杯残業して働いても、給料はよくて手取り15万円だ。通常は11万〜12万円を推移している。家畜の餌などを袋詰めする現場は、すさまじい暑さと臭いがこもり、いつでも頭がもうろうとしている。家に帰ったら疲れ切って寝てばかり。朝八時前に出勤すると、夜八時過ぎまで残業がある。それでもボーナスは20万円に達したことがない。
 「うちの家族も正社員なのに給料が安すぎると驚いている。転職も進められるけど、1度やめたら次にまともな職があるか      職安で仕事を探す青年(下関)
わからない。友人たちも、職が見つからずコンビニでアルバイトしていたり、期間工に行くかのどっちかだし、正社員で残れるだけ幸せかもしれない」といった。
 友人の1人は、機械に手を挟まれて人差し指と中指が落ちたが、指を持って中央病院に駆けこんだものの、2時間以上待たされて結局つながらなかった。その後はハンデが痛手となって仕事につけず、バイトをしている。「不満はあっても、しがみついて働かないといけない感じで、奴隷みたいな気がする。職が見つからない別の同級生は、父親が“会社をやめるから息子を正社員に雇ってくれ”と頼んだ。ブリヂストンに入ろうとしたが3カ月間の試用期間で身体がもたずにやめた奴もいる」。雇用の厳しさと、一方で奴隷のようにこき使う企業のやり方を肌身で感じる。
 彦島の大手工場に勤める20歳のBさん(女性)は、派遣社員として働いている。9時〜5時の日勤で、月月の給料は手取りが12万円程度。年2回ほど仕事の少ない時期があり、10万円台に落ちることもある。休日出勤や、早出残業(各30分)を頑張っても13万円くらいだ。交通費は月3000円が支給されるが、郡部から通うと、とても足りない。義兄が同じ工場で働いているが「入った当初、交通費は1万円出ていた。今は2000円しか支給されてない」という話になった。
 工場では正社員ならボーナスがある。しかし派遣会社からは“寸志”が1万〜2万円。「少しでも貯金をと思うけど、出ていくお金が多い。このまま続けてこの給料ならどうなるのだろうかと思うけど、別のところもあまり変わらないだろうし……。先が見えない」と話した。
 工場内では100人ほどいた正社員が数カ月で70人くらいになったりと、他のパートにしろ、派遣社員にしろ、従業員の入れ替わりが激しい。雇用の調整弁として、派遣や非正規雇用が手っ取り早く当てこまれ、使い回しされていく格好だ。
 九州の派遣会社に登録し、総合病院で医療事務として働く23歳のCさん。派遣社員として4年間働きながら、デスク仕事だけでなく、カウンターで何1000枚のカルテのなかから患者をさがすという肉体労働も多い。「はじめ派遣会社は私たちを守る側で、病院側とのクッションになってくれるのかと思っていた」が違った。会社は病院側に立って要望をどんどん受け入れて、仕事量を増やすばかりだ。
 入社時の契約では、夕方5時15分が終業で、以後は残業手当が10分単位でついていくはずだった。しかし1年半前から会社の経営者が変わったことで、残業とはみなされずただ働きとなった。たとえ5時45分に仕事を終えても「5時15分に終えたと書くように」と徹底された。
 「派遣は“あこぎな商売”」と穏やかなCさんにも怒りがこもる。「悔し涙ばっかりで、理不尽なことばかり。派遣社員だから決定権はなく、責任だけは押しつけられて、肉体的にも精神的にもまいる。人が使い捨てにされて“自分はなぜ働いているのか”と考えることがある。将来を考えたら今の仕事ではやっていけない。個人個人に問題があるのではなくて、今の社会が問題だと思う」と気持ちを語った。
 市内の印刷所に勤める20代のDさん(女性)は、朝七時前には出勤して、家に帰りつくのが夜中11〜12時になることが多い。仕事が多くて遅くなるのではなく、最近はパートやアルバイトなど経験の少ない職員の割合が増えて、その失敗をやり直すことの方が多い。馴れない仕事で当然起こりうることだ。市内の印刷業界のダンピング競争も激化しており、原価がとれないような仕事も増えている。会社も業界の生き残りに必死で、いわば人件費抑制のツケが「やり直し」となってあらわれた格好だ。来年からは20万円に満たない給料が、さらに切り下げられると会社から伝えられている。
 大手家電量販店で働くEさん(20代後半男性)は契約社員。新卒者なら正社員として雇われ、ボーナスもある。しかしフロアに立つ従業員の多くは同じように途中採用の契約社員で、1年雇用の継続を繰り返していく。ボーナスはない。契約社員が正社員と違うのは、有期限雇用であり、契約終了を言い渡されればそこで終わり、就職活動をしなければならないという不安定さにある。仕事は正社員と変わらないが、仮に大型店が撤退するといった場合、雇用調整しやすい仕組みだ。

 学校官庁でも非常勤増
 学校官庁など、公共の職場でも非常勤職員が増えつつある。民間でいう契約社員のような境遇で、3年を限度とした1年契約の更新となる。国が「小さな政府」にするといって自治体合併を促し、人件費抑制の調整弁になっている。公務員を夢見る若者や、就職先を模索する若者なども期間限定で働いている。彼らはどのような待遇で働いているのだろうか。
 官庁の嘱託職員として勤めるFさん(27歳)は公務員になりたいと思ったこともあった。しかし、採用枠の狭さと将来を考えてやめた。今は昼間の仕事と両立させながら、理学療法士の免許取得を目指し、夜間は専門学校に通う日日を過ごす。「手に職をつけて、お年寄りや病人の役に立てる仕事がしたい」と決意して3年がたった。
 夕方5時過ぎまで正職員と同じように仕事をこなし、18時から21時30分まで専門学校で勉強。そこから自宅に戻ってまた勉強。暇さえあれば専門書を開く。4年間の夜間学校や医療現場での研修をこなして、はじめて国家試験(年1回)を受けることができるから、一生懸命な毎日だ。しかし嘱託といえど本業は住民相手であり、ぬかりなく仕事をこなすのも容易でない。
 嘱託職員としての給与は賞与・ボーナスなしの17万円。各種引かれものと足りない交通費などを自己負担すると、「実質的に手元に残るのは、13万円」。ほとんどが、専門学校の授業料で飛んでいく。両親といっしょに暮らして助かっている面も大きく、家族のありがたみが身に染みる。「資格がとれたらなるべく下関市内に勤めたいが、公務員にせよ、狭き門ばかり。どの世界も厳しい」と痛感している。
 学校現場も例外ではない。教師をめざす20代の青年も1年契約の臨採、非常勤講師など不安定な状態におかれている。下関管内の小・中学校には104人の非常勤講師と、90人の臨採教師が働いている。そのうち約3分の1が教師をめざす20代だ。
 小学校で事務職の臨採をしている20代のGさんは、中学校の英語教諭をめざしている。昨年1年間は臨採も非常勤も枠がなく塾の講師とコンビニのバイトをしていた。「試験にとおることが1番だが、来年度の仕事のあてはなく、あっても新学期ギリギリに電話がかかってくるから不安定」と語る。友人も親せきの弁当屋を手伝いながら、高校の非常勤講師をしている。
 養護教諭をめざす20代のHさんも、今は臨採の養護教諭として働いている。2年前まで非常勤講師で小学校に週3回、介護施設に週3回勤めていた。非常勤講師は時給制で2580円、夏休みに収入はない。「親と生活していればいいが、非常勤であればとくに自立することはできない」と語る。
 今年度全体の山口県内の志願者は1801人で、小学校教諭は5・5倍、中学校教諭は17・6倍、高校教諭は14・3倍と「狭き門」だ。今年度の山口県の新規採用者が205人であるのにたいして、欠員補充臨採(定数内臨採)が698人と約3・4倍となる。必要な教員を臨採で対応しているためで、個人がいくら努力しても、現場で必要な教員数にたいして圧倒的に採用枠が少ないのだ。
 成人した3人の子どもと暮らしている母親の胸中は複雑だ。「子どもたちを見ていると、酷すぎてびっくりする。結婚どころか、子どもを育てる経済的余力などとてもない。1人暮らしをさせようと思っても、家賃や光熱費などを払えるわけがないのだから。息子の友だちのお母さんたちに会っても、○○ちゃんの家の息子は、首を切られたとか、○○ちゃんのところは、ボーナスがなかった、会社が倒産したとかの話ばかりで、このままでは可哀想、という話になる」と語った。同時に、下関の地がすさむばかりなのに、一方で市政の箱物利権事業や、市外業者への発注がおこなわれることに怒りを感じるといった。

 好景気は大手企業だけ
 「いざなぎ景気」を越える好景気は、社会の上層に限定されたもので、決して労働者には分配されない。非正規雇用が拡大し、低賃金労働が拡大し、奴隷のように搾ることによって大企業や金融機関、大株主などが大もうけしているのだ。
 大企業や法人税を免除されているメガバンクなどは軒並み史上空前の利益を上げ、全産業の経常利益は政府による規制緩和・構造改革をつうじて05年度には51・7兆円(過去最高)になった。しかもボロ儲け企業は法人税減税によってますます優遇される仕組みが国会で論議される始末だ。また、最近では、派遣の直接雇用義務(一定の期間派遣として働かせたら正社員として採用しなければならない)の撤廃すら経済界は主張し、政府が追随する動きも見せている。非正規雇用や低賃金で働く者が食っていけず、ピンハネした大企業ばかりが肥え太り、社会はますます貧しくなる構造がムキだしになっている。
 北九州の工場に期間社員として働きに行っている20代男性は、「国が法律を変えるからこうなっているわけで、“いざなぎ景気越え”といわれると怒りすら覚える。みんなが幸せになれるように社会は運営されていると思っていたら、大間違いだった。こんなの絶対におかしい」。自民党政府の労働者を奴隷化する政治とたたかう力を結集しなければどうにもならないと語られている。

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